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#3983 簡単そうで説明がむずかしい英文例 May 4, 2019 [49.3 高校英語教科書を読む]

 連休中だが、ニムオロ塾はいつも通りやっている。昨日は高2の生徒が3人と中3の生徒が二人来て勉強していた。熱烈歓迎!

Ⅰ. 早い時間にきた中3の生徒は1時間半ほど一人だったので、英語の教科書の音読トレーニングをやった。子音の発音がほとんど日本語なのでp,t,k,thの発音矯正をした。強弱や抑揚もなしの棒読み。他の生徒のいるときはやりにくいので、早い時間にこられるときにトレーニングする旨伝えた。基本はある程度理解できただろうが、家で百回、二百回とやらないと身につかない。中3になって英語が苦手の生徒はこういうタイプが多い。小学校から英語を習ってきたはずだが、どうしてこんなことになるのか。子音発音の基礎トレーニングが欠落しているのではないか。学習指導要領にもこういう項目がないのだろう。
 この生徒は1月から来ているが数学の成績がアップしたので、そろそろ苦手の英語にチャレンジさせようと、一人だったので、教科書を読ませて、どのあたりに弱点があるのかチェックしたのである。こういう生徒は個別指導でないと教えきれない。中3になって学校で子音の発音のしかたとか、音読トレーニングはしないからだ。高校も同じだから、中高の6年間英語が苦手のまま、興味を完全に失ってしまう。いまなんとかしないといけない、ちょっと焦った。
 この生徒は四月の英語学力テストの点数が学年平均点を少し超えている生徒なのだ。高校1年生でも3割はこういう生徒がいるのではないか、どうやって救うのだろう?1学年50人の学校なら、15人はこういう問題を抱えた生徒がいる。すらすら読めたら、学力テストの点数は40点は楽に超えるだろう。
 B中学校の四月の学力テストの英語の平均点は19.4点(60点満点)で、15点以下が66人中28人(42.4%)いる。C中学校は46人中15人(32.6%)が15点以下である。こういう現実をどのように認識し、どのような対応をとるのだろう。生徒に基礎学力を保障するのは義務教育の重要な責務であるはずだが、それを果たすことはとても手間がかかる。現状は放置されていると言ってよい状態である。子音の発音トレーニングや音読トレーニングなしにはこういう生徒たちの英語の学力向上は望むべくもない。すらすら読めなければ、記憶にも残らないし、英文を書けるようにもならない
 すらすら読めるのが41点以上の得点階層だとすると、BC両校合わせて6人しかいない。112人中たった6人である。北海道の学力テストは東京都に比べて難易度が著しく低い、それでも7割以上の得点層が5%しかいない、泣きたくなるような現実がある。

Ⅱ. 高2の生徒のうち一人は宿題の分数式の難問がわからないと問題プリントをもってきた。分母が通分すると(a-b)(b-c)(c-a)となり、通分してから分子を整理して因数分解すると-(a-b)(b-c)(c-a)となり、答えが-1となる問題だった。通分してから分子の因数分解がやっかいだった。
 思い出しながら問題を書いてみる。

     ab/(b-c)(c-a) + bc/(c-a)(a-b) + ca/(a-b)(b-c)

  通分後の分子の整理は1年生の時にやった因数分解で最後のところででてくる比較的難易度の高いものである。

    c^2 a-ca^2+a^2 b-ab^2+b^2c-bc^2...ばらばらにして
  =(b-c)a^2-(b^2-c^2)a +bc(b-c)…aについて降べきの順に整理
  =(b-c){a^2-(b+c)a+bc}…共通因数(b-c)で括る
  =(b-c)(a-b)(a-c)…(a-c)にマイナスをかけて
  =-(a-b)(b-c)(c-a)

 これで、通分した分母と約分ができて、答えは「-1」となる。
  1年前にやったはずだが、ほとんどの生徒が忘れているだろう。この生徒も忘れていた。2月の進研模試で学年五本の指に入る生徒ですらこうだから、あとは何をかいわんやである。いまこのレベルの難易度の問題をやっておけば、3年生になったときにやるセンターレベル問題集がさほどむずかしくなくなっているだろう。このレベルのプリント問題の2年生への配布は昨年度はなかったから新しい試みの様である。根室高校の数学担当の先生たちも生徒の学力低下を食い止めようと頑張っている様子。
 この生徒はそのあと苦手の英語の文法問題集(塾専用『シリウス英文法Ⅰ』)をやっていた。四月からの生徒だが、すでに高1の文法問題集の25ページ目をやってるから、意欲は高い。苦手意識が高校2年までずっとあった生徒が、こういうふうに意欲的にチャレンジするのは珍しい。やっているところを見ながら、数か所解説した。

Ⅲ. もう一人が教科書の文を写して訳文をつくっていた。おやと思う文を素通りしていたので、質問すると意味が分かっていない。簡単そうに見えるが英語の先生も解説に困るような文だった。

 Singns seem to be easy to make, but there are at lesast three points to think about.

  後段は説明を要しないが、前段はむずかしい。SVCの簡単な文に見えているのだが、そうでもないからseemを外して少し簡単に書き直す。

 Signs are easy to make

  こうすると単純な文に見えるがじつは単純ではない。文頭のsignsは主語に見えるが、もともとはmakeの目的語なのである。わかるように書きなおすからaとbの文を見てもらいたい。
 
a. We make signs.
b.   It is easy.
c.   It <we make signs> is easy. 
      ⇒ It <for us to make signs> is easy. 
      ⇒ It is easy for us to make signs. 
  ⇒ It is easy to make signs. 
d.   Signs are easy to make.

  内面構造はaとbの文であり、表面構造がdの文。これらをつないでいるのが文法変形である。文法変形工程が5段階ある。
 dの文にseemを挿入して元の文ができあがる。

 Signs seems to be easy to make.

  文法工程指数が6である、簡単そうに見えるが解説は簡単ではない。解説はチョムスキーの言語学説、生成変形文法による。解説は高校英語の範囲を超えてしまう。生徒から質問があったら高校の先生はどのように処理するのだろう?高校学習指導要領の範囲ではとても説明できそうもない文法工程指数の高い文なのである。解説はできなくても英文をたくさん読んでいる人は、文脈から適切に意味がとれるものだ。たくさん読めということか。ネイティブなら自然に読める文だから、暗記していい文章である。

 <訳文例>
 「標識をつくるのは簡単なようだが、そこには考慮すべき点がすくなくとも三つある」

<5/8追記>
 連休明けで来た生徒の一人(高2)に、この文を読ませたら、すんなり正解してくれた。意識しないでも文脈から判断して読んでいる。読解力が著しくアップしている。うれしかった。この生徒は英検2級は問題なしだ。


Ⅳ. 英語の「任意の宿題プリント」を2名がもってきていた、トルコのカッパドキアがトピックスとなっている長文問題である。世界遺産に1985年に指定されたと書いてあった。宗教の迫害にあった人々が逃避して岩山に穴居生活をはじめてしだいに地下都市を建設、それが現代にまで続いている。テレビで見たことのある人が少なくないだろう。周辺知識があれば、内容の見当がつくので、英文理解は精度を増す。ところどころ解説しておいた。

 面白い表現を見つけたので、生徒に質問してみた。
 tens of thouzands をどのように訳すのか?最低いくつから最大いくつの範囲なのかと。

 冠詞とともに、こういうところもおろそかにしてはいけない。比較のためにいくつか並べておこう。tens of thousands は幅が広いのである、十数万とも数十万とも訳せる。最初にあげたものはかっきり1万、2番目と3番目は数万である。

 ten of thousand
   ten of thousands
   tens of thousand
   tens of thousands
 
 こういう「遊び」が、文章の理解を深くすると同時に英語学習を楽しくするコツの一つなのかもしれない。おおいに遊べ。

*カッパドキア(観光案内)
https://www.club-t.com/special/abroad/turkey/spot.htm#spot_003

**カッパドキア(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/カッパドキア
 

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