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#4297 西村経済再生相:在宅勤務7割要請 July 27, 2020 [8. 時事評論]

 COVID-19感染症でピーク時は7割が在宅勤務だったという。ほんとうか?
 レストラン、飲食店などが休業していたので、一時期だけそうなったのでは?
 "Go to travel"キャンペーンで旅行を推奨しておきながら、西村経済再生相が経済界へ従業員の7割の在宅勤務要請するという。アクセルとブレーキをドジに踏めと言っている。「アベのマスク」もそうだったが、政府の政策はますますわけがわからない。精神錯乱気味の政策の連発である。

*「テレワーク7割実施 西村経済再生相、経済界に再要請へ
「西村経済再生担当相は、新型コロナウイルス感染者の全国的な増加を受け、従業員7割のテレワーク実施などを、近く経済界にあらためて要請する考えを示した。」


 全産業就業者数6724万人に占める第一次産業(農林水産業、224万人)と第二次産業(製造業、1063万人)の割合は両方合わせて19.1%である。残りの80.9%が第三次産業ということになる。産業の空洞化がよくわかる数字だ。
*産業別就業者数
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/chart/html/g0004.html

 さて、世の中の民間企業に7割も在宅勤務可能な職種があるのだろうか?2割もあるかな?
 一次産業と二次産業はリモートワークは無理だろう。たとえば、16年間勤務した臨床検査会社SRLはサービス業に分類されるが、同じ会社でも八王子ラボ部門は「製造ライン」である。四年間、八王子ラボにいて、仕事上ラボ内の各検査部に頻繁に出入りしていたから、全部門の仕事をつぶさに観察した、おそらく検査部門以外の人間としては一番検査現場を見ている、そのわたしがリモートワークで臨床検査は不可能であると断言する。いや、誰が考えても現在のコンピュータの性能や工学技術では不可能であることがわかるのではないか。
 営業職も集荷業務もリモートワークは不可能な職種である。集荷業務というのは車に乗って病院を回って、検体(検査用に採取された血液や尿など)を集めて、東京八王子ラボへ輸送する業務である。検査の種類によって検体の種類も温度管理も異なるから、臨床検査の精度上重要な業務である。集荷準社員の担当業務であり、全従業員の1/3ほどを占めている。本社部門は社員数の1割程度、全従業員数では6%になるだろうか?対象になるのはそこがほとんどである。リモートワーク可能なのはSRLでは1割以下。
 ラボ管理部門は現場と頻繁にコミュニケーションが必要だから、リモートワークは無理。無理を通せば、業務になんらかの支障が出る、生産性が落ちるだけですまない。

 業種を変えて4社、民間企業で仕事をしてきたが、従業員の7割をリモートワークさせるなんて、どこの国の話だろうとわたしは思う。
 西村大臣は何か大きな勘違いをされているのではないか、彼の経歴は次のようなものだ。

 灘高⇒東大法学部⇒通産省⇒国会議員

 経歴はご立派だが、片輪である。
 民間企業で仕事をしたことはない。それではその現場を見たことがあるのだろうか?見たことがなくても、わかりそうなものだが、さっぱりご存じないらしい。その彼が「従業員の7割の在宅勤務要請」を経済界にすると叫び出した。「灘高⇒東大法学部⇒通産省⇒国会議員」というコースを歩いてきた、民間企業の現実を知らぬ者の絵に描いた餅。初めての事態だし、専門外でもあるから慌てふためくのも無理はないが、落ち着いて政策を考えてもらいたい。

 情報産業はリモートワークが可能な職種が多いだろう、この業種ではリモート業務化がさらに進行するだろう。レストランや飲食業は無理。一部上場企業の本社部門ですら、半数をリモートワークにしたら、経営に悪影響が出るだろう。
 業種や職種ごとにリモートワーク可能なものをリストしたらわかるだろう。スタッフにさせたらいいのだが、「経済再生省」はないから使える官僚がいないのもしれぬ。経済再生相は特命事項担当である。

 企業の役員あるいは部長クラスの仕事の1/3程度は、戦略の周知徹底とマネジメント、つまり、部下とのコミュニケーションに費やされる。社内メールでの報連相はあたりまえ、それだけではマネジメントができない。相手は人間である。表情を見ながら、心の動きを読んで話を聞き、共有すべき価値観とビジョンと具体的な達成戦略を語るのがベストだ。場所は会社の中でも、どこかへ行く途中でも、公園散歩しながらでもいい。メールで頻繁にコミュニケーションしていても、お互いに表情や素振りを確認しながらのコミュニケーションが必要なのだ。わずか数分でも、メールの数十倍の情報が読み取れる。ときに、1時間でも2時間でもコミュニケーションに費やす必要がある。ふだんの仕事のマネジメントがしっかりできていれば、必要な時に、時間の制限を考慮しないでコミュニケーションに費やせる。

<余談:最近知った優良な民間企業>
 帯広市の印刷会社である。驚いたことに道東の印刷会社なのに出版業まで事業を広げている。
 共有すべき価値観行動指針経営理念などが具体的に文書化されて、日々の活動に生かされている。道東にもこんな会社がある、うれしいかぎりだ。

(帯広にはバターサンドで夙(つと)に有名な六花亭もある。お菓子メーカでは柳月も帯広の企業だ。)
 もちろん、リモートワーク7割で、こういう会社を維持することはできないだろう。こういう誠実な会社となら仕事を頼むお客様はもちろんのこと、この会社の仕入先企業の担当者も、そして従業員も安心して仕事できる。
 ホームページのURLを貼り付けておくので釧路市や根室市の企業は参考にしてもらいたい。こういう理念の企業には有能な若い人がいくらでも集まるだろう。若い人たちが、安心して、そして企業の未来に希望をもって働くことができれば、人口減は減速できる。 

「当社では、社員の身につけるべき価値観として、「対等な人間関係」「共存共栄」「自己成長」「競争と共創」「相互依存」「素直さと正直」の6つを掲げています。」


 要するに、日本の伝統的な商道徳、「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」ということ。
 
*ソーゴー印刷株式会社
https://www.sogo-printing.com/about?fbclid=IwAR0_PjfAU2gYEXBfez76sDg6XuZ89LJIE6cvwPikwKEEKnCjNqf2BF263r0#section-policy



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tsuguo-kodera

 ご無沙汰しています。なるほどそうとも言えますね。彼は灘ですか。発音にそれらしいアクセントがなく、開成のおぼっちゃまだと思っていました。

 でも、7割在宅勤務は良い目標かも。まず、商品企画は可能です。システムエンジニア、プログラマーも可能です。だいたい、取締役何て工場にいない方が仕事が捗ります。取締役も執行役員も社長も温泉でワーケーション。どうせ遊んでいるのだから。
 さて不可能なのは現場の看護婦さん、工事作業者です。でも、道路の工事を見ていたら、今すぐにロボットとAI化できます。ボケた道路案内人より何ぼ役立つか分かりません。
 看護婦さんや検査技師の仕事を見たらロボット化できます。ロボット化以上にAI化すれば、ユビキタス化すれば人間はいりません。
 混雑度をQRコードで読み取りシステムが実時間で統計を取り、お客がスマホで現在の混雑度を知るなどの地方があります。全くアホらしい。完璧にユビキタス化すれば、AIの方が上手く人の流れを理解します。
 要するに無人化しAI化しユビキタス化すれば人は8割削減できます。在宅勤務可能な人はバックヤードです。ここも8割可能です。
 日本は人が好きなのです。それも結構のようですが、最近は人によるアポ電強盗のように人間が一番危険です。ネットのインチキは予防できてもアポ電を予防するのは大変です。人と会わない、電話に出ない対応しか私は考えられません。
 彼は好きなタイプではありませんが、変わり者の私は彼を見直しました。すみません。(笑)
by tsuguo-kodera (2020-07-30 13:33) 

ebisu



根室は今日の最高気温が23.0度です。アツアツいアッちっちです。(笑)

「従業員の7割テレワーク要請」ではなくて、25年後に7割の人員削減要請なら、AIで可能でしょうね。

きっとそうなります。

ところで、SRL八王子ラボは臨床検査ラボとしては世界一の生産性と自動化設備を有しています。
1984年から歴史を振り返ると、業務部やRI部の分注工程がなくなりました。自動分注機をメーカと開発したからです。共同開発相手はいまPCR自動検査機で有名になったPSS社です。田島社長仕事でよく存じ上げています。コンタミを起こさないところがPSS社の分注システムの特徴です。
単純作業である分注作業の自動化でおおよそ100人ほどの仕事が消滅しています。
データの入力作業でも100人を超えるキーパンチャーがトリプルチェック体制で仕事してましたが、これはバーコードの採用で、ゼロになりました。分注もデータ入力も精度はアップしています。
結石前処理ロボットは精工舎の精密アームロボットを採用して自社開発、これも生産性が10倍以上になっています。試料を掻き出すブレードの形状を決めるのに、50タイプ試作し片っ端から試しました。
細胞性免疫部では検査機械からアウトプットされたカラーの紙を報告書に張り付ける作業が発生していましたが、DECのミニコンを間にかませることで、データ処理は自動化されてます。1990年ころのことです。ここもその作業は消滅しています。
世界初、紙フィルター方式の液体シンチレーションカウンターを導入することで生産性は10倍以上、スペースも数分の一になってます。
さまざまな検査がRI法から、精度が3桁高い酵素法へ切り替わってます。これもメーカとの大型検査機器の共同開発でなされています。
生産性はそれぞれ飛躍的にアップしていますが、どれもリモートワークになったものはありません。
検査項目は1990年当時で300ね0項目、それらも大半が検査方法が変わって、変わる都度、標準作業手順書が改定されているでしょう。そういうシステムが1990年ころに出来上がっています。
世界一の臨床検査ラボではありますが、検査項目は多いし、それらを1年間でリモートワークに半分でも変えることは不可能です。

本社業務も経営統合システムを1984年から3年かけて開発しています。精度は飛躍的にアップしましたが、リモートワークにはなっていません。時代の要求水準が年々上がりますから、定期的に性能アップがおこなわれているのでしょう。本社部門についてはリモートワーク7割は可能だと思います。要らない社員が3割くらいでるでしょうね。

リモートワークで思いだした同僚がいます。K藤ですが、かれはSRLをやめて健康関連事業で、在宅方式で事業化を成し遂げました。1992年ころの話です。厚生省から補助金いただいてチャレンジしてました。東大受験の年に東大安田講堂事件が起き、入試が中止、やむなく中大法学部へ。彼は苦労人ですから、ものごとがよくわかっていました。事業化に成功すると、事業が経営コンサルタント業務へ変質し始めました。それで、事業を在宅で仕事していた数人に営業権譲渡し、整理して2か月後に癌であることがわかり、半年ぐらいで逝ってしまいました。優秀な男でした。奥さんは東大理3.
苦労は人しばしばを鍛えます。必要のない苦労もありますがね。
西村大臣はいま苦労し始めたのかもしれません。(笑)
by ebisu (2020-07-30 16:04) 

ebisu

実際に、どれだけの企業が要請に応じたのか、マスコミが追跡取材してくれたら、ありがたい。
西村大臣にはとってもいい勉強になります。
by ebisu (2020-07-30 16:08) 

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