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#3499 ドイツと日本:生産性比較 Feb. 6, 2017 [93.経済用語]

 NHKラジオ朝7時34分ころの3分ほどのトピックス解説番組があり、今朝もそれを聞いていたら、ドイツ生産性が日本の1.5倍だそうだ。ほんとうだろうか?

 放送で流されたデータはドイツ人の年間労働時間平均値は1366時間派遣社員が100万人の2データのみ。日本人の年間労働時間は1800時間弱だからドイツ人の1.3倍時間働いていることになるから、なるほど労働時間が長くて生産性が悪いのかと納得してしまいそうになる。
 放送で言っていたことは他にもある。ある営業職のサラリーマンの一日を追った具体例の説明があった。朝7時に出勤、会議は立ったまま10分間だけ、3時に退社して家に帰ると、妻も仕事から戻っており、夏休みのプランを相談しているという具合。
 ドイツではフレックスタイム制が普通のようだ。わたしのいた会社も管理職はフレックスタイムになっていたと思うが、通常通りに出勤して5時半から7時ころまでいる。仕事は終わっているが社員と雑談やら仕事の報告、勉強会などで時間をつぶす。要するに働き方がドイツとは違う。時間内に仕事を処理できなければ無能とみなされる欧米と日本は事情が違うから、ホワイトカラーは欧米では家に仕事を持ち帰ってやる人が多い。
 ドイツでは労働時間貯蓄制度があり、貯蓄は社員の都合で引き出せる。貯蓄を取り崩して他の日に早く帰っていいのである。貯蓄が大きくなれば有給休暇に振り替えることもできる。会社は30日間の有給休暇があるが、たとえば労働時間貯蓄制度を利用して40日にできる。
 会社が違反した場合には180万円の罰金が科せられるというが、法人にとって180万円の罰金はほとんど意味がないだろう。日本と同様にドイツも労働規制の緩和が進み、派遣労働者が100万人いるという。ドイツの2010年の総人口は8230万人、日本は1億2653万人である。
*国の人口順リスト
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E9%A0%86%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88

 日本は非正規労働が生産年齢人口の40%に近いが、生産年齢人口を65%として同じ比率で計算するとドイツは2139万人ほどになる。ドイツに非正規雇用割合は日本の1/20ほどしかないことがわかる。この辺りも生産性計算に影響していないだろうか?国民一人当たりGDPには老齢人口の増大影響が大きい。今後は国民一人当たりGDPは低下し続けることになる。

 生産性の国際比較はドルベースでなされているだろうから、為替変動も大きく影響しているはず。気になって日本生産性本部の公表データを検索したら「日本の生産性動向 2012年版」がヒットした。
*http://www.jpc-net.jp/annual_trend/annual_trend2012_full.pdf

 生産性には資本生産性や総資産生産性、人的生産性である労働生産性などがある。労働生産性には一人当たり労働生産性と労働時間当たりの生産性がある。この資料の3ページには労働時間当たりの生産性の表が載っている。2011年度の一般労働者の年間平均労働時間は2000時間を越えている。パートタイマーは1100時間、その比率は28%付近にある。非正規雇用割合は36%だから、正規雇用は64%ということになる。
 産業別の労働生産性も載っているが、どういうわけか著しく生産性が低い農業(第一次産業)のデータが抜けている(5ページ参照)。日本の製造業は世界6位の生産性を誇る。

 国民一人当たりGDPは次の算式で計算されている。

    国民一人当たりGDP=国内総生産÷人口

 日本では高齢化が加速しているが、生産年齢人口が縮小すれば、この計算式では分母の人口の中に働いていない人の割合が大きくなるから、その結果生産性が下がることになる。

 OECD加盟国(34カ国)の労働生産性比較データが17ページに載っているが、日本の一人当たりGDPは34,311$(367万円)、18位である。フランス17位、イタリア19位となっている。

 19ページには購買力平価ベースでの労働生産性が載っている。

  購買力平価(PPP)換算労働生産性=PPPで評価されたGDP÷就業者数

 この計算式で計算した就業者一人当たり労働生産性は73,374$(784万円)で19位である。ドイツは81,327$で15位、英国が18位、財政破綻のギリシヤが20位。
(この数値から計算すると購買力平価換算比率は106.85円/$となる)

 分子の国内総生産はOECDが独自に計算している購買力平価でドル換算されている。OECD調査による購買力平価データの推移表をネットで検索したら、1983-89年までの分が出てきた。
*OECD調査による購買力平価の推移
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h16/03_siryo/sankou1.html

 1989年の購買力平価による換算比率は194円/$だが、この年度の実際の為替レートは136.96円/$であるから、4割以上の円安レートとなっている。これでは日本のGDPは不当に過小表示される、それゆえ生産性データも欧米に比べて低いものとなる。
*$円換算レート
http://ecodb.net/exchange/usd_jpy.html

 2009年から2011年のレートは、93.5⇒87.8⇒79.8である。2012年版のOECD購買力平価による換算率は107.0円/$だから2011年の79.81円/$とはかけ離れている。このレートで国民一人当たりGDP367万円を割ると、45,984$となり、OECDの加盟34か国中19位となる。
 
 政府予算が歳入50兆円に対し歳出100兆円であることは、GDPを50兆円押し上げて生産性向上に寄与している。米国の財政赤字はもっと大きい。

 要するに、生産性の国際比較というのは、たんにGDPを総人口で割り算しただけの数値だということ。それもドル換算値での比較だから、換算レートをいくらで計算したのかで結論が大きく振れるものだということ。

 日本のGDPを500兆円、人口を1億2653万人とすると、日本の一人当たり生産性(GDP)は次のように計算される。
   500兆円÷1億2653万人=395万円

 先週末の112.60円/$で換算すると、
   395万円÷112.60円/$=35,079$


〈追加情報〉
 2016年度の労働生産性国際比較データが、12月19日付でアップされているのにいま気がついた。
 「新GDP基準」では、就業者一人当たり労働生産性が78,997$(832万円)、順位は3位下がって日本は22位ドイツは95,921$で3位上がって12位

*2016年版 労働生産性国際比較データ
http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2016_press.pdf

 

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