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#4294 「新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ 7/17(金) 5:01配信」July 21, 2020 [35.1 COVID-19]

 国際医療福祉大学教授の高橋泰先生が雑誌「東洋経済」に標記の論考記事を書いている。
*https://news.yahoo.co.jp/articles/a18ed96b34b09c3f1fa8e254e1664f747b3c1839?page=1

 西浦教授の42万人死亡シミュレーションは、いくらまってもその前提条件が明らかにされなかった。あのシミュレーションが間違いであったことは明らかだが、西浦氏はなぜ間違えたのか、自ら明らかにする必要がある。
 3月の3週間ほどのデータでカーブフィッティングすれば、指数関数式が出てくるが、その結果と西浦シミュレーションはよく似ていた。しかし7月には感染者が東京都の人口を上回る。弊ブログで一度とりあげた。まさか、そんな杜撰なシミュレーションではないだろうから、だからこそ、西浦モデルの前提条件を明らかにすべきなのだ。過去のインフルエンザデータを基にしたシミュレーションではなかったのか。

 高橋教授のシミュレーションは前提条件を明らかにしつつ、現実とシミュレーションの結果を突合しながら、妥当な前提条件を探っていくものだ。「感染7段階モデル」が高橋教授のシミュレーションの骨格である。
 インフルエンザとCOVID-19には大きな違いがある。

 要点を引用する。
新型コロナウイルスは、初期から中盤までは、暴露力(体内に入り込む力)は強いが、伝染力と毒性は弱く、かかっても多くの場合は無症状か風邪の症状程度で終わるおとなしいウイルスである。しかし、1万~2.5万人に1人程度という非常に低い確率ではあるが、サイトカイン・ストームや血栓形成という状況を引き起こし、肺を中心に多臓器の重篤な障害により、高齢者を中心に罹患者を死に至らせてしまう。
 
このウイルスの性質の特徴は、自身が繁殖するために人体に発見されないように毒性が弱くなっていることだ。したがって、一定量増殖しないと人体の側に対抗するための抗体ができない。そしてまれに宿主となる人体の免疫を狂わせ殺してしまうこともある。
 
病原体が体内に入ると、まず貪食細胞(マクロファージ)などを中心とする自然免疫が働く。次に数日かかって獲得免疫が動き出し、抗体ができる。…ンフルエンザの場合は、ウイルス自体の毒性が強く、すぐに、鼻汁、咳、筋肉痛、熱と明らかな症状が出る。暴れまくるので、生体(人の体)はすぐに抗体、いわば軍隊の発動を命令し、発症後2日~1週間で獲得免疫が立ち上がり、抗体ができてくる。よって、抗体検査を行えば、ほぼ全ケースで「陽性」となる。多くのケースにおいて生体側が獲得免疫で抑え込み、1週間~10日の短期で治癒する。だが、抑え込みに失敗すると肺炎が広がり、死に至ることもある。

私の研究チームはこの現象を、新型コロナは毒性が弱いため、生体が抗体を出すほどの外敵ではなく自然免疫での処理で十分と判断しているのではないかと解釈し、「なかなか獲得免疫が動き出さないが、その間に自然免疫が新型コロナを処理してしまい、治ってしまうことが多い」という仮説を立てた。

こうした仮説で想定した状態が実際に存在するなら、この時期の人は無症状または風邪のような症状であり、自身が新型コロナに感染したという自覚がないうちに治ってしまう。もしこの時期にPCR検査を行えれば、新型コロナは体にいるのでPCR陽性となることもある。一方、まだ抗体はできていないので、抗体検査を行えば当然「陰性」となる。そして、その後、症状が進んで獲得免疫が発動しても新型コロナを抑え込めなかったごく一部の人でサイトカイン・ストームが起きてしまい、死に至ることもある。

まず、国民の少なくとも3割程度がすでに新型コロナの暴露を経験したとみられる。暴露率はいろいろやってみたが、30~45%が妥当だろう。そして、暴露した人の98%がステージ1かステージ2、すなわち無症状か風邪の症状で済む。すなわち自然免疫までで終了する。

日本の死者数が欧米の100分の1であることについて、以下のような3つの要因の差という仮説で試算を試みた


まず、第1に暴露率日本の場合、重症化しやすい「高齢者の暴露率」が低かったのが効いたのではないか。例えば特別養護老人ホームではインフルエンザやノロウイルスの流行する季節は家族の面会も禁じている。これらウイルスに対する対策も取られている。高齢者の外出自粛など自発的な隔離も積極的に行われた。他方、海外では介護施設や老人ホームのクラスター化による死者数が多い。「高齢者の暴露率」は日本が10%、欧米が40%と設定してみた

第2に、自然免疫力。自然免疫で治る人の比率が欧米より日本人(アジア人)のほうが高く、その結果「軽症以上の発症比率」が低くなるが、抗体陽性率も低くなる。自然免疫力(特に細胞性免疫)の強化にBCGの日本株とロシア株が関与した可能性は高いとみている


「(暴露した人の)軽症以上の発症比率」については、自然免疫力が標準分布と仮定し、シミュレーションの結果を当てはめると、自然免疫で処理できる率が日本人は98%で、対応できないのは2%ということになる。


抗体陽性率から考えると欧米では自然免疫で対応できずしっかり発症する人が、日本よりもはるかに多いと考えられるので、「軽症以上の発症比率」を日本の5倍の10%と想定した

日本と欧米の自然免疫力の差をそれぞれ2%と20%と想定すると、両者の差はわずかに見えるかもしれないが、このわずかな差が欧米と日本の新型コロナ被害の大きな差を生んだ可能性が高い。欧米では感染後、しっかり発症して他の人にうつす、再生産確率が高いため、日本と比べて感染スピードが速く、かつ感染拡大のチェーンが途切れないということになる。


第3は、「発症者死亡率」。日本は欧米に比べて低いと考えられる。その理由としては、欧米人に比べて血栓ができにくいことがある。サイトカイン・ストームが起きても、日本のほうが重症化する可能性が低いと考えられる。「発症者死亡率」は、日本では0~69歳で0.01%、70歳以上では40倍の0.4%だが、欧州は0~69歳で0.05%、70歳以上が2%とした。


他の条件は変わらないという前提で、このような数字を設定すると、10万人当たり日本の死亡者は0.9人、ベルギーの死亡者は82人となり、現在の実態とほぼ一致する。「暴露率、軽症以上の発症比率、発症者死亡率の数字の設定はもちろん仮説的なものであり信頼性は低い。だが、全部の数字を掛けたり足したりして求められる日本の死亡率が、欧米の死亡率の100分の1になる必要があるので、3要因のいずれか、またはすべてにおいて、日本が欧米に大きく勝っていることは間違いない。


死者は最大で3800人、検査ではなく重症化対策を――緊急事態宣言の解除後は「感染者数」、正確には検査でPCR陽性とわかった人の数ですが、増えています。しかし、自然免疫で98%も治るとすれば、とるべき対策は違ってきます


 高橋泰先生の⑧の老人医療や老人介護の実態をつぶさに観察された上でのご意見は頷けます。
 1999年にわたしは首都圏のある300ベッド弱の特例許可老人病院で療養型病床群への転換を図るために、病棟の新築が必要になり、ある方の仲介で常務理事就任の要請を受けていました。当時、3年間の期限付きで手掛けていた帝人との合弁会社の期限通りの立ち上げと黒字化と合弁解消、帝人臨床検査子会社の買収という四つの課題をクリアしたので、要請を受け入れることに決め、16年間仕事したSRLを辞し、10月1日から常務理事として病棟建て替えの仕事をしていました。その病院の顧問医が高橋泰先生でした。看護師やヘルパーさんへ医療の理屈の面からの教育が必要だったからです。K理事長が高橋泰先生を高く評価していました。
 『TAI 高齢者ケアプラン在宅編』(日経BP社)、300頁ほどのB5判サイズの本が本棚にあります。1999年12月に病院内の関係者に配れたものですが、先生の」サインが入っています。2度しかお会いしてません。


TAI 高齢者ケアプラン 在宅編

TAI 高齢者ケアプラン 在宅編

  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 1999/12/03
  • メディア: 単行本
 半年間ほど前から就任要請を受けていました。病院を核にして老健施設やグループホーム、ナースステーションなど、シームレスな老人医療・介護を実現することを考えていました。一箇所で、そうした事業のクラスター(病院・老健施設・グループホーム・ナースステーション事業など)を黒字で経営することができれば、首都圏全体で10か所くらい同型の事業展開を考えていました。
 老人医療の現実をまずはつぶさに観察する必要がありました。死は「怖くない、痛くない、苦しくない」と三つの「ない」、そういう老人医療が目標だと理事長がよく言ってました。「縛らない医療(拘束しない医療)」を口を酸っぱくして、唱えてました。「無理な延命処置はしてはいけない、患者が苦しむだけだから」、そうおっしゃってました。腎機能が停止しているのに点滴で延命すると、しだいに身体が晴れてきます。細胞内の水分が排出できないからです。患者の意識もありませから、訴えることもできない。基本的には、自分で食事がとれなくなったら、人は一月ぐらいで、苦しまずに枯れるように死ぬもの。
 高橋泰先生と深く共鳴するところがあったのでしょう。
 70歳の総婦長が抜き打ちで5病棟全部回ってました。病棟内を回らないと、どんなに講習や教育をしても、「拘束」や薬漬けをやるスタッフがでます。その方が楽だからです。老人医療の現場は看護師さんもヘルパーさんも、仕事はなかなかきつい。梅雨時期から10月半ばまでは、お風呂に入れるのもたいへんな作業です、何せ人数が多いのです。婦長の一人が「お風呂に入れるときは、びしょぬれ、見せられませんよ、汗だくで仕事してます」なんて、笑って言ってました。体力いるのでしょうね。治る見込みのない人たちを看取るのですから、精神的な負荷も大きい。
 厚生省は特例許可老人病院を廃止して療養型への転換を補助金を出してまで迫ったわけですが、数年後には療養型病床群の病院のベッド数を減らす政策に切り換えたのです。医療費の削減のためです。十数年で、20万ベッドほど減少したのだと思います。多くは精神科を標榜する病院になりました。この国の老人医療は50年前に戻ってしまいました。精神科の病院で老人医療は担えません、看護師の配置が足りないからです。薬漬けや「拘束」の看護が日常的に行われています。根室には療養型病床は一つもありません。この国の老人医療と介護はこの20年間で、著しく貧困になりました。

 若い人たちに手間をかけずに、食事が出来なくなったら、延命治療を拒否して枯れるように死んでいく老人と、手厚い看護を受けて管につながれて意識がなくなっても、腎機能が停止しかかっていても、点滴されて細胞の水分が排泄できずに身体が腫れて死んでいく老人に分かれるのでしょう。前者を望む老人が多いと思います。自宅で死んでいけるようなシステムが必要です。現状のままで自宅で亡くなれば、多くは検視対象になります。老衰で死んで解剖されたいと思う人はいないと思います。でも、制度が許しません、政治家や国会議員のみなさんは高齢者が多いですから、明日は我が身です、ぜひ(ターミナルケアに)必要な法律を急いで整備していただきたい。

 
<小さい花々>
①庭に咲いている花ですが、名前がわかりません。わかる方がいれば、教えてください。35mmあります。
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②5mmの小さな花です。クローズアップ機能を使いました。
DSCN3706s.jpg

③これも5mmサイズの小さな花です。小さきものはかわいらしい。
DSCN3707s.jpg

④シャクナゲが開花しそうです。正午の気温は19.8度です。
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⑤手前がアジサイ、あと1週間ほどで開花しそうです。この様子だと開いても小さい、剪定すべきなのかな。右奥は菊です。
DSCN3705s.jpg

●天使の歌声:ナターシャ・グジー
https://www.youtube.com/watch?v=0fBS_HEvJXs

●パブロ・カザルス
https://www.youtube.com/watch?v=qKoX01170l0


●ナターシャからのメッセージ 201103 国際医療福祉大学教授の高橋泰先生が雑誌「東洋経済」に標記の論考記事を書いている。



 西浦教授の42万人死亡シミュレーションは、いくらまってもその前提条件が明らかにされなかった。あのシミュレーションが間違いであったことは明らかだが、西浦氏はなぜ間違えたのか、自ら明らかにする必要がある。

 3月の3週間ほどのデータでカーブフィッティングすれば、指数関数式が出てくるが、その結果と西浦シミュレーションはよく似ていた。しかし7月には感染者が東京都の人口を上回る。弊ブログで一度とりあげた。まさか、そんな杜撰なシミュレーションではないだろうから、だからこそ、西浦モデルの前提条件を明らかにすべきなのだ。過去のインフルエンザデータを基にしたシミュレーションではなかったのか。


 高橋教授のシミュレーションは前提条件を明らかにしつつ、現実とシミュレーションの結果を突合しながら、妥当な前提条件を探っていくものだ。「感染7段階モデル」が高橋教授のシミュレーションの骨格である。

 インフルエンザとCOVID-19には大きな違いがある。


 要点を引用する。

①新型コロナウイルスは、初期から中盤までは、暴露力(体内に入り込む力)は強いが、伝染力と毒性は弱く、かかっても多くの場合は無症状か風邪の症状程度で終わるおとなしいウイルスである。しかし、1万~2.5万人に1人程度という非常に低い確率ではあるが、サイトカイン・ストームや血栓形成という状況を引き起こし、肺を中心に多臓器の重篤な障害により、高齢者を中心に罹患者を死に至らせてしまう。

 

②このウイルスの性質の特徴は、自身が繁殖するために人体に発見されないように毒性が弱くなっていることだ。したがって、一定量増殖しないと人体の側に対抗するための抗体ができない。そしてまれに宿主となる人体の免疫を狂わせ殺してしまうこともある。

 

③病原体が体内に入ると、まず貪食細胞(マクロファージ)などを中心とする自然免疫が働く。次に数日かかって獲得免疫が動き出し、抗体ができる。…ンフルエンザの場合は、ウイルス自体の毒性が強く、すぐに、鼻汁、咳、筋肉痛、熱と明らかな症状が出る。暴れまくるので、生体(人の体)はすぐに抗体、いわば軍隊の発動を命令し、発症後2日~1週間で獲得免疫が立ち上がり、抗体ができてくる。よって、抗体検査を行えば、ほぼ全ケースで「陽性」となる。多くのケースにおいて生体側が獲得免疫で抑え込み、1週間~10日の短期で治癒する。だが、抑え込みに失敗すると肺炎が広がり、死に至ることもある。


④私の研究チームはこの現象を、新型コロナは毒性が弱いため、生体が抗体を出すほどの外敵ではなく自然免疫での処理で十分と判断しているのではないかと解釈し、「なかなか獲得免疫が動き出さないが、その間に自然免疫が新型コロナを処理してしまい、治ってしまうことが多い」という仮説を立てた。


⑤こうした仮説で想定した状態が実際に存在するなら、この時期の人は無症状または風邪のような症状であり、自身が新型コロナに感染したという自覚がないうちに治ってしまう。もしこの時期にPCR検査を行えれば、新型コロナは体にいるのでPCR陽性となることもある。一方、まだ抗体はできていないので、抗体検査を行えば当然「陰性」となる。そして、その後、症状が進んで獲得免疫が発動しても新型コロナを抑え込めなかったごく一部の人でサイトカイン・ストームが起きてしまい、死に至ることもある。


⑥まず、国民の少なくとも3割程度がすでに新型コロナの暴露を経験したとみられる。暴露率はいろいろやってみたが、30~45%が妥当だろう。そして、暴露した人の98%がステージ1かステージ2、すなわち無症状か風邪の症状で済む。すなわち自然免疫までで終了する。


⑦日本の死者数が欧米の100分の1であることについて、以下のような3つの要因の差という仮説で試算を試みた。


⑧まず、第1に暴露率。日本の場合、重症化しやすい「高齢者の暴露率」が低かったのが効いたのではないか。例えば特別養護老人ホームではインフルエンザやノロウイルスの流行する季節は家族の面会も禁じている。これらウイルスに対する対策も取られている。高齢者の外出自粛など自発的な隔離も積極的に行われた。他方、海外では介護施設や老人ホームのクラスター化による死者数が多い。「高齢者の暴露率」は日本が10%、欧米が40%と設定してみた。


⑨第2に、自然免疫力。自然免疫で治る人の比率が欧米より日本人(アジア人)のほうが高く、その結果「軽症以上の発症比率」が低くなるが、抗体陽性率も低くなる。自然免疫力(特に細胞性免疫)の強化にBCGの日本株とロシア株が関与した可能性は高いとみている。


⑩「(暴露した人の)軽症以上の発症比率」については、自然免疫力が標準分布と仮定し、シミュレーションの結果を当てはめると、自然免疫で処理できる率が日本人は98%で、対応できないのは2%ということになる。


⑪抗体陽性率から考えると欧米では自然免疫で対応できずしっかり発症する人が、日本よりもはるかに多いと考えられるので、「軽症以上の発症比率」を日本の5倍の10%と想定した。


⑫日本と欧米の自然免疫力の差をそれぞれ2%と20%と想定すると、両者の差はわずかに見えるかもしれないが、このわずかな差が欧米と日本の新型コロナ被害の大きな差を生んだ可能性が高い。欧米では感染後、しっかり発症して他の人にうつす、再生産確率が高いため、日本と比べて感染スピードが速く、かつ感染拡大のチェーンが途切れないということになる。


⑬第3は、「発症者死亡率」。日本は欧米に比べて低いと考えられる。その理由としては、欧米人に比べて血栓ができにくいことがある。サイトカイン・ストームが起きても、日本のほうが重症化する可能性が低いと考えられる。「発症者死亡率」は、日本では0~69歳で0.01%、70歳以上では40倍の0.4%だが、欧州は0~69歳で0.05%、70歳以上が2%とした。


⑭他の条件は変わらないという前提で、このような数字を設定すると、10万人当たり日本の死亡者は0.9人、ベルギーの死亡者は82人となり、現在の実態とほぼ一致する。「暴露率、軽症以上の発症比率、発症者死亡率の数字の設定はもちろん仮説的なものであり信頼性は低い。だが、全部の数字を掛けたり足したりして求められる日本の死亡率が、欧米の死亡率の100分の1になる必要があるので、3要因のいずれか、またはすべてにおいて、日本が欧米に大きく勝っていることは間違いない。


⑮死者は最大で3800人、検査ではなく重症化対策を――緊急事態宣言の解除後は「感染者数」、正確には検査でPCR陽性とわかった人の数ですが、増えています。しかし、自然免疫で98%も治るとすれば、とるべき対策は違ってきます。


 高橋泰先生の⑧の老人医療や老人介護の実態をつぶさに観察された上でのご意見は頷けます。

 1999年にわたしは首都圏のある300ベッド弱の特例許可老人病院で療養型病床群への転換を図るために、病棟の新築が必要になり、ある方の仲介で常務理事就任の要請を受けていました。当時、3年間の期限付きで手掛けていた帝人との合弁会社の期限通りの立ち上げと黒字化と合弁解消、帝人臨床検査子会社の買収という四つの課題をクリアしたので、要請を受け入れることに決め、16年間仕事したSRLを辞し、10月1日から常務理事として病棟建て替えの仕事をしていました。その病院の顧問医が高橋泰先生でした。看護師やヘルパーさんへ医療の理屈の面からの教育が必要だったからです。K理事長が高橋泰先生を高く評価していました。

 『TAI 高齢者ケアプラン在宅編』(日経BP社)、300頁ほどのB5判サイズの本が本棚にあります。1999年12月に病院内の関係者に配れたものですが、先生の」サインが入っています。2度しかお会いしてません。



TAI 高齢者ケアプラン 在宅編


出版社/メーカー: 日経BP

発売日: 1999/12/03

メディア: 単行本


 半年間ほど前から就任要請を受けていました。病院を核にして老健施設やグループホーム、ナースステーションなど、シームレスな老人医療・介護を実現することを考えていました。一箇所で、そうした事業のクラスター(病院・老健施設・グループホーム・ナースステーション事業など)を黒字で経営することができれば、首都圏全体で10か所くらい同型の事業展開を考えていました。

 老人医療の現実をまずはつぶさに観察する必要がありました。死は「怖くない、痛くない、苦しくない」と三つの「ない」、そういう老人医療が目標だと理事長がよく言ってました。「縛らない医療(拘束しない医療)」を口を酸っぱくして、唱えてました。「無理な延命処置はしてはいけない、患者が苦しむだけだから」、そうおっしゃってました。腎機能が停止しているのに点滴で延命すると、しだいに身体が晴れてきます。細胞内の水分が排出できないからです。患者の意識もありませから、訴えることもできない。基本的には、自分で食事がとれなくなったら、人は一月ぐらいで、苦しまずに枯れるように死ぬもの。

 高橋泰先生と深く共鳴するところがあったのでしょう。

 70歳の総婦長が抜き打ちで5病棟全部回ってました。病棟内を回らないと、どんなに講習や教育をしても、「拘束」や薬漬けをやるスタッフがでます。その方が楽だからです。老人医療の現場は看護師さんもヘルパーさんも、仕事はなかなかきつい。梅雨時期から10月半ばまでは、お風呂に入れるのもたいへんな作業です、何せ人数が多いのです。婦長の一人が「お風呂に入れるときは、びしょぬれ、見せられませんよ、汗だくで仕事してます」なんて、笑って言ってました。体力いるのでしょうね。治る見込みのない人たちを看取るのですから、精神的な負荷も大きい。

 厚生省は特例許可老人病院を廃止して療養型への転換を補助金を出してまで迫ったわけですが、数年後には療養型病床群の病院のベッド数を減らす政策に切り換えたのです。医療費の削減のためです。十数年で、20万ベッドほど減少したのだと思います。多くは精神科を標榜する病院になりました。この国の老人医療は50年前に戻ってしまいました。精神科の病院で老人医療は担えません、看護師の配置が足りないからです。薬漬けや「拘束」の看護が日常的に行われています。根室には療養型病床は一つもありません。この国の老人医療と介護はこの20年間で、著しく貧困になりました。


 若い人たちに手間をかけずに、食事が出来なくなったら、延命治療を拒否して枯れるように死んでいく老人と、手厚い看護を受けて管につながれて意識がなくなっても、腎機能が停止しかかっていても、点滴されて細胞の水分が排泄できずに身体が腫れて死んでいく老人に分かれるのでしょう。前者を望む老人が多いと思います。自宅で死んでいけるようなシステムが必要です。現状のままで自宅で亡くなれば、多くは検視対象になります。老衰で死んで解剖されたいと思う人はいないと思います。でも、制度が許しません、政治家や国会議員のみなさんは高齢者が多いですから、明日は我が身です、ぜひ(ターミナルケアに)必要な法律を急いで整備していただきたい。


 

<小さい花々>

①庭に咲いている花ですが、名前がわかりません。わかる方がいれば、教えてください。35mmあります。



②5mmの小さな花です。クローズアップ機能を使いました。



③これも5mmサイズの小さな花です。小さきものはかわいらしい。



④シャクナゲが開花しそうです。正午の気温は19.8度です。



⑤手前がアジサイ、あと1週間ほどで開花しそうです。この様子だと開いても小さい、剪定すべきなのかな。右奥は菊です。



●天使の歌声:ナターシャ・グジー



●パブロ・カザルス



●チェルノブイリ原発事故で被ばくしたナターシャからのメッセージ 20110322
https://www.youtube.com/watch?v=YYbqSr97Op4



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