#3054 『ガンゲイルオンライン-1 スクワッド・ジャム』 Jun. 4, 2015 [44. 本を読む]
これも生徒が貸してくれた本の中の一つで、時雨沢恵一という作者の作品である。川原礫のSAO(ソードアートオンライン)の枠組みをそっくりいただいて、別の主人公がフルダイブ型のオンラインゲームを楽しむ物語である。内容も日本語語彙も文章表現も小学生高学年レベルの本である。
ゲームの中身が人対人の殺し合いをいうところがSAOとは異なる。こういうゲームが開発されたら、兵士のトレーニング用に使われるだろう。
この本(シリーズ)は完全な娯楽本で読解力や語彙力強化にはまったく寄与しない、ほとんど漫画の本に近いレベル。面白いことは間違いないが、深みのない面白さといえば伝わるだろうか。
中学生がこういうレベルの本しか読んでいないとしたら、日本語語彙力が貧弱で高校生になって全国模試を受験したときに、国語・数学・英語はともに偏差値40(全国レベルで百人中84番)以下になるだろう。数学の問題は文意を捉えられない。国語の論説文はスピードと難易度の両方で手も足も出ないということになる。日本語ができなければ、まして英語は・・・ということになる。正答できるのはネイティブの小学生レベルの日常会話文に限定されることになるだろう。
ところで、表紙に主人公がP-90というピンク色に塗られた銃が描かれているが、生徒がの一人がたまたま偶然にもっていた。スマホから銃を構えた写真を引っ張り出して見せてくれたが、同じ型の銃だった。電気銃で色はクロ。
大正10年生まれだったオヤジのアルバムの中に、落下傘部隊に所属していたときの写真が何枚かあったが、よく手入れされた真っ黒い機関銃に二本足をつけて地面に固定して構えているものがある。黒い外套を着て映画のシーンのような写真だった。銃を構えた若いころのオヤジは映画俳優のようなイケメンで精悍な顔つきをしている。さすがは陸軍最強の秘密部隊のメンバー。
この物語ではさまざまなタイプの銃がでてきて、その都度説明がなされているが、オヤジが構えていた真っ黒い機関銃のような凄みや重みが文章からはちっとも伝わってこなかった。所詮はオンラインゲームの世界の創りごとだから、現実感が薄くてよいのかもしれないが、文章表現次第ではなかっただろうか。オンラインゲームであろうとも、毎日十分に手入れされた銃の凄みを伝える文章表現力をもってもらいたいと思った。
<新潮社の百冊>
1976年から毎年公表されているが、年々レベル低下しているような・・・、「2014年版新潮社の百冊」を紹介する。2番目のURLはウィキペディア。37年間で25回以上選ばれた作品22冊のリストがあるので、高校卒業までにこちらは全部読み、使われている語彙の幅の広さを体験してもらいたい。
http://100satsu.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB%E3%81%AE100%E5%86%8A
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その他、2012年までの37年の間に25回以上選出された作品は、以下の通り。
- 芥川龍之介 『羅生門・鼻』 - 35回
- 芥川龍之介 『蜘蛛の糸・杜子春』 - 29回
- 安部公房 『砂の女』 - 32回
- 井上靖 『あすなろ物語』 - 26回
- 遠藤周作 『海と毒薬』 - 28回
- 遠藤周作 『沈黙』 - 28回
- 梶井基次郎 『檸檬』 - 34回
- 川端康成 『伊豆の踊子』 - 30回
- 川端康成 『雪国』 - 31回
- 高村光太郎 『智恵子抄』 - 30回
- 太宰治 『斜陽』 - 26回
- 谷崎潤一郎 『痴人の愛』 - 33回
- 壺井栄 『二十四の瞳』 - 28回
- 中島敦 『李陵・山月記』 - 25回
- 夏目漱石 『坊っちゃん』 - 29回
- 三島由紀夫 『金閣寺』 - 36回
- 武者小路実篤 『友情』 - 31回
- 森鴎外 『山椒大夫・高瀬舟』 - 27回
- ゲーテ 『若きウェルテルの悩み』 - 25回
- サガン 『悲しみよこんにちは』 - 25回
- コナン・ドイル 『シャーロック・ホームズの冒険』 - 29回
- リチャード・バック 『かもめのジョナサン』 - 31回
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<余談> ・・・4日7時追記
わたしはこの本を小学生や中学生の皆さんに薦めているわけではない。好奇心をもっていろんな本を読むこと自体はよいが、新潮文庫の22冊に挙げられている本くらいは中学生の内に全部読み切ってもらいたい。
koderaさんがわが意を強くする投稿を寄せてくれたので紹介したい。
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私なら子供にこんな本やゲームは買わせません。お小遣いをあげないからです。もっとも今でも孫にお年玉もあげません。
私は、私に将棋で勝ったときにあげます。二枚落ちプラス香桂落ちですが。いい勝負なのです。孫は貯金しています。
娘には、嵐が丘や小説十八史略や、漫画でもキャプテンやプレイボールなら買ってあげました。
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孫と飛車角桂香落ちで将棋が指せるというのはアマ2段以上、おそらく4段クラスの棋力だろうから、定石と基本手筋は一通り教えられる。こういうお祖父さんがいたら将棋好きな孫は幸せ者。
じつは家に電気銃「P-90」がある生徒も将棋が大好きだ。お父さんにはぜんぜんかなわないと言っていたが、4枚落ちではなく2枚落ち。将棋好きでも本を読まない子どもは棋力がなかなか上がらないし、定石や基本手筋に習熟することができない。学力の高い生徒は将棋の解説書を読むから、読み出すと急激に棋力が上がってしまう。理論研究をする者は上達が速い。
(将棋が好きな生徒には将棋の本を貸してあげたり、あげたりすることがある。私はビリヤードが趣味だから、書き溜めたセミプロの技術ノート(配置図面とコツを描いたもの、中にはスリークッション世界チャンピオンの小林先生に教わったものもある、昭和天皇のビリヤードコーチだった吉岡先生の短クッションを折り返すアメリカンセリも)を体育系の部活をやっている生徒にみせることがある。理論研究の大切さを知ってもらいたいからだ。)
漫画の本にも名作は数が多い。koderaさんが挙げたものの他に、手塚治『鉄腕アトム』『釈迦』『不死鳥』『ブラックジャック』等々、斉藤タカオ『ゴルゴ13』(高校同級生の神田猛が斉藤タカオの一番弟子)、『タッチ』などがすぐに思い浮かぶ。日本の漫画の本はレベルの高いものが多いので、それらを読むことは否定しないし、私自身もスキルス胃癌で入院したときまで漫画の週刊誌をずっと読み続けたきた。中学1年生のときに少年マガジンと少年サンデーが発売された、そのとき以来44年間週刊漫画誌のファンであった。いまの子供たちは、ゲームや漫画の本に夢中になるとそこからレベルを上げていくものが少ないので心配している。好奇心が旺盛で、学力が上がってくれば日本語語彙の貧弱な本は飽きてくるというのが自然だ。ところがいつまでもレベルが上がらない者が多い。そういう子どもたちは、精神的にもひどく幼児化している。読む本のレベルを上げて精神の成長を育んでもらいたい。
*#2882 ソードアートオンライン007 マザーズロザリオ Nov. 26, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-26
#3051 『ソードアートオンライン・プログレッシブ』001~003を読む May 31 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-05-31
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ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (1) ―スクワッド・ジャム― (電撃文庫)
- 作者: 時雨沢 恵一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/12/10
- メディア: 文庫
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (2) ―セカンド・スクワッド・ジャム (上)― (電撃文庫)
- 作者: 時雨沢恵一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2015/03/10
- メディア: 文庫
ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン (3) ―セカンド・スクワッド・ジャム (下)― (電撃文庫)
- 作者: 時雨沢恵一
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2015/06/10
- メディア: 文庫
ソードアート・オンライン(6) ファントム・バレット (電撃文庫)
- 作者: 川原 礫
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2010/12/10
- メディア: 文庫
管理人様がこのような本やゲームを御存じとは、びっくりです。
私なら子供にこんな本やゲームは買わせません。お小遣いをあげないからです。もっとも今でも孫にお年玉もあげません。
私は、私に将棋で勝ったときにあげます。二枚落ちプラス香桂落ちですが。いい勝負なのです。孫は貯金しています。
娘には、嵐が丘や小説十八史略や、漫画でもキャプテンやプレイボールなら買ってあげました。息子の本は全部娘のおさがりでした。娘の家には復刻本の2つもシリーズ漫画があります。息子のマンションにはその原本のシリーズもあります。おさがりですので。
私もつい最近まで時々読んでいましたが、涙が出てきました。そういえば、あられちゃんやサザエさんも面白かったし、復刻本もあるので読ませるべきでは。一家で楽しめます。
質問したいことがどんどん増えてきました。不味いです。こりゃだめですね。
by tsuguo-kodera (2015-06-04 04:57)
koderaさん
おはようございます。
いま、貴投稿を抜粋して本欄へアップさせてもらいました、ご了承ください。
漫画の単行本の名作や英語の絵本がたくさんあったのですが、娘が学校を卒業したあたりで彼女が全部ブックオフで売り払ってしまいました。読み終わると要らない人なのです。2000円以下の本をどんどん買ってきますが、読み終わると片っ端から処分です。わたしとは性格がだいぶ違っています。(笑)
将棋が強いのですね。棋力はひょっとするとアマ4段クラスなのではないですか?将棋の好きなお孫さんは幸せ者です。(笑)
あられちゃんやドラゴンボールは娘といっしょに見ていました。サザエさんは少しジャンルが違いますね、こういうほのぼのしたものがなくなりましたね。漫画は原作者と絵を描く者が々場合が多いのでさまざまに個性的な作品群があります。たくさん読んで、見る目を養ってもらいたいですね。
投稿ありがとうございます。
by ebisu (2015-06-04 07:39)
些細なことですが、キャプテンはちばあきお様の少年野球漫画の題名です。キャプテン翼のサッカー漫画も人気だったのです。
ちばあきおさんは素晴らしい漫画作者でした。後編のプレイボールは尻切れトンボの終わり方だったので残念でした。でも、作者は間もなく自ら命を絶ったのです。本当に残念でした。
なお、ちばあきおさんはちばてつやの弟です。お兄さんはあしたのジョーで有名でしょう。兄弟そろって天才だったのでしょう。満州生まれだったはず。
私はいがぐり君や赤胴鈴乃介、少年王者や少年ケニアや怪人二十面相のシリーズで育ちました。少年王者は絵も文もあり、面白い本でした。
漫画や新諸国物語を語るなら私はうるさい年寄りです。霧の小次郎や三日月童子など全作品を見たはずです。歴史が好きになったのはこのような映画のお蔭だったのでしょう。
by tsuguo-kodera (2015-06-04 16:05)
「キャプテン」という野球漫画があったのですか、早とちりでした。サッカー漫画の「キャプテン翼」と勘違いしていました。本欄のほうは訂正します。作者のちばあきおさんは千葉てつやの弟ですか、兄弟揃ってすごいことです。
わたしは「キャプテン」のほうは知りませんでした。
赤銅鈴乃介は懐かしいですね、「真空斬り」、いい時代でした。怪人二十面相も独特の語り口が懐かしい。あの時代は紙芝居もありました。
by ebisu (2015-06-04 22:18)
そうですね。私は本の前に紙芝居で育ちました。黄金バッドを覚えています。幼稚園に行けなかった私は、横町に来た紙芝居が一番の楽しみだったのかもしれません。
義経や平家物語、イソップ童話、グリム童話にすんなり入れたのは紙芝居のおかげだったのかも。そういえば、小学校でも先生がいろいろな紙芝居をしてくれました。勉強の紙芝居や嘘つき男爵などがありました。
もちろん、家の近所はべっ甲飴、水あめが一番楽しみ、何かを買わないと只見と言われるからです。美味しかった。貧乏でもお金で情報を買う習慣がついたのかも。
紙芝居から始まって、西遊記の絵本、小学館の月刊誌と進んでいき、少年や少年画報は欠かさず読みました。兄弟や近所の仲間と交換し読んでいました。ここからは良く覚えています。
手塚治なら、リボンの騎士ですね。性差別やいじめの問題も嫌いなのはこの作品のお蔭かも。管理人様があげた作品なら良く読んでいました。ランプ氏や変なたこの登場場面などすべての作品でよく覚えています。
工作や粘土や理科が得意になったのは小学館の月刊誌のお蔭です。自分でやったのですが、まともにできたことはありませんが、形にはなりました。
勉強ができるようになったのはたぶん、父が欠かさず買っていた蛍雪時代の付録のお蔭もあるのです。小学生の時娯楽は少なく、姉や兄の定期試験相手をしていたからです。4歳上と遊んでいたから。
その時、蛍雪時代の付録は小学生が高校生の勉強問題を出すには優れた小冊子が多かったのです。自分の受験の時、理科の原子表や社会の年表を丸暗記したのですが、簡単に勝手にダジャレを創り覚えられました。蛍雪時代にあったからでしょう。
小学生時代の遊びで中学と高校の暗記科目は半分終わっていましたので、勉強が嫌いだった姉や兄のお蔭かもしれません。(笑)
管理人様にコメントしていると変なことが勉強に役立っていたんだと思えるようになります。質問したいことばかり増えています。やばいです。
by tsuguo-kodera (2015-06-05 05:13)
koderaさん
おはようございます。
いま考えると紙芝居は音読のお手本でした。怪人二十面相の独特の語り口に惹きつけられました。
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「・・・新聞なんかでは、きみのことを怪人二十面相と呼んでいるようですね。」
明智は平然として、この驚くべき言葉を語りました。ああ、読者諸君、これがいったい、ほんとうのことでしょうか。盗賊を探偵が出迎えるなんて。探偵のほうでも、とっくに、それと知りながら、賊のさそいにのり、賊のお茶をよばれるなんて、そんなばかばかしいことがおこりうるものでしょうか。
斉藤孝『声に出して読みたい日本語②』196ページ
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このなかの「ああ、~」の部分がいいのです。紙芝居のおっちゃんの語り口は感情のこもったじつに巧みな音読でした。
そういうお手本が子どもの身近に紙芝居としてあったから、それをきっかけに本を読みたくなる子どもがたくさんいたのは不思議ではないでしょう。
紙芝居のおじさんのような音読ができるようになれたら楽しいだろうなと思いました。そうして振り返ってみると、いま生徒たちとやっている音読は冷や汗ものです。
ネットは空間の隔たりをこのように越えられるので便利ですね。ところで「管理人様」は「管理人さん」でけっこうですよ。わたしも「koderaさん」とは書いていますが、お互いの年齢がハッキリしたので本来「貴兄」と書くべきですが、そうは書いていません。投稿欄は他の方々も読んでいるので「さん付け」で十分と思いますがいかがでしょう?
ところで「蛍雪時代」、そういう名の雑誌がありましたね。しかし読んだことがありません、周りにそういう年長者がいなかったからでしょう。そう考えると、「環境」の影響も無視できません。
ふるさとに35年ぶりに戻って、根室の子どもたちに自宅の書斎を開放することも、一握りの子どもたちにとって「異環境」の創出になれば幸いです。
そう考えると、授業の合間にする雑談も大事かもしれません。田舎から都会へ出て働くことがどういう困難と喜びを伴うのか具体的な話ができます。根室の子どもたちの80%前後は根室を離れて都会へ進学しそのまま就職します。何も事情を知らずに飛び出すよりは現実を語る大人がいたほうがいいでしょう。
紙芝居は案外大事な「装置」だったのかもしれません。身近にいた音読のプロは職業としては消滅してしまいました。小学校の担任のT木先生が、よく音読指導をしてくれました、なつかしい。感謝しています。『リア王』も貸してくれました。うれしかった。曙町にお住まいです。
by ebisu (2015-06-05 08:53)
『ガンゲイルオンラインⅡ』と『ガンゲイルオンラインⅢ』を生徒が貸してくれたので、読みました。
最後の落ちがよかった。最初から予定していましたね。全体の構図を大まかに定めてから、書き始めた物語のようです。
シナリオナシに書いているうちに、登場人物たちが勝手に動き回り、書くというよりも物語の登場人物たちに書かされている感のある夢枕獏さんとはまったく違う方法。小説書きとしてはむしろ夢枕獏さんのほうが異例で、時雨沢恵一さんのほうがオーソドックスなやりかたです。
ガンゲイルは漫画の本を読むような楽しさがありました。
殺人ゲームであるところが気になります。
こういうゲームは軍隊で兵士のトレーニングに利用されるでしょう。バーチャルな世界で殺人を平気でやれるようになれば、現実の殺人のハードルが低くなります。全員がそうではないでしょうが、戦場でためらわずに人を殺せるメンタリティを獲得する者がでてくるでしょうね。殺人を犯しても精神にダメージを受けないから、自殺が防げるし、ノイローゼも減るから医療費も少なくてすみます。米国防省にとってはとっても美味しい話です。
こういう装置を人類は手にしたことがありませんから、人間のメンタリティに何をもたらすのか、研究すべきです。
メンタリティに変容が起きれば、人類は別の次元に否応なく突き進むことになります。ドローンや兵器の人工知能搭載がどんどん進化しています、それとメンタリティの変容が起きたら怖い話だと思います。
by ebisu (2015-06-23 11:23)