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#3789 早稲田大学政経学部の入試改革:時代がようやく追いついてきた July 23, 2018 [59. 入試制度改革]

  早稲田大学政経学部の入試が2021年度から変更になるという。現在ぼ高校1年生から変更適用になる。
*https://www.msn.com/ja-jp/news/national/早稲田政経学部が数学必修化に踏み切る真意-数学だけではない入試改革の真の狙いとは%EF%BC%9F/ar-BBKUAf9?li=BBfTvMA&ocid=spartanntp#page=2

 何がどうなるのだろう、要点は次の三つである。
①大学入学共通テストを課す
②政治学や経済学に関する日英両言語の読解テストを実施する
③数1&Aの必須化

 ①は解説の必要がないだろう。
 ②については新書版レベルの本の日本語読解力と政治や経済をテーマとする英語の論説文の読解力を測るというもの。これはどちらも一朝一夕にはいかない。
 ニムオロ塾では2004年から新書版レベルの音読を中学生に実施してきた。あとでいままで音読トレーニングに使った本のリストを示すのでご覧いただきたい。英語については英字新聞ジャパンタイムズの記事を授業で使ってきた。政治(国内、国際)・経済(財政、金融、為替相場、貿易、企業経営、会計学等)・地球温暖化問題・医学(バイオ技術、薬品開発、医療制度、医療財政、福祉、老人介護、感染症など)・健康(食品、ダイエット)・風俗(エイズ、梅毒などの性感染症(STD)、日米欧の風俗比較など)などの記事である。カテゴリー「時事英語公開講座」に授業でとりあげた英字新聞記事から40本を選んでアップしてある。新聞英語は高校教科書の英語(3000語)に比べて使用語彙の範囲が数万と広く、文の複雑さもレベルが違う。そして専門分野ごとに専門用語群があって、ラテン語やギリシア語の語幹や接辞からできているので、それらを専門分野ごとに500-1000語くらい覚えていないと読めない。このあたりが基本漢字の組み合わせで専門用語ができている日本語と決定的に違っている。二つ例をあげると、「白血病」「白血球」という語彙をつかってもわからない日本の中学生はほとんどいないが、leukemiaやleucocyteという単語を見てもわからない米国の高校生は少なくない。「leuk-」や「leuco-」がラテン語由来で「白」を意味し、「-cyto」は「細胞」という意味だからだ。「白」「血」「球」という漢字を見て、意味やイメージのわかない中学生はいないだろうから、だれもが意味を知っている基本漢字で組み立てられた専門用語はわかりやすい。そしてこういうことが共同体の構成員相互の高度なコミュニケーションを可能にしている。日本語なら専門分野を異にする者同士が専門用語を使ってもある程度会話が成り立つし、自分の専門分野でない本を読んでも理解できるのは、こういう専門的な語彙群を基本漢字で翻訳してきた先人たちの努力のお陰である。複数の専門分野を渉猟するのに日本語は強じつに便利な言語と言えそうだ。
 近代化の遅れた中国では、西洋文化の学術用語に該当する言葉がないので、日本で発明された学術専門用語をそのまま利用している。たとえば、「哲学」。
(学術用語は③のURLをクリックしてください)
*中国語の中の日本語(Chinese Borrowings from the Japanese Language)http://www.nichibun.ac.jp/graphicversion/dbase/forum/text/fn091.html
https://dokochina.com/aitama/16.htm
https://blogs.yahoo.co.jp/hoshiyandajp/31248999.html

 そういうわけで、政治学や経済学の英文文献も、使われる専門用語が覚えられたらすらすら読めるようになる。専門用語も一般的なものと特殊なものに分類できるから、とりあえず一般的なものだけ覚えてしまえばいい。入試問題では特殊な専門用語は注記がつく。


 ②のもう半分、新書版レベルの日本語読解力錬磨については2004年から既に対応済みで、17年たってようやく現実がニムオロ塾の授業に追い付いてきたと言えば言いすぎ、我田引水で、たまたまそうなったということ。受験予定の生徒も予備校も対応に困っているだろう。
 早稲田大学政経学部のような入試をやる大学・学部は他にはない。結果がよければ追随する大学が5年後くらいにポチポチでてくる。中高生は新書版の本ぐらいは興味のある分野を選び、とりあえず10冊読んでおいたほうがいい。読解力は本を読むことでしか身につかぬ。
 読解力育成ついては実際の音読トレーニング授業経験をもとにした具体的な記事を10本以上アップしているから、興味のある方はご覧ください。

<新書版は入門書から専門書の「圧縮版」までレベルは多様>
 新書版はそれぞれの専門分野の入門書の役割を果たしているものから、専門書の内容を圧縮したものまでそのレベルはさまざまだ。たとえば、経済学史の大家である内田義彦先生の岩波新書の本『社会認識の歩み』や『資本論の世界』は専門書である『経済学の生誕』よりも薄くて中身が濃い。書き上げてから半分くらい削っているとおっしゃっていた。文章の濃度が濃いので、周辺知識がないととても読みこなせないから入門書ではない。新書版の本は著者によってレベルに開きが大きい。そうじて文庫版よりもむずかしいものが多いだろう。古典の名著が並んでいる岩波文庫だけは別格である。

<ニムオロ塾でいま使っている音読教材>
 先週、中3と高1の音読トレーニング授業は数学者・藤原正彦『日本人の誇り』を終了した。このグループは当代一流の物理学者である山本義隆著『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』を9月から読む予定になっている。高1の一人は福沢諭吉『福翁自伝』を音読テクストにゆっくり読んでいる。この本は早稲田大学政経学部が要求する日本語読解力水準よりも2段階ほどレベルが高い。明治期に書かれた本は高校生にとっては「古典」の領域のようだ。団塊世代は明治期の本を古典と感じる人は少ないだろう。使われている語彙が古臭いから、読みなれていないと出てくる語彙に不案内で、文章の意味がとれないようだ。読ませても先読みができていないからすらすら読めない。大学の先生の方から見たら、明治期のものくらいは独力で読めるだけの読解力があってほしいだろう。

<経済学部に数学は必須科目>
 ③は計量経済学やミクロ経済学、マクロ経済学は微分積分を使うので数Ⅱ&Bは当たり前、数Ⅲ&Cまでしっかりやってから来てもらいたいはず。そうでないと授業が理解できない。微分方程式や線形代数がすぐに出てくる。早稲田の政経学部では4割の生徒が数学が原因で単位を落とす経済学の授業があるようだ。
 マスクス『資本論』の体系構成はユークリッド『原論』を読まないとその意味が分からないから、マルクス経済学を含めて経済学は理系科目の色もあるから、キメラである。
 経済学部入試に、いずれ数ⅡBが必須科目になり、いつの日か数ⅢCや必須科目となるときがくればよい。今回の試みは受験者激減で偏差値が上がるという世にも稀なことになるかもしれない。


<今まで14年間音読授業で使用したテクスト>
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 国語力アップのための音読トレーニング・テクスト>
 中2のトップクラスのある生徒の国語力(語彙力と読解力)を上げるために、14年間音読指導をしてきた。授業料はいただいてないからボランティア活動である。
 読んだ本のリストを書き出してみると、

○『声に出して読みたい日本語』
○『声に出して読みたい日本語②』
○『声に出して読みたい日本語③』
○『坊ちゃん』夏目漱石

○『羅生門』芥川龍之介
○『走れメロス』太宰治
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
 『五重塔』幸田露伴
 『山月記』中島敦
●『読書力』斉藤隆(岩波新書)
●『国家の品格』藤原正彦(新潮新書)
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳
●『日本人は何を考えてきたのか』斉藤隆

『語彙力こそが教養である』斉藤隆(角川新書)
●『日本人の誇り』藤原正彦(文春新書)

◎『福翁自伝』福沢諭吉(岩波文庫)
◎『近代日本10月50年 科学技術総力戦の破綻』山本義隆(岩波新書)

 音読トレーニング授業でこれを全部読んだ生徒は学力テストで国語の点数が学年トップである日本語テクストの音読スキルがしっかり身につけば、黙読速度が上がり、内容理解が深くなり、段落ごとの文脈読みが可能になる英語のテクストでも同じスキルが使えるから、英語長文も楽ちん楽ちん~♪

 他にも生徒と読んでみたい本がある、背伸びさせていいのである。
◎『古寺巡礼』和辻哲郎
『風土』和辻哲郎
◎『善の研究』西田幾多郎
 高校生はもとより、大学生だって江戸期の思想家を三人挙げられる人はめったにいないだろう。それほど、現代日本人は江戸時代の日本人が何をどのように考えてきたのかを知らない。生徒と読みたい名著をもう一つ追加しておく。
◎『江戸思想史講義』子安宣邦(岩波書店 1998年刊)
2010年に文庫で出版されている。

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で使用した実績がある。◎は大学生レベルのテクストである。音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが2年前から希望者のみに限定している。)

*#3156 日本語読み・書きトレーニング(3):先読みの技 Oct. 14, 2015
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-14


 #3607 同期音読トレーニング Sep. 6, 2017
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-09-06


 #3726 日本語音読トレーニングのススメ:低下する学力に抗して Apr. 18,2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-04-18-1

<余談:中国が和製漢語を導入せざるをえなかった理由>
 ブログ「俊平の雑学研究所」より抜粋引用 
「現代中国語は日本語なしでは成り立たない」
https://blogs.yahoo.co.jp/hoshiyandajp/31248999.html
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◇ 2 中国語に流入した大量の日本語

中国が近代化の努力を始めた頃、真っ先に困ったのが言葉の問題である。近代的な概念に対応する新語の造出を怠ってきたため海外文化や技術の受容がうまくいかなかったのだ。そこで大量の中国人留学生が明治・大正期の日本に押し寄せることになる。たとえば1905年に日本に新たに留学した中国人は8000名にのぼる彼らは多くの分野の日本語書籍を片っ端から翻訳し、その過程で日本起源の和製漢語をそのまま中国語の中に導入した。こうしておびただしい数の日本語が中国語の中になだれ込むことになった。

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コメント 10

よっちゃん

政治学、経済学を専攻する学部の入試に、今は数1も課してなかったのか!びっくりである。
by よっちゃん (2018-07-25 21:44) 

ebisu

よっちゃん

文系私立大学の入試は、国語と英語が必須、そしてあと1科目は選択科目です。
だから早稲田政経は数1Aで受験している生徒が毎年3割程度いるそうです。
理系と同じで数Ⅲまで必須とすべきですが、いままでの歴史的経緯があるので、急激には変えられない。様子を見ていけるようなら、次は数ⅡBも必須科目となるのでしょう。応募する生徒が激減したら困りますから。藪を突いては蛇がでてくるかもしれません。(笑)
by ebisu (2018-07-25 22:14) 

ebisu

慶応大学はマルクス経済学のほうが優勢だったから、数学を必須科目とする理由がありません。変わりつつあるのかな?私大の経済学部はほとんどがマルクス経済学です、だから、数学を必須科目にするニーズがなかったのです。
ほんとうはそうではない、数学の公理的構成とマルクス『資本論』の体系構成には類似のものがあります。数学が苦手の人はユークリッド『原論』も数学史の本も読まない。だから、いつまでたっても気がつけないのです。
マルクス経済学も体系構成を研究対象とする限り理系なのです。
by ebisu (2018-07-25 22:20) 

ebisu

慶応大学経済学部の先生たちをホームページで10人くらい見てみましたが、原発問題で気炎を吐いている古株の金子勝教授以外はマルクス経済学者はいないようです。金融論だったり、スペインを研究テーマにしていたり、インドだったりと、実に多彩です。
どうやら数学のニーズもいまのところ強くはなさそうです。
by ebisu (2018-07-26 00:31) 

E235系

私立大経済学部で数学必須は上智大経済学部のみですね。
範囲は数ⅠⅡABです。

by E235系 (2018-07-28 19:58) 

ebisu

E235系さん
調べてくれてありがとうございます。

上智大学経済学部のページを見て納得です。この大学で教えている経済学はマクロ経済学とミクロ経済学を柱に据えてものです。「経済学を学ぶことの魅力」の冒頭に次の文が載っています。
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「経済学」はミクロ経済学、マクロ経済学を柱に、開発経済学、国際貿易論、環境経済学、厚生経済学など、様々な分野へと枝分かれしています。数学を用いた理論モデルや、実証データを駆使する経済学の分析手法は、論理的直観や、物事の本質を見極める目を養うことに資するでしょう。
--------------------------------------

これなら数ⅢCも試験科目に入れたいくらいですね。
日本の大学の大方の経済学部とはまったく色が違います。これからこういう経済学部が増えていくのでしょう。
数学科で応用経済学という科目のほうがいいかも。(笑)

大学院も見てみました。応募時点で研究計画書を求められますね。カリキュラムは偏ったものに見えます。経済学基礎論や経済学説史というような分野があってもいいのでは、いや、なくてはならないのでは。
医学でいうと臨床研究分野ばかりで基礎研究分野がないと言ったら的を射ているかも。




by ebisu (2018-07-28 20:30) 

よっちゃん

さすが上智!今や早慶よりいい大学になっています。それは、入学以降も猛勉させるから。就職も早慶よりいいみたいですよ。東大、京大大学院への進学者も多い。
by よっちゃん (2018-07-28 20:34) 

ebisu

入試改革を先行してやっている大学の経済学部は、必要なスキルを吸収できる数学の素養のある生徒をちゃんと選抜し、鍛える。これなら初歩的な数学の解説抜きで、最初からレベルの高い講義が可能になります。
早稲田大学政経学部の入試制度改革は2番目ということ。マルクス経済学の影響が小さいことが入試制度改革を容易ならしめているように感じます。
早稲田政経が続いたことで大きな流れができそうですね。
by ebisu (2018-07-28 21:18) 

ebisu

上智大学経済学部で教えているマクロ経済学は日本では東大名誉教授の浜田宏一さんが有名です。日銀黒田総裁の親分です。
白川から黒田へ替われば3か月で2%の物価上昇ができるとご託宣したかた。アベノミクスは浜田さんが指南した政策でしょう。
50年も前に現れたマクロ経済学は現実の経済の前に大敗北しているのです。まったく無力、古すぎます。
アカデミズムの世界では外国で生まれた理論を紹介しているだけ、知的創造ゼロ、こんなことでは経済学の閉塞状況が打ち破れないということ。
そういうときは基礎研究が大切であるような気がします。事実そうですが、とってもたいへんな仕事だから誰もやりたがりませんし、そういう問題意識をもっている経済学者はごく少数です。
ゼロではないですから期待したいと思います。若い人たちの中から現れてほしい。
そういう観点に立つと、わたしが提唱する職人仕事中心の経済学の意味が分かります。工場労働を公理に据えた経済学とは別の経済学体系が遠望できます。
by ebisu (2018-07-30 00:25) 

E235系

2021年度以降の入試から課される「日英両言語の読解テスト」のサンプル問題が公表されました。下記のURLです

https://www.waseda.jp/fpse/pse/news/2018/08/03/9136/
by E235系 (2019-01-05 12:06) 

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