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#3179 教育シンポジウム(4): 武藤久慶氏による基調講演② Nov. 18, 2015 [66. 教育シンポジウム北海道]

 文科省初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室・室長補佐武藤さんの基調講演【基礎学力保障論】、2回目のレポートです。
 基礎学力保障は「釧路の教育を考える会」のメインテーマでもあります。釧路市議会は平成24年12月に全国に先駆けて「基礎学力保障条例」を制定しました。

 平成19~26年度の全国学力テストデータから、小6国語と算数の問題例をピックアップしてどこにどのような問題があるのか、わかりやすく解説してくれました、題して「基礎学力不足のイメージを共有する」
 ここが問題の原点です、それが中学校へ進学するとどういうことになるのか、高校へ進学するとどうなるのか、小学校での躓(つまづ)きがどういう結果をもたらしているのかに話が及んでいきます。一番川上の部分を取り上げ、エビデンスに基づく展開です。武藤さんのレジュメから転載して説明します。

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 ひらがなを漢字で丁寧に書きましょう。
H21 (2) 人の意見に さんせい する。
      (67.6、78.3、85.2) ⇒ (全道、全国、秋田) 数字は正答率を表しています
H20 (3) 駅まで歩いて おうふく する。
      (51.9、64.4、85.1)
H24 (1) 病院で いしゃ にみてもらう。
      (66.9、83.1、89.8)  

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H20 (9) 3月に貸し出された本の冊数は620冊で、そのうち「物語」の本の冊数の割合は、全体の40%です。「物語」の本の冊数は何冊ですか。求める式と答えを書きましょう。(この問題には物語、科学、歴史、伝記、その他に区分された円グラフが示されている)
      (41.6、54.9、65.0) 5年生の学習内容

H19 (7) 6+0.5×2
      (55.0、68.9、88.9) 4年生の学習内容

H22 (5) 下の台形の面積を求める式と答えを書きましょう。
       (台形の図に上底が3cm、下底が7cm、高さが4cmと書き込まれて示されている)
      (55.2、70.1、80.6) 5年生の学習内容

H24 (7) 次の計算をしましょう。
      4/5÷8= 
     無回答率(9.6、4.2、1.5)

...他2枚、省略

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 H26年度小学校国語A問題と中学校数学A問題の全国の下位約25%をあらわすヒストグラムが載っている。

H26 小学校国語A
     (29.7、28.2、19.0)
H26 中学校数学A
     (26.6、24.2、16.6)

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 平成24年度の小学校6年国語の漢字問題では、「いしゃ」という漢字の書けない生徒が33.1%、3人に1人もいます。全国学力テストNo.1の秋田県では「いしゃ」を漢字で書けない生徒は10.2%、10人に1人しかいません。
 小6で「いしゃ」を漢字で書けない生徒が中学生になったらどういうことになるのか、そういう現実に無関心なのが北海道の小学校の先生たちの現実です。先生が授業で使う日本語を頭の中で適切な漢字に置き換えられなければ、話した内容を理解できるわけがありません。弊ブログでもそうした事実を数字を挙げて何度も取り上げています。その多くが、中・高と低学力層から抜け出せません。基本漢字すら書けない生徒は、基礎学力という土台がありませんから、中・高生になっても低学力層から抜け出せるわけがないのです。
 「駅まで「おうふく」」は6年生の48.1%が書けませんでした。「人の意見に「さんせい」」が書けなかった人は32.4%、1/3もいます。4年生程度の漢字が満足に書けなければ、中学校の主要五教科全部に深刻な影響が及びます。算数・数学の文章題へも問題文が理解できませんから、深刻な影響が及んでいます。次の回で、武藤さんが個別に分析して見せたくれていますから、そこで詳しい解説をしたいと思います。

 算数で正答率が低かった問題を見ましょう。
 最初の問題は、「620冊×40/100」とやるか、百分率を少数になおして「620冊×0.4」の立式ができることと、計算ができることが求められています。小6では基本問題ですが、58.4%の生徒が正答できていません。1年後に中学1年生となり、9月には1次方程式の文章題をやることになりますが、この問題に不正解だった生徒は、方程式の文章題をマスターすることはほとんど不可能です。3/4の生徒が方程式の文章題で躓(つまづ)いています。

 2番目の四則計算は計算順序を間違えた生徒が多いことを示しています。乗算を先にすべきところを「6+0.5」を先にした生徒が多かったのでしょう。45%もの生徒が、四則計算の順序「加減乗除に先立たず」を知らないようです。
 「和差積商」という言葉を教える先生が少ないのだろうと思います。そういう意味(教え方に瑕があるということ)では国立教育研究所にも問題があります。

 3番目は台形の面積の問題は、面積の出し方を理解し、正しく計算できた生徒がわずか55.0%で、できなかった生徒が45.0%もいるという現実を示しています。ひっくり返してくっつける操作を理解していれば、公式の意味が理解できるはずですが、なぜ、こんなに正答率が低いのか各学校の教員は教え方を調査・点検すべきです。そうすれば、翌年はこうした基本事項に関することはあらかた改善できます。

 4番目は「分数÷整数」の問題ですが、無解答が9.6%あります。正答率が出ていませんがどれくらいだったのでしょう?
 分数や少数の計算については、教える側もあやしい。教科書にも問題があります。理解力のない先生が、教科書に準拠したつもりで教え方を自己流に工夫して、結果とんでもない間違った計算法で教えていた例を知っています。小学校の教員採用の際には、少数や分数の計算問題をそれぞれ百題課してもらえませんでしょうか?
 多くの先生はそういう間違いをするはずがないと思いますが、現実に分数や小数計算のあやしい教員がいるのは事実ですから、採用試験でそれぞれ百題計算問題を課すことで、フィルターにかけられます。教員採用も学校も生徒の教育のためにあるのですから、そういう視点から採用試験を見直してもいいのではないでしょうか。

 次回は、中学歴史の教科書を取り上げて、小学4年生以上の漢字が読めなければ、どういうことになるのかを、武藤さんが鮮やかな手際で示してくれます(この問題も、弊ブログで再三取り上げています)。 


<余談>
 「和差積商」や「加減乗除」などの漢文調の章句が学校の授業で使われなくなっています。たとえば、三角形の合同条件では次のようになっています。
1 三辺がそれぞれ等しい ⇒ 三辺相等
2 二辺とその間の角がそれぞれ等しい ⇒ 二辺夾角
3 1辺とその両端の角がそれぞれ等しい ⇒ 二角夾辺

 漢文調の右側の方がずっと暗記しやすいと思います。「夾」は「挟」を使う先生もいたような気がします。常用漢字表にないので、こんなにまどるっこしい言い方になったのでしょうか?
 複合しているようで理由がよくわかりませんが、どういうわけか暗記の苦手な生徒が増えているような気がします。
 平行線でも、同位角や錯角のほかに、昔は「同側内角の和は2直角である」というのを暗記していましたが、現在は削られてしまっていますから、証明が長くなります。プログラムと同じでコンパクトなコーディングの仕方のほうがよい。
 

*#2214 北海道庁教育局義務教育課長「講演会」でどよめきあり Feb.16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-17

 #2218 論旨の違う新聞報道:市PTA連合会主催講演会 Feb. 19, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-19

 #3178 教育シンポジウム(3): 武藤久慶氏による基調講演① Nov. 18, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-17-1

 #3179 教育シンポジウム(4): 武藤久慶氏による基調講演② Nov. 18, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-18

 #3180 教育シンポジウム(5): 武藤久慶氏による基調講演③ Nov. 19, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19

 #3181 教育シンポジウム(6): 武藤久慶氏による基調講演④ Nov. 19, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19-1

 #3182 教育シンポジウム(7): 武藤久慶氏による基調講演⑤ Nov. 20, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19-2

 #3183 教育シンポジウム(8): 武藤久慶氏による基調講演⑥ Nov. 20, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-20

 #3184 教育シンポジウム(9): 武藤久慶氏による基調講演⑦ Nov. 21, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-21

 #3185 教育シンポジウム(10): 武藤久慶氏による基調講演⑧ Nov. 21, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-21-1

 #3186 教育シンポジウム(11): パネルディスカッション Nov. 22, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-22


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