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#3181 教育シンポジウム(6): 武藤久慶氏による基調講演④ Nov. 19, 2015 [66. 教育シンポジウム北海道]

 小6社会の教科書を取り上げて論じたwhat-if question、これも外せない、そう思いました。

 文科省初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室・室長補佐武藤さんの基調講演【基礎学力保障論】、4回目のレポートは「この子達は どんな子たちなのか?」です。
 前回は全国データでの25パーセンタイルに北海道と秋田県ではどれくらいの差があるのか、具体的な数字を挙げて解説がありました。

 学力最下位層(全国15パーセンタイル)には、おそらく北海道の子どもたちの20~25%が含まれます。その子どもたちの頭の中では何が起きているのかを武藤さんが上手に料理して見せてくれています。

 ところでレジュメには生活習慣に関するアンケート結果をレーダーチャートにしたものが2個載っています。全国平均値を100としたとき、北海道と秋田県の数値がどうなっているかが比較されています。データの並びは(北海道、秋田県)です。

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<学習習慣 小学校>
■ 家で、学校の宿題をまったくしていない (183.3、33.3):5.5倍
■ 普段、勉強する時間が1時間より少ない (128.2、77.3):1.7倍
■ 普段、全く勉強しない (106.3、25.0):4.3倍
■ 休みの日に勉強する時間が1時間より少ない (110.2、40.5):2.7倍
■ 休みの日にまったく勉強をしない (95.3、11.3):8.4倍
■ 家で、自分で計画を立てるような勉強を全くしていない (104.1、34.7):3.0倍

<学習習慣 中学校>
■ 家で、学校の宿題を全くしていない (76.7、33.3):2.3倍
■ 普段、勉強する時間が1時間より少ない (120.6、71.3):1.7倍
■ 普段、全く勉強しない (135.1、19.3):7.0倍
■ 休みの日に勉強する時間が1時間より少ない (109.8、27.6):4.0倍
■ 休みの日にまったく勉強をしない (115.9、11.5):10.1倍
■ 家で、自分で計画を立てるような勉強を全くしていない (107.5、47.2):2.3倍

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 学力の低い北海道と学力の高い秋田県を比べると、ずいぶんとはっきり違いが出るものです、解説の必要もないくらいです。「びっくりポン」(笑)
 北海道の小学生で家で宿題をしない生徒は秋田県の5.5倍ですが、宿題を出さない先生が多いのも事実です。海沿いの地域にそういう特性が強いようです、中標津から根室の小学校へ転向してくると、お母さん宿題の少なさにびっくりしています。
 ふだんまったく勉強しない生徒も4倍います。少年団活動して健康で元気だったら勉強なんて二の次でいいと言っている親たちの顔が見えるようです。大人に問題があります。
 休みの日にまったく勉強をしない生徒は秋田県の8.4倍。根室の子どもたちは休みになると、親と一緒に釧路や中標津へ出かけることが多い、勉強する時間が少ないことは予想していましたが、秋田県とこんなに差があることは驚きです。

 中学校は英語や数学で宿題が多くなりますから、家で宿題をまったくしない生徒は秋田県の2.3倍まで縮小しています。宿題出せばやるのです。
 その一方で、ふだんまったく勉強しない生徒が4.3倍から7.0倍に拡大しているのは、過度な部活のせいです。中学生になるとなぜか内申点を気にしてほとんどの生徒が部活をします。文武両道を言わない先生たちの存在も大きく影響しています。道教委が2年前に配布した大谷翔平の「文武両道」ポスターをしっかり貼ってほしいと思います。
 休みの日にまったく勉強をしない生徒が秋田県の10倍います。根室の中学校をみても土日もやっている部活が散見されます。ここをなんとかしないといけません。だらだら毎年同じメニューでやるトレーニングは上達を生まないだけでなく、効率を考えないトレーニングを習慣化してしまいます。いわゆる「隠れたカリキュラム」というものです。そういう悪い癖のついた人材は民間企業では使えません。

*隠れたカリキュラム...ブログ「情熱空間」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8244708.html


 次の文章は小6社会の教科書(東京書籍6上)からの抜粋です。最初はそのまま、ついで小4年生以上で出てくる漢字を薄青字に変換して示したものです。

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 元の大軍がせめてくる
 鎌倉幕府が開かれてから80年余りたったとき、元の大軍が2度にわたり九州北部をせめてきました(元寇)。
 中国を従えて大きな国をつくった元は、まわりの国も従えようとして、日本にも使者を何回も送ってきました。
 執権の北条時宗はこの要求を退け、九州の守りを固めました。
 武士たちは、元軍の集団戦術や火薬兵器(てつはう)などに苦しみながら、恩賞を得るために必死に戦い抜きました(一所懸命)。元軍は、武士たちの激しい抵抗や暴風雨などにより、大きな損害を受けて大陸に引き上げました。
 しかし、幕府は、活躍した武士たちに新しい領地をあたえることができませんでした。また、武士たちは、役目を果たすための負担が大きく、生活に苦しむ者もいて、幕府に不満をもつようになりました。
 このことから、ご恩と奉公で結びついていた幕府と武士の関係がくずれていきました。
 
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 の大軍がせめてくる
 鎌倉幕府が開かれてから80年余りたったとき、元の大軍が2度にわたり九州北部をせめてきました(元寇)。
 中国従え大きな国をつくったは、まわりの国も従えようとして、日本にも使者を何回も送ってきました。
 執権北条時宗はこの要求を退け、九州の守りを固めました。
 武士たちは、元軍の集団戦術や火薬兵器(てつはう)などに苦しみながら、恩賞を得るために必死に戦い抜きました(一所懸命)。元軍は、武士たちのしい抵抗や暴風雨などにより、大きな損害を受けて大陸に引き上げました。
 しかし、幕府は、活躍した武士たちに新しい領地をあたえることができませんでした。また、武士たちは、役目を果たすための負担が大きく、生活に苦しむ者もいて、幕府に不満をもつようになりました。
 このことから、ご恩と奉公で結びついていた幕府と武士の関係がくずれていきました。

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 薄青色の文字が読めて漢字の意味が理解できなければ文意のつかめないことは明白です。
 4年生以降に習った漢字が読めないあるいは書けない中学生は、授業で先生の説明する言葉を頭の中で適切な漢字に変換できませんから、意味が理解できません。毎日6時間硬い椅子に座り続けて、理解できない授業を聴いているふりをしなければならないのです。「読み・書き」が4年生程度にとどまっている生徒はかわいそうです、なんとかしてあげたい。
 語彙が少ないと生徒同士の会話もレベルの低いものになります。「うぜー」「キモイ」「しねや」・・・200語くらいで会話をしています。作文を書かせても小学3年生レベルの文になります。幼稚で美しくないから、書くのが嫌いになるのはあたりまえです。手本となるような文をたくさん読み、たくさん書かなければ文章力は上がりません。ところが、この層の生徒は本を読む習慣がほとんどありません。ゲームや部活やスマホの操作は得意です。

 15パーセンタイル以下の生徒は、「読み・書き」の基礎的能力が著しく劣るので、学力全般が低くなります。中学生になっても学力が上がらず、高校生になっても同じ、そのまま社会人となります。そのなかで正規雇用につける者はほとんどいないでしょう。非正規雇用は全体ですでに4割を超えています。新卒に関して言うと半数を超えているでしょう。年収は正規雇用の半分以下、おおよそ4割ですが、年々その差は拡大していきます。それゆえ自立して生活するのは著しく困難です。
 26ページで武藤さんが2011年のある調査資料を挙げています。それによれば、高校中退者の正社員定着率はわずか5.4%です。高卒は26.5%、専門学校及び短大卒が35.6%、大卒及び大学院卒が60.6%です。
 基礎学力と経済的な状況は強い正の相関があります。

 最後の方で、武藤さんは「企業の生存率」データを出しています。日本は中小企業がほとんどですが、中小企業庁のデータによれば、10年生存率が70%、20年生存率は52%です。
 追い討ちをかけるようですが、正規雇用の職についても、二人に一人は20年間で別の企業に再就職しなければなりません。それが現実です。
 40歳前後になり、勤務している企業が倒産すれば、退職金ももらえず、転職しなければなりません。新しい仕事に必要な資格の取得や仕事に関する専門書やマニュアルを読むためには、相当高い基礎的学力が要求されます。
 企業の側からすると素直で若く、有能で安価な新卒の方がずっと魅力的に見えます。同じ条件で転職できる人は、仕事を通じて研鑽を積んできた人です。

 根室の子どもたちの「読み・書き」スキルの現状について取り上げた弊ブログ記事のURLを掲載するので、お読みいただき、子どもたちの学力の現状を知ってください。北海道で学力の低い地域に共通する事柄がたくさん含まれているはずです。北海道に限らず、全国の学力の低い地域にも共通したパターンが見えてきます。
 過去8年間にわたって自分の目で見た地域の教育の現実を綴(つづ)ってきた弊ブログは、武藤さんの北海道という特殊な地域を対象に展開された『基礎学力保障論』を個別的レベルで支えるものとなっています。
 時間と空間を越えた阿吽(あうん)の呼吸のコラボレーションです。

 (本欄の左側にあるカテゴリー欄「教育シンポジウム北海道」をクリックすると、シンポジウム関連記事をまとめて読むことができます。)
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*#1829 中1の語彙力の実例これでは授業も理解できぬ  Feb. 5, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-05

 #1837 中学1年生 日本語語彙の現実  Feb. 10, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-09-1

 #1839 中2成績中位層の日本語語彙 Feb. 12, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-12

 #2621 中3学力下位層の読み書き能力:大谷翔平「文武両道」 Mar. 18, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-18

 #2899 問題のすり替え:数学問題文の漢字が読めないのは誰のせい? Dec. 9, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-09

 #2983 書き取りスピードアップ・トレーニング Feb. 18、2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-18-1

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後志のおじさん

明後日からの雪の前の休憩中です。

Zapper さんの方と合わせて読むとステレオサウンドのようにくっきりと浮かび上がってきますね!(discerning です。)

素晴らしいイベント実現、お疲れ様です。(読んでおいででしょうからzapper さんにも合わせて。)

まだまだ続きそうな記事が楽しみです。
by 後志のおじさん (2015-11-19 14:46) 

ZAPPER

後志のおじさん
ありがとうございます。ここから先は、心ある、そして力のある学校の先生方へとバトンタッチです。

とりあえず、仕事に一区切りつきましたので、ほっと一息。また応援団に戻ります。望まれぬ応援団が、望まれる応援団に変わるその日まで。^^;
by ZAPPER (2015-11-19 16:13) 

ebisu

いよいよ雪のシーズン到来ですね。

武藤さんの「基礎学力保障論」を主旋律に、ZAPPERさんと楽しい二重奏を楽しんでいます。

武藤さんの論はまさしくdiscerning!
たくさんの人に知ってもらいたい。
わたしたち民の役割は、地ならしです。
by ebisu (2015-11-19 16:35) 

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