#4003 領土を取り返すことは侵略戦争か?May 23, 2019 [21-1領土返還地元の異見]
NHKラジオ第一放送で朝7時半頃から、ニュース解説をしている。その道の専門家が登場するのだが今朝はNHKのキャスターである大越健介キャスターが国会議員丸山穂高氏の発言をとりあげて俎上(そじょう)にのせてあざやかに捌いて見せてくれた。
*大越健介キャスター
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%B6%8A%E5%81%A5%E4%BB%8B
丸山穂高議員の問題発言を再掲する。
「「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」とビザなし訪問で、団長の引揚者に繰り返し質問したと騒がれている。」
NHKの大越さんはその後の丸谷発言(言論の自由を守るために辞職しない)を、これは問題のすり替えだとなじった。辞職するしないは丸山議員自身の問題ではなくて、衆議院の問題だと。議員本人の問題であることは当たり前だと思うのだが、たしかに衆議院の問題という面もあるだろう。この辺りまでは許容できるが、そこから先を受け入れられる人はどれほどいるのだろう。大越キャスターは、丸山穂高議員の発言は侵略戦争で北方領土を回復するというもので、国会議員としてあるまじき発言、憲法で侵略戦争は禁じられていると述べた。
*大越健介キャスター
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%B6%8A%E5%81%A5%E4%BB%8B
丸山穂高議員の問題発言を再掲する。
「「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」とビザなし訪問で、団長の引揚者に繰り返し質問したと騒がれている。」
NHKの大越さんはその後の丸谷発言(言論の自由を守るために辞職しない)を、これは問題のすり替えだとなじった。辞職するしないは丸山議員自身の問題ではなくて、衆議院の問題だと。議員本人の問題であることは当たり前だと思うのだが、たしかに衆議院の問題という面もあるだろう。この辺りまでは許容できるが、そこから先を受け入れられる人はどれほどいるのだろう。大越キャスターは、丸山穂高議員の発言は侵略戦争で北方領土を回復するというもので、国会議員としてあるまじき発言、憲法で侵略戦争は禁じられていると述べた。
本当にそうだろうか?日本政府の公式見解は北方領土は日本固有の領土である。そこを原状回復するために外交交渉を74年間継続してもらちが明かない、その現実を前にして領土回復の手段として戦争という選択肢がありうることを述べる、あるいは問うのはいけないことなのだろうか?
そもそも自国領土を守ることが侵略戦争なら、日本の領土も領海も近隣諸国によって少しずつ削り取られていくだろう。領土領海を守ることすら侵略戦争と定義して一切あらがわないような愚かな国家なら、近隣諸国は武力で日本の領土と領海を侵食し、少しずつ実効支配の範囲を広げていけばいいと思うだろう。まさしくそういう状態になっているのではないのか?
ロシアと北方領土に関して戦争が起きたらそれは侵略戦争なのだろうか?そうではないだろう、ほとんどの国民はそうは思わぬ、自国の領土防衛のための戦争は侵略戦争にあらずというのがものの道理で、その点では憲法学者に異論を唱える者はいないと思う。
しかし、戦争で獲り返せとebisuが言っていると受け取ってもらっては困る。様々な選択肢の一つとして領土領海保全のための戦争がありうることを主張するのは構わないと言っているのみ。ebisuは実際に戦争するのではなくて、多核弾道ミサイル(MIRV)開発・解体によるデモンストレーションという具体的な戦略を提案している。弊ブログ#195をご覧いただきたい。
わたしは、NHKにこのようなポピュリズムに乗っかったニュース解説をしてほしくない。先の大戦中にそういうことをさんざんやって来たではないか。大政翼賛とポピュリズムがNHKに蔓延したときには手遅れなのである。魔女狩り裁判を煽るようなニュース解説を公共放送のNHKだけはしてほしくない。そのために受信料を支払っている。
日本固有の領土だったはずの竹島は韓国の実効支配下にあり、海上保安庁も海上自衛隊も航空自衛隊も陸上自衛隊も一切手出しができない状態になっている。竹島は事実上韓国領である。
尖閣列島は中国が1970年代から領有権を主張しだしているが、中国漁船が大挙して押しかけて尖閣列島を占拠したら、日本政府はどうするのか?北方領土や竹島と同じように相手のしたい放題にさせ、自国の領土を守ることすら侵略戦争といって領土保全を放棄するのだろうか?羹(あつもの)に懲りてなますを吹くようなことになっている。
日本と対照的な領土政策をやってみせてくれたのは英国である。アルゼンチンとのフォークランド紛争で、当時の英国首相サッチャーは敢然と軍艦派遣を決断し、ミサイル発射を許可した。武力を行使することで領土に関しては大英帝国は一歩も引かぬという決意を全世界に向かって表明した。あれ以来、アルゼンチンはフォークランド諸島に手が出せない。
丸山穂高議員の発言はこのように領土・領海防衛に関する深刻な問題提起を含んでいる。そういう問題に目をつむり、丸山議員を魔女裁判にかけることで留飲を下げていいのだろうか?
こういうときは、林子平の『海国兵談』でも読んで、江戸期の人が領土領海防衛についてどのように考えていたのか知ることで、ポピュリズムに流されないようにしたい。
<余談:三国通覧輿地路程全図>
林子平が1785年に作成した「三国通覧輿(ヨ)地路程全図」は上を東にした、一風変わった日本地図である。下側がユーラシア大陸の東端になっており、ロシアや中国からみたら、日本列島がどのようにみえるか、視覚に訴える力をもっている。ロシアと中国が太平洋へと出るには、日本列島はじつに邪魔な存在なのだ。出口を日本列島が覆って、通路を塞いでいる。
ニムオロ塾にはこの「三国通覧輿地路程全図」の複製版が壁に貼ってある。伊能忠敬の日本全図とはかなり精度に違いがあって、とくに北海道の形がいびつになっている。
これは地元の印刷会社根室印刷が2011年のカレンダーの図柄として制作したもので、考古学者でもある根室印刷会長の北構保男先生からいただいた。先生所蔵の地図を複製したもので卓越した印刷技術できれいに仕上げられている。
*https://ja.wikipedia.org/wiki/海国兵談
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2019-05-23 09:08
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