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#3985 根室の中高生の修学旅行を変えよう May 4, 2019 [70.秋田県大館市教育長講演会]

<更新情報>
5/5朝10時45分追記

 理化学研究所のSさんとFB上でさまざまなことを頻繁に議論している。かれは理系の優れた職人である。もうすぐ還暦を迎えようというのに、読書量も衰えを見せない。わたしは本は選んで読む主義なのだが、かれはジャンルを問わずダボハゼ的に片っ端から読む。丈夫な胃をもっているから、消化力が大きいのだろう。真似はできない。(笑)
 理化学研究所で開発したスーパーコンピュータ「京」は膨大な熱量を発するから、それを冷却する空調システムも半端でない。その空調システムはSさんの設計である。Sさんの勤務地は大坂である。Sさんを通じて、教育に関心のある物理の専門家のお二人とFB友になった。大阪博物館のOさんと千葉大学名誉教授のNさんである。Sさんは休日を利用して、小学生から高校生まで対象の理科の実験授業を頻繁にやっている。関西では引っ張りだこの人気者である。このボランティアは人気があり最近は東京でも引き合いがではじめている。えらい人だと思う。

 根室にいてもこうして、大阪と極東の町根室に住む人間がFB上でリアルタイムで議論できるというのはありがたいことだ。

 さて、Sさんが根室の中学校と高校の修学旅行に関して今日面白い提案をしてくれたので紹介したい。議論をそのまま転載する。
 これから紹介するSさんの投稿は弊ブログ「#3983 簡単そうで説明がむずかしい英文例」の「Ⅰ」の部分をFBにコピペしてアップした際のものである。

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<Sさん>
根室の子に限らず、今の児童生徒は「超合理主義」です。必要ないことに努力するのは損だと考えます。たとえば英語。身近な大人たち、誰も使ってないじゃないですか。使わないものを無理して勉強するのは損です。特にならないなら、努力なんてするほうがバカです。
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<ebisu>
 大学もない、中央官庁もない、上場企業の本社もないから、根室の子どもたちは英語を使って仕事をする人を見たことがないのです。
 東京で多摩センターの丸善(日本一の売り場面積)行ったときのことを書きます。中学3年生くらいの女のお子さんを連れたご両親が、一緒に高校生用にリライトされた短編小説のコーナーから次々に取り出して眺めて、数冊買ってました。手に取って英語で書かれた本を選べる、そして様々なレベルのいろんなジャンルの本が数十万冊も在庫として陳列されている、そういう環境があることも大切なことの一つです。こういう格差はそばにいる大人たちが多少は埋めることができます。東京へ行ったときに数冊買ってきて紹介するとか、ネット通販で購入して自分で読んでみてから適当なものを選んで紹介してもいい。
 東京の子どもたちのかなりの割合が、勉強していい大学へ入り、中央官庁のキャリアになったり上場企業へ就職すれば平均よりもずっといい暮らしができることを知っています。両親ともに大卒というのは珍しくありません。周りにそういう人たちがいるか
ら見て知ってます。だから、「合理的な判断」で勉強するのでしょう。
 根室でも親が勤務医であろうと開業医であろうと問わず、医師の子どもたちは医者になるために、合理的な行動をするのが普通のことのように思えます。遊びはほどほどにして熱心に勉強してます。これも合理的な行動の一つです。親の職業が何であれ、医師を志望する子どもたちも同じ数くらいいます。やはり、熱心に勉強しますが、スタートが遅い。知らないからです。東京の標準コースは4年生から受験勉強スタートです。有名私立の中高一貫校へ入学して、レベルの高い授業を受けて、さらに進学塾通いをして受験勉強するというのが共通した考えです。難関大学を目指す根室の子どもたちは、大学受験でそういう子たちと競争することになります。中学生になってからでは全国標準コースからみると3年スタートが遅れているのですが、気がつきません、都会の子たちがどのような仕組みで受験勉強しているか知らないのですから。根室の中高の先生で、そういう仕組みで都会の子たちが勉強していることを知っている人は少ないでしょう。高校1年生になって、7月の進研模試を受けて自分の偏差値を見て、全国レベルでの自分の学力を生まれて初めて確認するのです。遅すぎます。全国偏差値50は全国レベルで真ん中ということですが、根室高校では上位10%未満です。2月の進研模試で数学の偏差値50を超えていたのは1年生の4番までだったかな。市と名前がつく規模の地方自治体で地元から医学部へ進学する者がゼロになったら、地域医療は支えきれぬ、それも急激な人口減少下で学力低下が進む北海道の地域医療の深刻な現実
 根室の子どもたちは、中央官庁のキャリアも、上場企業の本社エリートの年収や暮らしも、まったく知らずに育ち、あまり勉強せずに根室高校を卒業すると7割が都会へ進学し、戻ってきません
 地元企業に大きな魅力がないから、あるいは都会の企業の魅力が大きいから、親も子どもが戻ってくることを望みません。
 昔も今もたしかな学力は世の中を渡っていくための強力な武器です。どうように根室市の未来を切り拓く武器もそこに住む住民の学力でしょう。それを有効に使っている人をほとんど見たことがないというのが根室の子どもたちです。身近にいないから知らないのです。知らないということに子どもたちばかりでなく、親も自覚がありません。学校の先生もほとんどそういうことを伝えません。
 学年2位になったことのある中学生が、野球が好きなので別海高校へ進学すると言いました。たしかにいい指導者はいるし、寮もありのびのび部活を楽しめます。でも釧路高専にはいれる学力レベルなのでそちらを勧めました。高専で上位1/3にはいれば、国立大学へ3年次編入可能です。さらに、そこで上位1/3なら、国立大大学院進学が可能です。
 若いうちは思い切ってチャレンジしたらいいのです。公務員でも、研究機関でも、上場企業でも就職の選択範囲がまるで違ってきます、このように具体的に説明し、選択肢を広げてやったら生徒の選択は違ってきます。現状の進路指導は生徒に目隠ししたままやってるようなものです。

 還暦高校生の高木さん(元釧路市教委教育部長・現釧路高専生:最近新聞で取り上げられてました)と机を並べているかもしれません。(笑)

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<Sさん>
実際に見ないとだめですよね。根室の中学の修学旅行は札幌でしょうか。道庁の上級職の人にあって話を聞く。北大の研究者に会ってくる。札医大の病院を見学してくる。よく知りませんが(笑)札幌に本社を置く上場企業を見学させていただく
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<ebisu>
いいアイデアですね、ブログで採り上げてみます。
残念ですが札幌本社の東証一部上場企業はないでしょうね。そういう企業が数社北海道に現れてもらいたい。わたしが生きているうちなら、ネットを通じてボランティアでお手伝いできます。
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<Sさん>
意外とあるみたいだよ。https://xn--vckya7nx51ik9ay55a3l3a.com/areas/hokkaido

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<ebisu>
ありがとうございます。一つ一つチェックしました、一部上場企業だけで19社リストされてます。北海道電力や雪印メグ、ニトリ、サツドラ、ツルハ、イオン北海道、北洋銀行、北海道瓦斯、進学会ホールディングス…
中学校の修学旅行で行けますね。旅行会社を通じて交渉してもらったらいい。いやそれよりも根室市教委が直談判すべきですね。業者にやらせたのでは熱意がないと思われそうです。
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<Sさん>
その通りです。業者にやらせたら、相手も業者対応しかしてくれません。市教委よりも校長、校長よりも担当の先生、先生よりも生徒に交渉させたほうが、熱意が伝わり、より実現性が高まります。まあ、生徒や先生に熱意があればの話ですけどね。最初から全市で実施するのではなく、面白そう、やってみたい、という学校が一つあればいい。やってみてよければ、それを周りに伝えていく。でも決して「定例化」しない。見学させてもらう方に熱がないと、相手にとっては迷惑でしかない行事になってしまいますから
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<5/5朝9:45追記>
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<ebisu>
そうだよね、企業側にとっては迷惑以外の何物でもありません。
貴重な提案ありがとうございます。わたしの投稿の一部をカットしてアップしました。
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<Sさん>
とはいえ、最初から生徒にやらせるのはよろしくない。「やり方」がわからないから、物怖じしてしまう。交渉も「技術」ですから、技術を習得する過程も大事です。技術がないと、人は自信を持てずおどおどしてしまいますから。まずは校長、担当の先生からでしょう。校長、先生が交渉の仕方を生徒に示し、模擬練習をさせ、それからアポどりする。もちろん、校長、先生に情熱があっての話ですが。
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<Sさん>
工藤先生*は、本を読んでいて「あ、この人を生徒たちに会わせたいな」と思ったら、すぐ電話しちゃうそうです。
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<Sさん>
企業も官庁も、少子高齢化で人材難。優秀で情熱を持った若者の応援は必ずしてくれます
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*工藤先生とは東京麹町中学校の校長先生で、学校改革を積極的に推し進めている方です。
https://www.amazon.co.jp/学校の「当たり前」をやめた。-―-生徒も教師も変わる-公立名門中学校長の改革/dp/4788715945

 
 一部上場企業がどのように動いているのか、会社の制度はどうなっているのか、給与はどれくらいなのか、社員の学歴は職種ごとにどういう構成になっているのか、なんてことは見て質問しなけりゃわからない。ぜひ根室の中学生に一部上場企業の本社オフィスを見せてあげてもらいたい。最新設備の工場見学も周りの福祉環境込みで説明を聞いたらいい。根室の地元企業の後継ぎも生徒の中に入るから、どういう企業を目指したらいいのか、体験的に理解できる。
 根室高校生は東京の一部上場企業を2社くらい見せてもらったらいい。
 ついでに根室はどういう町なのかいいところを宣伝してきたらどうだろう。秋田県大館市の中学校と高校が実際にやっている。ビデオで見たが、大館市の高校生が東京麻布で大館市のいいところを通りすがりの人に説明してた。資料を作ることで自分の町のいいところに気がつくようになるそうだ。郷土愛を育てるには優れた仕掛けである。大館市へいって教育長に訊いてみたらいかが。コピーできたらたいしたものだ。
 よそ様の真似をするには同じくらいの熱意と行動力がいる、種子島への鉄砲伝来も、刀鍛冶の鉄に関する優れた技術と工夫がなければ、1年後にコピーできなかった。

 思い出したことがある、団塊世代の中学校の修学旅行のことだ。新日鉄室蘭の製鉄工場と苫小牧の製紙工場が見学コースに組み込まれていた。よく受け入れてくれていたな。



 
#3867 教育講演会④:修学旅行の巻 Nov. 30, 2018 
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-11-30




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麒麟

地方だと「都会の子供は物心がつくかつかないかの頃から受験競争にさらされるから大変だ」という大人が一定数います。確かに首都圏で中学受験をする場合平日は夜遅くまで、土日も塾通いが当たり前となりますし、高校受験も容赦なく学力で輪切りにされます。
一方で地方ではトップクラスの学校を受験するのでない限り高校受験すら定員割れが珍しくありません。では競争がない結果どうなるか?当たり前ですが、大多数が勉強しません。したとしても定期試験前の付け焼刃の学習が関の山でしょう。そして、高校入学後に初めて気付くのです。進研模試で偏差値50に達していない、大学受験では箸にも棒にもかからない学力しかない、と。稀に奮起する生徒もいるでしょうが、大半は流され、妥協して終わりです。就職活動でも優良企業の書類選考を通ることは困難でしょうし、もっと言えば安定した正規雇用を得ることすら難しいです。ここまできて本当に大変なのはどちらでしょうか?受験競争にすらさらされることのなかった子供が、受験競争よりずっと厳しい社会での競争に耐えられるのでしょうか?
社会のリアルを見せて、受験勉強を頑張る意味を妥協のない言葉で伝え続けること、それが子供が路頭に迷わないために出来る1つの大事な手段だと思います。
by 麒麟 (2019-05-04 23:52) 

ebisu

麒麟さん

仰る通りです。
高校1校体制で定員割れ、受験競争は無し、それが根室の実情。のんびり過ごして高校へ入学してきたら、すっかり緩んで夏休みが終わるまで受験勉強に熱が入らない生徒が多い。5月末に前期中間テストが終わると、学校祭準備が1か月間あります。そのあとは花火大会、港まつり、8月には金刀比羅神社の例大祭と続きます。大半の高校生がろくに勉強しないまま半年が終わってしまう。
7月の高1進研模試で今年は数英ともに平均点が20点を切るかもしれません。A中学校出身者の平均点が高かったので、昨年よりはいい方へ転がってもらいたい。それでも7月の進研模試で全国偏差値が50を超える新入生は10人前後でしょう。特設コース40人の1/4程度だろうと思います。
社会人になってからは、受験勉強よりも熾烈な戦いがまっています。大卒でなければ門前払いの企業、職種は多い。そして偏差値の高い大学の学生から優良な就職先が埋まっていきます。
根室では見ることのできない社会の現実を、一部上場企業を見学させてもらうことで、自分の目で見て、自分の耳で生徒たち自身ががたしかめたらいい。
そういう機会を先生たちが生徒とともに創りあげることができたらすばらしい。

by ebisu (2019-05-05 01:18) 

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