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#3456 福島第一原発事故不可解な後始末:ある試算 Nov. 16, 2016 [13. 東日本大震災&福島原発事故]

 福島第一原発事故の廃炉費用は800億円と見積もられていた。ところが現在7000億円に膨れ上がっている。原子炉本体の底を溶かし、さらに原子炉格納容器を突き破って床も溶かして固まった核燃料デブリがどのようになっているのかすら5年経ってもわからない。スリーマイル事故のデブリとは組成が違っていて、取り出すのも取り出した後に処理するのもずっと困難なようだ。いまだに取り出す方法すら決まっていないから、チェルノブイリを例に出すまでもなく、今後50年間に廃炉にできる可能性はないのだろう。

 1986年4月に起きたチェルノブイリ原発事故ではたった1基の原子炉が廃炉できずに3,000人の管理作業員を投入して被爆しながら現在も監視体制下においている。30年がたっても燃料デブリは取り出し不可能な現実がある。
 福島第一原発のメルトダウン原子炉3基もそうなるのだろう。50年経っても廃炉できない可能性大であるから、廃炉費用が1兆円になるのか10兆円になるのか見当すらつかぬ。

 3基×3,000(人/日)×(16,000円+20,000円)×365日×100年=1.183×10^13

 チェルノブイリを基準にすればメルトダウンを起こした3基の100年間のメンテナンスに人件費だけで11.8兆円かかる計算になる。1基当たり4兆円である。事故を起こした原発は廃炉できずに、こんなにコストがかかる。人件費以外のコストが人件費の5割かかるとしたら、17.7兆円である。おおよそ年間1774億円。

 原子力発電所を保有する電力会社には、事故処理を前提に廃炉と除染費用と補償金の現実的な金額を試算して積立金を積むように電気事業会計規則を変更すべきで、国会議員は党派を超えて法改正に尽力してもらいたい。会計学者も国会議員をバックアップするために積極的に発言すべきだ。

 仮に、原発1基当たり20兆円とすると、耐用年数40年間では次の計算になる。

 20兆円÷40年=5000(億円/年・基)

 1基当たり5000億円だと、54基の国内にある原子力発電所の年額の積立額総額は、

 5000(億円/年・基)×54=27,0000(億円/年)=27兆円

 原発の発電コストは10倍どころではない、数十倍に跳ね上がるだろう。だがこれは費用の1/100かもしれない。なぜなら使用済み核燃料の中間貯蔵コストや再処理および最終処分コストが入っていないからである。再処理コストはウランの購入代金の十倍以上かかり、それ自体が巨大ビジネスである。すでに濃縮再生処理によって生まれたプルトニウム47トンは2.3万年の半減期をもつから、放射能が1/8になるのに10万年を要するのだ。
 仮に、年間100億円の保管コストがかかるとすると、

 100億円×10万年=10,000,000億円=1000兆円

 途方も無いコストが実際にかかることになる。これを原発の耐用年数40年で割った金額が発電コストに算入されなけらばならない。したがって、原発発電コスト10.1円/KWhは現実離れ、大嘘である。現実にかかるコストは100倍でも足りない。

 2017年のデブリ取り出し予定は2020年に延期されたが、2019年になったときにはまた5年間延長されるのだろう。そしてそれが繰り返される。

 原発事故処理の基本原則は原因者負担責任である。廃炉は東京電力の負担でやらなければならない。除染も損害賠償もだ。
 除染は延べ900万人が動員された。効果は薄いし、放射能を含んだゴミが各地に野積みになって日光や風雨に曝され袋が劣化して破れている。破れた袋が風雨に曝されたら放射能は雨水となって流出している。除染費用は3.6兆円の予定が4.8兆円になっている。
 汚染された田圃には柳の潅木が生い茂ってしまいもう元には戻せない。廃棄物を詰めた袋は紫外線で劣化しすでに半分以上詰め替えを行っている。今後5年でまた半数以上の詰め替えをしなければならないだろう。袋は1枚14,300円だという。すぐに200億円を越すだろう。
 損害賠償はいくらになるのか見当もつかぬ。住宅を失い、田や畑を失い、仕事を失った人々が十数万人いる。

 東京電力の計画では燃料デブリ取り出しに2,500億円かかるそうで、スリーマイルの0.7掛けだそうだが、誰が信じるだろう。取り出し方すら現実的な案がないのだから、確度の高いコスト計算すらできない。

 そんな中で、廃炉費用や補償費用が託送料(送電コスト)に上乗せされることが決まりそうだという。原発以外の送電、つまり太陽光発電にも原発事故費用が上乗せされるのである。おかしいではないか?原発事故処理費用は原子力発電コストとして賦課されるべきで、他の発電コストに配賦してはならない。これは断じてやってはならぬことだ。原子力発電を延命し、事故の責任を経営者と株主とお金の貸し手の三者がまったく取らずに、請求書を国民に回す所業である。こんなことが許されたら、どんな犯罪を犯しても罪に問えない国になってしまう。

 原発の発電コストは10.1円とされてきた。太陽光やガスや石油や石炭火力に比べて一番安いとされてきたが、廃炉コストや事故処理費用が1/10、あるいは1/100に見積もられてきたのではないか。原発の発電コストは使用済み核燃料の再処理コストや最終処分コストそして廃炉費用を適正に計算すると、100倍を軽く超えるだろう。そのほかに、原発事故による除染費用や補償費用を入れるとさらに途方も無いコストになる。

 原発を廃炉に追い込むためには原因者負担原則を曲げてはいけない。東電の株を全額減資して補償費用や廃炉費用に当てるべきだ。これだけの大被害を出したのだから役員には責任を取らせるべきだ。それが他の電力会社への原発再稼動抑止力となるだろう。
 大株主は銀行、金を貸しているのも銀行だ。株主は株主責任を、貸し手は貸し手責任を取るべきだ。

 原子力発電を国策として推進してきた国が救済策を打ち出すのはその後だ。たいへんな財政負担になることがわかれば、原発を国策として進めるわけには行かなくなる。


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