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#4140 高難易度冬季特訓英語教材で質問あり Dec. 6, 2019 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 根室の高校生は冬休みに札幌で開催される大手進学塾(駿台、河合、代ゼミ)の冬季特訓を受講する者が十数人程度いるのではないか。早く申し込んだ生徒にはすでに教材が届いている。
 ある大手進学塾が札幌で開催する冬季特訓英語教材を予習している高2の生徒が、読めない英文があるので、持ってきて質問していいかと訊くので、承知した。昨日もってきたので質問箇所を聞いた。二つ長文問題があった。かれは電子辞書を引いて全文を和訳していたが、一部が訳せないと他も疑心暗鬼であやしくなるのは当然のこと。

 一つ目はアインシュタインの科学者としての知識欲と宗教的信念がテーマになっていた。the creationと書いてあったから、「天地創造」のことだが大文字になっていないので、アインシュタインの宗教がユダヤ教なのかキリスト教なのか、この文面からははっきりしない。大文字で書いていないことからキリスト教ではないなと察しはつく。この段階では、かれがユダヤ人だからユダヤ教だろうとぼかした英文から推測。

(ユダヤ教とキリスト教とイスラム教はみな同じ天地創造神を崇めている。同じ神だがそれぞれの宗教によってその名前が異なる。ユダヤ教では絶対唯一の創造主「ヤハウェ」、キリスト教では「父なる神=造物主」、イスラム教では「アッラー」である。みな天地創造の神である。『古事記』にも天地創造神が三神(アメノミナカヌシノ神、タカミムスビノ神、カミムスビノ神)が現れるが、天地を創造するとすぐに役目を終えたかのように身を隠してしまい、2度と出てこない、そして国生みの神が登場する。)

 気になったので、ネットで検索して確かめたら、アインシュタインはユダヤ教です。書き手はキリスト教徒なのでしょう、だから宗教が違うことをぼかして書いているように感じたのでしょう。


 原爆とは書いていなかったが、婉曲に原爆についてはもちろん触れられていた。「地球上の種speciesを絶滅するような兵器instrument」(speciesは単複同型)というような表現がありました。科学史についての周辺知識があればこのテーマの理解は容易です。そして論説文だから、修辞上はそれほど問題のある文はなかった。最後のほうで第五文型SVOCのOCがCOと逆順になっていたのが例外かな。Oの部分に1行を超えるような長い修飾句か修飾節がついていたから、修辞上逆順にせざるを得ないことは当然です。もちろん、高校教科書程度では(SVCOなんて並びの文は)出てきません、基本を理解するのが高校英語の範疇です。この特訓教材を作成した人は高校英語の範囲を超えたイレギュラーな英文が入っているものばかりを選んだのかな。さすが大手進学塾の最高難易度の英語特訓コース教材!


 もう一つのほうは、解せない問題だった。何かの物語から一部を採録したのだろうが、シーンについての説明がない。登場人物は二人、男と女が一人ずつだ。短い段落は、一緒に暮らしている男女がプラハからローマへ出発するところから始まっていた。男は23年間イタリアに住んでいたらしい。男の視点から一人称で物語が語られていく。いまチェコのプラハで空港にいてローマへの飛行機へ搭乗したところである。女の背景は一切不明。「再び」という語が入っているから女もイタリアに住んでいたことがあるようだが、採録された文には女がいつイタリアにいたのかは書かれていない。どこで知り合ったのかもわからないし、いつから一緒に暮らし始めたのかもそして職業も不明である。

 生徒がわからないという文章を数か所指さした。ざっと読んでもシーンの背景がさっぱりわからないし、時間軸や空間軸からの整理が情報不足で、なぞなぞを解くようなものだった。
 数行にわたるso~that構文が前半部にあった。すこし議論していたら生徒が~の部分が1行を超えていることに気がついた。"so deeply ..., ..., that, ..., ..." というようなso以下とthat節の2か所にに挿入句のはさまった特殊な構造の文である。これほど長いものは滅多に出てこない、でもこういう英文の解説をやるのが、この進学塾の最高難易度の冬季特訓コースの趣旨であるようだ。英検2級程度の英語力ではまるで歯が立たない特殊な構文が並んでいた。

 ああ、Sapiensでも、最近so~that構文で、「~」の長いものがあった、あそこでしっかり学んだから気がついたのだろう。
 進研模試の長文問題ですら、分量は3-5倍はある。こういう短い「長文」でシーンの背景説明のない英文を教材に使うと半分程度はなぞなぞになる、「英語は構文だ」なんてことを言いそうな講師かもしれぬ、いろんな人に教えを請えば自然に目が肥える。

 ハラリの”Sapiens”を読み進んだ方が英語の勉強になると思うが…というのはわたしの感想である。生徒は生徒自身の判断があるし、いま抱えている問題意識で動く。大手進学塾の冬季特訓で、根室の小さな塾でやっているふだんの英語授業のレベルがどれほどか確認してきたらいいのである。指導の角度が違うから、そこから得られるものはある。長文もさまざまなジャンルのものを読むのはよいことなのである。もっとも2000円前後でいくらでもその手の教材は市販のものがある。音読用のCDまでついている。コスパは断然いい。

 昨日は、他塾の特訓教材の質問を処理したので、今日はハラリのSapiensを読むつもりだが、あの様子だと他のトピックスがまだ数個あるだろうから質問があるはず。そういうわけで、昨日と今日と、Sapiens授業には開店休業の札が下りている。しばし道草。

 1年7か月の精読修行を経たこの生徒がいまクリアすべき課題は、Sapiens程度の人類史の専門書を読みながら速度アップすることである。意味の塊(かたまり)単位で頭からどんどん読みこなして、速度を上げることなのだ。Sapiensを読了すれば、大学生になってから医学専門書を読むのに苦労は要らない。自分の専門分野は専門用語を数千覚えてしまえば、じつに簡単なのだ。京大や東大大学院でも数冊医学専門書を読破すれば、英語は合格できる。医学部はどこへ入ってもいい、最終学歴はそこではない。

<余談:宗教と雑然とした本棚とユニークな生徒>
 ユダヤ教とキリスト教とイスラム教の神については、小室直樹の本が面白かったのでamazonから貼り付けておく。高校生や大学生そして知的好奇心の旺盛な社会人に薦めたい。

 線を引きながら読んだが、探してみたが本棚のどこかにうずもれて行方知れず。このごろそういう本が多い。帯広畜産大4年の生徒がいれば、4000冊の蔵書の中からすぐに見つけてくれる…「先生、ここにあるよ」って。あの子は本を読むスピードがとっても大きかった。中学生のころからジャンルを問わぬ濫読をしていた。ゲームの小説、東野圭吾、軽いけど分厚い哲学入門書、グリム童話の元々のバージョンのお話…そして私の本棚から片っ端から取り出して遊んでいた。学校が終わるとすぐに塾に来て9時までいるのだが、なぜか英語と数学の勉強だけは嫌いでやらなかった。いつ部活をやっていたのだろう、吹部はずいぶん練習がきついはずだが、あまり練習には参加してなかった様子。「わたし楽譜読めないから、でも聞けばわかる」とへっちゃら。ピアノは高校生になってから時間がとれなくてやめた。「風と共に去りぬ」やダーレンシャンの小説を原書で読みたいといったので付き合ったが、10ページほどでどちらも投げ出した。型にはまらない性格だったので、放っておいたら、なるようになった。バンドをいくつか掛け持ちして、ひとつはボーカルをやっている。高校時代は吹部でサックスを吹いていた(柏陵中学校でも吹部だった、14日6時半から文化会館で定期演奏会がある)。2年生になって突然写真部へ入部するとどういうわけか部長を引き受けざるを得なくなって、その年に高文連が根室で開催。なんでもこなしてしまう、そしていつの間にか仕切り屋におさまっているという不思議な生徒。書道は「学生チャンピオン」だったかな、そして絵、人物を描かせたら目力のあるセンスのいい画になる。スマホでも絵を描いていた、プロはだしの技術。とんでもなく才能に富んだ生徒。酪農と家畜をテーマに漫画作家になれば、年収1億円以上稼げるだろう。高校時代の同級生にゴルゴ13の斉藤タカオの一番弟子の神田たけしがいる、親戚でもある、付き合いはながいので、漫画家のセンスを見る目は多少はある。主人公の表情が生きている漫画は大きくヒットする。この4年間で酪農と畜産の材料が描き溜まったはず。数年仕事した後、どうするのか。化けるかな、化けずに終わるかな。まったくわからぬ(笑)

日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか

日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか

  • 作者: 小室 直樹
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2000/07/01
  • メディア: 単行本

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