#3114 年金機構に数兆円規模の評価損がでるのか? Aug. 25, 2015 [91.経済]
この一週間で株価がどれくらい下がったのか日経平均で見ると、1679円である。比較のためにNYダウも並べておく。
日経225銘柄平均 ニューヨーク・ダウ工業30種
8月17日 20,554.47円 17,511.34$
8月25日 18,874.83円 15,871.35$
差し引き 1,679.64円 1,639.99$
ドル・ベースで5年間の日経平均の推移をみると次のようになっている。
2011年8月25日 8,772.36円/77.58円/$=113.08$
2012年8月24日 9,070.76円/78.86円/$=115.02$
2013年8月25日 13,636.28円/98.23円/$=138.82$
2014年8月25日 15,613.25円/104.07円/$=150.03$
2015年8月25日 17,874.83円/119.08円/$=150.08$
*2012年12月26日第二次安倍政権発足
日経平均は1週間で2,000円低下したが、昨年8月と比べるとドル・ベースでは動いていないことがわかる。
150.03$⇒150.08$
ドル・ベースの推移では2013年に23$、2014年に12ドル値上がりしただけである。最近1週間で1679.64円下がってドル・ベースで同じ水準に落ち着いたということ。
こうしてみると日経平均は為替レートの影響を受けていることがわかる。東証1部上場株の外人投資家比率が1/3を超えているから、外人投資家の売買と為替変動が日経平均の変動幅を大きくしている。
要するに、国力を弱めて円安誘導すれば日経平均株価は上がるのである。アベノミクスによる異次元の金融緩和策が異常な円安を引き起こしたことは2011年からの為替レートの年次推移をみれば一目瞭然である。
2011 2012 2013 2014 2015年
77.58⇒78.86⇒98.23⇒104.07⇒118.38円/$
日銀が大量の株式買い入れを行い、そしてGPIF(年金基金管理運用独立行政法人)が130兆円の資産のうち、国内株式に従来12%を投資していたのを政府の圧力で25%に上げた。これで16.9兆円が日本株式取得へと向かった。公務員共済年金基金の残高は80兆円だが、これもGPIFと同様に国内株式比率を上げたとすると10.4兆円である。27兆円もの資金が株式相場を吊り上げるために国内株式市場に投下されつつある。
GPIFが買い入れられる国内株式は残るところ1~2兆円といわれているから、一時的な問題を別にすれば、もういままでのように株価を高い水準に誘導できる力にはなり得ない。あとは日銀が買い支えるだけ。その日銀も国債保有残高が300兆円を超えて、財務省が発行し日銀が買い入れるという、ウロボロス化している。財政の健全性を担保するために、日銀には独立性が求められるが、中学公民で教えられるのとは真逆のことが安倍政権の下で実際に行われている。
ざっくり見るとなにが起きたのかよくわかる、9000円から20000円への日経平均の上昇の半分は、二重の意味でアベノミクスによる自作自演だった。
GPIFや共済年金基金は米国株式にも同規模の買いを入れているから、今年度末には巨額の評価損失を出す恐れが出てきた。
リスクが大きいので、米国は年金基金の株式運用を禁じている。日本政府は政権維持のために日経平均を過大に見せようとして、自作自演の円安・株高をやり、巨額の損失を出しつつある。この損失は年金受給額を減らすことによってあがなわれる。
<試算>
日経平均がNYダウと同様にドル・ベースで10%下げたとして、そのときに為替レートが110円としたら、日経平均はおおよそどれくらいになるか?
150$*0.9*(110円/$)=14,850円
これぐらいまで下がっても外人投資家から見た日経平均は、底値ではなく適正な株価変動の範囲内に見える。
株価上昇分のうちの半分がアベノミクスによる自作自演と考えると、15,000~18,000円の間の16,500円ぐらいが日経平均の現在のところの実力相応の相場だろう。
<余談-1>
2011年8月のドル・ベース日経平均で現在の為替レートで日経平均を逆算すると、次のようになる。
113$*119円/$=13,447円
もちろん、2011年3月の東北大地震やそのときの福島第一原発メルトダウンなどの影響があったし、現在の株価は株価収益率でみたら適正だということはできる。しかし、東証Ⅰ部上場企業の税引き後利益自体が、内需や景気しだい、原油価格しだい、貿易収支や経常収支尻の赤字幅しだい、為替レートの変動しだいで、大きく動いてしまうから、株価収益率(ROE)だけを尺度にして日経平均株価の水準を論じるのは危険であることはいうまでもない。株価は多角的に考察すべきものなのである。
著しく偏った経済政策であるアベノミクス三本の矢は、そういう意味で一方向からだけの危うい視点でなされているといえる。こんなにバランス感覚を欠いた経済運営は稀である。
<余談-2:預金封鎖>
戦後まもなく預金封鎖が行われた。戦前から赤字国債を膨らまし続けたから、それを国民の預金で帳消しにするために政府が行った。政府と地方自治体の借金の総額は1200兆円に近づいている。いつまた、同じことが起きるかわからぬ。
年金も怪しくなってきた、3割減るのは時間の問題だ。個人にとっては預金を半分くらい不動産に替えておくことくらいしか対策はなさそうである。まあ、ハチャメチャなひどいことになりそうだから、覚悟だけはしておかねばなるまい。民主党の不甲斐なさに懲りて、自民党へ票を預けたのが間違いだった。いやどちらに預けても似たような結果だったのだろう。わたしたちには選択肢がなかったのだ。
自民党政治家の全員が安倍氏と同じではあるまい、国をつぶしてしまう前に健全な保守主義に戻ろうではないか、それが良識というものだとわたしは思う。
健全な保守主義を支える21世紀の経済学についてはカテゴリー『資本論と21世紀の経済学第2版』ですでに明らかにしている。四百字詰め原稿用紙で450枚ほどの分量がある。
*#2715 GPIFの株購入と銀行保有リスク資産に関わるBIS規制変更 June 25, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
*#3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次> Aug. 2, 20
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15
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