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#3369 日本銀行の貸借対照表を読む  July 20, 2016 [95.増え続ける国債残高]

 平成27年度の日銀バランスシートをご覧いただきたい。

*第131回事業年度(平成27年度)決算等について(日本銀行)
http://www.boj.or.jp/about/account/zai1605a.htm/


 資産・負債・資本の部(純資産の部)にまとめるとこのようになります。

 資産合計  405.6兆円     負債合計  402.0兆円
                                  純資産合計   3.5兆円


 日銀の自己資本比率(純資産合計÷資産合計)はわずか0.9%です。トヨタ自動車のそれは35.3%、経営破綻寸前だったシャープは9.5%です。台湾資本への第三者割当増資を差し引いて計算するとシャープの破綻寸前の自己資本比率は3.4%です。日銀は破綻寸前だったシャープよりも貸借対照表の内容が悪化しています。
 日銀の貸借対照表の内容がアベノミクスによる国債買い入れですさまじく悪化したことがデータから読み取れます日銀は債務超過寸前の状況にあるといってよいでしょう。
 (トヨタとシャープは<余談>のところへデータを書いておきました)

 資産と負債の金額に比べて、純資産額のなんと薄いことよ、それがわたしの第一印象です。
 何か不測のことが起きたら、すぐに債務超過になります。こんなに少ない純資産額(自己資本)で、巨額のリスク資産(長期国債)を保有してしまっているというのが日銀の実態です。上場企業なら、株は暴落、取締役は株主代表訴訟で巨額のリスク資産を抱えた責任を問われます。
 債務超過になって大破綻が生じても、黒田総裁も日銀政策委員会のメンバーも誰一人として責任を負わないくてよいのです。無責任な体制になっていますから、彼らは安心して国債買入れという「無謀運転」を続けます。

 具体的に内容を見ましょう。資産勘定405.6兆円のうち国債勘定が349.1兆円長期国債301.8兆円)でありますが、前年に比べて79.4兆円増加しています。
 負債の部では「当座預金」が前年対比で73.8兆円膨らんでいますつまりマネタリーベースの増加分のほとんどが日銀当座預金勘定に「ブタ積み」されており、アベノミクスの量的緩和策はデータから見ると効果がありませんでした

 純資産はわずか3.5兆円です。国債金利が上昇すれば、国債の巨額評価損が発生し数十兆円規模の債務超過になりえます(弊ブログで試算したことがあります)。保有しているリスクの高い長期国債に対して、純資産額があまりにも小さいといえます。

 B/Sから新規国債発行のほとんどを日銀が買い入れている構図が明らかですが、このまま毎年80兆円規模の国債を日銀が買い入れたらどうなるのでしょう?
 日銀保有の国債残高が2年後にGDP(500兆円)の規模を超えてしまいます。しかもその内容が大きく変化しています。短期国債からリスクの大きい長期国債へとシフトして、金利上昇時の評価損失が巨額になります。

 もう一度計算してみます。2年後に日銀保有国債残高がGDP500兆円になったと仮定します。マイナス0.3%が、現在の10年債の利回りです。期待金利が5%に上がると、国債の流通価格は53.3%下がります(単利で計算)。
 (1-0.3%×10年)÷(1+5%×10年)=0.467
 500兆円の国債の平均償却期間が8年と仮定すると、
 500兆円×(1-0.467)×0.8=213.3兆円(評価損)

  2年後の2018年には日銀が500兆円、残りの600兆円を邦銀が保有しているとすると、日銀ばかりでなく、邦銀が債務超過になり、一斉に経営破綻することになります。出口戦略どころかとっくに逃げ場がなくなっているのです。

 日銀が国債買入をストップすれば国債金利が暴騰し、保有国債の巨額評価損失を計上し債務超過になりますが、買入をやめなければ円への国際的な信任が失われ、円がいつ投売りされるかわからない状況が生まれます。
 国内の企業が預金封鎖を恐れて、邦銀から外銀へ預金をシフトし出したらアウトです。雪崩のように預金移動が起きます。百兆円単位での実需の円投売り、ドル買いが生じます。ヘッジファンドにとっては儲け時ですから、チャンスを逃すはずがありません、ひとたまりもないでしょう。

 円が暴落し物価が急上昇、国民が保有している銀行預金が紙くずになるリスクが現実味を帯びてきていると言えます。これがアベノミクスの正体です。

 自民党国会議員のみなさん、安倍総理がなんと言おうと、足元を見たほうがよい。50年も前に米国で生まれたマクロ経済学は亡国への道、少子高齢化で急激な人口減少が進む日本の現状に合うはずがないのです。縄文時代以来1.2万年の歴史を持つ日本列島で初めての長期人口減少という時代に突入しています。現実を直視しして健全な保守主義に還らなければ、地獄の釜の蓋をあなたたちが開けることになります。

 たいへんな災厄が降りかかっても、日本が滅亡するわけではないから、ケセラセラと笑っていられますか?
 戦費調達のために赤字国債を発行し続けた結果、戦後まもなく預金封鎖という事態を招いています。その水準に政府発行の国債残高が近づいています。現在のペースを前提にすると、東京オリンピックの年にその水準を超えますが、大破綻への備えがまったくありません。オリンピックの準備に現(うつつ)を抜かしている場合でしょうか?時間がもう余り残っていないことだけは慥(たし)かです。

 大破綻を通過することでしか日本は変われないのでしょう。30年の苦難の期間を経て、日本が生まれ変わることをわたしは信じています。日本は明治維新の百倍の大転換期を迎え、根底から生まれ変わります。日本の伝統的な価値観に基づく新しい経済学が必要ですが、その準備はわたしがカテゴリー「資本論と21世紀の経済学」でやりつつあります。
 破綻を潜り抜けて得られるものについてもも#3327で言及してあります、暗いことだけではありません、希望もあります。

 日銀が国債を全部買い入れて、無利子永久債としてB/S計上すれば問題ないなんてことを言う人がいますが、大嘘で、そんなことをやれば日銀のバランスシートがただちに債務超過になります。
 世の中に返さなくてよい借金なんてありません、返せなければ国民を道連れにして政府財政が破綻するだけです。総理大臣の安倍晋三と日銀総裁の黒田いう人は、大破綻の引き金を引くために天が使わしたのでしょう。日本が大きく変わるために必要な天の采配だったようです。大破綻は天の御意思ですから、避けようがありません。
 具体的にどういうことが起きるのか、13項目を#3327にリストアップしています。3割はストライクゾーンを外していることを願っています。経済学は経験科学ですので、これから起こることについては、いつ、何が起きるのか誰にもわかりません。


*#3327 日銀による財政ファイナンスは財政法違反 June 13, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-06-12-1

*#3311 有効求人倍率1超はアベノミクスの成果?:ご冗談を(笑) June 1, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01-1


< 余談 >
 トヨタ自動車の総資産額と純資産額を調べてみました。
*http://www.toyota.co.jp/pages/contents/jpn/investors/financial_results/2016/year_end/yousi.pdf

  総資産額 47.4兆円
  純資産額 18.0兆円
 
 自己資本比率(純資産/総資産比率)は35.3%です。日銀は1%にすぎません。

 赤字企業のシャープを見てみます。
*http://www.sharp.co.jp/corporate/ir/library/financial/pdf/2014/1/1403_4q_tanshin.pdf

  総資産額 2.18兆円
  純資産額 2071億円

 自己資本額2.07億円には1437億円の増資が含まれています。第三者割り当て増資後の自己資本比率は9.5%です。増資分を差し引いて自己資本比率を算出すると3.4%ですから、日銀は破綻寸前だったシャープよりも貸借対照表の内容が悪いということになります。。
 このように代表的な優良企業と破綻寸企業を比較してみることで日銀の貸借対照表の内容がどれほど悪いのか実感できます。



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