#4102 Sapiens: p.8-9 : Oct. 12, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]
<最終更新情報>
10/15朝8時46分 この本が要求する読解力のレベルに関する具体的な追記
ほぼ一月ぶり、Sapiens 講読授業を再開した。1年半後の大学入試の必要条件になっているので、生徒が英検2級を受験するために、1か月間授業を休止していました。他に3年生が3人受験したそうだから、全員合格してもらいたい。
産業用エレクトロニクスの輸入商社で6年間働いた経験があるが、経理部の女性社員に全商簿記1級と英検2級の人がいた。その経験から判断するのだが、英検2級は仕事でつかえるレベルではない。就職の際の武器になるのは準1級から、現実は厳しい。
(根室高校で過去に全商1級と英検2級の両方を取得した生徒はいません)
この授業は進研模試英語偏差値70以上の生徒が対象、数学が得意で英語が苦手の偏差値40前後の2年生の生徒5人には別メニュー「英語短期特訓授業全10回」を用意してあります。どちらも「学校教育の範囲外の生徒」です。(笑)
学力格差が大きいので、学校で全部の生徒に対応するのは無理です。地域の教育は学校と私塾が分担・協力してやるしかありません。
この生徒との授業は対話形式で進みます。わかり切ったものはパスしますが、意味上重要な個所や受けている句がなにか不明あるいはわかりづらいときはこちらから質問します。基本的には代名詞がなにを受けているかは全部取り上げています。原文の出てくる順に付番しておきます。
次の文を読んで、「英語にも反語表現ってあるんですね」そう言いました。古典文学・文法の知識が応用できている、うれしいね。
<8.1> Who knows how many lost relatives of ours are waiting to be deiscovered in other caves, on the islands, and in other climes?
(失われた多くの親戚が他の洞窟や島や別の気候帯の地域で発見されるのを待ち続けているのを誰が知ろうか、誰も知らない。)
翻訳者の柴田さんはあっさり片付けています。高校生は参考にして、スキルを磨いたらいい。
「他の洞窟や島、地域で発見される日を待っている私たちの失われた親戚たちが、あとどれほど多くいるか知れない」柴田裕之訳
<8.2> The members of some of these species were massive and others were dwarves. Some were fearsome hunters and others meek plantgathers. Some lived only on a single island, while many roamed over continents. But all of them belonged to the genus Homo. They were all human beings.
manyをどのように訳したらいいのかという質問がありました。「some…many…」と関連させて読んでなかったようです。本を読むのに慣れたらなんでもないこと。繰り返しになるので、省略がなされているだけ。
「これらのサピエンスのメンバーのあるものは一つの島だけで暮らし、大部分は大陸をさまよった」
manyには形容詞の他に名詞もあるので、追記しておきます。Genius4版より。
Many are called, but few are chosen.
(招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない)
Do you have many to finish?
(仕上げなければならないことがたくさんあります)
<8.3> The truth is that from about 2 million years ago until around 10,000 years ago, the world was home, at one and the same time, to several human species. And why not? Today there are many species of foxes, bears and pigs. The earth of hundred millennia ago was walked by at least six different species of man. It's our current exclusivity, not that multi-species past, that is peculiar-- and perhaps incriminating. As we will shortly see, we Sapiens have good reason to repress the memory of our siblings.
傍線部の文の解釈が議論になりました。代名詞「it」は何を受けているのかという問題と、文の構造がどうなっているのか、この2点です。二つの問題を解決しないと、意味理解ができません。
前文の主語「The earth of hundred millennia ago」は「our current exclusivity」とイコールの関係にはありません、10万年前と現在ですから当然ですよね。だから候補から外します。では、もうひとつ前の文の主語「 many species of foxes, bears and pigs」はどうでしょう、この名詞句は複数ですからitで受けることはできませんし、やはり「our current exclusivity」とはイコールにはなりませんから、これも候補から外れます。
生徒に質問を投げ返します。
「itはなにを受けていると思う?」
生徒の解釈は「it」は that節だというものです。「not that multi-species past」を受けているという発想は、「it is ...that...」という構文からの発想からでしょう。currentとpastが照応しているらしいことは承知しています。前のページで、someとothers、someとmanyの照応があったからそういうところは気配りが利いています。
結論からいうと、3文前の「The truth」を受けているようにみえます。it の指すものがこんなに離れたのでは、ルール違反、わかりにくい文になってしまうし、事実そうなっています。ここだけは読み手泣かせの悪文と言うしかありません。代名詞を元の語に置き換えて、シンプル・センテンスに書き直します。
①The truth is our current exclusivity. ⇒It is our current exclusivity.
10/15朝8時46分 この本が要求する読解力のレベルに関する具体的な追記
ほぼ一月ぶり、Sapiens 講読授業を再開した。1年半後の大学入試の必要条件になっているので、生徒が英検2級を受験するために、1か月間授業を休止していました。他に3年生が3人受験したそうだから、全員合格してもらいたい。
産業用エレクトロニクスの輸入商社で6年間働いた経験があるが、経理部の女性社員に全商簿記1級と英検2級の人がいた。その経験から判断するのだが、英検2級は仕事でつかえるレベルではない。就職の際の武器になるのは準1級から、現実は厳しい。
(根室高校で過去に全商1級と英検2級の両方を取得した生徒はいません)
この授業は進研模試英語偏差値70以上の生徒が対象、数学が得意で英語が苦手の偏差値40前後の2年生の生徒5人には別メニュー「英語短期特訓授業全10回」を用意してあります。どちらも「学校教育の範囲外の生徒」です。(笑)
学力格差が大きいので、学校で全部の生徒に対応するのは無理です。地域の教育は学校と私塾が分担・協力してやるしかありません。
この生徒との授業は対話形式で進みます。わかり切ったものはパスしますが、意味上重要な個所や受けている句がなにか不明あるいはわかりづらいときはこちらから質問します。基本的には代名詞がなにを受けているかは全部取り上げています。原文の出てくる順に付番しておきます。
次の文を読んで、「英語にも反語表現ってあるんですね」そう言いました。古典文学・文法の知識が応用できている、うれしいね。
<8.1> Who knows how many lost relatives of ours are waiting to be deiscovered in other caves, on the islands, and in other climes?
(失われた多くの親戚が他の洞窟や島や別の気候帯の地域で発見されるのを待ち続けているのを誰が知ろうか、誰も知らない。)
翻訳者の柴田さんはあっさり片付けています。高校生は参考にして、スキルを磨いたらいい。
「他の洞窟や島、地域で発見される日を待っている私たちの失われた親戚たちが、あとどれほど多くいるか知れない」柴田裕之訳
<8.2> The members of some of these species were massive and others were dwarves. Some were fearsome hunters and others meek plantgathers. Some lived only on a single island, while many roamed over continents. But all of them belonged to the genus Homo. They were all human beings.
manyをどのように訳したらいいのかという質問がありました。「some…many…」と関連させて読んでなかったようです。本を読むのに慣れたらなんでもないこと。繰り返しになるので、省略がなされているだけ。
「これらのサピエンスのメンバーのあるものは一つの島だけで暮らし、大部分は大陸をさまよった」
manyには形容詞の他に名詞もあるので、追記しておきます。Genius4版より。
Many are called, but few are chosen.
(招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない)
Do you have many to finish?
(仕上げなければならないことがたくさんあります)
<8.3> The truth is that from about 2 million years ago until around 10,000 years ago, the world was home, at one and the same time, to several human species. And why not? Today there are many species of foxes, bears and pigs. The earth of hundred millennia ago was walked by at least six different species of man. It's our current exclusivity, not that multi-species past, that is peculiar-- and perhaps incriminating. As we will shortly see, we Sapiens have good reason to repress the memory of our siblings.
傍線部の文の解釈が議論になりました。代名詞「it」は何を受けているのかという問題と、文の構造がどうなっているのか、この2点です。二つの問題を解決しないと、意味理解ができません。
前文の主語「The earth of hundred millennia ago」は「our current exclusivity」とイコールの関係にはありません、10万年前と現在ですから当然ですよね。だから候補から外します。では、もうひとつ前の文の主語「 many species of foxes, bears and pigs」はどうでしょう、この名詞句は複数ですからitで受けることはできませんし、やはり「our current exclusivity」とはイコールにはなりませんから、これも候補から外れます。
生徒に質問を投げ返します。
「itはなにを受けていると思う?」
生徒の解釈は「it」は that節だというものです。「not that multi-species past」を受けているという発想は、「it is ...that...」という構文からの発想からでしょう。currentとpastが照応しているらしいことは承知しています。前のページで、someとothers、someとmanyの照応があったからそういうところは気配りが利いています。
結論からいうと、3文前の「The truth」を受けているようにみえます。it の指すものがこんなに離れたのでは、ルール違反、わかりにくい文になってしまうし、事実そうなっています。ここだけは読み手泣かせの悪文と言うしかありません。代名詞を元の語に置き換えて、シンプル・センテンスに書き直します。
①The truth is our current exclusivity. ⇒It is our current exclusivity.
② not multi-species past.
③that is peculiar
④and (that is) perhaps incriminating (us).
③that is peculiar
④and (that is) perhaps incriminating (us).
シンプル・センテンスに書き換えたら、意味が簡単につかめます。
● 真実はわたしたちしか現存していないこと
● 複数の種が共存していた過去ではなくて現在のわたしたちしか存在していないという状況
● わたしたちしか現存していないということが特異である
● 真実はおそらく私たちを有罪にする
真実には定冠詞 the がついています。200万年前から10万年前まで存在した複数のホモ属が、現在ホモ・サピエンスしか存在していない、そしてそれはホモ・サピエンスが他のホモ属の種を絶滅に追いやったからだということ、それが人類史の真実です。
①の「our current exclusivity」と②の「not multi-species past」は同格、言い換えです。③の「that」は「our current exclusivity」を指していますから、関係代名詞の非制限用法、「that」は関係代名詞です。
もっと簡単にすると…
The truth is A, not B. 「真実はBではなくてAということ」
「真実は複数の種が存在した過去にはなくて、現在の状況、すなわちヒト(Homo)属がサピエンス種しか存在していないということにある。そしてそれが特異なのである。ヒト属はサピエンス種しか現存していないという事実によってわたしたちは有罪なのである。」
生成文法知識だけでははっきりしない文ですから、ハラリが展開する論理を精確に読む必要があります。だから、母語で文脈すなわち論理的な展開を読む能力が英文を読む際にも必要です。レベルの高い本を読んでいないと、英文で書かれた論理も追うことができません。語彙が豊かでロジカルな本をたくさん読んでください。ハラリのサピエンスは、新書版レベルの本よりも上のレベルの本の読解力を要求しています。新書版でも経済学説史の大家・内田義彦先生の書かれたもの(岩波新書)は別です。このレベルの本が読めたら十分です。
(少し古くなりますが、顎の強い人は、和辻哲郎『鎖国』『古寺巡礼』『風土』なども読んでみたらいかがでしょう。中3の生徒が今日、『鎖国』をひっぱりだして、音読してました。もちろんすぐにギブアップです。『古寺巡礼』は読みやすいが、『風土』は難易度が上がります。)
生徒の理解には違和感があったので聞き置き、そして授業が終わってからじっくり考えてみました。④の文は、「ホモ・サピエンスがおそらく有罪である」と主張しています。ホモ・サピエンスが、兄弟姉妹に当たるホモ・デニソワ人やホモ・ルドルフェンシス人やネアンデルタール人などを絶滅に追いやった犯人ではないか。だから、有罪だということ。現在進行形で書かれていることにも注意。論理的にそうなるという意を含んでいます。論理は「ホモ・サピエンスがホモ属の他の種を絶滅に追いやった犯人として有罪である」という結論へ向かって進行中だということ。
どうやら翻訳者の柴田氏は「it」が何を受けているのか突き止めていないようです。訳文にそれが現れています、主語がない。わからないところはこういう風に上手に逃げてしまうのも、翻訳技術(?)です。だれにでもわからないところはどこかに出てきます。(笑)
翻訳者の柴田氏はスマートに処理して簡潔な訳文を提示してくれています。訳文には多少問題(誤訳)がありますが、日本語としてスムーズで美しい。わたしには許容範囲です。訳文にはやっかいな主語が抜けています。
「複数の種が存在した過去ではなく、わたしたちしかいない現在が特異なのであり、ことによると、わたしたちが犯した罪の証なのかもしれない。」柴田裕之訳
-------------------------------------
<Mar. 8, 2021追記>
分裂文との指摘が投稿欄でありました。なるほどその通りですので、訂正します。
本棚にある本を数冊当たってみましたら、分裂文(cleft sentences)についてはSWANのPractical English Usageの解説がわかりやすいので、そこから引用して解説します。英作文上とっても重要な知識ですから、しっかり勉強して利用の仕方を会得してください。
<Mar. 8, 2021追記>
分裂文との指摘が投稿欄でありました。なるほどその通りですので、訂正します。
本棚にある本を数冊当たってみましたら、分裂文(cleft sentences)についてはSWANのPractical English Usageの解説がわかりやすいので、そこから引用して解説します。英作文上とっても重要な知識ですから、しっかり勉強して利用の仕方を会得してください。
131 clef tsentences (2): it was my secretary who …
We can use preparatory it in cleftsentences. The words to be emphasizee are usually joined to the relative clause by that.
(分裂文ではitを文頭に置く。強調される語句は通常that(関係節)によって接続される。)
元の文: My secretary sent the bill to Mr Harding yesterday.
(秘書は昨日ハーディング氏へ請求書を送った)
分裂文:次の4種類の分裂文が書けます。
①It was my secretary that sent the bill to Mr Harding yesterday.
(not somebody else)
②It was the bill that my secretary sent to Mr Harding yesterday.
(not something else)
③It was Mr. Harding that my secretary sent the bill to yesterday.
(not to somebody else)
④It was yesterday that my secretary sent the bill to Mr. Harding.
(not another day)
強調のために分裂文の形式をとります。イタリックが強調部分です。
さて、ハラリの問題の文をもう一度見ます。
It's our current exclusivity, not that multi-species past, that is peculiar-- and perhaps incriminating.
枝葉の部分を落とすと
分裂文: It's our current exclusivity that is peculiar.
元の文: Our current exclusivity is peculiar.(わたしたちだけいまいるということが特別なことなのだ)
We can use preparatory it in cleftsentences. The words to be emphasizee are usually joined to the relative clause by that.
(分裂文ではitを文頭に置く。強調される語句は通常that(関係節)によって接続される。)
元の文: My secretary sent the bill to Mr Harding yesterday.
(秘書は昨日ハーディング氏へ請求書を送った)
分裂文:次の4種類の分裂文が書けます。
①It was my secretary that sent the bill to Mr Harding yesterday.
(not somebody else)
②It was the bill that my secretary sent to Mr Harding yesterday.
(not something else)
③It was Mr. Harding that my secretary sent the bill to yesterday.
(not to somebody else)
④It was yesterday that my secretary sent the bill to Mr. Harding.
(not another day)
強調のために分裂文の形式をとります。イタリックが強調部分です。
さて、ハラリの問題の文をもう一度見ます。
It's our current exclusivity, not that multi-species past, that is peculiar-- and perhaps incriminating.
枝葉の部分を落とすと
分裂文: It's our current exclusivity that is peculiar.
元の文: Our current exclusivity is peculiar.(わたしたちだけいまいるということが特別なことなのだ)
「特殊なのは、かの複数の種が存在した過去ではなく、わたしたちのみがいま存在しているということなのだ、そしておそらくは他の種を絶滅させたのである。」
わたしの和訳はitの解釈が違っていました。itは分裂文の形にするために前置されたもの。
目の前に辞書と一緒にM.Swanの本を置いてあったのですが、cleft sentenceの項は引いたことがありませんでした。なにか問題が起きるたびに勉強です、いい機会でした。
clef tsentences (2) を紹介しましたが、itを前置しないclef tsentences (1)がありますので、英作文の観点から、分裂文を別項で採り上げたいと思います。
ハンドルネームaさん、投稿どうもありがとう。
Practical English Usage (Practical English Usage, Third Edition)
- 作者: Swan, Michael
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr
- 発売日: 2005/07/07
- メディア: ペーパーバック
2017年に第4版が出ています。購入されるなら最新版のそちらをどうぞ。
-------------------------------------最後の文の「as」節の訳とそれ以降の主節の訳についても質問がありました。かれの理解では論理的整合性がとれないのだそうです。どこだろう、述べるところを聞いてみました。
<9.1> As we will shortly see, we Sapiens have good reason to repress the memory of our siblings.
siblingsは「兄弟姉妹」、男女の別がないときに選択する用語。日本語では「兄弟」の中に、姉妹も含めて言うことがあります、たとえば「親兄弟」という用法、この中には姉妹も含まれています。
従属節はwillがあるから、これからのことです。生徒はひょっとしてshortlyの意味を勘違いしていたのかもしれません。「すこしして、まもなく」という意味です。このasは「as you know(ご存じの通り)」と同じ用法です。「すぐあとで見るように」と素直に訳せばいいだけ。asは意味が多いから、迷いますね。「we sapiens」は同格です。
「ほどなく見るように、わたしたちサピエンスには格好の理由がある/ 兄弟姉妹たち(ホモ・デニソワ人、ホモ・ルドルフェンシス人、ホモ・エルガステル人、ホモ・ネアンデルタール人)の記憶を抑圧するための」
ホモ・サピエンスは兄弟姉妹たちの記憶を消したいのです。いくつも存在した他のヒト種を絶滅に追いやったのは自分たち自身だからです。そういう理解で論理的整合性は保たれています。もう少し読めば、そのあたりに関する具体的な記述が出てきます。ハラリが前もって「As we will shortly see」と言っているだけです。ページをめくってみたら、「Our Brother's Keepers」(p.14)という節で、サピエンスと他の種との交雑説と交代説を紹介しています。「兄弟たちsiblings」が消えた経緯(いきさつ)を二つの説を紹介しながら推定しています。さて、生徒はこういう説明で納得するかな。
<永久歯と強い顎を持ち合わせた大人でないと読めない本>
この授業を受けている生徒は、1か月間英検2級の受験参考書を2周して、過去問を5年間ほどやって、ストレスを感じていたのだそうです。英検2級はほとんどがネィティブの小学生高学年くらいのレベル。使われる語彙も文の難易度も制限されていますから、文が平易なのです。高校教科書もせいぜいネィティブの中学生レベルの読み物。それに対してハラリのSapiens は大人の読み物です。高校教科書レベルの英文を卒業した人は、英字新聞や少し硬い本、あるいは文学作品を読んだらいい、語彙が広がります。高校3年生で2000語レベル、英字新聞では数万のレベルです。
日本語の読書も、乳歯レベルの読書から永久歯レベルの読み物への橋渡しが学校教育ではできていません。小学生低学年では国語授業が週に9時間もあり、多くの先生たちが時間を持て余しているらしいのです。それなら、大人の読み物を使って、ルビ付きのテクストで週に3時間ほど音読トレーニングをしてもらいたい。漢字の使用に制限のつかないテクストを音読トレーニングすればいい。江戸時代は5歳から「師曰く、巧言令色鮮し仁」なんてやってました。覚えてしまってますから、大人になったら会話の中で自然に使えるんです。そして語彙が数万になれば読んで理解できる本が飛躍的に増えます。
英文も同じですよ。児童書からはじめて、たくさん読んで、どんどんレベルを上げて語彙を増やしたらいい。
永久歯レベルの本、つまり強い顎と硬い歯をもった大人が読む本を自然に読めるようになるのは3%もいない。トレーニングを積めば、たいていの人は英字新聞やハラリの''Sapiens'のような大人の本を読めるようになるはず。
この生徒は、こういう方式(全文書き取り&和文をノートに書く&語彙や文法や修辞法への注記)で30頁も読めば、あとは辞書を引きながら独力で読めるレベルに到達できそうです。60頁辺りから、ノートへの書き取りはやめて速度重視の読書へ切り換えたらいい。100頁を越した当たりでは、授業内容がまるで違っているでしょう。わたしと同程度には読めるようになり、教えることがなくなります、それでいい。そして若い人にはその次のステージがあります。生徒の成長が楽しみです。
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2019-10-12 11:29
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コメント(6)
It's our current exclusivity, not that multi-species past, that is peculiar-- and perhaps incriminating.
は明らかに分裂文です。つまりthat(adj) multi-species pastではなくour current exclusivityのほうが特殊と言っています。
by a (2021-03-08 04:06)
our current exclusivityとthat multi-species pastの対比から前者を「私たちしかいない現在」とした柴田氏の訳は美しくかつ''正確''なものだと思います。まあだれにでもわからないところ(高校英語で学ぶ強調構文)はどこかに出てきます。(笑)
by a (2021-03-08 04:20)
「これらのサピエンスのメンバーのあるものは一つの島だけで暮らし、大部分は大陸をさまよった」とありますがthese speciesはHomo属に属する種を指しています。
by お名前(必須) (2021-03-08 04:34)
aさん
投稿ありがとうございます。
分裂文であるとのご指摘ですが、分裂文の例をネットで引いてみます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86%E8%A3%82%E6%96%87
-------------------------------
①We're looking for Joey.「私たちはジョーイを探している」
を言い換えて、
②Who we're looking for is Joey.「私たちが探しているのはジョーイだ」
というよりも、さらにダミー主語のItを用いて従属節を後に置いた
③It is Joey that we're looking for.
という方が一般的な語順となる。そこで後者を、文が2つの部分に分かれているという特徴から分裂文と呼び、前者を擬似分裂文(ぎじぶんれつぶん、Pseudo-cleft sentence)と呼ぶ。つまり英語では it + be動詞 + X + 従属節 という形が分裂文、 従属節 + be動詞 + X という形が擬似分裂文である。ここでXは名詞句、前置詞句、形容詞句や副詞句である。焦点はXに、もしくは(特に真正の分裂文で)従属節またはその一部に置かれる(発話では強調される)。日本語では分裂文と擬似分裂文に当たる区別は特にない。
-------------------------------
文意の理解に齟齬はないように読みましたが、もしそうでなければそのあたりをもうすこし敷衍していただけるとありがたい。
ところで、wikiで引いた例文ではX部分を強調するために分裂文となっているということで、よろしいでしょうか?
そうすると③の文は①の文に書き換えられるということになりませんか?
わたしと読者のために、①に相当する文への書き換え例を示していただけないでしょうか。
by ebisu (2021-03-08 08:54)
It's our current exclusivity, not that multi-species past, that is peculiar-- and perhaps incriminating.
枝葉を落として単純化すると
①It's our current exclusivity that is peculiar.
⇒②Our current exclusivity is peculiar.(今わたしたちしかいないということが特別なこと)
②をcleft sentenceに書き換えたのが①の文。thatは主格の関係代名詞になっています。
itはthe truthを受けてはいない。
aさん、どうもありがとう。
あとで、本文を訂正しておきます。
by ebisu (2021-03-08 14:03)
aさん
本欄へ訂正を書き込みました。
手持ちの文献をいくつか調べましたが、Micheal SwanのPractical English Usageの解説がわかりやすいので、そちらから引用して解説。
どうもありがとう。
by ebisu (2021-03-08 15:13)