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#2958 『資本論』と経済学(18):「教育の職人」 Feb. 5, 2015 [A1. 資本論と21世紀の経済学(初版)]


16.  <労働者ではなく「教育の職人」としての誇り>

 学校の先生は「教育労働者」ではなく、プロの仕事人である。プロの技を磨いて、真摯に仕事をする、普段は60%で十分だが、必要な局面では渾身の力で仕事する。自分が受け持っているかわいい生徒たちの学力を上げて生徒が自信を取り戻した表情を見た人は自分がしている仕事を「苦役」だとは思わない。
 
どの職業も、人様のお役に立って、喜ばれてこそなんぼのもの。「先生、独りで文章題解けるようになった」と笑顔の生徒をみるのはうれしいもので、この職業ならではの歓びがある。仕事を通じて歓びがあれば職業に対する誇りも生まれる。学校の先生は日々学び、教育技術を磨き、生徒と共にある、教育の職人であれ!

  教師の仕事は「工場労働」ではない。マルクスが『資本論』で想定したのは工場労働者の労働、しかし教師はインテリ。皮肉なことに『資本論』を書いたマルクスも、ロシア革命を成し遂げたレーニンも、労働者ではなく大学に職を求めて得られなかったインテリだった。共産主義や社会主義という言葉は、体制からスピンアウトしてしまったインテリの方便。実態は労働者階級の革命という看板を掲げて扇動し、インテリがちゃっかり権力を奪取した。
 
レーニンが這い上がるには「革命」を起こして政治指導層に君臨するしかなかった。労働者はインテリたちが指す将棋の駒に過ぎない。(マルクスは悲運だった。ドイツで何度か大学に職を求めたがかなわない、そして英国に亡命せざるをえなくなる。マルクスはロンドンに亡命してから、工場経営や株で稼ぐエンゲルスの扶助を受けて大英図書館で経済学の研究に打ち込み、貧困の中で64歳で死去。)

 [根室の市街化地域の3中学校の状況]
 
根室の中学校の先生たちはこういうヨーロッパの「労働観(労働は苦役である)」の呪縛から自らを解き放ち始めているように見える。生徒の学力を上げようと、底辺の学力の生徒たちに放課後補習をするようになってきた。以前から市街化地域の3中学校では8年前にも数人いた、しかし数人だったし、学校として校長がバックアップしたものでもなかった。それがいまでは集団の動きになっている、学校としての取組に変りつつあるのは喜ばしい。
 
一部では小中学校の先生たちの定期的なミーティングも始まっている。中学校の先生の立場から、小学校の授業に注文をつける必要がある。4年生程度の漢字の書けない中1の生徒や、分数や少数の加減乗除算混合算のできない中1の生徒が34割いる現状は、小学校の授業のやり方から見直さないといけない問題をはらんでいる。小中の垣根や学校教育と教育問題に関心のある地域住民との垣根を越えた議論が必要である。

[プロフェッショナル]
 
こういう名前のNHKの番組がある、この番組は長寿番組で、すでに254回放送されたから、この番組の本数をみても日本にはたくさんの種類の一流の職人がいて、社会を支えていることがわかる。23日放送は「羽田空港日本一の清掃員」だった。ビル清掃の達人の新津さんが取材されていた。中国瀋陽生まれの新津さんは中国では日本人と言われて差別を受け、日本へ来てからは「中国人」と言われて差別を受けたという。ビル清掃の職に就くが、清掃が最下層の職であることを知る。だが、自分にはそれしかないと思いきめ、それならこの道を究めてみようと考えを変える。何度訊いても、どうやっても指導員の鈴木さんはほめてくれない、「もっとこころをこめなさい」というだけ。清掃技能選手権に出場するも優勝できない。さらに努力を続けて、優勝する。指導員の鈴木さんに報告すると、「優勝するのはわかっていたよ」との返事。日本一になることを確信していたのだという。
 
80種類の洗剤を使い分けて徹底的に汚れを落とす。お客さんの気持ちになって何が必要かを考えて行動する。トイレの手の乾燥機の排水溝に雑菌が繁殖すると異臭の原因になる。新津さんはそれを清掃する細長いブラシをメーカと共同開発した。プロの仕事は目に見えないところも手を抜かない。
 
部下の作業員から、トイレの黒ずんだ汚れの相談があった。「どうしても汚れが落ちません」と報告を受けると、現場に出向いて観察、滑り止めの表面のでこぼこ処理が邪魔をして低い部分の汚れが落ちないことに気づき、ウォッシャーに取り付ける素材を替えて試してみると、みごとに汚れが落ちた。そのあとの実に晴れ晴れした顔がよかった。
 
「日々努力し、こころを込めて…」それがプロフェッショナル、清掃の職人だと、新津さん。「自分の家だと思って仕事する」「空港がきれいですね、それで十分、誰がやったかはどうでもいい」、すごい人だ。羽田空港は2年連続で「世界一清潔な空港」に選ばれた。
 その新津さんが尊敬するのが高層ビルの窓拭き30年の羽生田信之さんだ。その技も取材されていた。汚れを落とした後、水切りをするが、水きり道具を左右上下に手首を返しながら3回動かすだけで完璧に一つの窓の水切りを完了する、そして余分な水が下に落ちないように丁寧にふき取る。プロの技は無駄がなく完璧だ。プロフェッショナルとはと問われて、「いつまでもときめきを忘れない、永遠の初心者」と応えた羽生田さん。初心者はのろくてもけっして事故を起こさない、高層ビルの窓拭きは高所作業なので危険が伴うから慣れが一番恐ろしい、こころはいつまでも「初心者」であり続ける。
 日本には渾身の力で仕事をする、レベルの高い一流の職人がさまざまな職業分野で活躍している。日本は世界にまれにみる職人経済社会・職人文化の国なのである。

 *NHK番組「プロフェッショナル」「清掃のプロ」スペシャル (第254201522日放送)
http://www.nhk.or.jp/professional/2015/0202/index.html

*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 #2947 『資本論』と経済学(11) : 「労働観と仕事観:過去⇒現在⇒未来」 Jan. 29, 2015     
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-4

  #2948 『資本論』と経済学(12) : 「公理書き換えによる21世紀の経済学の創造」 Jan. 29, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30

 #2948 『資本論』と経済学(12) : 「経済学体系構成原理は四つ」 Jan. 29, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30

 #2951 『資本論』と経済学(14) : 「第1の公理を巡って:マルクスの労働観と日本人の仕事観」 Jan. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-2

 #2952 『資本論』と経済学(15) : 「対極にあるもの:ヨーロッパ労働観⇔と日本の仕事観」 Feb.1, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-3

 #2953 『資本論』と経済学(16):「日本人の仕事観:仕事は楽しい!」 Feb.1, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01


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