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#3530 ヒポクラテスの月形(中3教科書より) Apr. 13, 2017 [52. 数学]


  中3の生徒が配られた教科書を見ていたら面白い問題を見つけたという。「数学の窓」と題して「ヒポクラテスの月形」が194ページに載っていた。数学の歴史への興味を引き立てるにはよい題材だ。
 
 教科書がない人は図を描いて確かめてもらいたい。
 円を描いて、直径を結びその両端をBCとする。半円の円周上の任意の点をAとしてBA、CAを結ぶ。AB、ACを直径とする半円を上のほうに描く。そのときに、ふたつの月形の面積の和が直角三角形ABCの面積に等しくなるが、これを証明せよと書いてあった。

  この生徒は中3の数学はすでに学び終わっており、同じ問題を中1のときにやっている。首都圏の有名私立中高一貫校の中学入試ではヒポクラテスの月形は標準問題である。40年ほど前に東京渋谷駅前の個人指導の進学塾の専任講師をしていた時には、有名私立中学受験生は全員この問題をやっていた。それくらいポピュラーなのである。中高一貫校の先生が作問するから、三平方の定理を使えば簡単に証明できるような問題を中学入試で出題する。だから、鶴亀算、相当算、植木算などの和算の知識のほかに中学数学で出てくる問題で、小学生にも解ける問題は要注意である。

 考えたけど証明がわからないというので、黒板に書いたが、ほんとうは1時間でも考え抜いて理解してもらいたい。こういう良問を独力で考え抜くことが頭脳の発達の滋養になる。

<相手を見て教える>
  学習塾の門たたく生徒は、成績中位で学力を上げたいという生徒たち、学校の授業が理解できないので成績が落ち込んでいる生徒たち、学校の授業は難易度が低すぎて物足りないという生徒たちに大雑把に分類できる。議論の都合上、成績順に第一グループ、第二グループ、第三グループと命名しておく。
 第一グループと第三グループに学校と同じ方式の集団授業は必要がないことは自明だろう。第二グループと第三グループはときに分数や少数の計算の基本に戻って教える必要があるが、学校の授業では小学校で既習済みだからほとんどの先生が授業では教えていない。
(学力テストデータを分析すれば何を教えなければならないかは一目瞭然。点数の分布については実データを弊ブログで何度もとりあげている。)
 どこの個別指導塾でも同じだろうが、ニムオロ塾では生徒一人ひとりを見て、どこが理解できていないのか判断し、必要な解説をしている。あとはひたすら問題演習である。5-10分考えても理解できなければ第一段階ではヒントをあげるだけ。それでも理解できない場合は解説をする。最初から完全解説をしてしまったら結果がよくない。自分で考えることをすぐに投げ出し、先生に質問を繰り返すことになる。そういう癖がついてしまう。毎日やることは癖になるから、悪い癖がつかないような配慮が大切だ。
 第一グループの中学生には高校数学を射程に入れた説明をガンガンやって構わない。難関私立中学受験の生徒たちには、三平方の定理を使った証明を教えてもいいのである。高校生にはヒルベルトの「幾何学基礎論」の概要と現代数学の基本を解説したほうがさまざまな数学的概念や操作の意味の理解が深まる。


幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)

幾何学基礎論 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: D. ヒルベルト
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫


学問の体系構成や概念の展開に興味があって四〇年前に読んだのはこちらの方。内容は高校数学程度の知識で十分読めます。現代数学の枠組みを知るには不可欠の本です。この本を読んだらゲーデル「不完全性定理」も読みたくなるでしょう。ゲーデルは数理論理学の教科書レベルの知識が必要です。ニムオロ塾の塾生は中二の時に、数学syである藤原正彦「国家の品格」を音読トレーニングで読んでいるので、ゲーデルの不完全性定理の名前だけは知っています。
幾何学基礎論 (1969年)

幾何学基礎論 (1969年)

  • 作者: ヒルベルト
  • 出版社/メーカー: 清水弘文堂書房
  • 発売日: 1969
  • メディア: -



ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)

ゲーデル 不完全性定理 (岩波文庫)

  • 作者: ゲーデル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/09/15
  • メディア: 文庫



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