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#4065 Sapiens: page 4&5 Aug. 18, 2019 [44-2 Sapiens]

 高2の生徒と一緒に読む、ハラリの Sapiens. 
 英文をノートに写し、辞書を引いて訳文をノートに書き、それから不明な点や自分の訳に違和感があれば質問するという形式でやっている。福沢諭吉の適塾方式(『福翁自伝』参照)に似ている。手間はかかるが、読む力はつく。
 筆者が英文を書いているときに脳内にイメージしているものを、自分の脳に再現し、それを自分の語彙を使って日本語として違和感のないレベルの文章にしあげる。ときに「大和言葉落とし」を要求している。解説は質問の周辺へも及ぶ。典型的な英文解釈授業であるが、よく読むことはよく書くことに通ずるもので、その辺りへの配慮は解説を読んでいただければわかるだろう。必要最小限の範囲で、生成変形英文法を取り入れた解説になっているので、英文解釈が英作文トレーニングにもなっている。高校で受けた英語授業とは一味違っているはず。
 なお、この授業を受けている生徒は進研模試で、英語の偏差値が75(全国レベルで千人中6位)付近である。目標は進研模試の偏差値を80(千人中1位)オーバーにしたいことと、Z会のテスト問題が進研模試よりも語彙数と英文の難易度が高いので、解けない領域があり何とかしたい。Z会模試英語の偏差値70をコンスタントに超えることを目標にしているようだ。
 480頁あるから、全部やったら高校で英語の教科書30年分くらいの分量がある。塾では半分やったら十分だろう。残りは自分で楽に読めるようになっている。このレベルの本の読解の基礎ができたら、あとは自分で試行錯誤、いつまでも塾に頼っていてはいけない。好奇心の赴くままに、さまざまなジャンルの本を自在に読めるのた理想だ。
 段階的に読み方を変えていくつもりだから、読書速度は徐々にアップしていく。
「はじめちょろちょろなかぱっぱ、赤子泣くとも蓋とるな」…(笑)

 今週、質問のあった個所は四つ、順に取り上げる。

1.Biologists classfy organisms into species. Animals are said to belong to the same species if they tend to mate with each other, giving birth to fertile offsprings.

  アンダーラインを引いた部分について質問があった。
 受験英語では文頭に分詞構文がでてくるが、実際にはこの文のように、あとの方で出てくるのが普通だ。すぐに慣れるよ。

 元々は重文である。句構造を節に書き直すと次のようになる。
 and they give birth to fertile offsprings. 
   ⇒ giving birth to fertile offsprings
(こういう風に1段階で simple sentence から元の文に書き換えられる場合を、'文法工程指数1'と呼ぶ、名前だけ記憶しておいて。文法工程指数が多くなれば、意味がつかみにくい難解な文章になりそうだと思った人は、センスがいい。きっと数学もできる人だろう。「拡張」は数学の学習では頻繁に出てくる。え、知らない、そりゃあいけません。中学と高校の数学の主要テーマは概念の拡張なんです。たとえば、数の概念の拡張、自然数⇒有理数⇒実数⇒複素数、関数概念の拡張、一次関数⇒単純な二次関数⇒一般的な2次関数⇒高次関数⇒さまざまな関数(指数関数や対数関数や三角関数)、斜交座標で定義すれば平面ベクトル、三次元で定義されたら空間ベクトル、多次元になれば線形代数。一連の拡張操作の中で数学が展開されていきます。「拡張」を意識してください。)
 they=animals
 「動物が繁殖力のある子孫を生む」
 主語が同じだから、あとの方の主語が省略され、動詞が分詞に書き換えられて、句構造になるだけ。分詞構文なんて特別なものがあるわけではないのだ。受験参考書にあるような文頭に分詞が来るようなへんてこりんな文章は、新聞や本を読んでいてもほとんど出てこない。新聞ででてくるときは日本人のスタッフ・ライターの書いたもの。受験英語をひきずっている。基本は重文の場合に、あとに出てくる文の主語が前の文の主語と同じなら、あとの方がdeleteされて、動詞が分詞になるだけ。単なる修辞上の、それゆえ統語論上の操作に過ぎないのだ。だから文頭にもって来るというのは、違和感が生じる。主語が不明だからだ。後に続く文を読まないと、主語が何になっているのか判断がつかない。読みにくい文になるということ。本来は後置される分詞句が文頭にくるというのは、倒置であり、強調である。だから受験英語では特殊な例だけやっており、基本の形を教えていないということだ。物事は基本用例を教えてから、それと対比することで例外的な文例を教えるべきだろう。

「生物学者は生き物を「種」に分類する。動物の場合、交尾をする傾向があって、しかも繁殖力のある子孫を残す者どうしが同じ種に属すると言われる。」柴田裕之訳

 冠詞については{a,an,the,Ф}の4つの場合に分けて、だいじなものだけ授業中に確認をしている。Фは無冠詞の場合である。当該名詞句にアンダーラインをつけて例示する。
 Biologists classfy organisms into species. Animals are said to belong to the same species if they tend to mate with each other, giving birth to fertile offsprings.
 複数形の名詞句の場合は複数形でない場合(a,an,the,Ф)はシーンや意味がどのように変化するのか、定冠詞がついている場合は、無冠詞や不定冠詞になるとシーンや意味がどのような影響を受けるのか、重要だと思ったら、生徒に訊ねている。高Ⅲの教科書でトレーニングを積んだから、ずいぶん扱いなれて来た。


2.Horeses and donkeys have a recent common ancestor and share many physical traits.
 trait:(生活・習慣の)特徴
 recentをどのように訳せばいいのかというのが生徒の質問だった。recentはrecentlyで高校生にもなじみのある普通の単語である。O君は文意から「最近」と訳したのでは意味が通らないと思ったのである。だって、辞書に載っているのは、次のような用例だから。
 recent event: 最近の出来事  in recent years: 近年の 
 頭から直訳してかみ砕いてしまおう。
 「馬とロバが共通の近い祖先をもっている、そして(馬とロバは)多くの身体的な特徴を共有している」
 この場合のrecentとは、馬とロバの共通の祖先から、それぞれが分かれた数千万年単位の時間軸で、「最近」と言っているのだ。著者の頭の中のイメージはそういうこと。生徒のイメージは「最近」というのは数日前か、せいぜい数年前のこと。
「馬とロバは比較的最近、共通の祖先から分かれたので、多くの身体的特徴を共有している」柴田訳

  いい質問だった。文意を考えながら、前後関係を考慮に入れて読んでいるからこその質問である。そんなに長いスパンを「最近」とは言わないという語感が、「最近」という訳語を当てはめてしまうことを躊躇(ためら)わせたのだろう。著者のrecentのイメージが、自分の脳内に再現できて、前後関係からも矛盾なければOKだ。

3. But they show little sexual interest in one another.  They will mate if induced to do so -- but their offspring, called mules, are sterile.

  ここでは induced をどう訳せばいいのかわからないということだった。
  mules:ラバ。ウマとロバのあいの子。
  sterile:「繁殖力のない」。
 theyは馬とロバのこと。
 ここでも同一主語だから、あとの方が省略されている。書き直すと。
 They will mate if (they are) induced to mate so.
   induce:する気にさせる
 受け身の文であることとdoがmateだと気がつけばなんてことはなかっただろう。これは高校生にはちょっと難易度が高かった。mateが「番う、交尾する」なんて意味があるの知っている高校生はまずいないだろうね。「友達」しか知らないだろう。たとえば、classmate。動詞で使われているときは、「番う、交尾する」そういう意味になる。文意が通じないときは、辞書を引いて文意にかなう訳語を見つけよう。willのあとにmateが来ているから、動詞だということはすぐにわかるね。mate の動詞の項から訳語を探したらいい。辞書を引く前に、先ず品詞が何か確認すること。
 「馬とロバが番(つが)う気にさせられたら、番うだろう」
 番う気にさせるのは人間である。誰でもいいことだから、わざわざ by someone なんて付け足さない。
 ところで、someone、anyoneなのにno oneだけ間にスペースが入るのはなぜか知っていた?nooneと書いてみたらわかる。oが二つ続いて不細工だろう?美しくないのは嫌なんだよ。somebody、anybody、nobody、こちらはoが重ならないから、切り離す必要がない。比較するとわかるだろう?

「だが、交尾相手として互いに興味を示すことはない。交尾するように仕向けられればそうするが、そこから生まれた子供(ラバ)には繁殖力がない」柴田訳
 
 一箇所気になるところが見つかった。
 their offspring, called mules, are sterile.
 be動詞はareは誤用でisが正しい。mulesと複数形で書いたのでそれに引っ張られたのではないか?
 their offspring, called mules, is sterile.
 では、次のように書いたら、書き手のイメージにどのような違いが生じるのか?
 their offspring
s, called mules, are sterile.

4. Lions, tigers, leopards and jaguars are different spieces within the genus Panthera. Biologists label organisms with two-part Latin name, genus followed by species. Lions, for example , are called Panthera leo, the species leo of the genus Panthera.


  アンダーライン部のところをどう訳せばいいかわからないということだった。こういうときは次の文を読めば、具体的に書いているから、先を読んでから考えろと言っている。後ろは前の文の具体的な説明になっている。高3の英語教科書『Vivid Ⅲ』で何度も出てきて、処理の仕方を教えたはずだが、語彙の難易度が上がっているから、そちらに気をとられて右往左往している。大丈夫、もう少しで慣れる。(笑)
 「例えば、ライオンはパンテラ・レオ、パンテラという属のレオ種」という風にtwo-part Latin nameの具体例がちゃんと書いてある。「二つの部分からなるラテン語の学名」という意味だ。
 高校生物の教科書(東京書籍 Biology)をみても、ラテン語学名の付け方には言及していないから、そういう周辺知識がないと躓くが、それがなくても先を読むだけで何を言っているのか具体的に了解できる。だから、わからない句があったら、読み進むことを勧めたい。
 十数年前に、根室市のほうから野鳥や草花、木の解説資料を作るので、英作文を依頼できないかというような電話依頼があったことがある。和名に関する知識もないし、ラテン語分類学名を記載しなければならないので、専門家でなければできない仕事ですと、お断りしたことがあった。鳥類学、植物学の専門家のお仕事です。

「ライオン、虎、豹、ジャガーそれぞれ種が違うが、みな豹属に入る。生物学者は二つの部分(前の部分が属を表す属名、後ろの部分が主の特徴を表す種小名)からなるラテン語の学名を各生物種につける。たとえば、ライオンは、パンテラ(豹)属のレオ(ライオン)で「パンテラ・レオ」。」柴田訳


  ついでに書いておくけど、ラテン語学名は「科=属=種」というような階層構造になっている。

 ハラリのサピエンスは高3の教科書に比べたら、難易度が高い。語彙と統語法の両方で難易度があがっている。


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Sapiens: A Brief History of Humankind

Sapiens: A Brief History of Humankind

  • 作者: Yuval Noah Harari
  • 出版社/メーカー: Vintage
  • 発売日: 2015/04/30
  • メディア: ペーパーバック
  この本は480頁ある。高3の英語教科書 Vivid Ⅲ は、全部で9章、各章4つのパートで構成されている。本文のページ数は36頁だが、1ページの文字数が半分程度なので、およそ18頁が高校1年間で学ぶ英文量だ。成績上位の生徒にとっては、あまりにもスローでストレスが多い授業になる。
 1・2年生の教科書は文字が大きいので、分量は3年生の教科書よりもずっと少ない。3年間合計してもSapiens 45ページ分に満たない。
 高校の英語授業は分量が少なすぎ、2000語程度の制限された語彙数で難易度を下げてリライトされたものをいくら読んでも、大人の読み物、たとえば英字新聞の一つのジャパンタイムズ記事レベルの読み物ですら独力で読むことはかなわない。このシリーズが、たくさんの文を読みたい高校生や大学生の役に立つことができればうれしい。



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