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#3841 化学のモルの計算-2 Oct. 19, 2018 [51. 数学のセンス]

 #3832「化学のモルの計算がわからないので教えて」という記事を書いた。たのまれたので問題を50題ほど解いて教えたところまで書いた。ようやく学校の授業がそのあたりに入ったようだが、モルの計算の解説を授業で聴いた1年生の生徒は少し不満顔。
 単位系の説明が計算過程でまったくなされなかった点に不満があったようだ。札幌で開催された河合塾の夏季合宿授業をうけたときには単位も計算式にいれて解説していたという。
「ebisu先生と同じ解説を河合塾の先生がしていたが、高校の先生は単位を計算式に入れないで説明していた、僕は予習していたからわかっていたけど、あれでわかる人いるのかな?」
「河合塾の先生やわたしの説明がことさらいいわけではなくて、当たり前の教え方だよ、受験参考書に載っているふつうのやりかた。単位換算や単位変換を計算式の中に入れずに説明したら難解になるから、根室高校1年生で理解できる生徒はいないと思うよ。君が危惧した通りだろう。」

(この生徒は小6の時から、「距離・時間・速度」の文章題の計算には、表を用いた便利な解法と単位をつけた立式で説明していたので、単位を含めた計算説明に慣れがあったとはいえる。それでも河合塾の夏季合宿の化学の講義だけではモルの概念と他の諸概念との関係や式の展開が呑み込めなかったようす。わたしがちょっとフォローしだけで呑み込めるのは、標準的な生徒よりも格段に理解力が大きい証拠である。だから数学も英語も教えすぎないよう、独力でで道を拓き正解へと辿りつけるように配慮することが多くなる。教えすぎると「ひ弱な学力」に育つ。7月進研模試で3科目総合偏差値が80を少し切ったレベルだから、全道一の進学校である札幌南高校へ編入しても成績上位グループの学力である。
 ニムオロ塾では個別指導をしているから、生徒の学力や学力の段階に応じた解説をする。だから、同じ質問があっても生徒の学力が異なれば説明のしかたも違ってくる。学力の低い生徒には初めの内は十分では足りないので十二分の解説をすることになる。(笑) 学力が伸びてくれば解説は次第に簡略になる、それで理解できるからだ。)

 「単位の換算」は時間を分や秒に換算するというような事柄を指し、「単位変換」は物質量と1モル当たりの分子量を掛けてモルへ変換することをいう。物質量、原子量や分子量、モル、アボガドロ数、体積、密度、溶質、溶液など関係する概念の定義と相互関係、そして計算操作に現れる単位換算や単位変換の仕組みを理解すればモルの役割はよくわかる。
 前回とりあげた「溶液のモル濃度る[mol/L]」を計算する具体例で説明してみる。

<チェック問題3>…p.64より
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 グルコース(分子量180)18gを水に溶かして250mLとした水溶液のモル濃度[mol/L]を少数第2位まで求めよ。

(18g×1mol/180g)÷(250mL×1L/10^3mL)=0.40[mol/L]
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 溶液のモル濃度の単位は[mol/L]で、「溶質÷溶液」が濃度計算の計算式。出発点は物質量の18gであるから、溶質が何molあるか計算するのと、次に溶液が何Lあるか計算しなければならない。これら二つの商が溶液のモル濃度[mol/L]である。

 最初の項は物質量をモルへ変換する操作であることは、単位だけを分離して計算するとすぐに了解できるだろう。「g*(1mol/g)=mol」となり部質量18gが「mol/分子量g」を媒介にしてmolという単位へ変換がなされている。
 第2の項は「mL*(1L/10cm^3)=L」であるから、mLをLへ単位換算したもの。
 これら二つの商で物質量[g]が溶液モル濃度[mol/L]へ単位変換されている。
 要するに、物質量gから出発して溶液のモル濃度mol/Lへ変換するだけの話だ、出発点と到達点を確認すれば、あとはどういう換算系や変換系を間に挟むかという話に還元できる。そういう診方をすれば、モルにかかわる計算で混乱することがなくなるだろう。
(単位換算と単位変換という用語は、モルの説明の便宜のためにebisuがつくりだしたもの)

以下は前回#3832からの引用
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<化学諸概念と単位換算系・単位変換系
のネットワーク構造>

 秒・分・時・日・年への時間単位換算に困難を感じる高校生は少ない、せいぜい1-2割である。これらはどれも時間という概念で括(くく)れるからだ。
 ところが、距離・時間・速さは三つの異なる概念がそれぞれ他の二つの概念の計算式で表すことができる。概念が三種類になっただけで、この分野が苦手という高校生は半数程度はいるだろう。
 そして化学では1mol=6.02×10^3個という関係をベースにして原子量や分子量、そして物質量、体積、物質の密度、溶質と溶液、化学反応式という具合に、6種類の概念のネットワークが形成され、相互に変換系が存在している。3つが6つになって相互関係が生じるから、構造はとっても複雑になる。
 ほとんどの高校生がmolのところで一度は躓(つまず)くのは無理のない話に思える。概念の関係を整理し、計算トレーニングを積んで克服してください。
  「学問に王道なし」
 わからなくなったら基本に戻って学習すれば理解できます。基礎基本トレーニングをないがしろにしないこと。
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<余談:53年前の化学の授業の思い出>
 ebisuは根室高校2年生の時に化学を習った、もう53年も前のことだ。独力で勉強して公認会計士になると中学生の時に決めて大学進学するつもりがなかったのに、なぜかハードカバーの400頁ほどの化学の参考書をもっており、それを読んでいた。公認会計士2次試験科目に「化学」はない。(笑) 独力で読み進めているとわからないところが出てくるので、化学の授業が終わってからS先生に質問した。しどろもどろで要領を得ない。翌週、またわからないことができたので、同じように質問した、やはり要領を得ない。質問するだけ無駄であると悟った。それで分厚い参考書を読破するのをやめた。このころには公認会計士2次試験参考書兼問題集で勉強を始めていたから、化学まで手が回らなくなっていた。自力で化学の勉強に没頭したら公認会計士2次試験受験勉強の時間が削(そ)がれる。当時の公認会計士2次試験は簿記論・会計学・原価計算論・商法・経済学・経営学・監査論の七科目、尋常な手段では独力で制覇できない。独学でチャレンジしはじめたので、化学に費やす時間をカットした。読んで理解した後の答案練習に時間がかかった。要点を箇条書にまとめ、それを手掛かりに答案を書くトレーニングをしていた。計算がはいるのは簿記論と原価計算論の一部だけで、「~について説明せよ」式の問題が多く時間がかかったから、好奇心の強かった分野の一つである化学を断念した。
 だから、生徒からモル計算を教えてほしいと頼まれたときに、53年ぶりにもう一度化学の本を開く気になった。「化学Ⅰ」の教科書と教科書準拠問題集「化学ⅠⅡ」そして学習参考書を2日間かけて読み、概念を整理し、計算の仕組みをながめ、実際に50題ほど解いたら、そうむずかしいものではないことがわかった。それでも変数が3項目の「距離・時間・速度」「食塩・食塩水・濃度、「合計・人数・平均」の計算問題に比べたら、変数が多いので複雑になっていることは間違いがない。概念の整理になれていない高校生がモルでつまずくのはよくわかる。

 10/17の道新に「道内教員「広き門」」という記事が載っていた。過去20年で最低倍率、小学校1.5倍、中学校3.3倍、高校3.5倍である。五科目500点満点の学力テストで、中学時代にたまにしか400点を超えられなかったレベルの生徒が、学校の先生になる時代が来ている。そういうレベルの先生には成績上位層の生徒は教えられないだろう。
 そして、学校の先生は生徒に勉強しろとは言うが、自ら教えている科目についての参考書や専門書を渉猟している先生は概して少ない。
 市販の問題集の解説を見ただけでも、教え方が上手になるから、すこし努力すればいいだけ。

 件(くだん)の化学先生はebisuたちが卒業してからほどなく別海高校へ転任され、クビになったという風聞を耳にした。それが事実であるかどうかはさだかではないが、「ああ、そうか」と思った卒業生は多かったのではないだろうか。人柄はやさしかったが、教師には向いていなかった。
 いい先生が二人いた。一人は1年生の時に英語を習った沢井先生、低音での音読がすばらしかった、文型の解説とそのトレーニングも徹底していた。英文の読み方がなんとなく理解できた気がした。ほどなく釧路高専の教授になったから、根室にいた期間は5年くらいだったのだろう、北大文学部英文科卒。もう一人は簿記と原価計算を教えてもらった白方先生である。なかなかスマートな授業だった。ebisuは公認会計士2次試験講座(中央経済社)で原価計算論の勉強をしていたから、白方先生の知識がどの程度かよくわかった。学力差の大きいクラスで数人の成績上位層にも下位層にも配慮した授業をされた。指導法をよく吟味されていたということ、千葉商科大学卒だった。優秀な先生というのは、教えている教科はもちろんのことそれ以外も好奇心をもって勉強している人ではないだろうか。白方先生は母校の北見北斗高校へ転任されて、50歳前後で退職されて独立起業されたと聞いている。めずらしいタイプの先生である。
 当時の根室高校でたくさんの授業を聴いたが二重丸が付けられるのはこのお二人だけ、けた外れにダメな先生は2-3倍はいただろう。身分が保障されていると怠惰になるのは人のサガのようだから、いちいち具体例を挙げるのは差し控える。ああ、余り差支えがなさそうな事例を一つだけ挙げたい。「会計」科目担当のY先生が定期テストで出題した問題が公認会計士二次試験講座にあったものと同じだったので、その模範解答通りに書いた。そうしたら半分減点された。理由を訊いたら、「おれが授業で説明したのと違う」ということだった。そういう事例は現代国語の頭の固い定年間際の先生でもあったから、あっさりあきらめた。バカは相手にしてもしようがないことをありがたく学ばせてもらった。Y先生はそのご、道内のどこかの高校の校長先生になられた。


*#3832 化学のモルの計算がわからないので教えて Oct. 10, 2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-10-09




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コメント 2

TDJ

単位換算・単位変換には比を媒介させると、すんなりイメージしやすいと思います。
1【mol】:180【g】=0.1【mol】:18【g】
1000【ml】:1【l】=250【ml】:1/4【l】
という具合に、翻訳してから解くのが自分の好みですね。
モルなんて、所詮は便利な「人工単位(概念)」だから、概念の要諦を比で押さえる(例;1mol:22.4l(標準状態気体)、1mol:(分子量・原子量がそのままグラム数)、1mol:アボガドロ数 など)と、使い勝手がいいと思います。あと、モル沸点上昇(凝固点降下)も比の応用なので、考えやすく(合計何モルかを意識しやすく)なると思います。
比と方程式の組み合わせ(自分は小学生時代から愛用していた)という、応用問題における文明の利器も、比にばらして概念掌握という手法で使いやすくなりますね。



by TDJ (2018-11-09 21:59) 

ebisu

TDJさん

比は比なんですがね。
あなたのように頭がよくないようで、ほとんどの高校生が比例式に持ち込んで混乱し、沈没しています。(笑)

>(例;1mol:22.4l(標準状態気体)

  22.4L:1mol ?

問題文で単位系条件と答えの単位系が与えられたら、あとはそれらを媒介するだけ。分数にしてみたらすっきりわかります。単なる分数の掛け算と約分になりますから、出発点と到達点との関係でどちらを選ぶかは簡単に決まります。
比は比でも分数で表すことで二つのうちどちらを選ぶかは自動的に決まってしまいます。余計なことに頭を使わなくてよい、便利なのです。


 22.4L/1mol
 1mol/22.4L


by ebisu (2018-11-09 22:51) 

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