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#3286 謎 : X線観測衛星ひとみ   May 11, 2016 [41. 科学・技術とその周辺]

 X線天文観測衛星「ひとみ」が観測準備中に壊れて観測ができなくなりました。回転を始めたので、姿勢制御プログラムで逆の方向へ噴射を行い静止させようとしたら、回転方向へ加速してしまいました。大きな太陽電池パネルが2枚開いていますから、遠心力で千切れ飛んだようです。
 どこが壊れたかというとJAXAの報告書ではパドル(paddle)部分です。パドルはボートの櫂(かい)のことですから、櫂の先端に大きく広がった太陽電池パネルがついていると想像してください。人間の身体にたとえると、腕と掌(てのひら)です。腕がパドルで掌が太陽電池です。回転速度が増して遠心力が大きくなり、細いパドル部分が壊れて太陽電池が人工衛星から千切れ飛んでしまいました。
 600億円ほどがパーになってしまいました、しかたないですね。

 ブラックホールから、X線が出ているそうですが、可視光線はブラックホールの重力につかまり、外側に出てこれないのに、なぜそれよりも波長の短いX線なら出てこれるのかわたしには謎です。波長が短くなると重力の影響が薄まるのでしょうか?どなたか教えてください。m(_ _)m

 「ひとみ」には「X線マイクロカロリーメータ」という世界最高の分光性能をもつ機器が搭載されていました。
 不思議な名前です。マイクロカロリーとなっているので、微小なエネルギーを検出できるメータ(計器)ということのようです。軟γ線に関係あるのでしょう。軟γ線がエネルギー単位で分類できるようですから、それと関係がありそうです。

 日本は天文学とか、宇宙物理学とかこういう方面ではなかなかやりますね。理論物理学が世界最先端であるだけでなく、実験レベルでそれを支える分光技術や光電子倍増管製造技術で世界の最先端を走るメーカがあるからです。
 搭載されていたディテクター(detector:検出器)は3種類、補足できる周波数帯域は軟X線⇒軟γ線をカバーしています。

*JAXA「X線天文衛星ひとみ」の解説
http://www.jaxa.jp/projects/sat/astro_h/


 ネットで検索すると、X線の波長域は1pm~10nmです。ピコ(10^-12)とかナノ(10^-9)ですから小さい単位です。軟γ線はそれよりも一桁小さいので、10^-13から10^-8ですから、検出幅がずいぶん広いですね。これで分光の分解能が高ければいったいどのような画像が見られるのでしょう。人類がまだ見たことのない未知の領域の画像です。

 可視光線の範囲内の望遠鏡では見ることのできないブラックホールが放出するX線を観測できます。コンピュータでいかようにも色づけできるので、ブラックホールの画像を見てみたいものです。軟X線から軟γ線まで周波数域を変えてスキャンしていったらどのよう変化が画像に見られるのか楽しみです。
 軟γ線はX線よりも一桁波長が短いようです。中性子星が軟ガンマ線のバーストを繰り返す(SGR:Soft-Gamma Repeater)ことが知られているので、中性子星観測用のディテクターのようです。

 太陽電池パネルがちぎれとんだのは、人為的なミスが重なったためだとJAXAは説明しています。どのようなプロジェクトでもミスは起こりえますから、それに対して事前のチェック体制がどうだったのか、そしてミスが起きたときの対処についてもチェックが行き届いていたのかどうかが問題になりそうです。JAXAにはどうもマネジメント上の問題があるようです。

 STAP細胞問題では理化学研究所のマネジメント体制上の問題が、小保方さんという特定の個人へすりかえられたように感じます。

*「STAP問題の元凶は若山教授だと判明…恣意的な研究を主導、全責任を小保方氏に背負わせ 」
http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/stap%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%81%ae%e5%85%83%e5%87%b6%e3%81%af%e8%8b%a5%e5%b1%b1%e6%95%99%e6%8e%88%e3%81%a0%e3%81%a8%e5%88%a4%e6%98%8e%e2%80%a6%e6%81%a3%e6%84%8f%e7%9a%84%e3%81%aa%e7%a0%94%e7%a9%b6%e3%82%92%e4%b8%bb%e5%b0%8e%e3%80%81%e5%85%a8%e8%b2%ac%e4%bb%bb%e3%82%92%e5%b0%8f%e4%bf%9d%e6%96%b9%e6%b0%8f%e3%81%ab%e8%83%8c%e8%b2%a0%e3%82%8f%e3%81%9b/ar-BBq0tU0#page=2
 
* #2646 STASP細胞狂想曲 笹井芳樹氏の弁明  Apr. 17, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-17

 #2761 嘆かわしいのは上司の腹の細さ:笹井氏自殺  Aug. 7, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-07


 X線天体衛星は学術的な意義の大きなプロジェクトですから、JAXAは問題をすりかえることなく解明し、次の打ち上げに生かしてもらいたいと思います。

<余談:マネジメント>
 理研の理事長はノーベル賞受賞者、不幸にしてなくなられた発生・再生科学総合研究センター副センター長の笹井芳樹さんもノーベル賞候補者の一人でありました。上司が研究で業績を挙げた人でないと、現場で使われる研究者は納得しません。技術屋は自分よりも腕が下だと判断したらついていかないものです。日本には職人文化がありますから、腕のよい職人は腕のよい親方の下でしか働かない。腕のよい親方だけが、腕のよい職人を育てられるということでしょう。そこがむずかしいところです。

 ところが、有能な研究者がマネジメントでも有能かというとそうではありません、マネジメントにおいては凡人がほとんどです。
 有能な研究者の出現確率が1/1,000,000、有能なマネジャーの出現確率が1/1000とすると、有能な研究者にして有能なマネジャーは十億分の1になります。つまり、そういう能力の持ち主はいないに等しいということです。
 だから、研究者で高いマネジメントの地位についた人は、マネジメント能力の高い人を自分のそばに置かなければなりません。理研はいまだにそういう配慮がなされていないのではないでしょうか?
 JAXAは大丈夫だろうか?というのがわたしの懸念です。

<余談-2:門前の小僧と結石検査ロボット>
 世界最先端の産業用マイクロ波計測器を取り扱っていた輸入商社に5年間いたので、マイクロ波計測器やミリ波計測器の原理については社内で毎月開かれた講習会に出席していたので、文科系のわたしでも、五年間60回も東北大学の助教授の講義を聴く続けたら多少知るところとなります。「門前の小僧習わぬ経を読む」の類です。

 マイクロ波>ミリ波>可視光線>赤外線>紫外線>X線

 γ線⇒β線⇒α線

 このように電磁波は順次波長が短くなります。
 γ線は原子核由来、X線は核外電子由来で、光子あるいは電磁波。
 ネット検索してみたら、β線とα線は粒子線としてとらえるべきだと書いてありました。物理って面白そうですね。来年、暇を見つけて勉強してみようと思っています。

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アルファ線α線アルファ線は、放射線の一種で、陽子2個と中性子2個からなるヘリウムの原子核と同じ構造の粒子である。 物質を通り抜ける力は弱く、衝突した相手を電離する能力が高いため、自分の持つエネルギーを急速に失ない空気中では数センチメートルしか進めず、紙一枚程度で止めることができる。

アルファ線とは - 環境用語 Weblio辞書

www.weblio.jp/content/アルファ線

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  SRL八王子ラボRI部で使用していたγカウンタは、放射性ヨードで標識した抗体を使っていました。半減期が短いので、今日検査したものと昨日のではコンピュータソフトでデータ補正をしないと比較ができません。統計学的品質管理システムがミニコンで稼動していました。

  ところで、計測器は①ディテクター(検出器)と②制御部及びデータ処理部(コンピュータとソフトの受け持ち分野)、③インターフェイスの3つの部分から構成されていますから、どういう種類の計測器もたいした違いはないのです。ディテクトする周波数域が異なるだけです。
 業界最大手の臨床検査会社SRLでは2年間ほど八王子ラボの機器を担当していたので、世界中で作られているさまざまな分野の高性能臨床検査機器を扱いました。理解できるか否かは脇においておいて、チャンスですからカタログを見て、スペックを確認し、実物を見、設置した後に稼働状況を確認していました。その製品に関する学術文献がほしければ、メーカの営業担当にお願いするとコピーをとってもってきてくれます、役得です。
 分光光度計の国内トップメーカの日本分光とも取引がありました。電子顕微鏡や赤外分光光度計が八王子ラボにはありました。
 1988年頃に3台導入した英国製の染色体画像解析装置は日本分光の輸入子会社(日本分光輸入販売株式会社)から購入しました。日本分光の赤外分光光度計は、結石の検査に使っていました。八王子ラボとある機械メーカさんとで独自開発したアームロボットで五円玉状の金属板の中心部分に、砕いて粉にした結石材料をつめて固める過程を自動化したのです。これはラボ見学で評判がよかった。臼状の穴が10個ほど開けられた金属プレートの中で砕いた後、特殊なブレードで臼からはがして五円玉状の金属の中心にに詰めて固めます。ブレードの形状を20種類以上変えて、きれいに取り出せるのはどれかと検討しました。開発を担当した会社の社長がとても腕のよい、そして熱心な技術屋さんでした。とてもいいものを開発してくれました。このロボットの開発で結石検査の生産性が10倍くらいに上がりました。
 染色体画像解析装置も結石ロボットも検査管理部で検査部と業者の技術者の橋渡しを担当したのはO形さんです。なかなか優秀な人で、後に購買課長になっています。たしか、室蘭工大の出身でした。こういう人たちと仕事するのはとっても楽しい。何がおきるかわからない、ドキドキハラハラが続きますが、最後はなんとかしてしまうのです。(笑)
 日本の技術はこういう現場の力で支えられているのでしょう。


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