成城大助教授を経て、フリーの翻訳家に。60カ国語以上を使って書かれ、翻訳不可能といわれたジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」を完訳。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」や、ロアルド・ダールの「チョコレート工場の秘密」など、翻訳書は多い。

 北海道新聞では1996~2006年に「ほん欄」などにエッセーを連載。

 将棋ファンでも知られ、羽生善治3冠との共著も残している。近年はジョイスの大作「ユリシーズ」の完訳を目指し、文芸誌「文芸」で連載中だった。

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  2010年のことだが、弊ブログコメント欄で英語談義をしていたときに、「根室出身の英語の専門家」と名乗る方から、最上級の修飾語に関して品位の高いコメントをいただいたことがある。そのときに『英語基本 形容詞・副詞辞典』を薦められた。形容詞と副詞に関する辞典では最高の辞典だというのである。疑問がでたときにはこの辞書に訊けということだと了解してすぐに手に入れた。ついでに姉妹編である『英語基本 動詞辞典』も購入した。
 コメントの内容に英語の知識の深さがにじみ出ていたので、根室出身の英語の専門家と名乗るほどの人は誰だろうと気になって調べたら、柳瀬尚紀さんがヒットした。
 そのころの最新刊の『日本語は天才である』も読んだ。日本語への造詣も深い。英米文学者で日本語の造詣の深い人は稀である。翻訳を生業として日本語使いの名人としては、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の翻訳で夙(つと)に有名な平井呈一氏がいる。彼は永井荷風や佐藤春夫に指示した人だから、例外中の例外である。柳瀬尚紀はわたしの頭の中ではその次に並んでいる。センスもすばらしいが、人並みはずれた努力も重ねた人だろう。
 著作が多いので、英語と日本語のいずれかに興味のある人は著作リストの中から興味のわいたものを選んでぜひ読んでもらいたい。

 27歳で早稲田大学文学部を卒業して大学院へ進学している。成城大学で助教授をしたあと、文筆業で生計を立てる覚悟を決められたようだ。翻訳も著作も多い。
 調布にお住まいだったようだから、京王線高幡不動駅の我が家からは特急電車で三つ目、15分ほどの距離だ、一度お会いしておけばよかった。
 スキルス胃癌の手術後5年ほどしてから東京へ毎年行っているが、体力がないので近所を回るだけが精一杯で、電車に一人で乗って出かけたことがない。
 過剰富裕化論の馬場宏治先生にも、青森大学経営学部長の戸塚さんが懇意にしていたにも関わらず、術後の体調が悪くとても東京まで旅行できる状態ではなかったので、お会いできなかった。真正面から議論してみたい相手だった。馬場先生はわたしよりも2年ほどあとに胃癌を発病して2011年10月14日に亡くなられた。
 遺稿を戸塚さんが編集して奥様が出版され、わたしも一冊いただいきその折にお礼状を書いたら、奥様から丁寧なお手紙をいただいたことがあった。一度戸塚先輩とお伺いしたいと思いつつ果たせていない。
 人生はなかなか思うようにならぬ。あの世というものがあるなら、今度はぜひお会いしてお話してみたい。先に逝かれた方々にお会いできるなら、死ぬのも悪くはない。
 あの世があるのかないのか、誰にもわからない。

*http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/doc/03ED2FB284FC4EDC492571C0001B293D?OpenDocument

*柳瀬尚紀 ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E7%80%AC%E5%B0%9A%E7%B4%80

  英語基本 形容詞・副詞辞典
 #1034 生徒の質問:determine とdecide May 20, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-20

 #1243 英語基本動詞辞典 Oct. 16, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-16

日本語は天才である

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英語基本形容詞・副詞辞典

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  • 出版社/メーカー: 研究社出版
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 単行本