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#3805 高1:7月進研模試全国平均と根室高校平均比較:学年トップの学力は? Aug. 14, 2018 [71.データに基づく教育論議]

 7月進研模試の全国平均値と標準偏差は#3799でリポートしたので、これに根室高校普通科の平均値を並べてご覧に入れる。
#3799 進研模試の結果データ公開日 Aug. 4, 2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-08-04-2

   平均点 標準偏差 根室高校平均点 
 国語 42.9  14.46   34.9 (81.4%)
 数学 31.8  18.09   19.1 (60.1%)
 英語 33.7  17.17   19.5 (57.9%)

 ( )は全国平均点を基準とした時の根室高校普通科の平均点の割合を示している。

 全国平均点を指標にしてみると、根室高校生の英語の平均点が全国平均の57.9%と一番低いが、数学も似たようなものだ。国語が81.4%だから全国平均との差は数英に比べて半分程度になっている。
 日本人だから国語の標準偏差が一番小さくなるのは当然だろう。学校の勉強のほかに、生徒の読書習慣の影響が国語力に与えるものが大きいからだ。そして本の虫のような生徒が、学年に数人はいる。そういう生徒は高校に入ってからも、大学に入ってからも学力が伸びるようだ。本の読解力が学力の基礎をなしているから、そうなるのだろう。数学の教科書も英語の教科書(の解説)も理科も社会も教科書は日本語で書かれているから、日本語読解力の大きい生徒は、短時間でより深い理解が可能になる。「読み・書き・算盤」の基本技能は学力に対する影響の優先順位で並んでいる。江戸時代の寺子屋のころから日本人は何が教育の基本であり、優先順位がどうであるのか知っていたのだ。

 
昨年は数学の平均点が21.4だったが、中学3年次の学力テストの数学の得点分布や市街化地域の2校の平均点から推計すると、7月進研模試が20点を切る可能性を指摘していたのだが、その通りになった。昨年より2.4点も下がって19.1点となった。根室高校普通科の学力はとめどなく低下している。
 それにしても、英語まで20点を切るとは思わなかった。2006年3月の入試は定員オーバだったから、根室高校普通科の合格最低点が150点を超えた。2006年度入学の根室高校普通科の生徒の学力は「特設コース」の生徒たち35人の学力と同じくらいであり、根室高校普通科の下位半数は2006年度の根室西高校の生徒の学力と同等である。根室西高校が来年3月で廃校になるので、根室は昨年から新入生に関しては高校1校体制になった、それが学力の底抜け現象を引き起こしてしまった。高校へ入る前の学力が著しく低下したのである。全入状態になったので、低学力層が勉強しなくなったのだ。根室西高校へは行きたくないと、ボーダライン以下でも頑張り這い上がる生徒が数十人いた。高校統廃合による一校体制で、中学生の通塾率は1/4くらいに激減している。中学校の先生がたいへんだろう。授業中に立って歩く生徒や私語をする生徒が増えただろう。授業を聞いてもら殻内生徒たちが、授業中にずっとおとなしくしていられるわけがない。私語が始まり、簡単に授業崩壊が起きるのである。

<学力の状況>
 高校統廃合に3年先立って高校入試が根室高校1校になった。定員割れしなければ全員が入学できるから、低学力層にまったく勉強しない生徒が増えた。たとえば60点満点の学力テストで数学が10点未満の生徒は計算問題すら半分しか得点できない学力層である。授業を聞いてもほとんど理解できないから、つまらない、そして私語し始める。説明しているときに単語をいくつか聞き落すだけで、成績中位の生徒たちは先生の言うことを理解できなくなる。こうして成績中位の学力層が一段下へシフトする。低学力層の肥大化が進行するのである。英語も同じだ。中3最後の学力テストである「模試2月2日」の結果データでみると、B中には10点以下が6人/56、C中には11人/57いた。両校で17人/113だから、15.0%を占めている。こういう学力レベルの生徒が普通科の数学の教科書を理解できるわけがないし、授業も理解できない。結局、高校生になっても授業中の私語は止まらず、学力はあがらない。60点満点で20点以下の生徒が根室高校普通科数学の授業についていけない層だと仮定すると、B中が27人、C中が31人いる、両校で58名だから51.8%に達する。
 数学はまだ習熟度別に5段階にクラス編成がなされているから成績上位層への被害は小さい。低学力層はいわば「隔離」されているからだ。そういうクラス編成になっていない英語はそうはいかぬ。英語の点数が20点以下の生徒はB中23人、C中28人、両校で51人(45.1%)もいる。高校の授業がどうなっているか想像がつくだろう。
 学力別クラス編成になっているのは数学のみ、他の全教科が非常に学力格差が大きいにも関わらず、同じ教科書を使用し、中3の時に学力テストで10点未満の生徒と50点を超える生徒が混在しているのである。高校の先生たちの努力も暖簾に腕押し。

<対策:とりうる選択肢の一つ

 これから高校統廃合で1校になる地域は、統合のしかたによくよく注意しなければならない。学力格差が大きいので、同じ普通科という枠で括るのは無理があったのだ。同じ教科書が使えないほどの学力差が存在する。「特設コース」ではなくて「科」を分けるしか方法がないと思うのだが…それができなければこういうことになる。

 いったん走り出したものは見直しするのに10年の歳月を要するだろう。市長の諮問委員会で高校統廃合問題検討委員会というのがあったが、中学生の学力分布データすら見ていなかったと言わざるを得ない。データに基づかぬ空理空論を弄んだのではないか?
 この問題は検討委員会だけのせいでもないのである。検討委員会がデータ分析をするには普段の学力テストデータを使わなければならない。これは根室市内7中学校がそれぞれ保管しており、各学校へ依頼を出さなければならない。すぐに個人情報云々が問題になる。個人識別データをはずしたEXCELファイルを渡せばいいし、守秘義務契約を取り交わせばいいだけだが、そういう仕事になれた人がいなかったのだろう。そしてデータを扱うスキルをもった人もまたいなかったと推測される。
 適切なデータ分析には、データデータ分析のスキルが不可欠であることは論を俟(ま)たない。市教委はふだんの学力テストデータをモニターしていないが、モニターすべきだ。ふだんからそうしたことをしていれば検討委員会へデータが渡せたし、データ分析についてもサジェッションできた。データを収集せず、分析もしないからスキルが育たない。だから全国学力調査の都度、頓珍漢なコメントを公表して恥をさらすことになっている。個人識別情報を外した学力テストデータは公共財と考えるべきではないだろうか。市教委がデータを集めて学力テストの都度、ホームページ上で公表することを望む。オープンな町づくりはこういうところからも着手できる。

 閉鎖的な諮問委員会は市立根室病院の建て替えや明治公園再開発に関する委員会などいくつもつくられたが総じてこんな仕事に終始している、それは必要な人材が集められないからだろう
 住みよい町を創るにはオープンな場での議論が欠かせない、中標津町はとっくにやっているよ。だから、中標津町に住み続けたいという町民が多いのだろう。住民意識アンケートにはっきり出ている。町の運営やビジョンづくりに参画しているからそういう意識が生まれるのではないだろうか?

 いまやりうることはある、普通科の合格最低点を90点に、商業科と事務情報科は80点とすることだ。入学してくる生徒の学力が底上げされるのは当然である。勉強しなくても根室高校に入学できるからしないだけで、合格最低点が公表されれば、五科目合計点100点未満の生徒たちは高校へ入学したいから勉強する。インセンティブを与えてやるだけでいい。それに達しない生徒は自宅で1年間勉強してから根室高校へ入学すればいい
 勉強する気もなく、家庭で学習はまったくしない、それでも根室高校には入学できる、そういう状態を放置してはいけない。勉強する気のない生徒たちが高校へ入学しても授業にはついていけないから、授業中私語が飛び交うことになる。先生の説明が時々聞こえなくなるだけで、中の上までの生徒たちは脈絡がわからなくなって、理解できなくなる。学力崩壊が起きてしまう。やる気のない生徒を受け入れる必要はない。勉強するつもりのある生徒たちにとっては迷惑なだけだ。

 根室高校の入試は裁量問題を採用しているが、生徒たちの学力分布から判断すると必要がない、中学校の授業も学力テストも裁量問題に対応していない。普段の学力テストは標準問題である。
 現在の高校1年生が受けた最後の学力テストで五科目合計点が100点未満はB中21人、C中19人である。両校で40人(35.4%)、おおよそ3人に1人の割合である。

<道外の人の視点>
 弊ブログ#3659をご覧いただきたい。道外の人、ハンドルネーム麒麟さんが中3の学力テスト五科目合計点109点の学校を上位校と比較して論じている。低学力校では授業中私語が多い、生活態度に乱れが見受けられる、教育に対する親の意識が低いなど、際立った特徴がみられる。
指摘通りのことが根室で起きている。学力テストで五科目合計点109点は、学力テスト総合ABCの3回のテストでみるとB中とC中の平均点付近である。低学力の中学校では同じ現象が札幌でも根室でも起きているということ。

**#3659 根室の中学生の学力低下を道外の人はどうみるか?(2) Dec. 12, 2017
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-12-12

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#3589 進研模試高1数学の平均点は21.4 Aug,21,2017
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-08-21



<余談:学年トップの学力レベル>
 
学年トップ三科目総合偏差値76.7、そしてこの生徒は3科目とも学年トップだった。
  この生徒が入塾してきたのは小5の1月だった。中1の最初の学力テストで、学年2位と五科目合計点が1点差、次のテストは十数点差、三度目が2点差だったが、その後はテストのたびに2位との点差が開いていった。調子のよい時には300点満点の学力テストで280点を超えた。定期テストは難易度が低いので五科目合計点が490点を超えたこともある。学年2位との点差は定期テストと学力テスト共に50点前後にまで拡大した。3年間すべての学力テストと定期テストで五科目合計点で学年トップをとり続けた。
 そしてはじめて受けた全国模試道内153位だった。全国レベルで通用するかどうか心配していたが、進研模試で学力レベルを確認できてほっとしているようだ。
  この生徒はまもなく数英が90点を超すことになるが、そのゾーンにはいれば進研模試を受験する意味がなくなる。ケアレスミスの有無を計測するだけのことになり、学力測定としては意味がなくなる。もっと難易度の高い全国模試、たとえば駿台模試や河合塾模試で学力を測った方がよい。
 5年間と7か月観察していて気がつくことは、生活時間の使い方が上手になったのと、安易に答えを見ないで考える習慣が身についた。最近半年間くらいはわからない問題はヒントを最小限にとどめている、場合によっては「問題の条件をもう一度読み直したら?問題を解くための条件を何か落としていない?」「立体図ではなく断面図のほうが必要な情報を落とさずに簡略化できるから、図何枚か描いて、もう少し考えてみたら?」というような対応をしている。英語の場合は大事なところだけは学年を考慮せずに、大学レベルまで説明が及ぶこともある。砂に水がしみこむようにスーッと吸収している。成績上位層の生徒には学力に応じた問題集の選択と解説をすべきなのだろう。そしてなるべく余計な指導をしないこと、それが生徒の自立と成長を促す
(成績中位層の生徒には丁寧な解説をする、そうしないと理解できないからだ。成績下位層の生徒は既習事項に穴がいくつも開いているから、どこに穴があるのか探しながら教える。生徒を観察しながら既習事項で抜けている個所を突き止め、その部分のフォローが付け加わる。ようするに生徒の学力に応じて三段階くらいに分けた教え方をしているということ。定員7人までの個別指導だからやれる。今日の最後の授業は中3が2人、高1、高2が一人ずつ、高3が二人。高3の二人は一人は数1Aの受験問題集、もう一人はセンターレベルの数1A・ⅡB受験問題集、高2は学校のプリント、高1は塾用問題集(シリウス)、中3の一人はシリウス、もう一人は夏休みの宿題プリント。質問の連続である、ちょっと忙しかった。(笑))
 小5の1月に入塾して、英語は中学生になってから教えた。最近数か月間はおおむね福沢諭吉の「適塾指導」方式で指導している。やり方は『福翁自伝』に載っている、あれを現代風にアレンジしたものだ。弱点だった国語は入塾当初から音読トレーニングをしている。すでに15冊読み終わっている。いま読んでいるのは『福翁自伝』、大学レベルのテクストである。要は勉強の仕方だろう。
 数英2科目総合偏差値は79.4数英は2次試験でこそ実力が如何なく発揮できるだろう。目先の得点をアップするような勉強はしていない、受験勉強の範囲を超えている。だから、3科目総合偏差値が80を超えるのは時間の問題に過ぎぬ。
 夏休みに間に1週間、札幌で開かれた河合塾の夏期講習を受講した。全国トップレベルの予備校の授業を体験してもらいたかった。数学と英語の授業の評価を訊いてみたが、書かないでおく。
 学力アップは生徒の努力が99%、塾先生は問題集を選び勉強の仕方を教えているだけ。生活習慣がしっかりすれば学力は上がる
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<2022年6月10日追記>
 この生徒は昨年、国立旭川医大へ道北道東推薦枠で現役トップの成績で合格した。小論文が295点/300点で圧倒的に差がついた。国語は教えていないが17冊良書を選んで日本語音読授業を6年間やった。高校生になってからは日本の大学の最良のゼミ並みの議論が可能だった。使用した本のリストは何度も取り上げているのでブログ内を検索してください。最後の2冊は福沢諭吉『福翁自伝』と山本義隆『日本近代150年』です。山本義隆は智の職人です。元全共闘議長、将来を嘱望された東大大学院生でしたが、残れず駿台で物理を教えながら、著作活動を続けています。理系志望の学生は何冊か彼の翻訳や著作を読んでください。
 国立旭川医大は偏差値65で、北大医学部と同じランクです。道内の進学校からの受験者を抑えて現役トップ合格はなかなかたいしたもの。毎年3名くらいは、彼と同水準の生徒がいますから、根室からでも小4からモノが同じ道を通って国立大医学部へチャレンジできるようにとの配慮です。そのために古里へ戻って小さな塾スタートすれば余裕をもって合格できます。具体的な方法、記録は弊ブログに書き残してあります。次に続く者が同じ道を通って国立大医学部へチャレンジできるようにとの配慮です。そのために古里へ戻って小さな塾経営を続けてきました。そろそろわたしの古里での仕事も「卒業」です。根室の地域医療問題との関連でも地元から国立大医学部への進学者を出すことは重要でした。学費は6年間で360万円ほどしかかかりませんから、学力さえ高ければ、だれでも国立大医学部へ進学できます。

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(中学時代に学年10番以内に入ったことのない生徒が今回の進研模試で20番以内に入ってきた。入試と定期テストで思ったように点数が取れなくて悔しがっていた生徒だ。悔しくて努力した、そして実績を上げた。高校で学年20番以内は中学校ではおおよそ学年5番の成績である。
 部活に力を入れていた生徒は、まだ時間の使い方がうまくいっていないようですこし落としている、文武両道を貫いて偏差値をアップしてもらいたい。)


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