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#3712 三か月定期検診:フェリチン20ng/ml Mar. 14, 2018 [38. cancer]

 3月は三か月定期検診の月である。スキルス胃癌(胃粘膜が癌化するので腫れない)と巨大胃癌(胃の出口手前(幽門前庭部)にあって腫れあがり腸への経路を塞いでしまっていて、内視鏡がそれ以上はいらない)の併発、地元の消化器専門医である岡田優二先生に内視鏡で癌の診断をつけてもらい(2006年6月初旬)、7月20日に釧路医師会病院で後藤幹裕先生(現在は音更町・木野東クリニック院長)に手術していただいてから、3か月に一度の定期検診が12年目に入った。
 昨日検査結果を聴きにいったのだが、インフルエンザがまたぶり返しているのか患者さんで混雑しており診察が午後になるというので、今日行ってきた。
 血液検査で変動の大きかったのはフェリチン定量(血清鉄)とビタミンB12の2項目のみ、フェリチンは前回140から今回20ng/mlに落ちていた。「真っ逆さま」と形容したいぐらい、男子の基準値は20~220であるから、ジャスト!基準値下限。
 フェリチンとは貯蔵鉄と結合している水溶性蛋白質であり、これを測ることで、体内貯蔵鉄の量を知ることができる。

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【フェリチン定量の臨床的意義】血清フェリチンの1ng/mlは貯蔵8~10mgに相当するので,貯蔵量の低下した鉄欠乏性貧血では小球性低色素性貧血,血清低下,総結合能増加に加え,血清フェリチン低下を特徴とする.潜在的欠乏とは血清フェリチンのみが低下した状態で,貧血は呈しておらず鉄欠乏性貧血の前段階である.
http://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/index.cgi?c=speed_search-2&pk=290
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 この換算式で基準値から胎内貯蔵鉄総量を計算すると、基準値下限の20ng/mlでは160~200㎎、基準値上限220ng/mlでは1760~2200mgである。体重60㎏の人間がわずか0.16~2.2gの狭い範囲に体内貯蔵鉄がおさまっていないと人間の体は生命維持に深刻な影響を生じるのである。鉄は16種類の必須ミネラルの一つであり、生命の維持はミネラルの微妙なバランスの上に成り立ち、人体はじつに精妙にできている。生きていること、生きとし生けるものたちに畏敬の念を抱かざるをえない。

*必須ミネラル16種
https://www.supkomi.com/univ/mineral/mine-essentialmineral.html
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16種類の必須ミネラルの詳細は、以下の通りです。カルシウム(Ca)、リン(P)、カリウム(K)、硫黄(S)、塩素(Cl)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、セレン(Se)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ヨウ素(I)です
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 血液中のヘモグロビンの鉄が不足すると、体内貯蔵鉄が血液中に放出され、ヘモグロビンへ鉄が供給されるが、貯蔵鉄が枯渇すると血液中の鉄が不足しても補うものがないので、鉄欠乏性貧血が起きるという簡単なメカニズムである。
 ヘモグロビンの鉄が不足すると酸素を運べなくなるため、酸欠状態になる。息をしていても酸素が体内に運ばれる量が減少するから、息苦しくなる。歩いていても、寝ていても息苦しい感じがするときはフェリチンが低下していると考え、毎日服用している鉄剤の量を幾ばくか増やしてみる。胃の全摘で鉄吸収能が低下しているので、それでも足りなくなるから、定期的に静注してもらうのが手っ取り早くてよい。今回は趣味の雪かきしていても息苦しさを感じることがなかった。身体が鉄欠乏に慣れてきているのかもしれない、要注意だ。以前は就寝時に息苦しさを感じているときに検査をするとデータに現れていた。自分の体の微妙な変化を感じ取れなくなってきているようで、どうやら血液検査データに頼るしかない。30代半ばから16年間臨床検査最大手のSRLで仕事していたが、臨床検査のありがたさを実感している。(笑)
 血清フェリチンが正常な人にフェジンを静注すると肝機能への副作用があるので、主治医はフェリチン定量と肝機能検査の数値をモニターして処方してくれている。

 そういうわけで3か月置きに、フェジン(鉄剤の商品名)とビタミンB12を静注(静脈注射)して補っている。前回12月11日はどういうわけかフェリチンが増えていたので、フェジンとビタミンB12の静注がされなかった。いつも減少している体内貯蔵鉄がまれに上昇するのだから、人体というのは不思議なもの。異常気象と同じで変動幅が大きいのは危うい、低めでもいいから体内貯蔵鉄は安定している方が安心である。前兆現象なしに突然鉄欠乏性貧血になってしまうのはリスクが大きい。
 主治医がいて、定期的に診てくれるというのは安心で、じつにありがたい。

(胃癌で胃の全摘手術を受けた人たち、あるいはこれから手術する人たち、そしてその家族の皆さんの役に立てることがなにかしらあればうれしい。事実をありのままに記録して御覧にいれたい。左側の欄にあるカテゴリー「cancer」をクリックすれば、過去の記事が並んで表示されます。)

<余談:尿管結石で始まった正月>
 今年は正月から尿管結石と味覚障害を起こした。飲み物を普通に飲むと下痢を起こすので、術後の11年間慢性的に水分摂取量が少なかったことが、結石の遠因になったのだろう。
 500mlのペットボトルなら1時間以上かけないと飲みきれない、それ以上の速度で飲むと下痢を起こして体重が減るから、自然に水分摂取量が少なくなる。
 数か月前から腰のあたりがダル重い自覚症状があった。夏にサイクリングをやりすぎたせいで腰に過重な負荷がかかっのだろうかと気になっていた。原因は別だった、尿路(腎臓から膀胱への尿の経路)結石で正月2日から寝られない日が数日続いた、味覚障害がそのうえに重なり、食べ物はおろか、水を飲むのも嫌だった。水は味覚が正常でないと飲みづらいということが分かった。普段は意識していないが微妙な味をかぎ分けて飲んでいるのである、味覚が消失することでそれがわかった。わけがわからないで鈍い痛みが続いて眠れない日が続くと体重も減っていく。主治医は症状を訊いてすぐに「尿管結石だろう、正月休み明けに市立病院でCTスキャンをして確認してみよう」、それを聞いてほっと一安心。CT画像を見たら、診断通り膀胱に結石が光っていた。大半が出た後で最後の一つが残っていたようだ。

<余談2:スキルスは薄気味が悪い>
 岡田先生に内視鏡検査で幽門前庭部の腫瘍を確認してもらった。2回目の診察時にスキルスもあるはずだから、さらに検査をお願いしたいと申し出た。
 わたしは十代のころから呼吸法とストレッチをやっていた。身体の気持ちのよい範囲でやっていたのだが、そのころはそれがヨガや座禅と同じだという意識はなかった。高校を卒業してから東京でその手の本を読み漁って独習したから、自分の「体との対話」に慣れている。
 内視鏡画像を見た後で自分の体に聞いてみた。胃の下側から上に向かって冷たい重いものがありすこしずつ広がっていく感じがして、頭の中の知識をスキャンしてみたらスキルス胃癌という言葉が浮かんだ。ドクターに相談してみた、「外科的設備がないと、胃粘膜のサンプル採取はリスクがあるのでやれない、明日釧路医師会病院へ入院すべきだ、第一もう食べ物が胃を通過しない」と告げられた。1学期の期末テストがあるので2週間の猶予をお願いした。叱られたが、テスト前の授業というやるべきことをやらずに入院するのは嫌だった。仕事で逃げたことはない、「敵前逃亡」は嫌だった。スキルス胃癌があるからアウトかもしれないからなおさら意固地になっていた。「お腹にオデキができたから入院してとってくるよ、1か月お休みだ、テストの結果はメールできる人は知らせて」そう告げて、「オデキだって!恥ずかしいね、誰にも言わないから」「おいおいみんな聞いてるぜ」、生徒たちの笑い声に送られて入院した。これが永遠(とわ)のお別れかもしれない、一人一人がメンコかった。その時の生徒が数人看護師になっている。
 釧路医師会病院で検査してもらったが、スキルスの診断がつくまで2週間を要した。胃の下側から検査している間にもスキルスが幽門前庭部から上部に向かって伸展していくのがはっきり自覚できていた。あれは気味が悪いものだ。自分の腹部に悪性新生物という別の生き物が成長しているのがはっきり自覚できるのだから。内視鏡検査で粘膜サンプルを四つ採取してもらい病理検査のために札幌(北大病院?)へ検体が送られた。ガストロ造影によるマーゲンの内科的検査も並行して行われた。結局、スキルスと巨大胃癌の併発の診断がついて、外科手術ということになった。どこまで広がっているのか開いてみないとわからないので、膵臓、脾臓、肝臓などの摘出もありうるとの同意書にサインした。
 手術は2時間の予定が6時間、胃の全摘、リンパ節切除、浸潤していた大腸の一部切除、術後の胆管炎症を防ぐために胆嚢の摘出がなされた。ほんとうは手遅れで、若い外科医の後藤先生(当時30代半ば?)は開いて状態を確認した後、手術をあきらめ、閉じようとしたが、ベテラン外科医の浅川院長が、「ざっくりとったら?」と指示したという。外科医は切らないと腕が上がらない、そういう観点から見るといい患者だったのである。後藤先生に執刀してもらって、ダメなら仕方なし、先生の腕を上げるために自分の体を使ってもらいたいと覚悟はしていた。執刀した後藤先生も、その後の治療にあたった主治医の岡田先生も、わたしが3年生き延びるとは思っていなかったようだ。だが12年たっても生きている。外科医の腕がよかったのと、その後の主治医のフォローのおかげである。運も多少よかったのかもしれぬ。

 こうして助かる蓮のない命を助けてもらって命長らえているというのは、まだ二つほどやりかけの仕事があるからだろう。ちゃんとやりぬいてから来いということ、天というものはなんと人使いの荒いことよ。癪だから楽しみながら片付けよう。(笑)

*フェリチン
https://フェリチン.net/

**フェジン
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/3222400A1058_1_03/

https://medley.life/medicines/prescription/3222400A1058/


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miopapa

11年前の担保宇相の発症に始まり、僅か半年弱で腎臓結石、褥瘡、そして大腸癌、珍旧性とは言われたものの間違いなく肺癌の摘出・・・。頸損でセンシン麻痺・神経の無い私にとっては、痛みこそ感じないメリット?はあったものの、とにかく不安とストレスの連続でした。最初の大腸癌による大腸1/3の切除より2年目の検査によるところは転移・再発を疑う者は見当たらないとのことでしたが。そんなこんなでと言う云い方は失礼かも知れませんが、ebisuさんに比べたら・・・。でも、常に血液検査の度に貧血気味で鉄分増加?野為に錠剤を処方服用していることと、少し前までカリウム不足の結果も出ていたこともあり、この長文、ついつい最後まで一気に拝読しました。一昨年の12月に悪性リンパ腫で超の就くぐらいの恩人を亡くしましたが、こうして冷静に闘病・治療のことを書き綴られる力・心、勇気?、どんな言葉で表せば良いのか、ただただ敬服して居ります・・・
by miopapa (2018-03-15 16:47) 

ebisu

miopapaさん

投稿ありがとうございます。口にくわえたスティックでのタイピングは慣れているとはいえ、根気のいる作業でしょう。
いくつもの病気と闘いながら昨年、「頸損挽歌」という本を出版されたのは素晴らしいことでした。
たくさんの人々に読んでもらいたいと思うので、アマゾンの当該書籍のURLを添付します。

https://www.amazon.co.jp/頸損晩夏―創りつづけた頸髄損傷の35年の生活の記録-上村-数洋/dp/4908083223
by ebisu (2018-03-15 22:15) 

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