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#2998 電子辞書かそれとも紙の辞書か? Mar.13. 2015 [47. 語彙力と「読み・書き・そろばん」]

 中2の生徒が「ストロンジャってなんですか?」と質問を投げてきた。なにかなと思ってみたら、strongerだった。「それストロンガー、意味は'強い'」と応えてから、「辞書は使っている?」と訊いてみた。「電子辞書を使ってます」とこたえた。
「どういう問題?」
 アンテナに引っかかるものがあったので、問題文を見た。

  This bag is stronger than that one.

 この文を和訳せよという問題だった。他の生徒をみたら「このかばんはあのかばんより強い」と訳した生徒と「このかばんはあのかばんよりも丈夫だ」と訳した生徒がいた。もちろん、「丈夫だ」が正解である。こういう細かいところをおろそかにしてはいけないのである、じつに重要な部分なのだ。高校、大学と進むにしたがって、辞書を引く前に最適な日本語の訳語が頭に浮かぶようになり、確認のために辞書を引くように変わる。そのあたりから邪魔な日本語訳が載っていない英英辞典がよくなってくる。

 「鞄が強い」という日本語を書いて違和感を抱かないのは日本語の語感あるいは日本語語彙の運用能力に問題ありと考えるべきだろう。「鞄+強い=鞄が丈夫だ」くらいの日本語の語感は育てておきたい。日本語語彙の運用能力が英語力に密接に関連していることがこの一事からもわかる。小学校から英語を習っていても高校になってぴたりと成長が止まる生徒が多いのは、日本語の語彙の貧弱さや、日本語の語感の鈍さに起因している場合が多いのである。小学校から英語を習っていても、高校で英検準2級どまりの生徒がほとんど。日本語の語感の鈍い生徒は英語の語感も相応に鈍い。だから、小学生や中学生の時期に一度、日本語の良質のテクスト(ジャンルはなんでもいい)の濫読期を通過しておかねばならない。体の成長に合わせて読むテクストのレベルを上げていくべきことはいうまでもない。それは精神の成長の滋養になる。

 電子辞書を使うと、「強い」という意味が最初に出てくる。スクロールすると「丈夫」という意味が出てくる。紙の辞書だと1番目も2番目も3番目も一緒に視界に入るから、いろんな意味のあることがわかる。だからstrongの意味全体のイメージを作りやすい。
 腕力が強いのも、珈琲が濃いのも、香水の匂いがきついのも、酒のアルコール度数が大きいのも、体が頑健なのもstrongである。
 後志のおじさんが言っていたが、辞書を引くたびにその単語のイメージを思い浮かべることを習慣にしている人とそうでない人は、年数がたつごとに英語力の差が広がっていくという。だったら、初学の生徒たちは英語の勉強に電子辞書を使ってはいけない。

 E-Gateという辞書があるが、これはstrongのいろいろな意味が、囲みの中にまとめて表記されているから、一目で全体が見渡せる。単語から、その意味をイメージしやすい辞書だ。意味の図解もふんだんに載っている。前置詞のそれらの図は大変参考になる。もちろん、それらの記号風のイラストが付してある項目はすくない。基本動詞の一部と、一部の名詞、そして前置詞と一部の副詞のみであるのだが、少ないがとっても役に立つ。他の辞書でもこういうイラストによる説明の載っているものがあるかもしれない。私自身は普段は「GENIUS4版」を使っている。英字新聞を読むのにE-Gateでは収載項目数が少なすぎるからである。
 「GENIUS 5版」が昨年暮れに出された。8年ぶりの改訂で、前置詞のイメージと他の前置詞との関連がイラストで説明されているようだ。ジーニアスは出版された当時から版が変わるたびに購入して利用している。
(英英辞典はCALD、Longman Essencial Activator, Collins Coubild Advanced Learner's Dictionaryを利用している。コリンズ・コウビルドは1987年にコーパスを利用した最初の辞書としてデビューして以来何度か買い換えている。個性の強い辞書で、便利でもあるところがときに不便でもある、でも好きな辞書の一つだ。 ああ、もう一冊、マクミランがあった。
 どれが一番いいということはない、それぞれに特徴があり、わたしには優劣がつけがたいのである。気になると何冊も同じ項目をあたって比較してみるがそれは楽しい作業だ。もちろん、ネット辞書も主要なものは「お気に入り」に登録しているので、どれにするかは気分しだい。)

 たとえば、currentには電流、潮流、風潮などの意味があるが、E-Gateでは二重の波線の図が差し込まれて、空気や水の流れを想起するようになっている。記号化されたイラストが語彙のイメージを脳内に形作るのに便利であることがお分かりいただけるだろう。

 生徒にstrongの項を開いて見せて、電子辞書ではこの一番上しかみられない、「丈夫」という意味はスクロールしないと現れないが、紙の辞書は視線を走らせるだけでサーチできるから、適切な訳語を探したり、単語の意味の根本的なイメージをつかむには紙の辞書のほうが断然有利なんだと説明した
 中学生や高校1年生が電子辞書だけで英語の勉強をしていたら、英語力の伸びを押さえているようなものだ

 弊ブログに投稿欄の常連の一人であるHirosukeさんも、高校生が電子辞書を使うのはよくない、紙の辞書を使うべきだと主張して、毎年新しい辞書を並べてその優劣を論評しているから彼のブログものぞいてみたらいい。

*「目的・目標レベル別 英語の良い辞書、悪い辞書」
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2006-09-10


 教科書や問題集、副読本がびっしりで高校生の鞄(リックサック)はとっても重くなっているから、紙の辞書が入らないのはわかる、だから学校で電子辞書を使うのは仕方がないが、家では紙の辞書を使って勉強しよう。3年間で大きな差が出てる。

 根室市内の中学校で生徒に英語の辞書を使わせないのはどういう了見だろう?
 
小学校では国語辞書を引くトレーニングをしているが、市街化地域の3中学校では英和辞典を引くトレーニングをしていない。一度も英和辞典を引かずに、大半の生徒が高校へ進学している。高校では新入生に「オールイングリッシュ」授業をためすも、無駄なことをさとるのか2年生の授業では日本語が大半の建前だけの「オールイングリッシュ」授業になっている。

 団塊世代で中学校で英和辞典を使わなかった生徒はほとんどいない、同級生はみんな辞書を引いていた。いつからこういう風に辞書を使わなくなったのか、根室(北海道?)の中学生の英語の学習に英和辞典は必要なしとでもいうのだろうか?中学校英語授業の改善を望みたい。


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通りすがりの大学生

私も紙辞書を活用しておりました。公立高校入試段階だと英単語と訳語を一対一で対応させる勉強をしていても弊害は感じにくいでしょうが、高校に入り、レベルの高い英文を読むようになってくると辞書の一番最初に出てくるような意味をあてはめて訳をつくると頓珍漢なものになってしまうことが多々あります。さらに、難関大学になればなるほど、このタイプの受験生を排除しようとする問題が多くなるため、それに対策を立てる必要があります。その際に重要になってくるのはむやみやたらに難しい単語を覚えるのではなく、中学レベルも含めた、基本的な英単語をどれだけ深く使いこなせるかが重要になってきます。深く使いこなすためには、英単語に対して広がりを持った1つのイメージをつくることが不可欠です。1つしか訳語を知らないところから複数の訳語を知り、さらにはそこから派生して数十の訳語を思いつける状態になることが必要です。その際に重要になってくるのが様々な意味がパッと頭の中に飛び込んでくる紙辞書だと思います。電子辞書では大半が上からスクロールする形式のためどうしても自分の今知りたい訳語を検索することだけに集中してしまいがちな人が多くなります。そして別の問題を解く際にその単語はその意味しか知らないため読めないということが起きやすく、長期的にはあまり良くないと思います。
by 通りすがりの大学生 (2015-03-14 09:16) 

ebisu

通りすがりの大学生さん

コメントありがとう。(後志のおじさんやHirosukeさんに)あなた(TOEIC870点)も含めて、英語に堪能な人は電子辞書ではなく紙の辞書を使えと薦めています。
語彙のイメージを形作るためにはその多様な意味や用例を一覧できることが不可欠であるからです。

難関大学入試の2次試験レベルでは、作問担当教官の専門分野から長文出題をすることが多いので、センター試験の長文とは難易度がまるで違っています。

センター試験をクリアして、さらに専門書の文章がどれだけ読めるのかを試しているようなものが多い。そこでいままでの勉強のやり方の差がはっきり出てしまいます。

大学院入試について言えば、作問担当教官の専門分野の本を数ページ採録して、抄訳を要求する形式のものが多い。専門書を原書で読めなければ研究なんてできませんから、専門書が適確に読めているかどうかを試験でチェックするだけ。

紙の辞書を使って単語のイメージを繰り返し脳内に焼き付けておく正攻法の勉強を続けた学生は、大学入試2次試験も大学院入試も特別なハードルはない。
そこから先は生成文法の専門書でも2冊ぐらい読んでおけば、どこの大学、大学院でもクリアできるでしょうね。
by ebisu (2015-03-14 11:38) 

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