SSブログ

#3238 C中2年生の学力テスト数学の平均点がアップした Feb. 14, 2016 [71.データに基づく教育論議]

 C中学校2年生の学力テストデータを二つ並べて分析してみます。11月5日実施の数学平均点は26.4点でしたが、2月3日の学力テストではどうだったでしょうか?
 得点階層別に整理したのでご覧ください。

 C中2年学力テストデータ数学
得点11/5累計2/3累計
91-1000 1 
81-900 23
71-801 811
61-7023516
51-6036420
41-50814424
31-40620327
21-30727532
11-201542941
0-1012541051
     
平均点26.4 39.4 




 人数の合計が54人と51人、3人の差がありますが、インフルエンザでお休みした生徒がいるのでしょう(昨年12月はA型とB型が混在、現在はB型が流行っているそうです)。

 ところで、平均点が上がった要因は三つありそうです。
 ①生徒ががんばった
 ②学校ぐるみの放課後補習で学力下位層の底上げに成功した
 ③前回テストの難易度がめずらしく、今回はいつもの難易度に戻った

 文協学力テストにしては前回の問題は少し難しかったのは事実です。それでも生徒の努力と、先生たちの放課後補習への取り組みは評価したいと思います。
 30点以下が11/5は34人(63.0%)でしたが、2/3は24人(47.1%)に激減しています。70点以上の成績上位層が、1人⇒11人へ急増しています。うれしいですね。

  数学の点数が上がってきていますが、この学年の生徒たちの数学の学力は依然として低く、基礎計算と問題文の読解力の両方に問題を抱えています。とくに30点以下の成績下位層を底上げするのは難事業で、標準的な学力の生徒を教える手間と根気が5倍はかかります。生活習慣や勉強嫌いという性格とも戦わねばなりません。文武両道も口がすっぱくなるまで言い続けなければならないし、成績下位層の生徒には2ヶ月間の部活停止・放課後補習参加措置すらとらなければならないと思います。先生という職業は本気でやり始めるときりのないはなはだ困難な仕事です。
 それでも文武両道、勉学優先を標榜して、このまま1年間を駆け抜けてほしいと思います。この生徒たちが、高校統廃合後の新入生となり、統合後の高校の授業の在り方を決めることになります。それほど重要な学年です。

<余談-1:辛抱と努力の尊さ>
 前回よりも22点上げた生徒がいますが、苦手の文章題に集中して成果を出しました。よくがんばりぬきました。
 日本語の理解力をアップして、問題文の意図を正確に見抜くには、数学の問題だけでなく、日本語テクストの高速音読や視写速度アップトレーニングも並行してやる必要があります。問題を解くには文章全体の流れを一時的に頭の中に保持する必要があるのです。文章題が苦手の生徒たちの頭の中では、文末の方に意識をおくと、文頭のほうを忘れ、文頭に意識をおくと文末の意味を捕まえそこなうというようなことが頻繁に起きているように見えます。
 高校数学は中学数学に比べて、問題文の読みの比重が上がりますので、難易度の高い文章題に慣れさせておくべきです。新入生たちは、入学後3ヶ月で授業レベルよりも格段に難易度の高い進研模試を受けます。出題される問題の難易度は、中学校の定期試験や学力試験レベルの難易度とは比較になりません。全国レベルの問題の難易度をはじめて知ることになります。生徒たちはこの全国レベルの模試で、平均点が20点台です。そういうレベルの難易度の問題を小学校でも中学校でも経験してこなかったから、無理もありません。中学校で数学を教えている先生たちは全員全国レベルの模試を経験していますが、それを前提に教えている先生は残念ながら根室市内にはほとんどいません。6回のフリー参観の結果を踏まえての結論です。市街化地域の3中学校のいずれもが、成績上位層が10年前の1/4以下に減っていることも、成績上位層への対応ができていないことを如実に示しています。各校の先生たちの指導の仕方がじつによく似ていました。「研修」のせいなのか、「教師用の指導書」に頼りすぎているからなのか不明ですが、成績上位層の興味を満足する授業の工夫があっていいはずです。きっとできますよ。
 覚醒剤と一緒です、「教師用指導書」を使って授業をしてはいけません。教師用指導書の便利さは、先生たちから学びと創意と工夫を奪い、成長する芽を摘んでしまいます。自分の指導に偏りがないかをチェックするぐらいにしてもらいたい。


<余談-2:根室高校の現状>
 根室高校普通科は必修だった数Bを現在の2年生から選択科目に変更しています。2月19日から学年末テストですが、最上位のガンマークラスですら、微分の「関数の値の変化」の節をこれからやります。だから、積分は試験範囲には入らないでしょう。数Bの数列も受験によく出題される漸化式と群数列にまだ手がついていません。

 客観的な話をすると、文協学力テストで数学70点以下の層は、数Ⅱ・Bの授業についていくのがはなはだ困難です。高校の先生たちは同じ教科書を使ってどうやって授業をするのでしょう?

 授業レベルがさらに下がることになります。落第させたら後味の悪い思いをしますから、先生たちはふだんの授業も試験問題も生徒たちの学力に合わせてレベルを下げます。受験レベルの難易度の高い問題は授業で扱わないことになるので、偏差値50以上の大学へ進学する生徒たちが困ります。いままでどおり、放課後の「進学講習」の応用コースで対応するしかありませんが、基礎コースに生徒がたくさん集まることになるでしょう。
 そういうわけで、大学受験を考えて、札幌圏や釧路湖陵へ進学させる親たちが増えます。ニムオロ塾では、今年の中学3年生6人のうち4人が根室から出て行きます。根室に戻ってきて塾を始めて14年目ですが、こんなに多いのは初めてです。

<余談-3:沖縄の無料塾構想に学ぶ>
 根室市内で高校生を受け容れている塾はすでに二つだけです。それも10年後には消滅しているかもしれません。生徒は年々入れ替わりますが、教えているほうはどんどん齢を重ねて老人となり、リタイアする日が来ます。その後の準備が町として必要です。いまから考えておかないと間に合いません。
 沖縄県が県下の全市町村に無料の塾を置く計画素案を作りました、すごいですね。大学進学を志す生徒たちのために、根室にも高校生対象の無料塾があるといいですね。教育こそが町の未来の礎(いしずえ)です。
 ブログ「情熱空間」が琉球新報の記事を採り上げていますので、ご覧ください。
(沖縄返還の際に反対の社説を掲げたのは、琉球新報と中部日報そして北海道新聞の3社だけでした。米軍基地がそのまま(治外法権)だったり、核持込の密約や負担金の密約がありました。新聞報道はつねに真実の一端を明らかにするものでなくてはなりません。それをどう受け取り、どのように行動するかは、読者一人ひとりの判断にかかっています。)

*全市町村に無料塾(沖縄県の取り組み
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8345409.html



#3202 縦軸と横軸で中学校のテスト・データをながめる Dec. 12, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-12-12

      70%       20%      
 
日本経済 人気ブログランキング IN順 - 経済ブログ村教育ブログランキング - 教育ブログ村

 投稿欄へ面白そうな本の紹介が遭ったのでURLを貼り付けて起きます。
-------------------------------
ご休日の暇つぶしに。。。

「まじ」「やばい」「なるほど」を多用する…語彙力不足の代償
とは
http://ddnavi.com/news/285206/a/

この本を読んでると、自分の語彙力不足が乏しい事を痛感する
by 財団X (2016-02-14 16:32)
-------------------------------

語彙力こそが教養である (角川新書)

語彙力こそが教養である (角川新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/12/10
  • メディア: 新書
 もうひとつ紹介します。いま読んでいる途中の本です。購入してからしばらく抛ってありましたが、生徒が本棚から見つけて、しばらく読み、「先生この本面白い」と言ってました。
 さまざまな事情・現状の学校教育の具体的な問題点がよくわかります。内部の人がこういう本を書いてくれるのはありがたいことです。
 著者は京都大学大学院教育学研究科修了でジャーナリストの職に就いてから、学校の先生になったと書いてあります。教育学の専門知識のない先生は「残念な教員」と決め付けていますが、現場はそうではありません。とくに大学は、教育学なんて知っている先生は教育学部の先生だけです。それでもすばらしい先生は少なからずいました。著者は多少頭でっかち、教師として経験不足のところが現場の先生たちから反感を買っているようです。しかし、経験不足でも問題点の羅列だけでもいいのです、書いてあることにいくつか問題があるのも結構、「教育村」だけでは、現状を打破できないことも事実なのですから。
 さまざまな試行や努力は評価したいと思いますが、学校教育の改革は内部からだけでは無理ですし、教育行政や学校教育の外部だけでも内部事情がわからず無理ですが、両方が手を組めば、現実的で具体的な改革ができそうに感じました。最後まで読んで見なければ著者の言いたいところがわからないので、もうすこし辛抱がいります。拾い読みして「先生この本面白い」と言った生徒の素直な感想に読む気が起きました。教える側にはきっと痛い本です。

残念な教員 学校教育の失敗学 (光文社新書)

残念な教員 学校教育の失敗学 (光文社新書)

  • 作者: 林 純次
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/02/17
  • メディア: 新書





注文は地元の本屋でしましょう。
 

nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 4

ZAPPER

ゆとりと決別し、削減されていた学習指導内容が「戻ってきた」ことにより、全国的には当然ながら定期試験の出題レベルが難化しました。(すでに過去形です)

ところが北海道では多くの場合、ゆとり時代と同じ出題レベルのままです。問題集や教材を見ても、「戻ってきた」部分が多くあって懐かしく思う(笑)わけですが、肝心の中学校の定期試験問題にはまともに「戻ってきて」おらず、あり得ないほど簡単な出題が相変わらずなされています。

ここから先、メスを入れるべきはこの部分ですね。出題がまともになれば授業がまともになりますから…。
by ZAPPER (2016-02-15 11:26) 

ebisu

ZAPPERさん

貴ブログに掲載した琉球新報の記事のURLを貼り付けさせていただきましたが、沖縄県は大胆なことを考えていますね。

定期試験と学力テスト問題の難易度には大きな隔たりがあります。
C中学校で11月27日に実施された期末テストの数学の平均点は50.4点でした。生徒の学力に合わせてちょうどよい難易度の問題をつくったのは評価したいと思うのですが、学力テストと24-11点も平均点に差があるのはやはり無視できません。

生徒の学力に合わせて試験問題の難易度を下げると、生徒が考え違いを起こします。
問題を作成する先生になり代わって考えると、悩ましい限りです。

やはりふだんの授業の工夫がだいじなのでしょう。難易度の高い問題をどれだけ授業で扱えるかで勝負がついてしまいます。

自分が亡くなったときの相続税支払いの準備のために、家業のほかに外食産業の分野に踏込み、店頭公開を果たしたK社長はあるとき店長の研修会でこういう質問をしました。
「店の雰囲気は誰が決める?」
数人の店長が言いました。
「店長が決めます」
意外な答えがK社長から返ってきました。
「客が決めている」

上品な客が集まれば、店の雰囲気はよくなるというのです。
店長は店をそういう客が集う場にしろということ。

そういう目で点検すると、いままで見落としていた大事なことが見えてきます。

公立中学校は客(生徒)を選べないし、客もお店を選べません。なかなかむずかしいですね。チャレンジ精神が求められています。
自助努力をしない学校には、教育村の外からの「外圧」が必要です。そういう外圧の一つが私たち教育村の外側にいるものが発信する「教育ブログ」でしょう。

ふだんの定期テストは、せめて学力テストと同程度の難易度にまでアップしてもらいたい。それにはふだんの授業で難易度の高い問題を扱わなければなりません。
数学担当の先生たちは、東京の有名私立高校の受験問題集ぐらいは毎年解いてみたらいいのではないでしょうか。きっと授業が変わります。
by ebisu (2016-02-15 13:08) 

amanda

ebisuさんにならって、うちの中学校のテストデータをExcelに入れてみました。
中1、中2の結果があったので。。。
あらためて、表やグラフにおとして比較すると衝撃的ですね。
成績良い方といわれている中2でも、定期テストと学テの差は10点(数学)、中1は25点も差がありました・・・1学期に学級崩壊おこしかけていたので、さもありなんというところですが・・・

掲載されていた根室C中との比較も入れてみました。
ありがとうございます。
by amanda (2016-02-19 12:25) 

ebisu

amandaさん、お久しぶりでした。

amandaさんのためにデータを補足しておきます。

11月27日の2学期期末テスト数学の平均点は50.4ですから、11月5日の学力テストの平均点26.4点とは24.0の開きがあります。
2月3日の学力テストの平均点は39.4点ですから11点の差がありました。
やはり、ふだんの定期テストは比較的やさしいはずの学力テストよりも、格段に難易度が低い問題が並んでいるということです。五科目合計の平均点を、実施日順に並べてみると、

11/5 学力テスト  227.4点
11/27 期末テスト 285.5点
2/3 学力テスト   231.6点

学力テストと期末テストでは五科目合計平均点で50点を越える差がついています。
これが現実です。

根室市教委の皆さん、データに基づく議論をしましょう。
簡単ですから、市街化地域3中学校の過去10年分の学力テストデータを学校別・学年別・クラス別・科目別にEXCELへ入力して、分析してみたらいかが?
もちろん生徒個人名を除外したデータでやりましょう。郡部の小規模校へデータをあげたら、生徒指導の役に立ちます。

教育に関心のある市民や市議のために、市教委のホームページ上でデータを公開したらよろしい。得点階級別の原データと基本統計量だけでもずいぶん役に立ちます。
by ebisu (2016-02-19 22:35) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0