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#4198 厚労省と医師会だけで医療政策ができる時代ではない Mar.6, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

<最終更新情報>
3/6午後4時半

 マスク不足がテレビ報道を賑わしている。北海道の2か所だけ特別に郵便を使って政府が配布を決めた。メーカーにも増産要請をして、マスクメーカーは24時間体制でフル操業している。それでも一向に必要なところへはいきわたっていないのはなぜか。答えの一つが台湾にある。
 台湾は1995年に健康保険カード(ICカード)を導入している。国民全員がこれをもっており、情報の書き込みができる。このカードをもって小売店に行けば買える。購入履歴はICカードに記録されるので、政府が決めた量以上は買えない。健康保険カードが公平なマスク購入を保障しているのである。こういう医療デジタル・インフラがなければ必要なところへ公平にマスクを流通させることができない。日本にそうした医療デジタル・インフラが欠けているのは30年間厚生労働省が医師会とだけ医療政策を決めてきたからだ
 自動車業界に例えていうと、ガソリンエンジン車にしか興味がなかったということ。時代はいつのまにかハイブリッド車や電気自動車の時代になっている。
 たとえば、創薬はとっくに分子生物学、物理学、化学、そしてシステムサイエンスの複合分野になっているから、それぞれの分野の専門家が新薬開発にしのぎを削っている。新型感染症が現れれば分子モデリングシステムで解析がなされ、その分子構造上の特徴が明らかになる。とっくにそういう時代なのだが、医療行政は、厚生労働省と医師会という旧態依然のスキームからいまだに脱することができない、時代遅れ。

 重要な医療デジタル・インフラに一つに臨床検査項目コードの標準化があったが、これは臨床検査大手6社と臨床病理学会(現・日本検査医学会)の産学協同プロジェクトの五年間の検討作業を経て1993年ころに日本標準臨床検査項目コードが制定され、それ以来全国の医療機関で使われている。これがあることで、保険点数が決まればコード管理事務局のあるSRLで登録するだけで、全国の病院やクリニックの医療システムにインターネットを通して保険点数とコードの取り込み・登録ができる。だから、翌日から、全国の病院やクリニックで民間検査センターへ検査依頼が出せるのである。このプロジェクトは産学協同プロジェクトとして1987年にスタートさせたものだが、重要な医療デジタル・インフラであるにもかかわらず、厚生省は関与していない。産学協同プロジェクトの検討作業に厚生省は不要だったし、実質的な日本標準臨床検査項目コードが成立して、全国の医療システムに組み込まれても、一向に関心を示さなかった。厚労省も医師会も医療デジタル・インフラの整備に関心がないようにみえる

 おかしなことが起きている。今日(3/6)から、新型コロナPCR検査が保険適用になると政府が公表したが、実質的にできないことになっているようだ。仕組みが、専門外来でないと受け付けられないようになっている。クリニックで「発熱外来」を時間を分けて設定しても、検査外注できないのである。3/5の「明日から保険摘要、ドクターの判断で検査できるようになる」との安倍総理の発表は、これでは嘘ではないか?しかも、病院で検査する場合と民間検査センターに検査依頼する場合では保険点数に500点(金額では5000円)の差がある。これでは病院にPCR検査装置があり、検査技術者のいるところしかできない。クリニックではやりようがないから、禁止しているのと変わらないこれだけ民間検査センターでの検査を阻止したいというのは何か特別な事情がなければあり得ないことだ。なにがあるのか説明をしてもらいたい
 価格は民間検査センターへ外注する場合は18000円である。病院内でやる場合は13000円。3割負担なら5400円あるい3900円が自己負担分。RNAウィルスの処理はむずかしいのだろうか、ほかのPCR検査に比べてずいぶん高い設定である。検査コストを考えたら、半額程度で十分な気がする。
*保険点数に関するニュース
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/「気軽に検査できる」は誤解-検体採取、専門病院のみ-新型肺炎きょう保険適用/ar-BB10O1fp?ocid=spartanntp
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医師が必要と判断すれば保健所を通さずに可能に。ただ感染を防ぐため、身近な診療所ではなく、感染防護が整った専門外来の病院でしか受けられない。兵庫県の担当者は「かかりつけ医で誰でも検査が受けられるとの誤解を与えている」と政府の説明不足などによる混乱を懸念する。…全国に約860ある「帰国者・接触者外来」など対策が整った病院が担う。従来通り、住民は各地の「帰国者・接触者相談センター」に連絡する必要があ
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**PCR検査の保険点数事例
https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_2_3_1_1_6/d023.html

 病院から民間検査センターへ検査がだされると検査数が増えるから感染者数が急伸する、それを恐れてこんな姑息なことをしているわけではあるまいが、東京オリンピックとのかかわりが取りざたされている。ちゃんと説明してもらいたい。
 検査対象が増えれば、実際の感染者が増えたのか、それとも今まで検査していなかった人たちが一斉に検査したので急増したのかがおそらくわからないことになる。


 それで思い出すのはHIV検査である。1988年ころSRL八王子ラボのウィルス部のHIV検査室(BSL-3)ではスクリーニング検査で陽性になった検体をウエスタンブロット法で確認検査をして、毎日1-2検体が陽性、年間ではおよそ500検体が陽性だった。
 厚生省ではエイズ・サーベイランス委員会を設置して医者から感染者数の報告を求めて集計していた。88年のデータを見ると23人である。その後、80⇒66⇒442⇒277人と増えていく。グラフの載っているサイトをご覧いただきたい。
*https://honkawa2.sakura.ne.jp/2250.html

 HIV感染者はスクリーニング検査で陽性、そしてウエスタンブロット法の確認検査で陽性になれば、患者はほかの病院で検査はしないだろう。1988年時点で厚生労働省発表の20倍の感染者がSRL一社の検査だけで陽性だった。ほかの民間検査センターでも受注していた。数の多いところでは江東微研が多いと当時は聞いていた。業界2位のBMLでも検査していただろう。
 1988年の感染者数が23人だから、数が少ないということで、世界中がエイズ撲滅運動を展開したのに、日本だけがほとんど動かなかった。アジアで患者数が多かったのはタイであるが、エイズ撲滅キャンペーンを大々的にやったので、感染者は目に見えて減っていった。先進国ではHIV感染者は日本だけが増え続けたのである。原因は厚生省のエイズサーベイランス委員会が感染者数を過小評価したためである医者から報告数を集計しただけだったから過小評価になった。実際の感染者数の数十分の一しかつかんでいなかった、そのせいで対策が遅れたと言える。民間検査センターに問い合わせが行われていたら、エイズ撲滅キャンペーンはすぐに行われ、患者の増加はずっと小さい値に抑えられただろうこれも、厚生省と医師会だけで感染者数を集計・公表した結果だ。感染者数を小さく見せたかったとしか思えない。そうして医療政策を誤り、感染者の急増を招いた

 いま形を変えて、新型コロナでも似たようなことが起きつつあるのではないか?
 1か月半公的機関だけで検査してきた。これから病院から民間検査センターに検査外注ができるようになれば、感染者数は急激に増える。いままで検査できなかったケースも医者が必要と認めれば、検査できるようになるからだ。政府は感染者数が増えるのは困るのだろう。オリンピックが控えているからか。
 1か月前から保険点数がついて民間検査センターで検査していたら、いまアウトブレイクのピークがどの程度で、これから1週間どれくらい増えたのかがちゃんとわかったはず。感染者数増大のどのフェーズにいるのか判断がはなはだ難しくなったと言わざるを得ない。ピークアウトがいつなのか統計的に予測がむずかしいものになった。
 いまとなっては手遅れ。実際に感染者数が減りだすのを観測するしかない。
 新型鳥インフルエンザ、SARS騒ぎのときは8か月かかっている、今回の新型コロナウィルス感染の流行も3か月程度ではおさまらないだろう。経済へのダメージが大きい。

 「二度あることは三度ある」、次の新型感染症アウトブレイクのときはHIVと新型コロナウィルス感染症の轍を踏まぬようにしてもらいたい
 健康保険証の光カード化はカルテフォーマット標準化と合わせて検討していたが、1986年時点ではコンピュータの性能と通信速度の問題、通信回線の問題で技術的に無理があった。NTTデータ通信事業本部と2度だけ「臨床診断支援エキスパートシステムと専門医トレーニング用CAIシステム事業化案」をたたき台にして、議論したことがあった。標準臨床検査項目コード制定は10個のプロジェクトの内の一つだった。実現できたのはこれだけ、不甲斐ない。せめて、フォーマットの検討だけでもしておけばよかった。後のことは後から出てくる人に任せたらよかったのだ。日本標準臨床検査項目コードは、世界標準制定のためのたたき台のつもりだった。エキスパートシステムの主戦場は世界市場と考えていた。なぜ、コードの標準化をターゲットの一つに選んだかというと、さまざまな国際標準規格があるが、日本人が提案したものがなかったからだ。そういうことを産業用エレクトロニクス輸入商社に勤務していた6年間に知った。ヒューレットパッカード社の社内規格である汎用バスHPIBはそのまま国際規格GBIBという双方向のインターフェイス・バスになっており、そういう製品が社内にごろごろしていた。機会があったらチャレンジしてみたかった。最大手の臨床検査会社SRLへ上場準備要員として転職したのが1984年、その2年後に大きなチャンスが巡ってきたというわけ。

 咽頭拭い液でやるPCR検査はそこにウィルスが繁殖していれば検出できるが、奥の方なら綿棒にウィルスが付着していないので検査で検出されない、つまり擬陰性となる。検査を受ける人はこのことを良く承知して診察を受けてもらいたい。偽陽性もありうるがこれは確率的にずっとすくないだろう。

*武漢肺炎は「SARS+エイズのようなものだ」遺体解剖した中国の医師が見解
https://www.epochtimes.jp/p/2020/03/52988.html


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