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#3902 市倉宏佑著『特攻の記録 縁路面に座って』(1) :目次 Jan. 23, 2019 [1. 特攻の記録 縁路面に座って]

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<ebisuメモ>
この本は、特攻兵として殉じた第14期学徒動員同期の者たちへの鎮魂の歌であると同時に、軍隊組織就中(なかんずく)海軍組織の実態、そして特攻命令を下し自らは死地へ赴かなかった軍上層部の告発の書でもある。泰然として特攻機で征き、散華した者たちもいる。その精神の在り様には驚かざるを得ない。
きちがいじみた下のものへのイジメは海軍がとくに酷かったようだが、秘密部隊であった落下傘部隊員だったオヤジからも同じ話は聞いている。落下傘部隊の前に通信兵として所属していた部隊のことだ。落下傘部隊にはうるさい先輩がいない、新しく創設された部隊だから。しかも、「命の要らない者集まれ!」という募集のビラの宣伝文句にしびれて「ぱっと散りましょ」と応じ、厳しい審査を経て集められた精鋭ばかりだったから特別扱いだったかもしれない。上官のパラシュートを畳むときだけは緊張したらしい。誰が畳んだのか名前を書いて判を押したから、それが開かなかったら、軍法会議、銃殺ものだと笑っていた。自分のパラシュートを畳むときよりさらに念入りにやらなければならない。
陸軍におけるしごきは具体例を青地でebisuコメントとして入れるつもりだ。オヤジは市倉先生と同じ大正10年生まれである。
下の者から慕われない先輩や上官が多ければ、いや、下の者から理不尽な命令・行為を毎日のようにし続ける先輩や上官が多ければ戦に勝てるはずがないとも書いている。海軍が勝ったのは真珠湾のみ、その後は負け続けた。負け続けた理由を組織の在り様、理不尽さに求めている。自衛隊大丈夫かな?いまでも隊内でそうした行為が隠蔽されてはいないか?戦に強い軍隊はそれなりの規律と高い道徳をもたなければ創りえない。
いまの若い人たちは軍隊の実態を親から聞くということがない、直接聞いたわたしたち団塊の世代が書き残す義務がある。決して昔ばなしではないのだ、似たような組織構造、いや組織病理は程度を変えて繰り返しでてくる。そのことにも触れるだろう。

この本を書くスタンスを先生自身の文章を引用して紹介したい。
イデオロギー解釈は、いずれも自分の好悪利害から特攻の事実のみに注目し、その事態の本質を素通りする。その事態を生きた人間を見過ごしている。… 
何よりも、人間の哀歓の観点に焦点をおいて、搭乗員たちの言葉に接してゆくことにしたい。
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 目次

凡例 ︱︱︱ 006
はじめに ︱︱︱007
 1.海に出て木枯帰るところなし
 2.誓子と特攻隊
 3.一つの伝聞

Ⅰ︱︱︱ 013
 1.搭乗員たち
 2.軍令部の特攻への提言
 3.考察不十分
 4.特攻の死の意味
 5.木枯らしと同じく、搭乗員たちは帰るところはなかったのか
 6.恬   淡   その一

Ⅱ︱︱︱ 037
 1.特攻とは
 2.恬   淡   その二
 3.はっきりと特攻に疑問を抱いていた搭乗員もいる
 4.行きたくない。死にたくない
 5.特攻隊員のニヒルと真実
 6.参謀軍令部の空しさ
 7.北浦空特攻志願
 8.指揮官みずから特攻へ
 9.生きて帰ったもの
 10 .四方中尉の人間宣言
 11 .三座水上偵察機特攻隊の出撃と米駆逐艦モリソンの沈没

2 .特攻志願の仕組み
 13 .〈特攻隊に予備学生を使う〉
 14 .航空隊における特攻隊員の募集
 15 .航空隊における正式の特攻隊募集
 16 .署名について
 17 .特攻の死の感慨
 18 .特攻志願実情、実態
 19 .同僚たち
 20 .〈望〉と〈熱望〉
 21 .第一次の隊員たち
 22 .特攻志願理由
 23 .酒巻一夫の日記
 24 .特攻における諦めと勇気
 25 .特攻も通常化
 26 .搭乗員と参謀との関係
 27 .特攻志願説
 28 .特攻命令
 29 .特攻発令者の心情
 30 .特攻世界と参謀
 31 .特攻隊員の心情
 32 .特攻とは
 33 .特攻員と気持ち
 34 .特攻の心得はこう教えられていた
 35 .特攻に疑問を持っていた隊員もいる

Ⅲ︱︱︱ 101
 1.海兵の予備士官軽蔑
 2.海兵による差別、修正、種々相
 3.宇佐空
 4.ぶん殴られ続ける
 5.罷免
 6.「あの十三期の馬鹿が」
 7.名古屋空の十三期
 8.百里原空における終戦時の混乱
 9.伏竜連判状
 10 .予科練から見た海兵海機
 11 .この殴るの効果
 12 .海兵候補生の着任。予備学生との違い
 13 .「ルーズベルトに貰った桜」
 14 .「軍紀厳正なること大和、武蔵以上」
 15 .落下中の米兵に敬礼
 16 .ある海機卒業者の修正
 17 .殴りの意味
 18 .日本を救う。空虚大言
 19 .米軍の指摘する、日本海軍の欠陥

Ⅳ︱︱︱ 139
 1.離   脱
 2.脱   走
 3.帰還とその後
 4.脱走者と特攻搭乗員
 5.特攻搭乗員の心情   非現実世界と現実世界
 6.両世界非現実化
 7.搭乗員たちに国を救える実感ありや、納得ありや
 8.搭乗員たちの気持ちはさまざまで一義的でない
 9.恬淡の様相
 10 .予備学生と予科練
 11 .残している思い
 12 .一様に納得しているのではない。心残り
 13 .特攻が守ったもの
 14.予備学生は自分の人生の姿勢を顧みる
 15 .前線が近くなると、姿勢が変化してくる
 16 .遺族たち
 17 .芭蕉
 18 .人間の一つの願い
 19 .何故こんな酷い作戦が実行されたか。海軍の貴族主義
 20 .殴ること
 21 .海軍貴族主義の原点
 22 .上級士官の自覚の問題
 23 .敗戦を補う特攻
 24 .海軍近代化
 25 .驕り
 26 .自己矛盾、自己崩壊
 27 .海兵温存
 28 .海軍の栄光と敗北
 29 .これでは、本当の意味で戦争は戦えないのではないか。
    NHKスペシャル「日本海軍400時間の証言」
 30 .問われなかった〈問い〉。特攻の意味
 31 .誓子、命令者、芭蕉

 市倉宏祐一人語り(インタビューにもとづく) ︱︱︱ 177
 編集委員会注 ︱︱︱ 204
 出典比較一覧と年表(編集委員会作成) ︱︱︱ 222
 特攻隊についての参考文献 ︱︱︱ 228
 あとがき ︱︱︱ 231

凡例
 一 原文に明白な誤りや誤植が認められた場合には訂正した。
 二 用字用語は引用文を除いて統一したが、原文を尊重してあえて統一 しない部分もある。
 三 数字は漢数字を原則とした。ただし視覚認識を考慮し、数量を表す 場合や固有名詞はその限りではない。
 四 人名については初出のみゴシック体で表記、略歴を確認できる範囲 で時系列に沿って[ ]内に記載した。
 五 引用の出典は本文中に( )で表示、出版母体は巻末の参考文献に 表記した。
 六 引用文について、原典が正字体・旧仮名づかいのものは新字体・現 代仮名づかいに改めた。
 七 引用文中の〔 〕は引用者による補足をあらわす。
 八 原文に注はないが、編集委員会で注をもうけた。
 九 引用の出典箇所不明、出典の版違いまたは復刻等による頁のずれが ある場合、その他書誌的問題がある場合は、注をつけて補足した。




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ゼロ戦パイロットで、元特攻兵、そして哲学者である市倉宏祐先生が、70歳を過ぎてから書き溜めた遺稿の出版を弟子の伊吹克己教授へ託した。『特攻の記録 縁路面に座って』は貴重な記録でもある。イデオロギーを離れて、特攻兵とは何だったのか読んで共に考えてもらいたい。
この本は非売品なので、関係者以外の目に触れることはほとんどないと思われる。しかし、市倉先生は広く読んでもらいたいと願って原稿をしたため、伊吹さんに後を託した。おそらく苦労の多かった編集期間をへて出版までこぎつけてくれた。わたしもできる範囲で協力したい。不詳の弟子、伊勢敏信、記す。
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  編集委員会代表の伊吹さんから、弊ブログへアップの便のために、PDFファイルが提供された。彼の配慮にこの場を借りて謝意を表します。
 縦書きなのでそれを横書きにするために、若干手を入れてますが、表示形式についてだけで内容については一切手を加えません。

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