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#4375 新型コロナPCR検査陽性者のなかで真の感染者の割合はどれだけか? Sep. 25, 2020 [35.1 COVID-19]

 新型コロナ感染症はCOVID-19と命名された、これは病名である、ウィルスの学術名称は名はSARS-CoV-2。

「新型コロナPCR検査陽性者のなかで真の感染者の割合はどれだけか?」という問題は、数学の「条件付確率の問題」なので、案外厄介である。

 数学的な問題として眺めたら、高校1年生で習う数学A「第1章場合の数と確率」の最後に出てくる「第1章第3節の③条件付確率」の問題である。この章は高校生の大半が苦手の分野である。
(1年生が先週この節をやっていた。3年生の数学のよくできる生徒からも、今週質問があった。しばらくやっていないと問題の解き方を忘れているのはあたりまえ。だから、ブラッシュアップが必要だ。もう一人はユークリッドの互除法の便利なやり方を教えてもらったが…思い出せないというので『数学読本Ⅰ』の該当ページを開いて見せたら、「ああ、このやり方だ!」とスマホにそのページを取り込んでいた。)
 各章の章末にはそれまでの知識を総合した複雑な問題を取り扱った一番難しい節が配置されている。例えば、2年生の数学Bは「第1章数列」の最後は「第1章第3節②数学的帰納法」、数学Ⅱの「」第3章三角関数」なら「第3章第2節③三角関数の合成」である、高校時代に苦労した人が多いのでは?

 そういうわけで、新型コロナはテレビで毎日取り上げられているが、専門家の話を聞いて精確に理解できる国民の割合はまことにお寒い状況である。
 この問題を解説なしに理解できる生徒は、根室高校なら普通科学年120人に5人くらいなものだろう。旬の話題だから、今年度の入試問題に取り上げる大学は少なくなさそうだ。受験生諸君はしっかり読んでね(笑)

 文章で考えると、国語の読解力の問題が絡んでくるので頭がこんがらがるが、条件付確率はマトリックス図で表せば簡単、ちゃんと解説したら、根室高校生の半数は理解できる、やってみたい。
 数学Aの教科書には「袋の中に赤玉4個と白玉3個が入っている」例が図示されている。それを使うと次のようになる。

  赤(A) 白(nonA) 合計
偶数(B) A∩B nonA∩B A
奇数(nonB) A∩nonB nonA∩nonB B
合計     A+B


Aが起こった時にBの起こる確率を、「Aが起こった時にBの起こる条件付確率」といい、PA(B)で表す。
 PA(B)=n(A∩B)/n(A)
 次のようにも書ける。
 PA(B)=P(A∩B)/P(A)


  赤(A) 白(nonA) 合計
偶数(B) 2 1 3
奇数(nonB) 2 2 4
合計 4 3 7

 では、赤玉が出たときに、それが偶数である確率PA(B)を求めよう。

 n(A)=4,  n(A∩B)=2
 PA(B)=2/4=1/2
   答えは1/2である。
 具体例だとずいぶんわかりやすくなったのではないだろうか?準備体操はこれくらいにしておこう。

 さて、本題です。真に感染している確率がどうなるのかを、前提条件を四つ選択して計算してみる。

 前提条件は次の四つ
 ①全体の人数:10,000人
 ②感染率:1% ⇒ 感染者数 10000×1%=100人
 ③検査精度:80%
 ④偽陽性率:1%

 <表1>

  検査陽性 検査陰性 合計
感染者 a真陽性 c偽陰性 a+c
非感染者 b偽陽性 d真陰性 b+d
合計 a+b c+d  


<表2>

  検査陽性 検査陰性 合計
感染者 80 20 100
非感染者 99 9801 9900
合計 179 9821 10000


 検査陽性者数=a+b=179人
 検査陰性者数=c+d=9821人 
 PCR検査陽性者のうち真の感染者である確率PA(B)とすると、
  PA(B)=80/179=44.7%


 この前提だと、感染者100人の内、PCR検査陽性になる人は80人。20人を見逃し、感染者ではないのにPCR検査陽性となった人が擬陽性は99人である。真陽性80人よりも偽陽性で隔離される人99人の方が多い。
 検査結果が陽性で、実際にSARS-CoV-2ウィルスに感染している割合は44.7%、検査陽性者を隔離すると、その中には55.3%の非感染者が含まれることになる。

 問題点はいくつかある。

①そもそもウィルスが分離できていないらしい。
②PCR検査で増幅した遺伝子配列をいくつ検出したら陽性と判定するのかという量の問題、そこを変えたらPCR検査陽性率はまるで違ってくる。
③感染者の定義の問題。体内にウィルスがいても細胞内に入り込まなければ増殖しないから、PCR検査陽性であって/も感染者とは言えない。偽陽性にこうしたケースが含まれている。感染してはいないから症状はない。検査陽性でも無症状あるいは軽い症状の検査陽性者が8割近くを占めていることから、擬陽性率はもっと高い可能性がある。

 細胞内にウィルスが入り込んでいない状態なら、非感染で、ウィルスは増殖していないから、他への感染力を持たない。感染するためには一定量のウィルス量が必要だからだ。言い換えると、無症状PCR検査陽性者からの感染はほとんどありえないということ


 感染者が1%、検査精度が80%という前提条件の下で、偽陽性率が3%あると仮定すると、PCR検査陽性者のうち真陽性者は21.2%、検査陽性者の78.8%が偽陽性ということになる。実態に近い数字にはなるが、真偽は定かではない。(9/30追記:偽陽性率は0.1%以下、0.003%よりも小さい。弊ブログ#4377参照

<表3>

  検査陽性 検査陰性 合計
感染者 80 20 100
非感染者 297 9603 9900
合計 377 9623 10000


 この計算例だと、PA(B)=80/377=21.2%。
 真陽性はPCR検査陽性者377人中80人だから、21.2%に過ぎない。PCR検査陽性者377人中に297人(78.8%)の偽陽性(非感染者)が含まれることになる。隔離する患者の4人に3人は非感染者ということになる。
 残念なことに、PCR検査結果が出た時点で、真陽性者と偽陽性者を分ける術(すべ)はないのです。

 数学は役に立たないなんてことを思っていた人は、認識を改めましょう。新型コロナに係るデータを理解するにも、高校数学Aの一番難しい当たりをきちんと理解していないと、専門家の話を理解できないのです。

 数学嫌いだったけど、辛抱強く話につき合ってくれた人の方が多いのでしょう。ご苦労様、そして読み通してくれてありがとうございます。

<PCR検査の特性>
 PCR検査は、標的遺伝子を温度をコントロールすることで増幅する。米国では37-40回が標準的な手順である。1個だけSARS-CoV-2ウィルスの残骸があったとしたら。40回の増幅なら2^39=5497億倍になる。当然検査陽性となる。
 増幅回数を30回に減らすと、SARS-CoV-2ウィルスの残骸1個はいくつになるのか?2^29=5.3億倍になる。

 つまり、PCR検査はSARS-CoV-2ウィルスそのものあるいは残骸が一つでもあれば、増幅によって陽性になるのだ。未感染(細胞内に入り込んで増殖していない状態)だが検体採取部位にウィルスが付着していれば、確実にPCR検査は陽性になる。
 そして、PCR検査陽性となった時点で、未感染者と感染者をより分ける方法は存在しないのである。細胞内にウィルスが入り込み、増殖しだせば発熱や味覚障害などの具体的な症状が現れる、それが「発症」ということだ。体内のウィルス量は発症直前の3日間が一番多い。ウィルスが細胞内に入り込み、盛んに増殖して細胞の外へ出だすからだ。ウィルス量が多くなれば、それが咳や便ともに体外へ排出される量も増えるから、それら(エアロゾル)を介して感染が起きる。

<余談:「8割おじさん」論評>
 このように、擬陽性比率を1%から3%に上げただけで、他の条件は同じままでも、PCR検査陽性者に占める真陽性者の割合は、44.7%から21.2%に急落してしまう。シミュレーションはデータとその前提条件を明らかにしなければ、その適否を論ずることができないが、西浦教授はいまだに8割削減のシミュレーションの前提条件を明らかにしていない。研究者としてはまことに不誠実と言わざるを得ない。
 弊ブログで以前取り上げたが、3月の20日間ほどの実データを使うと同じような回帰曲線が引けるが、6月には東京都の人口を超えてしまう。
 西浦教授が前提条件を公表しないままなら、胡散臭いシミュレーションだという印象はぬぐえない、世間を惑わす似非研究者に見えます。
 テレビや新聞も、専門家のろくでもないシミュレーションを真に受けて、無批判に垂れ流すから「マスゴミ」だなんて言われる。けっして風評被害ではありません、実害です。批判的に吟味したうえで、解説コメント付きで記事にしてもらいたい。



おまけ:投稿欄でのやり取りが楽しかった記事です、話題の中心は数学。

#4072 「先生、土日やってないんですか?」 Aug. 31, 2019


<春はアンダンテ、秋は駆け足でやってくる
 今日の根室の最低気温は0時35分、10.0度でした。秋はますます深くなります。毎朝床暖房をつけています。
①真っ赤っかのハマナスの実

DSCN4093s.jpg


②鮮やかな青色だった紫陽花もすっかり秋色

DSCN4090s.jpg

③グズベリーは上の方だけ緑色の葉を残している。大粒の茶色くなった実は残らず子カラスが食べた?

DSCN4091s.jpg





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