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#3182 教育シンポジウム(7): 武藤久慶氏による基調講演⑤ Nov. 20, 2015  [66. 教育シンポジウム北海道]

 文科省初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室・室長補佐武藤さんの基調講演【基礎学力保障論】、5回目のレポートは#3179で取り上げた算数の問題を俎板にあげて、その奥に存在する問題を抉(えぐ)り出してくれます。

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 (7) 4/5 ÷ 8 =
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 答えは1/10ですが、この問題のできなかった生徒はどのあたりで躓き、中学1年生・2年生・3年生の各段階でどういう問題ができなくなるのかという、時間軸に沿った分析を見せてくれます。

 時間軸を遡行する旅からはじめています。「5年下」で扱われている分数の除算問題ができないということは、「4年下」の整数の除法(3.6÷3)ができない可能性があります。「3年上」で扱う整数同士の除法(12÷4)、そして「2年下」での分数概念(1の四等分)が理解できない可能性があります。ここまでが武藤さんの分析です。
 わたしの経験では、「分数÷整数」問題ができない生徒のほとんどが逆九九もスムーズに言えない段を抱えています。割り算記号が嫌いで、計算が苦手というプロファイリングがだいたい当たっています。

 次に武藤さんは時間軸を未来へ延ばして見せます。
 「分数÷整数」ができないと、中1の正負の数の同じ計算(2/3÷(-5))ができません。同様にして中2の単項式の除法の問題(8ab÷4b/3)もできないでしょう。3年生で習う単項式と多項式の除法問題((6x^2+8xy)÷2x/3)も無理です。
 中1で正負の数の除法ができないということは、「文字式」「1次方程式」「比例」「反比例」「平面図形の面積計算問題」などで支障が出ます。
 中2では「整式の加減」「単項式の乗除」ばかりでなく、「連立方程式」や「一次関数」へも影響が出ます。
 中3では「平方根を含む計算」「単項式と多項式の乗法と除法」「2次方程式」「2次関数」「円と円周角」等の計算問題に影響が出ます。

 小6で「分数÷整数」の問題に無解答だった北海道の9.6%の生徒が深刻な学力問題を抱えていることがわかります。武藤さんはここでは事実を指摘するだけにとどめていますが、放課後補習等の対応をせずに放置したら、中学を卒業するころには本物の落ちこぼれになります。落ちこぼれというより、「落ちこぼし」と言ったほうが事態を適切に現しています。

 算数が好きな生徒は、小学1年生では(男、女)=(84.6%、80.6%)から、小学6年生(55.8%、66.0%)までリニアに落ちていきます。
 6年生男子の44.2%が算数が好きではありません。

<基礎学力崩壊の裏で起きていること>
 ここで武藤さんは生活習慣データを挙げています。低学力層を生活習慣の乱れは相関関係があります。
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 【小学校】
 データの並びは、(北海道、秋田県)です。全国平均値が100となっています。
■ 朝食を毎日食べない (143.6、64.1):2.2倍
■ 1日のテレビの視聴時間(4時間以上) (113.1、81.3):1.4倍
■ 1日のテレビ視聴時間(3時間以上) (107.9、88.9):1.2倍
■ 1日のゲームをする時間(4時間以上) (140.4、65.2):2.2倍
■ 1日のゲームをする時間(3時間以上) (134.1、77.6):1.7倍

 【中学校】
■ 朝食を毎日食べない (110.8、52.3):2.1倍
■ 1日のテレビの視聴時間(4時間以上) (112.7、59.9):1.9倍
■ 1日のテレビ視聴時間(3時間以上) (107.3、73.0):1.5倍
■ 1日のゲームをする時間(4時間以上) (124.5、50.9):2.4倍
■ 1日のゲームをする時間(3時間以上) (118.7、60.1):2.0倍
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  これも学力の高い秋田県と比べることで、北海道の特殊性がくっきりと現れています朝食を食べない、テレビを見続けたり、ゲームにはまって抜けられない生徒が約2倍いるということ

  アンケート調査データから三番目に挙げているのは、「自分のよいところがあるとは思わない」という自尊心欠如の割合の高い順に階層を10段階に分けてx軸上にとり、y軸上にその階級ごとの平均正答率データを並べたヒストグラムです。
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  自尊心階級値   平均正答率
A 100~90% : 17.9%
B 90~80%  : 22.1%
C 80~70%  : 25.6%
D 70~60%  : 28.5%
E 60~50%  : 32.7%
F 50~40%  : 34.6%
G 40~30%  : 38.6%
H 30~20%  : 40.4%
I 20~10%  : 40.8%
J 10~0%   : 50.0%
K 0%      : 52.1%
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 見事に線型にデータが並んでいます。計算していませんが相関係数は0.9を超えるでしょう。
 この表から言えることは、自尊心が低いほど正答率も低くなり、自尊心が高ければ高いほど正答率が高くなるという、自尊心と正答率に強い正の相関関係があるということ。
 小学生は年次を追って算数を好きな生徒の割合が減少していきます。中学生のデータがありませんが、同じことが言えるのではないでしょうか。成績が下がっていけば、自尊心も破壊されます。

 4番目に挙げられたのは、答案に書かれた文字の例です。字が大きく乱雑なもの、枠内に入ってはいるが独特の書体になっているものが挙げられています。
 数字の例も挙げられている。1と7の区別のつかない例が挙がっています、こういう生徒は少なくありません。数字の書き方についての指導がおろそかになっているのではないでしょうか。小学生・中学年で数字の書き方を指導したほうがよさそうです。先生の板書にも同じ事例がないか点検する必要があります。

 じつに鮮やかなデータ処理と論点整理です、トレースしていて気持ちがよい。

 次回は、高校での学び直しをとりあげます。小学校での躓(つまづ)き、それが高校生となったときに、どのような事態を引き起こしているのか、教育に携わる者は嫌でも現実を見なければなりません

(本欄左側にあるカテゴリー「教育シンポジウム北海道」をクリックすると、この関連の記事が並んで出てきます)


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