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#3611 作図問題の良問 Sep. 13. 2017 [52. 数学]

 今日は中3年生の学力テスト総合Aの試験日である。昨日、B中学校の生徒が「平成25年度第4回学力テスト」の数学の問題をもってきて、作図問題の質問があった。問題には図が描いてあるが、都合により問題に示された図を描いてもらいたい。

 菱形ABCDがある、頂点Aから反時計回りにABCDと順に番号をつける。菱形の対角線の長さは縦4㎝、横8cmとする。辺CD上にCから3㎝のところに点Pがある。菱形の対角線は直交(直角に交わる)する。

 さて、ここからが問題である。

 頂点Aを辺BC上に折り重ねるとき、Aと重なる点をA'とせよ。折り線がP点を通るときの折り線を作図によって示せ。

 こういうような問題だった。

 紙を折るのだから、点Aと点A'はPを通る対象軸ℓに対して線対象となることがイメージできるか否かがカギである。わたしはこういう要所をつかまえることを「問題のヘソを押さえる」ということがある。
 問題には「ヘソ」がある。
 線対称は中1年生で学ぶが、中3の学力テストの作図問題で複合問題として出題されると、これら二つの分野がなかなか結び付けられない。教科書では、「第5章 平面図形」で、先に「対称移動」が出てきて、そのあとに「第2節 基本の作図」が出てくるので、作図問題に対称移動が結び付けにくいのかもしれぬ。
 作図の基本技術はたったの三つだけだから、何度か練習して完全にマスターしておこう。

① 角の二等分線
② 線分ABの垂直二等分線
③ 点Pから直線ℓへの垂線

 基本はこれら三つだけ、このほかには「線分ABの三等分線作図」があるだけ。学力テスト問題はたったこれだけの基本作図技術で正解できるように作られている。だから、どういう手順でそれらを使うのかという観点から問題文を読み解くこと。
 作図問題は他分野との複合問題になると途端に難易度が上がる、この問題はそういう例だ。

 中学生はここから先を読まずに、自力で解くことをススメます。

 脳にわからない状態を作り出し、しばらく保持することで頭がよくなります。すぐに解答を見るようでは頭はよくなりません。単に記憶の良い頭を作ってしまうだけ。ふだんの勉強のやり方が大事ですよ。
 羽生名人は江戸時代の将棋の難問集2冊、合計200題を、自力で全部解いたそうです。解答を見て勉強していたら、棋界史上初の七冠王は生まれなかったでしょう。



 正解手順を書いておく。

①コンパスの針を点Pにおいて、PAを半径とする半弧を描くと、辺BCとの交点がA'となる。
②半径を変える必要がないのでそのままにして、点Aから点Bのほうへ弧を描き、次に点A'に針を置いて弧を描き、二つの弧の交点をQとする。
③交点Qと点Pを通る直線を引く、これが求める折り線である。

 線対称の軸をℓとして軸上に点Pをとり、軸の左側に点Aをとれば、それと線対称になるA'の作図は誰でもできる。問題文を読み換えるとたったこれだけのこと。問題文の読み換え技術は高校数学では重要だから、意識してやってみたらいい、次第に慣れてくる。
 この問題の良問たる所以(ゆえん)は点Pを辺AD上ではなく、辺CD上にとったことにある。辺AD上にとれば、長方形でよく出題される頂点を折り重ねる問題と同じなので、おおよそ2割の生徒が時間内に正解手順に気がつくだろう。これも自分で作図してやってみるべし。

 さて、今日の学力テスト総合Aではどのような作図問題が出題されたのか、興味津々(しんしん)。


<びっくり仰天の解法>
① 答案用紙を縦折りし、次いで横折する。すると紙の中央に縦と横の折り線ができる。それを利用して四つの角を折り曲げて菱形をつくる。ここまで1分。
② 頂点にABCDを記入していき、点Pも記入する。こうして、折り線が点Pを重なるように点Aを辺BCに重ねてみる。
③AP、A'Pを結ぶ線分をそれぞれ記入する。
④ついた折り線に線を引いて眺める。

 辺の関係や折り線を眺め、作図の仕方に気がつけばOKだ。時間内に解くためだったら何でも利用してやろうという心構えが大事。


<余談:羽生善治と柳瀬尚樹対談>
 柳瀬尚樹氏は夙(つと)に名高い翻訳家である。氏が将棋が好きで羽生名人と親交のあることはよく知られている。柳瀬氏は根室高校の5年先輩のようだ。
 東京のK藤さんが数か月前にこの本『対局する言葉』を面白い本だからと送ってくれた。とっくに読み終わって、数回弊ブログで取り上げるつもりで延び延びにしている。センスということについて、将棋の名人と翻訳の名人の打てば響く記述がいくつもあるので、どうぞお読みください。フルパワーでの脳の駆使と心の問題も興味深い。十代のころにわたしもそうした経験がある。新たなカテゴリー「対局する言葉」を設定して、お二人の対局にコメントを付してみたい。若い皆さんの役に立つものとなることを願って。
 弊ブログで取り上げるのは、まだしばらくあとになります。K藤さん、ありがとう。

対局する言葉―羽生+ジョイス (河出文庫)

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