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#4382 市立根室病院:16.8億円の赤字決算 Oct. 10, 2020 [26. 地域医療・経済・財政]

 9/30の北海道新聞根室地域版の記事が市立根室病院の決算を報じているが、特に変わったことはない。

 公的会計基準では収益が47.4億円、費用が47.7億円で3300万円の赤字。
 企業会計基準に組み替えると、

  売上 30.9
  費用 47.7
  純損失16.8億円

 公的会計基準と企業会計基準では赤字額に16億円を超える差が生ずる。なぜこんなことが起きるのか?公的会計基準では一般会計からの繰入金16億5,500万円を営業収益として処理するからである。企業会計基準では営業収益ではない項目を営業収益の部に計上したら、粉飾決算になる。損失補填の一般会計からの繰入金は営業収益ではない。ダブルスタンダードの公的会計基準は廃止すべきだ。夕張市の財政破綻は公的会計基準が引き起こしたともいえる。巨額の赤字が毎年でているのに、一般会計から繰入金があることで、公的会計基準上は特別会計(たとえば病院事業や上下水道特別会計)では黒字決算を続けられる。誤解の元なのである。

 市民への決算報告は公的会計基準ではなくて企業会計基準でやるべきである。市民のほとんどは公的会計基準を知らないから、赤字が「3300万円」だと誤解している市民へは企業会計基準で決算書の組み換えを行い、わかりやすく、正直に報告したらいい。
 17億円の赤字は病院を建て替えてから変わらない。建て替え前の計画案では最大12億円の赤字だったが、つじつま合わせの杜撰な計画案で、現実はそれを大幅に超過している。こういう仕事のやり方を毎年続けていたら、感覚がおかしくなり、やったことのないまともな仕事ができなくなるのはモノの道理。正直なのが最善なのだ。
 わたしは一部上場企業で経営管理や経理の仕事にも携わってきたが、経理の要諦は事実を事実通りに仕訳し、帳簿へ記録するということ。事実と違う(営業収益ではない一般会計からの繰入金を、営業収益に計上してはならぬ)処理をしてはいけないのである。やってはいけないものを合法化したということで、電力事業の会計基準、公的会計基準、ふるさと納税の三つに同じ匂いを感じている。どれもとんでもない人的災害を引き起こしている。


 本題に戻ろう、同じ記事の上の欄には中標津町立病院の決算記事(数字の記載はない)が載っているので、比較してみよう。
 「西村穣町長は行政報告で病院の経営状況について『一般会計予算の約10%にも上る繰出しを市、多額の一時借入金を抱えている。経営健全化を推進しなければならない重要な局面を迎えている』と強調した」


 中標津町長は危機感を抱いている。
 根室市の昨年度の一般会計予算額は176.3億円であるから、市立根室病院事業への繰出し金は9.4%であり、経営状況は中標津町立病院と変わらない。

 ふるさと納税制度で潤っているから市財政がもっているが、この悪法がなくなれば、市財政も地元経済も沈没しかねない。
 備えあれば患いなし。


 見返り品欲しさに故郷でもないところへ住民税を付け替え、住んでいるところへ税金を納めない。それが当然のようになってきている。人の意識の変化が怖い。国民の倫理基準がこの数年でさらに低下してしまったように感じる。子どもたちの意識も大人に影響されて、変容していく。
 住民税の本来の趣旨は居住地へ納税するということにある、それがモノの道理というもの


DSCN4150市立病院記事s.jpg


<道東に医大がない:国立道東医科大学設置運動を起こせ>
 道東の人口は約100万人である。そこに医大がないというのは不自然。人口56万人の鳥取県にすら「鳥取医大」がある。100万人以下の県は8つ、そのいずれにも医科大学か総合大学医学部が設置されて地域医療に責任をもっている。
 国立道東医科大学の設置を、道東の市町村長が協力して働きかけたらどうだろう?市長が動かないなら市議会議長が連携して設置に動き下地作りをすればいいだけのこと
 市立根室病院は国立道東医科大学の指定臨床研修病院にしてもらうとか、分院になるとか、選択肢は広くなる。ビジョンを創り、30年かけて具体的な長期戦略のもとに仕事をする必要がある。

#3743より転載

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 全国の県で大学医学部あるいは医科大学のない県は一つもない道東の4支庁管内、十勝・釧路・根室・オホーツクの人口総数は2017年の国勢調査では95万人であり、人口規模で見ても面積で見ても道東は一つの県と考えてよい

<十勝・オホーツク・釧路・根室管内の人口>
(平成27年国勢調査データ)

 オホーツク計  293,542人
 十勝計   343,436人
 釧路計   236,516人
 根室計     76,621人
 合計    950,115人


 人口1,000,000人以下の県は8つある。

 40位 香川県 995,842人
 41位 山梨県 863,075人
 42位 佐賀県 849,788人
 43位 福井県 806,314人
 44位 徳島県 785,491人
 45位 高知県 764,456人
 46位 島根県 717,397人
 47位 鳥取県 588,667人
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<医大進学者を増やそう>

 根室には1学年2-3人ほど学力の高い生徒がいる。小学4年生から個別指導すれば毎年2名程度は医大へ進学できる。30年の長期で考えれば、根室出身の医師が60人育つことになる。5人に一人戻って来てくれたら、常勤医不足なんて話はなくなる。


 問題は教育環境である。根室から毎年医学部へ2人合格者が出せたら、学齢期の子どもを抱えた医師が根室へ赴任できる。どうやってそう言うことを実現していくか、具体的な議論をしたらいい。


#3885 地域を支える医師を量産しよう:自前の地域医療の仕組みづくり Dec.20, 2018










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アルファラジュ

釧路公立大学が「医学部医学科」を誘致するために設立された大学みたいですね。

http://www.saijuken.com/kokusai/index.php?%B0%B0%C0%EE%B0%E5%B2%CA%C2%E7%B3%D8

旭川市は医師過剰状態に陥っているという

http://www1.city.asahikawa.hokkaido.jp/koho/h24_11/html2/tokusyu.htm

by アルファラジュ (2021-09-23 11:57) 

ebisu

アルファララジュさん
面白いサイトの紹介ありがとうございます。
釧路の計画が突然旭川に変ったのですね。地理的な配置からも人口分布からも道東に医科大学がないのは奇異に感じていました。経緯を貼り付けておきます。
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設立時の黒い影 †
 1960年代、当時北海道には北海道大学医学部と札幌医科大学しか存在せず、道東、道北の医師不足が深刻であった。そのため、1960年に「国立釧路医科大学誘致期成会」が結成された。1970年の「第3期北海道総合開発計画」には釧路市に医科大学を誘致することが明記された。しかし、「いつの間にか旭川に書き換えられていた」という謎の経緯により、1972年に本学が誕生することとなる。そもそも、地理的に旭川は比較的札幌に近く、道北道央圏の中心都市であり、札幌市との都市間交通も整っている。一方で、釧路市は札幌-旭川間の2倍近くの距離がありほぼ陸の孤島状態であった。旭川市に急遽変更する合理的な理由はなかった。当時から慢性的な医師不足に陥っていた道東の要の釧路市に医大がないのは痛手であり、後の釧路市長が釧路への医大誘致の布石として釧路公立大学(1988年)を設立したが、いまだ誘致には至っていない。旭川市への決定は当時の北海道知事の金銭に目がくらんだ暴走と言われている。
 上記経緯で設立されたため、旭川市は人口対医師数が全国平均の1.6倍と慢性的な医師過剰状態となっているhttp://www1.city.asahikawa.hokkaido.jp/koho/h24_11/html2/tokusyu.htm。そのため、「病院銀座」と言われた旭川市一体の開業医は激戦区となり、近年は開業数が減っているhttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO34112870T10C18A8L41000/
by ebisu (2021-09-23 12:29) 

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