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#4008 丸山穂高議員発言:佐藤優元外交官の意見 May 27, 2019 [21-1領土返還地元の異見]

 戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」とビザなし訪問団長を問い詰めた丸山穂高議員の発言に対する厳しい批判があちこちから湧き上がっている。今回は元ロシア外交官であった佐藤優氏の意見をとりあげる。彼は在ロシア日本国大使館三等書記官経験があり、ロシアの事情と日本のロシア外交の両方に精通している特別な人間だから、元島民2世二人の異見との間にどれほど距離があるのか、並べてお目にかけたい。

*https://ja.wikipedia.org/wiki/佐藤優_(作家)
**丸山穂高議員の「戦争扇動発言」が、問答無用で許されない理由」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64798

 佐藤優氏の丸山穂高発言批判の要点は、次の5点である。
①外出しようとしたことがロシアの法律では違法
②戦争発言は、ロシアが2次世界大戦で3000万人が亡くなっていることへの無知に基づくものであり、さらにロシアの法律では違法であること
③ロシア警察に日本の国会議員が逮捕されたら外交問題になる
④ビザなし外交が中止になり、北方領土交渉がストップする
⑤ビザなし訪問へこういう人間を送り出す日本への不信を呼ぶ

 箇条書にしてみると、これは駐日ロシア大使館員の主張かあるいは日本外務省職員の発言ではないかと見まがうような内容である。ロシア勤務が長かったからこういう思考パターンが鋳型になっているのだろう。

 佐藤氏の発言で②の数字が事実と大きく異なっているので言及しておく、この個所はロシアの専門家らしくない基礎的なミスである。
ロシアにおいては、3000万人死んだナチスとの戦争がありましたから、戦争扇動に対してはものすごく敏感なんですよ
 諸説あるだろうが、ドイツ兵が50万人、ロシア兵がその2倍だから100万人というのがナチスとの戦争でロシア側にでた犠牲者である。その30倍もの民衆がナチスに殺されたとしたら、前代未聞の大虐殺として歴史に残っただろう。ナチが殺したユダヤ人の数は250万人から600万人まで諸説ある。ロシア人3000万人がナチとの戦いで死んだというのは誇大妄想も度を越していると言わねばならぬ。
 第二次世界大戦全体を通じてもロシア側の犠牲者数は少なくとも870万人、多い説では1500万人である。こんな基本的な情報すら間違っているようでは、彼のロシア情報には疑問符がつく。
 3000万人という途方もない数字はスターリンによって「粛清」された人々を含めているのではないか?毛沢東も文化革命で同胞2000万人を「粛清」したといわれている。ロシアも中国も戦争で死んだ人間よりも、粛清で殺した同胞の数の方がはるかに多いのである。もちろん現在のロシア政府にとっても中国政府にとっても都合が悪い歴史であり情報なのだ。この人の情報や意見は雑で特殊なバイアスがかかっていると見たほうがよさそうである
*https://www.huffingtonpost.jp/2015/06/10/visualization-of-number-who-died-in-wwii_n_7549568.html

 佐藤氏はロシアの事情に詳しく8年間の駐ロ日本大使館員の経験から、いつのまにか発想がロシアの側からのものの見方と日本外務省側のものの見方が大前提になっているように感じた。次の言葉にもそれが端的に現れている。

北方領土に関して、日本は「日本領だ」という立場でしょ。だから北方領土に行くときは、パスポートではなくA4の「身分証明書」と、ビザではなくこれもA4の「挿入紙」という紙をもって、「日本国内での移動」ということにしている。ロシアの方では、そのA4の紙2枚をパスポートとビザであるとみなしているんです。
 
 ビザなし訪問がインチキの上に成り立っていることをからくりごと紹介してみせている、あきれるほかない。 ビザなし訪問が始まった1993年に彼は在ロシア・日本大使館の三等書記官であり、どうやらビザなし交流の枠組みづくりの当事者でもあるようなのだ。語るに落ちる。
*https://ja.wikipedia.org/wiki/北方四島交流事業

 ビザなし訪問そのものが欺瞞である。彼の言うように実質的にはビザ申請をしているのだ、小役人の外務官僚が考え出した方式で、その中の一人が佐藤優氏自身だろう。そして彼のいう「北方領土交渉」とは、日本外務省が日本固有の領土だと主張する北方領土全体の7%にすぎぬ歯舞諸島と色丹島の「2島返還論」が前提である。小利口な外務官僚が自分の器の範囲でものを考えるとこういうことになる。

 フォークランド紛争時の英国首相サッチャーのように領土に関しては妥協しないという方針とそれに基づく外交戦略を描き実行できる人材が外務省にはいなかったのだろう。英国だってそういう外務官僚がいなかったから、サッチャーは周りの反対を押し切って、軍艦を派遣し、長距離爆撃機で爆撃を繰り返してアルゼンチン軍を撃退してフォークランド諸島を取り返している。以後、フォークランド諸島をめぐってアルゼンチンと英国の間に紛争は起きていない。
 ここまで書くと、北方領土問題は元外務省の小役人が論ずることのできるレベルの問題ではないという気がしてくる

 戦争で分捕ったものだから返すつもりはないというのがロシア側の原則論である。そうした事実を日本政府が認めるべきだと繰り返しロシア外務省が公言している。それを認めた上での平和条約締結というのがロシアのシナリオである。こういう原則論に対して日本側がぶつけるべき原則論はどのようなものであるべきか?

 駐ロ・日本国大使館三等書記官であった佐藤優氏は四島返還の原則論を主張するのではなくて、四島返還の戦略が描けないから、最初から7%を占める2島返還でいいという弱気の外交交渉を是としている、彼の主張は日本外務省の外交政策そのものだ。四島返還の戦略が描けないことへの反省もなければ、利権と化しているビザなし訪問、墓参、自由訪問への反省のかけらもない。実質的にはビザのある「ビザなし訪問」、墓まで行けぬ「墓参」、北方領土問題に関しては発言の自由すらない「自由訪問」、あきれてものが言えぬ。北方四島のロシア住民には日本全国招待旅行。もちろん高級クラブへ行ってもオカマバーに行ってもお咎めなし。何をしゃべっても自由。ところがロシア側のこの団体旅行メンバーもかなり固定して利権化しているのかその都度コース変えている。利権は北方領土に関係する日本人とロシア人の双方を汚染し、既得権益化している。

 ⑤についての佐藤氏の主張は、北方領土という基部に触れるような場所、複雑な場所を訪れて「戦争」を軽々に口にするような人間を、議員として選び、送り出している日本人ってどういう人たちなんだろうとこういう見方になる」ということ。北方領土についてよく知りもしない国会議員のビザなし訪問参加は願い下げにしたいのだろう。同じ人間が、国費を使って20回以上も北方領土を訪問するほうが安心できると言わんばかりだ。一人1回当たり30-100万円かかっていることを考えると、ますます利権の色合いが濃くなる。まことに偏った意見であると言わざるを得ない。

 元島民の2世であるわたしは、このような2島返還論に与(くみ)しない。佐藤優氏の一連の発言は30年以上たっても(在ロシア・日本国大使館勤務は1988-95年)いまだに四島一括返還の外交戦略すら提示できぬ彼の能力の限界を示すもの
 根室にもこんな愚にもつかぬ論に惑わされる輩が少なくない。根室市議会は丸山穂高議員の辞職決議案を可決している。ずっと目線を下に落としたまま道庁幹部職員の作成した原稿を記者会見で棒読みした新しい道知事もお仲間の一人。世の中にはさまざまな考えの人あり、そして彩
(いろど)りが豊かになるのだと思えば、枯れ木も山の賑わいでいい。

 さて、佐藤優氏の丸山穂高議員批判を念頭に置きながら、島民2世二人の投稿欄での対話の続きをお読みいただきたい。

*「#4002 地元根室島民2世二人の異見(2):丸山穂高議員発言」
..投稿欄より転載
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-05-22
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 某所から毎度、ロシア人のホームビジットの受け入れをしてほしいと頼まれて何回か受入れしてあげているのに、渡航募集をしておいて行かせてくれないのはどういうことだ!と不審がってる人がいます。
 どんな基準で選んでいるのかわかりませんが、”枠”から外れた人に不選の通知すらないのは失礼ですよね。同じ人が何度も島に渡っているのが不思議でたまりません。

 誰のため、何のための事業なのか、原点に戻って交流内容を見直すべきだと本気で思います。
 日本側が、ロシアの機嫌を損なわないようにとバカみたく気遣って、腫物に障るようにへつらうことが友好親善だとは思いません。領土問題にふれさせないよう対話を封印した時点でロシアの勝ち。

 「今のままがいい」と思っているのは、外務省、北方領土ビジネス関係者や、このモヤモヤした状態に満足している人たち。 悲しいけれど、当事者や地元以外は、返還なんかどうでもいいと思っている人たちが日本には多数います。マスコミが真相を正しく報道しなければ、ニュースやワイドショーで切取り部分だけに焦点が当てられ、今回のように一国会議員をつるし上げる”魔女狩り”で終わってしまうのです。
 プーチンは後出しジャンケン交渉が得意で、日本式外交がロシアに通用すると思ったら大間違い。
 それが一向に成就しない返還運動74年の歴史を物語っています。これじゃ、四島まるごと返還は夢の夢。

 熱くなったけど、冷めました。(笑)

by サリー (2019-05-22 17:36) 
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 サリーさん
 こんばんは。
 熱くなったり冷めたり、忙しいですね(笑)
 根室市議会も道知事も魔女狩りに参戦を表明しましたね。鈴木新知事は原稿に目を落とし棒読みし、ときどき顔をあげて記者の方を見るのみ、まるで他人事でした。

 マスコミも維新の会も自民党も根室市議会も道知事も、どうしてこんなに見事に反応がワンパターンになるのでしょう?同じことを言わなければ自分の存在が危うくなるかのような狂騒ぶり。

 丸山穂高議員を血祭りにあげる一方で、外務省の北方領土関連事業のでたらめな部分には徹底的に目をつぶる。
外務省は訪問団には領土返還の話を禁ずる。その結果、ロシアは元島民たちが来てもだれも領土を返してほしいと言わないから、戦争で負けたのだからあきらめたのだろうと思う。

 ロシアの住民たちに自らの意見も言わず、ビザなし訪問、墓参、自由訪問で外務省のいいなり、現状を変えようとしない元島民や2世こそ、北方領土返還運動の大きな障害と言えるのではないか。

 本気でやる気があったら、外務省が止めようが、返還運動予算をカットされようが、訪問団メンバーリストから外されようが、本音をロシア人に伝えるのが正直な運動の在り方ではないのか。
 それもできなヘタレばかりなら、北方四島は未来永劫ロシアのもの。
 それこそ、戦争でもしない限り、北方領土返還はない。

 わたしが提唱するのは、MIRV(多核弾道ミサイル)を開発配備して解体して見せることで、ロシアに本気を伝えるという具体案。下記の弊ブログをご覧いただきたい。
 マーガレットサッチャーはフォークランド諸島紛争のときに、ただちに軍艦を派遣しさらに長距離爆撃機で爆撃させてます。領土を守ることに妥協はないという、当時の英国首相サッチャーの決断はすさまじい。ああいうガッツが日本の政府にはない。

by ebisu (2019-05-22 22:29)
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#195 すこし過激な北方領土返還論:MIRV開発・組み立て・配備・解体ショー

#1892 映画「マーガレット・サッチャー」と北方領土 Apr. 6, 2012

#2053 マーガレット・サッチャーと領土問題(2) : 北方領土・竹島・尖閣列島 Aug. 14, 2012

*#2054 マーガレット・サッチャーと領土問題(3) : Aug.16, 2012

*#3871 根室市長「いかなる結果でも全面的に支持する」
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-12-02-1


 #3882 羅臼町長の北方領土に対する明快な意見 Dec. 15, 2018 
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15


 #3929 VENONA文書と北方領土:四島一括返還の戦略 Feb. 13, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-02-12-1

 #3993 丸山穂高議員:「戦争で島を取り返す」発言 May 15, 2019
https://
nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-05-15

 #3997 ビザなし訪問随行経験者の異見:丸山穂高議員発言
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-05-18-1



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