#3166 (人称)代名詞 考 Oct. 30, 2015 [46. 原著で読むダーレン・シャンの大冒険]
1.< it で受けるもの >
clothes を it で受ける事例を#3164で紹介しました。「複数ある布切れ」という意味ではなく、「着物」だから、itで受けるのは当然のことでした(「複数ある布切れ」という意味の文なら、themで受けることになります)。
複数の物や出来事を代名詞のtheyで受けずに、単数のitで受けるという例は限定されています。
Michel Swan "Practical English Usage" page 404 では次のように説明されます。
---------------------------------------------
It can also refer to a whole fact, event or situation.
Our passports were stolen. It completely ruined our holiday.
(パスポートが盗まれ、そのせいで休暇がおじゃんになった)
I did all I could, but it wasn't enough.
(できる限りのことはしたが、十分ではなかった)
It's terrible - everybody's got colds, and the central heating isn't working.
((みんな)ひどい目にあった。みんな風邪を引いていたのに、セントラルヒーティングが故障していた)
Wasn't it lovely there!
(そこはあまり素敵じゃなかった)
*訳はebisuがつけました。
---------------------------------------------
丸ごとひっくるめて捉えられている事実・出来事・状況に言及するときには it を使います。
最初の文も、2番目も、3番目の文も、itは文全体をさしています。
ハンドルネーム「後志のおじさん」が#3164へわかりやすいコメントを寄せてくれました。
「複数名詞を代名詞でうけるときに、単数にするかthey にするかは、話者の意識のあり方に関わる部分に関わっていて、「個々のものに意識がある」なら複数、「全部まとめて」なら単数ですね。」
次にまな板に上げるのは nothing、anything、everything 、この場合は they で受けるのか、it で受けるのか、どちら?
Nothing happened , did it? (何も起こらなかった、そうだよね)
Everything's all right, isn't it? (諸事万端うまくいっているよね)
(Michel Swan "Practical English Usage" page 403)
付加疑問文の例ですが、事象をまるごとひっくるめて一塊として捉えているので it で受けるのが通例のようです。
受験英語でもeverythingは単数扱いという説明がなされますから、中学生でも知っている知識です。
Everything he said is true. (彼の言ったことはすべて本当です) ジーニアス4版より
2.< they で受けるもの >
a person, anybody/one, somebody/one, nobody/one, whoever, each, every, either, neither, and no.
これらはtheyで受けます。ようするに、人に関するものはtheyで受ける。受けるべき名詞は三人称単数扱いなのに、それを受けた人称代名詞はtheyだからもちろん複数扱い、なんだかへんてこりんな感じがしませんか?形から判断するとへんてこりん、だから、中身を見ろということなのでしょう。一緒に文例を見ましょう。
------------------------------------------------
If a person doesn't want to go on living, they are often very difficult to help.
If anybody calls, take their name and ask them to call again later.
Somebody left their umbrella in the office. Would they please collect it?
Nobody was late, were they? Whoever comes, tell them I'm not in.
Tell each person to help themselves to what they want.
Every indivisual thinks they'er different from everybody else.
page 521
------------------------------------------------
不定名詞と不定代名詞をそれを受ける代名詞とセットで並べて眺めてみると、ピンと来るものが少なくなるので、覚えるなら用例丸ごとの方がよさそうです。
a person ⇒ they are
anybody ⇒ their name 、them
somebody ⇒ their umbrella、 they
nobody ⇒ were they、 whoever ⇒ them
each person ⇒ themselves
Every indivisual ⇒ they'er
左側は全部単数ですが、それを受けた人称代名詞はすべて複数のthey、コントラストが強すぎます。(笑)
人間が特定されていないという点からは、「人に関わる不定名詞句」、あるいは「人に関わる不定代名詞」が並んでいます。
たとえば、最初の文例は、「生きていたくない人を助けるのはなかなかむずかしい」と書いたときには、人間集団を「生きていたくないと思っている人」と「生き続けたいと思っている人」に分割して考えていますから、書き手の頭の中のイメージとしては、「生きていたくないと思っている人」は複数いることになります。だから、theyで受けると。
2番目は、「誰かが電話してきたら、名前を聞いて、後でもう一度電話してくれるようにお願いしろ」という意味ですから、電話して来る人は限定されていないので、複数という感覚はよくわかります。そうはいっても多少屁理屈にも聞こえてきます。
案の定、3番目がよくわかりません。
「誰かがオフィスに傘を忘れた。忘れた人がとりに来てくれますか?」
忘れた人は一人だ、そしてumbrellaは単数だから、忘れられた傘は一本。somebodyは一人、忘れた人がいるのだが、誰だかわからないというだけです。「忘れた人が取りに来てくれるだろうか?」、なぜ忘れた人をtheyで受けるのだろう、「傘を忘れた人」は一人ではないか。それとも、「傘を忘れた人」を、あの人だろうか、この人だろうかと頭の中で考えているということでしょうか。ここまで来ると考えすぎで屁理屈の類でしょう。
4番目は、「誰も遅れなかったよね」ですから、来る予定の人が複数いることになります、それをtheyで受けるのは理屈としてはわかります。「来ている人には、わたしはいないよと伝えてくれ」、これもなんとなく理解できます。
5番目は、「各自が己の欲するところを自分自身でやれと伝えろ」、これも素直にtheyでいいでしょう。
6番目は、「個々人がみな、他の人とは違ったことを考えている」、これも頭の中では複数を想定しているので、theyというのは納得がいきます。
総括すると、怪しげなのは3番目のようです。後半の意味を取り違えている可能性もあります。
itで受けたものに、 everything がありますが、they で受けたもののリストに every indivisual が入っています、どこが違うのと言いたくなりませんか?
違うのです、物か人かの違いがあります、物はitで受けられますが、人はitでは受けられません。
一番わかりやすいのは、それぞれ男女が考えられるので、theyが便利ということ。とってもわかりやすい説明です。
they は informal だが、数百年間使われているので、これも"OK"(informal、正用法は"That's all right")、むしろ口語ではこちらが圧倒的に主流ということです。
数百年前の formal English では、こういう場合には代名詞は何を使ったのでしょう?
実は、he、him、hisを使いました。gender free や unisex の観点から、男尊女卑を感じさせる伝統的な用法で書くことに抵抗が強くなったのでしょうね。
Swan は521ページで、they で受ける用法は数百年間の歴史があるので、informalではあるが、「完璧に正しい perfectly correct 」と書いています。most common in an informal style で、書き言葉としてはすでに formal の地位を獲得しています。
----------------------------------------------
2 correctness
This use of they/them/their has existed fo centuries, and it perfectly correct. It is most common in an informal style, but can also be found in formal written English. Here is an example from a British passport application form:
Dual nationality: if the child posseses the nationality or citizenship of another country they may lose this when they get a British Passport.
----------------------------------------------
a British passport application formは「英国旅券申請用紙」ですが、そこにこの二重国籍をもつ子どもについての旅券申請上の注意書きの文章が記載されているようです。
the child を they で受けるのは、unisex(男女両用)だからそこに配慮した代名詞の用法とも考えられます。
the child を複数人称代名詞の they で受けるのは、中学生にはきっと新鮮な驚きでしょう。
知らないことは多いもの、一つ知れば三つ知らないことが増える気がします。だから楽しい。(笑)
今回もあらためて、本を2冊読み比べて勉強になりました。紹介はしていませんが、"Collins CPBUILD English Usage" も参照しました。そのうち、こちらの説明と文例も紹介します。
理屈として考えるとわからないところや整理し切れていないところ、すっきりしない訳がありました、さて、あなたのご意見は?
*#3164 clothes 考:受ける代名詞はthem or it ? Oct. 27, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27
70% 20% 10%
Practical English Usage Diagnostic Tests: Grammar Tests to Accompany Practical English Usage
- 作者: Michael Swan
- 出版社/メーカー: Oxford University Press
- 発売日: 2010/08/12
- メディア: ペーパーバック
2015-10-30 09:20
nice!(1)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0