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#4015 己の欲せざるところは人に施すことなかれ Jun. 12, 2019 [A9. ゆらゆらゆ~らり]

 「人にされて嫌なことはするな」というのはもっともなことです。『論語』には2か所で言及があります。

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原文:仲弓に仁を問う。子曰く、門を出でては大賓を見るが如くし、民を使うには大祭に承えるが如くす。己の欲せざるところは人に施すこと勿れ。邦に在りては怨み無く、家に在りても怨み無し、と。

訳文:孔子の弟子の仲弓が、仁とはどういうことかと質問した。孔子は次のように答えられた。「家の外で他人に逢うときは、その人を自分にとって何よりも大事なお客のように扱わなければならない。人民を公役に使うときには、祭りを執り行うときのように慎み深くしなければならない。自分が他人からしてもらいたくないことは、他人にもしてはならない。そうすれば国の中枢にいても人に恨まれることはなく、家庭にあっても人に恨まれることはない。

原文:子貢説いて曰く、一言にして以て終身これを行うべきもの有りや、と。子曰く、それ恕か。己の欲せざるところは人に施すこと勿れ、と。

訳文:子貢が孔子に質問した。「一言で一生実行していく徳目というものがあるでしょうか。」孔子が答えられた。「それは恕(=思いやり)ということだ。自分のしてもらいたくないことは、人にもしないことだ。」

解説:同じくが『論語』の中に二か所でてくる。ともに仁というものの本質についての問答である。仲弓に対する答えも、思考に対する答えも、仁とは人に対する敬い、慎み深さ、思いやりということである点で共通している。対人関係は、他人への共感、思いやりが基本であるという意味。
 『中国故事成語辞典』三省堂 103頁

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 一昨日のことですが、ある生徒がこんなことを言いました。

S:自分が言われたら嫌だと思うことは人には言わないようにしてきました。でも、それではいけないことがあることを初めて知りました。

 相手の身になって考えると、いま言っても反発が起きるだけ、人間関係が悪くなるだけだと思うと、そのときに言うべきことが言えなくなる。そうこうしているうちに1か月が過ぎ、あえて言わなきゃならないことがあったことに気がついた。言えば怨(うら)まれてもである。それは深い恕(=思いやり)なのだが伝わらない。
 どちらを選択しても、結果として人間関係が壊れてしまう、ただ壊れ方が違うだけ。

 人生は奥深いもので、取り返しがつかないところまで行ってから気がつくことがあなたにもありませんでしたか?
 苦い思いとともに心の襞に畳み込んでいくしかありません。



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コメント 2

tsuguo-kodera

 そうですね。漢文の先生も父も、論語の教えは教えを一言でいえば、仁。忠や義などより重んじていると言っていました。
 私は仕事で創造性開発と新規事業が好み。それが好みの人は稀でした。学校の先生もです。
 私は今になって、仁を重んじ過ぎていた、欲するところを人に施そうとして失敗したと思います。
 お金や地位や勲章は貰う人の気が知れないと父と叔父が話していましましたが、最近は勲章が好きな人が増えました。断ったのはイチローぐらいか。
 人に嫌いなことを押し付け、欲するところを得られるように私はしなかった。地位や出世など考えてもいませんでした。独創的な仕事をしたいから頑張っただけでした。
 そういえば、阪急電車の中吊り広告で30万円でもやりたい研究をしよう、50万円でも面白くない仕事をしない、との年寄りの意見のコピーが批判されました。
 この人も私のような考え方か。いやな世の中です。求むる所第一義、随時随所楽しまざる無し。明治の教育界の重鎮の言葉なのに、今は消えたようです。
 お仕着せでも、お金が貰え、勲章をもらいたいのか。いじましい、妬みばかりの世の中です。戦前以上に人間が劣化した。南無大師金剛金剛遍照。

by tsuguo-kodera (2019-06-12 14:05) 

ebisu

koderaさん

仁とは他人への思いやりや共感ですが、わたしには仁と言ってもピンときません。惻隠の情なら実感を伴って理解できます。

仕事について共感できることが書いてありました。

>独創的な仕事をしたいから頑張っただけでした

この言葉も実感を伴ってよくわかります、わたしもそういうところがありましたから。独創的な仕事は楽しい、それをやっている時間は何物にも代えがたい。

70歳になって感じるのですが、日本人の伝統的な価値観が大きく崩れましたね。
カネ、カネ、カネ、そして「立身出世」を競うつまらない世の中になってしまった。仕事にロマンがない。時代の流れなのでしょう。日本人はどこを目指しているのか?

わたしは、米国が千年遅れで日本を目指しているような気がしています。千年後に日本人が百年前にもっていた品性と道徳レベルに達するのではないかと。(笑)
by ebisu (2019-06-12 17:03) 

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