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#3312 迷走する安倍発言  June 1, 2016 [92.G7サミット]

<更新情報>
6/2 朝10時 「消費税増税は財政再建につながらない」を追記(相川さんの投稿を読んで、なるほどと思って追記した)
   午後6時 リーマンショックとサブプライムローン解説を追記

 時系列に安倍総理の発言を並べてみようと思う。これだけ迷走したら、頭は大丈夫かと疑われてもしかたありません。今日も前言と真っ向から矛盾する発言を得意げにしてくれました。俳優が舞台で台詞に酔うように、自分の演説に陶酔し切っていました。

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① リーマンショックや大震災のようなことがない限り、消費税増税の延期はしない、ここで再び皆さんに断言します。アベノミクス三本の矢でそういう経済状況を必ずやつくりだします ⇒2014年12月
② リーマンショックのようなことが起きているとは思わない ⇒2016年2月
③ リーマンショック並みの経済状況にある ⇒2016年5月
④ 現在のところリーマンショック級の事態は発生していない、(消費財増税は)お約束とは異なる新しい判断である。世界経済にリスクがあるから消費税増税を延期する ⇒2016年6月1日
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 [消費税増税が財政再建につながらないことは、消費税導入とその後の2度の税率アップが証明しています。大幅な歳出カットをしない限り、財政再建は不可能です。国会議員はまず自ら政党助成金廃止や報酬の公務員給与並への引き下げ、不明朗なことの多い政務調査費の見直しをやるべきではありませんか。大企業並となっている公務員給与を中小企業も含めた基準への改定や公共事業の見直しと半分カット、特殊法人の半減などやるべきことがたくさんありそうです。国会議員・都道府県議会議員・市町村議会議員諸氏は身を切る歳出削減から財政再建を始めるべきです。消費税を増税しても新規国債発行額が増加し続けるというのが冷厳な事実ですから、大胆な歳出削減とセットでなければ財政再建効果がありません。]

 ①~④は、この1年半の間に同じ人の口から出た言葉です。
 このような発言をつないで中学生が作文したら先生に「何を言ってるのかわけがわからないから書き直しなさい」とつき返されます。

 以下順番に発言の年月を明らかにしながら、発言を取り巻く事情をおさらいしてみます。
 安倍総理は、2014年12月の衆議院選挙で2015年10月実施予定だった消費税増税を、2017年4月に延期するための信を問いました。その際に出た発言が①です。
 2014年11月に次のように公言しました。
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来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています。
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 今年2月20日のにっぽん放送ラジオ番組へ生出演したときの発言が②です。
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http://jp.reuters.com/article/abe-japan-shock-idJPKCN0VT07A
 

[東京 20日 ロイター] - 安倍晋三首相は20日、ニッポン放送のラジオ番組に生出演し、年初から世界的な株安が進み、東京市場では円高が進行していることに関連し、リーマンショックのようなことが起こっているとは考えていないとの見解を示した。

そのうえで2017年4月の消費税10%増税を現時点で延期する意向はないとの見方を繰り返した。
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 G7で各国首脳を前にして演説をぶったときの発言が③です。「リーマンショック並みに商品価格が下落している」とグラフを示し、各国首脳へ日本と協調して金融緩和政策と財政出動することを求めました。各国首脳はリーマンショックの状況下にあるとは考えていないと否定。
 肝心の米国だって1~2%のプラス成長だから、経済成長のための財政出動なんてまったく必要なしテレビ報道を見て、何を血迷ったのかと驚きました。安倍総理の経済ブレーンはなにをしていたの?まさか、こんな世迷言にOKを出したの?あのグラフを作成した人は経済知識ゼロです。そういうブレーンが首相周辺にいて、できもしない仕事をしているのだとしたら、これからも国益を大きく損なうことになるので大問題です。どなたが作成したのか明らかにすべきです
 リーマンショックとは低所得層に高金利の不動産担保ローンを貸付け、それを金融派生商品として証券化してリーマン・ブラザースという世界第4位の投資銀行が大量に販売して起きたものです。サブプライム(高金利)の不動産担保ローンは住宅バブルを前提にした貸付で、不動産価格が値下がりすると借り手は返済不能になり、住宅を売り払います。米国は日本と制度が異なるので、売り払ってそれで弁済すれば借金はゼロになります。家を処分して借金がさらに残ることはないのです。不動産担保ローンの借り手が次々と返済不能になり、家を処分して借金をゼロにしました。その不動産担保ローンをハイリスク・ハイリターンの証券化して販売したリーマ・ンブラザースが経営破綻してしまいました。発行していた大量の社債なども同時に紙くずになったのです。だから、リーマンショックは商品市況の低迷とは何の関係もありません。それを、商品市況の低迷がリーマンショックと同じだとG7サミットの場で得意げに説明してしまったのですから、大恥です日本の総理大臣は経済のイロハもご存じないと各国首脳が思ったのは当然でした
 各国首脳はもちろんのこと、フランス、英国、ドイツ、米国の新聞やテレビが「リーマンショックのときとはまったく状況が違う」といっせいに報道し始めたら、とたんにまた発言が変わってしまいました。まるで風に吹かれるままにくるくる回る風車のようです。
 
 政府の経済現況に関する公式な判断は「月例経済報告」ですが、五月に公表された「月例経済報告」ではリーマンショック並みの経済状況にあるなんて言っていません。誰があのような杜撰な資料を「創った」のでしょう。いくら耄碌しても内閣参与の経済ブレーン浜田氏ではない、外務省や財務省と協議をするのが通常の資料作成手順ですが、それをすっぽかしたような感じがします。オフィシャルな場に出せば批判されるので、出さずにいきなりG7で公表したようにみえます。国益を損なうイレギュラーなやり方です。

 5月23日公表の月例経済報告冒頭から引用します。
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*http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2016/0523getsurei/main.pdf
  景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている

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 「緩やかな回復基調が続いて」おり、日本経済に不安材料はいまのところないというのが、政府の公式見解です。この見解に従えば、消費税増税を延期する理由はまったくありません。だから、秘密裏に財務省を出し抜いて資料を作成したG7で公表したのではないかという推測が成り立ちます。首相官邸の側近(=お友だち)と外務省の演出だろうとわたしは推測します

 このような前置きがあって、今日(6/1)の消費税増税延期釈明会見で④の発言をしました。曰く「リーマンショック級の事態は発生していない」、「公約違反ではなく、新しい判断である」と強弁。牽強付会を絵に描いたような説明でした。どうしてこんなにころころ発言が変わるのでしょう?
 「リーマンショックや大震災が怒らない限り消費税増税は再延期しない」と言っていたのに、国内に消費税延期の理由が見つからなくなって、世界経済のリスクを理由に消費税増税延期を決めました。「新しい判断」だそうです、言うことがまったくわけがわからない。

 おまけがついています、また新たなお約束をしてしまいました。消費税増税延期による財源不足を記者に問われて、「赤字国債ではまかなわない」と断言したのです。
 またやってしまった。癖です、これはもう性癖です。何か言われると、その場の勢いで強気に出て、後先考えずにできもしないことをついしゃべってしまう、まるでガキの喧嘩レベル。野田総理と国会議員定数の議論のときもそうでした。とってもナィーブなのです。
 ナィーブは世間知らずのアホという語感をもつ言葉です。英英辞典の定義を書いておきます。
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naive:too willing to beliieve that someone is telling the truth, that people's intentions in general are good, or that life is simple and fair.(我が強すぎて、人の言を容れることができない、人の意図するところが善意であることが信じられない、人生が単純で公正であることが信じられない、それがナィーブということ)
  People are often naive because they are young and/or have not had much expereinece of life.(人は若いとか、人生経験が足りないことでナィーブになりがちである)
  She was very naive to believe that he'd stay with her.
  ○ They make the naive assumption that because it's popular it must be good.
  ○ It was a little naive of you to think that they would listen to your suggestions.(彼ら・彼女たちが君の言うことに耳を貸すと考えるのはちょいと甘いね)
                CALDより引用
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 これだけ発言がぶれるのでは、今日何を約束してもらっても、明日には「新しい判断」がでて約束が実行されないということになりませんか。わたしの発言はその場しのぎのものだから、信用しないでくださいと言っているようなものです。
 日本国の総理大臣であることを自覚して慎重な発言、ぶれない発言をしてもらいたい。そして明言したことはどんなに自分の政権に不都合でも、誠実に実行してもらいたい。
 何か困難が出る都度逃げてしまう、原発廃炉問題然り、プライマリーバランス回復と財政再建然り。

 自民党の中から健全な保守主義を志向する国会議員グループが出てきてもらいたい。内部に批判勢力がないと、安倍総理はどんどん恣意的な方向へ傾斜していきます。


<余談>
 G7で配布した「リーマンショック並みの商品価格の下落」資料作成に、財務省は関与していないと財務大臣が明言した。事前に資料を閲覧した関係者によれば、官邸サイドの人間の名前が資料に載っていたという。
 また「お友だち」でことを進める悪い癖がでたようだ。大事なところでそういうことをやるから仕事に大きな穴が開く。仕事のできないお友だちを集めて「村」の中だけで議論したらこれからも危うい。第一次安倍内閣のときに懲りたはずだが、調子に乗ってまた悪い癖が出だした。困ったものだ。

*#3311 有効求人倍率1超はアベノミクスの成果?:ご冗談を(笑) June 1, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-06-01-1


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コメント 4

相川始

おはようございます

安倍政権の発言のブレは今に始まったことではない。
それ以上に国会議員および地方議員の発言のレベルが低いのが問題です。
与党も野党も発言のレベルが低くすぎて、国民は一切ついて行こうとしないのが現実です。
野党側も、対案を上げるというのはそっちのけで批判ばかり。
与党側は、権力を維持する方に力を入れすぎなので、国民を蔑ろにしすぎ。

議員も裁判員制度みたく、国民から抽選式するなどで、色々な案や意見がでるのではないでしょうか?

「消費税増税=財政再建」という幻想に囚われている官僚に対し、何も言えない。そして選挙に当選するために耳あたりの良いことを言うが、それを実行する人が少ない。

本当に「財政再建」をしたいのであれば、議員と公務員の給料を一定額下げる必要があります。その点に議員が手を付けると官僚や公務員の抵抗で、法律で決まっている事項だから無理とか言って、やろうともしない。
そもそも公務員の給料が大企業の給料に合わせた額という基準がおかしく、中小企業などを含め、その平均程度の給料でよいのではと思います。

収入に対し支出を抑えるのは当たり前のことです。
そして今後の天災レベルの災害を想定し、災害復興貯金などを準備することも必要になると考えます。

なぜ高学歴の人たちはこんなことも理解できないのか?
そもそも最近の高学歴の人は、知識ばかりで、一般常識にかけるのではないか?
by 相川始 (2016-06-02 07:32) 

ebisu

相川さん
こんいちは

おっしゃることいちいちごもっともと頷きながら読みました。
財政再建をするなら、あなたが主張している次の条はやらなければならぬことにかならずや含まれていなければならないことです。

>本当に「財政再建」をしたいのであれば、議員と公務員の給料を一定額下げる必要があります。

これが言い出せません。自分たちの利害のみを考える人間が圧倒的に多くなってしまったからです。

戦前のエリート主義は、国のためなら自分の命を投げ出すという気概も育てました。ノブリスオブリージュです。

戦後の教育は個人主義を徹底し、世のため人のために働くことが尊いことであるという価値観を破壊してしまい、高学歴は権力とお金を手にして、私腹を肥やす手段と化してしまいました。

先の大戦では世のため人のためと思って戦った人たち、親たちや友人たちのために戦ったたくさんの有為な若者たちが戦いに斃れました。特攻兵だけで5000人です。優秀な若者が選抜されて、特攻パイロットとして速成の訓練を受けて散っていきました。無残ですが戦争の現実です。かれらのお陰で現在の日本があります。
先の大戦はアジアが白人帝国の植民地となり全世界が白人帝国の前にひれ伏すかどうかの最後の一戦でした。負けるにしても、凄まじい戦い様を見せて負けなければ、生き残る日本人は白人の隷属下に置かれます。沖縄どころの話ではありません。なんとしてもそういう事態の招来を防ぎたい、切実な思いで戦い散っていった若者たちがいたことを矜りに思います。

戦後はそういう公のために仕事をしようとする人材が枯渇したところから出発してしまったのだと思います。
その後遺症がいまでているのでしょう。

そろそろ変わらなくてはなりません。
わたしは自分ができる範囲のことをします。日本人が1.2万年日本列島で暮らし育ててきた価値観に遡って、ダメなことはダメと言います。何がよくて何がダメなのかがわかっていない、判断基準が何であるのかを日本人が失っているように感じます。

>収入に対し支出を抑えるのは当たり前のことです。
>そして今後の天災レベルの災害を想定し、災害復興貯金などを準備することも必要になると考えます。

このようなあたりまえの話すら通じなくなっています。
家計ではあたりまえのことです。何かに備えあるいは老後に備え、お金を積み立てて用意しておかなければ生活は維持できません。
だから根室市も400年の一度の大地震と20mの大津波に備えて、お金を積み立てておかなければならぬことはあたりまえですが、現実は市税収入の7倍、200億円もの借金の山をつくって恥じない人が市長をやっています。
それを支持する少数の人がいます。オール根室と称したり、イシンデンシンナンチャラ会議、マチトクラシ・ネットワークとか、何とか領土返還諸団体とか言う名前で補助金を使って自分たちの利害だけに固執して仕事をしています。
見るも哀れです。

これはもう魂の問題です。
世のため人のために働く、そういう価値観の大切さをさまざまな話題を取り上げながら、そこに織り込んで語り続けたいと考えています。
どこまでやれるのか、いつまでやれるのか、効果があるのかないのか、そういうことはどうでもよい、やるべきだと思うことをいまやるのみ。

そういう思いで書き綴っている弊ブログを、いつも読んでくれている読者の皆様に大感謝です。
相川さんもその大事なお一人で、あなたの投稿でわたしも触発され、勉強させていただいています。
ありがとうございます。
by ebisu (2016-06-02 12:08) 

相川始

おはようございます

私の戯言をご理解して頂き、ありがとうございます。

「魂」や「精神」の問題だと思います。
今は仕事の労働に対し、「楽」を求めて過ぎています。
「楽」することが悪いわけではなく、「楽」だけを求めることで、自分が努力しないことが問題なのです。
昔は「人生すべてが勉強」と言われていました。しかし今はその考えがおかしいと言われていることもあります。

若い時に勉強できなくても、勉強する姿勢を忘れなければ、20代、30代以上になってから勉強することができます。

自分の追記ですが、
「消費税増税」の目的は「社会福祉の充実」としているが、実際のところ

・国民の医療費負担額増加
・介護料金の値上げ
・年金の引き下げ

というのが実情になっている

それでは「増税」分はどこに配布されているのか?

収支を見ると明らかで「議員および公務員の給料」の支出と「議員および公務員の年金」などが一切減額されていない。
ということは、「議員および公務員」の支払い分を確保し、その上で、今までの社会福祉を維持する必要があるから「増税」するというのが、明白にわかる。

社会福祉においても、低賃金の介護ヘルパーや医療事務などの給与を上げるのも必要だと考える。

医療事務の友人から聞いたが、時給700円未満で仕事をしているので、離職者が頻繁に起こる業界と言っていた。
特に公的病院などで多くみられる委託業者は、かなりの低契約なのに、かなりの重作業行っているところもあるらしい。
by 相川始 (2016-06-03 07:53) 

ebisu

相川さん

おはようございます

世代を超えて伝えなければならないものを伝え損なっているようなきがしてなりません。その一つが、あなたの書いたこと。

>昔は「人生すべてが勉強」と言われていました。しかし今はその考えがおかしいと言われていることもあります。

努力の大切さも大事な価値観でした。

>若い時に勉強できなくても、勉強する姿勢を忘れなければ、20代、30代以上になってから勉強することができます。

ところで、消費税増税で得たお金をどこに使っているのかは監視しなければいけませんね。社会福祉目的税だったはずですが、あなたが指摘したように事実はそういうところへ使われていません。

明治の自由民権論者植木枝盛は「世に良政府なし」と言い切っています。国民が監視を怠ればたちまち政府は悪政府へ変貌すると書いてます。#3310でとりあげました。

こうして投稿欄でさまざまな角度から議論を繰り返し、「監視」する必要があります。
これからもよろしくお付き合いください。
by ebisu (2016-06-03 09:02) 

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