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#2922 「広報ねむろ1月号」市立根室病院決算を斬る Dec. 27, 2014  [26. 地域医療・経済・財政]

 広報ねむろ1月号が回ってきた。「企業会計」の部に市立根室病院事業会計が載っている。市民への報告なのに、公的会計基準のままで載せるのはどういう了見だろう。理解できるのは市役所財政課の職員と病院で経理業務に携わった者だけだろう。根室高校商業科で簿記を教えている先生にだって理解できない代物である。7.5億円となっている純損失が20億円前後であるなどと気がつく人はいないだろう。
 一般市民に理解できるように民間の会計基準で決算情報を公表すべきだ。

 夕張市が財政破綻したのは公的会計基準でさまざまな事業の報告を行っていたからで、破綻するまで市民は夕張市の財政状況を知りえなかった。公的会計基準とはそういうもので、ダブルスタンダード(インチキ)そのもの。上場企業がこのような決算報告をしたら、重大な虚偽報告で上場廃止処分になる。

 広報ねむろ1月号から平成25年度決算情報を拾って俎板(まないた)に載せる。

 収入  38.9億円
 費用  46.4
 純損失 7.5

 民間会計基準だと「収入」ではなくて「売上」である。「収入」が曲者で、この中には国基準の繰入金が8~10億円前後加算されている。
 過去8年間の売上は21~26億円の範囲を推移している。仮に「最大値+1億円」をとり27億円の売上で計算すると、次のようになる。

 売上   27.0億円
 費用   46.4
 純損失 19.4億円

 民間の会計基準で計算すると約20億円の損失が出ているはずだ。20億円もの事業赤字が出ているのに7.5億円と「広報ねむろ」に載せるのは市民を欺くものである。
 市議は市議会で病院事業決算を民間会計基準で公表するように決議すべきだ。真実の姿を市民に知らせないと病院の経営改革が進まない。

 平成26年度上期決算が載っているがこれもわからない資料だ。

 収益   18.3億円
 費用   33.2
 純損失 14.7

 半期で14億円の損失が出ているがなぜこんなに巨額の損失が出ているのか理由を明らかにすべきだ。
 費用の計上額が昨年度の年間費用の71.6%である。計上の仕方がおかしいのか、何か特別な臨時巨額の損失が出たのか一言も理由の説明がない。
 長谷川市政は徹底的に市民に背を向けているようにみえる。そういう3期目の市長を9月の選挙で支持したのは有権者の三人に一人の34.41%。きちんと説明責任を果たしていれば支持率は上がっただろう・・・。

<余談>
 どうもどこかおかしい、数字がヘンなのである。手元にH18年度とH20年度の決算資料があるので数字を拾って並べてみたい。こうするとすぐにおかしいところがわかる。

  金額単位:百万円
200620082013
売上2,3832,2923,886
費用3,4093,4734,637
損失-1,026-1,181-751


 2013年度の売上は、一般会計繰入金の金額がわからないのでそれを減額していない。国基準の繰入金が9億円ほどあるとしても約30億円の売上があることになる。3億円ほどなにか見えないものがあるように思える。

 費用の金額がヘンなのである。2006年と2008年に比べると12億円も増えているのだ。通常、こんなことは考えられない。「収入」と「費用」に病院建設の「何か」が加算されているのではないか?損益計算にそのような収益や費用項目を加算することは民間会計基準ではできない、明白な粉飾決算になるからだ。
 病院事務局はホームページで病院事業決算を民間会計基準で公開すべきだ。12億円の費用増については金額が巨額なのだから、病院ばかりでなく財政課が責任をもって説明すべきだ。

 病院問題に公式ブログ上でコメントし続けてきた本田市議は病院事業決算について具体的な数字を挙げてコメントしなくなった。元病院管理課長で市立病院問題について詳しい彼がコメントしなくなったのでは、市民が病院経営の真の姿を知ることがますますむずかしくなる。
 文教厚生常任委員会委員長としてこの問題にはさらに責任が重くなったのだから、以前のように公式ブログでの元気のよい発言を期待したい。

 市立根室病院の経営赤字は市の財政にとっても大きな問題のはずだが、地元経済団体は申し合わせでもしたかのように押し黙っている、これも不思議なことだ。商工会議所、青年会議所、中小企業家同友会、ロータリークラブ、ライオンズクラブ、町と暮らしネットワーク会議等々、疑問や意見はないのだろうか?
 「オール根室」っていったいなんだろう?

 公的会計基準は「お役所村」でしか通用しない。そういう基準で作られた資料はお役所同士での情報のやり取りならまだしも、市民サービスとしては失格である。市民へわかるような民間会計基準での広報が正しいありかたではないのか?
 病院職員も市役所職員も市議も市民へのサービスという基本を忘れてはいけないのだろう。「公僕」としての本来のあり方に立ち戻って来年こそは考え直してもらいたい。

 ■ 仕事は正直に誠実に渾身の力でやる
 ■ 売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし



*#2921 市立根室病院の常勤医数は今年も計画未達だった Dec. 26, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-25-1 


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コメント 25

もやしさんま

毎年ですね。市役所からの補填を収入のように見せるからどうとでも書けますね。いわゆる粉飾決算というのはこういうことなのかなと思わないわけではないけれど、毎年のことなので腹も立ちません。ため息もでません。
それよりも先日の根室新聞の一面で根室市の職員の給与のなんとか指数が高くて国家公務員よりもちょっと良いくらいで道内一の給与みたいな記事がありましたが批判めいたことは一切なく堂々と書かれていたのでちょっとわけのわからない感じでした。こちらは首が傾がりました。
by もやしさんま (2014-12-27 16:42) 

ebisu

もやしさんまさん

>毎年ですね。市役所からの補填を収入のように見せるからどうとでも書けますね。

以前は北海道新聞も根室新聞も本当の赤字の額を記事にしていました。
担当記者が変わると数代々続いた毅然とした取材方針は雲散霧消してしまったようです。

>それよりも先日の根室新聞の一面で根室市の職員の給与のなんとか指数が高くて・・・

こちらは道新に載っていなかったのでebisuにはさっぱりわかりません。公務員同士でそんなに大きな格差はないでしょう。
どなたか解説してもらえるとありがたいのですが・・・
by ebisu (2014-12-28 01:52) 

某市民

病院問題に公式ブログ上でコメントし続けてきた本田市議は病院事業決算について具体的な数字を挙げてコメントしなくなった。

「病院側が圧力を掛けて都合の悪い本田議員の発言を封 じた」と言う一部の噂が。さもありなん!?
by 某市民 (2015-01-05 08:25) 

ebisu

某市民さん

噂ですか、地域医療問題に関しては根室では噂で真実が流れることが多いようです。ドクターの離任もそういう確度の高い情報の一つ。

本田氏は昨年市議会文教厚生常任委員会の委員長になり責任が重くなってので、大変だろうなと想像していましたが、折れましたか。
見ざる言わざる聞かざる、そして長いものには巻かれよというのが根室人の信条とは思いたくないですが、現実はこのありさま。

夕張市は市がイベントや箱物作りに暴走して、地元信金からの借金を増やしてもだれもなにも言わなかったようです。

根室もそうなりつつある、だれもものを言わなくなったときにほんとうの危機が訪れます。
やっている者たちは自分たちが町をつぶしつつあることがわかっていないのでしょうね、世の理(ことわり)が。
好き勝手にやっているときに、その足場が崩れていくものです。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす・・・

新年から残念ですが、なるようになる時期がそう遠くない未来に迫ってきたようです。
炭鉱で炭鉱夫たちがカナリアを鳥かごに入れてもっていくそうですが、一酸化炭素濃度が高くなると弱いカナリアが死ぬ、それを見たらすぐに逃げ出す。
炭鉱夫は穴から逃げ出せますが、根室に住む市民の多くは逃げ出すことができません。

夕張市民がいまやっているように、25年計画で市が予算を膨張させてこしらえた借金の山を崩していくようなことになるのでしょう。

いまでは、市立根室病院の年間赤字額すら知っている市民がいない。北海道新聞根室支局の取材能力も怪しくなってきました。市側の発表を垂れ流すだけで、検証していません。病院赤字がたったの7億円、それって嘘でしょう。民間会計基準でおきなおして記事にして来たはずですが、それすらできなくなったようです。20億円前後の赤字が出ているはず。財政課職員と病院の経理担当者は承知しています。
by ebisu (2015-01-05 09:25) 

もやしさんま

それにしても7億円の赤字はどうなっているのでしょうか?市の一般会計からの持ち出しは14億円が限度であるとして、7億円は未払いなのか他所から借りたのか?
市立ですから7という数字の意味が見えません
by もやしさんま (2015-01-06 13:52) 

ebisu

もやしさんまさん

赤字額がいくらかまったくわかりませんね。
本田市議は文教厚生常任委員会の委員長ですから、職務上答える義務があるでしょうね。
本田市議のブログに質問を投げてみたらどうですか?
by ebisu (2015-01-06 23:01) 

もやしさんま

よくよく広報を読んで自分のコメントは見当外れだと思いました。というのは企業会計への持ち出しの内容の細かい文字に気をつけて見ると、定められた範囲の繰り出し、病院建設などへの寄付、医療の補助、などと書かれています。病院への寄付や、医療の補助は、病院が当然受けるべきものですから、医業による収入ではないとしてもまっとうな収入と考えて良いと思います。そういう考えでは赤字は本当に7億円と考えて良いと思います。
私には人を疑う悪いくせがあるのかもしれません。いかがでしょうか?
by もやしさんま (2015-01-07 23:35) 

ebisu

もやしさんまさん

>定められた範囲の繰り出し、病院建設などへの寄付、医療の補助、などと書かれています。

「定められた範囲の繰り出し」とは国基準の繰り出しのことですが、これは数年前に基準が大幅にアップされて8億円を超えています。これだけでも、7+8=15億円の赤字ということです。

一般会計繰入金は赤字補填金ですから、民間会計基準では医業収益には計上できません。そんなことをしたら粉飾決算と判断されます。
もちろん、病院建設への寄付金も民間会計基準では営業収益には算入できません。
もうひとつ「医療の補助」と書いていますが、これはなんでしょうね。担当者に訊かないとわからないでしょうね。おそらく金額は小さなものでしょう。

病院経営の経常赤字は、「経常収益-経常費用」で計算されます。経常収益の中に赤字補填の一般会計繰入金を入れて表示してはいけないのです。

>そういう考えでは赤字は本当に7億円と考えて良いと思います。

この考えでは、市の一般会計からさらに繰入金を7億円増やしたら、病院の経営赤字はゼロという計算になります。正しいでしょうか?
夕張市でも公的会計基準でそういう報告を毎年していたから、突然破綻したのでしょう。

市民への決算報告は民間会計基準でやるべきだというのは、実際には巨額赤字が出ていても、粉飾決算同様の黒字決算書になってしまうからです。市民が判断を誤ります。
by ebisu (2015-01-08 00:23) 

市民K

市議会での本田議員の市長への質問の一部抜粋

「また、市立病院の経営状況は、16 億円を超える一般 会計繰出金が平成 29 年度まで続く収 支見通しが示さ れており、更には、新会計制度への移行に伴う新たな 不良債務の発生が本年 度決算で見込まれる状況であ  り・・・」

まあ平ったく言えば、毎年市民の血税から16億円程が市立病院の赤字補てんに回されている訳で、実際には赤字は7+16億=23億と考えても良いでしょう。

その内訳の中で特筆すべきは医師に掛かる経費の多さでしょうか。市立根室病院は北海道内の公立病院の中でも医師に対する報酬がトップクラスで、常勤医の年収の平均が(少なく見積もっても)2000万x14=約3億。非常勤医(アルバイトの当直医なども含め)に掛かる経費が交通費などを含めると2億は下らないでしょう。その大半が何処に流れるかはEbisuさんは先刻ご承知ですね。

これらの内輪の事情は広報などの表には出ません。しかも裏では赤字額はとんでもない数字に上ります。

根室市の行政を継続するために

市長
市立病院
そして何も知らされない市民

「三方良し!」(Ebisu風)


by 市民K (2015-01-09 08:40) 

ebisu

市民Kさん

解説ありがとうございます

>「また、市立病院の経営状況は、16 億円を超える一般 会計繰出金が平成 29 年度まで続く収 支見通しが示さ れており、更には、新会計制度への移行に伴う新たな 不良債務の発生が本年 度決算で見込まれる状況であ  り・・・」

16億円の繰出金があったと仮定すると、H25年度の「売上」は「3886-1600=2286」、そして決算数字は次のようになります。

 売上22.86
 費用46.97
 損失24.11

 金額の単位は見やすいように億円にしておきました。平成25年度決算数字は一般会計繰出金を16億円と仮定すると経常損失が24億円出たことになります。前年が17億円ほどでしたから、なぜ7億円も増えたのか市民は一人も知ってない。市議会でも質問もないし、答弁もない。

>その大半が何処に流れるかはEbisuさんは先刻ご承知ですね。

ははは、7割りがたは札医大ですか。
常勤医の年収が平均で2500万円と仮定し、常勤医5人分を派遣医でまかなったとすると、

8500万円×5人=4.2億円
2500万円×5人=1.25億円
差額(4.2-1.25=2.95億円)が増える損失です。

長谷川市長が以前の市立病院の年間赤字額はおおよそ8億円くらいでしたから、経営損失が11億円程度なら、特定の大学病院から派遣医を増やす措置による赤字増大は説明がつくのですが、8億円が16~17億円に拡大してしまっているのですから特定の大学からの派遣医増大では赤字増大の三分の一しか説明がつきません。

市議会も、それから病院についてはなにか市長の諮問委員会があったはずですが、具体的な数字についてはノーチェックに見えます。

>根室市の行政を継続するために
>市長
>市立病院
>そして何も知らされない市民
>「三方良し!」(Ebisu風)

「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」だったはずですが・・・
正直・誠実に事実を明らかにして市民の理解を求めるのが一番いい。
by ebisu (2015-01-09 12:36) 

もやしさんま

広報の細かい文字を更に詳しくよくよく見れば企業会計への繰り出し金14億8,897万5千円の内容は「基準内繰り出し金のほか、新病院建設に関わる寄付金、医師確保対策に要する補助金など」とあります。エビスさんによると基準内繰り出し金は8億円ということですから、あとの6億8千万円のうち時々新聞で病院へ誰々さんが寄付といって写真が載っているのを引いたのが解説していただいた医師確保の経費と大体一致するように思います。私は根性が悪いので官官接待ならぬ官医接待が一瞬頭をよぎりましたのですが、そんなことは不謹慎と自分をいましめます。しかし、常識的には医師確保対策費は医師給与とは違いますから、内容が気になります。というわけで「医療の補助」は「医師確保対策に要するに補助金」の読み間違えでした。
by もやしさんま (2015-01-09 20:40) 

もやしさんま

私は非常識な人間ですね。対策費はきっと給与のことでしょう。そうするとKさんの計算と合います
by もやしさんま (2015-01-09 20:47) 

ebisu

もやしさんまさん

国基準での一般会計繰出金が8~9億円です。

>企業会計への繰り出し金14億8,897万5千円

と書いてあるなら、14.8億円の繰出金のうち、8~9億円が国基準内繰出金で、それを越える部分は「国基準外繰出金」です。
その両方をあわせた部分と単年度で補填できなかった金額が経常赤字です。

市側と病院が公表している数字をどう弄繰り回しても、赤字の学が実際にどうなっているのかはわかりません。公的会計基準とはそういうものなのです。だから、夕張市民は破綻するまで気がつかなかった。

公的会計基準で市の広報に載せることが、経営の実態と赤字の実際額を隠蔽に他ならないことを理解してもらいたいのです。自分たちがすんでいる市の病院ですからね。



by ebisu (2015-01-09 23:17) 

市民K

「医師確保対策に要するに補助金」についてですが、これは医師の給料とは違います。医師確保に苦慮する多くの病院ではそこの病院なりの「医師確保対策室」的な部署が存在します。病院はとにかく医師が居ないと仕事に成りませんので、その大義名分のもとに対策室はかなり自由に経費を使うことが出来ます。

通常医師を招聘する手立ては以下の通りです。
1)大学の医局にお願いする。或いは医局からの医師派  遣を継続して貰う。
この場合は相手が国公立の大学ならばあまり余分な経費は掛かりません。しかし相手が私立大学の場合は事情が違います。実際かって根室が東京医大丸抱えの頃は、医師一人につきその派遣医局に対し400万もの上納金(勿論名目は研究協力費云々)を払いその事が根室市の財政を圧迫していたとの話が有名です。もっとも道立の札医大もかって救急部のK教授が自分の傘下の医師を派遣する地方の病院から上納金を要求していたことがばれて問題にはなりましたが・・・。またアメリカ帰りの北大1外のT教授も「私の収入がこんなに低いのはおかしい」と地方の病院に上納金を要求し問題に成りました。

2)いわゆる「民間医局」と呼ばれる医師斡旋業者に依  頼する
この場合は業者が求人の病院と医師の間の仲人役で、当然話がまとまれれば病院側から業者に報酬が出されます。その相場は大体その医師の年収の2割程度のようです。ですから年収2500万ならば業者の懐には400~500万の成功報酬ですね。業者が病院と医師の間に立って動く経費について成功報酬と別途請求の場合と成功報酬に含まれるケースと様々のようです。この方式の危ない点は、勿論業者は斡旋する医師の素性を調べますので医学的に”ガセ”の確率は低いですが、斡旋した後のafterは半年が多いようです。つまり業者と医師が結託すると就職して半年で辞めることが可能です。仮に成功報酬が500万だとすると、業者と医師が250万ずつ分け合いまた次の獲物(病院)を探す・・・。

3)医師個人が病院の公募を見て接触してくる。
北海道地域医療振興財団のHPやm3.com(医師専用の掲示板)には多くの求人が載っています。気に成る募集が目に留まればその病院のHPに飛び具体的な病院の中身を把握できます。そしてその病院の対策室に連絡を取れば対策室が動き始めます。先ず対策室が接触を開始。相手に可能性が見て取れると今度は院長や事務長などの病院の幹部が先方に挨拶に出向きます。そして脈があれば「一度当院にお越し願って現場をご覧ください」と成ります。北海道の場合、先方が病院視察に来るのは6月や夏のいわゆる「良い季節」が多いですね。中には家族連れの場合も有ります。勿論これらの全ての費用は病院持ちです。つまりやる気に成れば、就職の可能性を餌にただで北海道旅行が出来ます。そして「やっぱり縁が無かったですね」。まあ、それでも民間業者経由よりは安く済みます。

医師の招聘には通常以上の3つのルートが有ります。色々な意味で一番安全確実な大学の医局を頼るやり方で、どこの病院でも院長や事務長、そして時にそこの首町が定期的に大学詣でをして関係を維持しています。この経費だけでも結構なものです。
2)の民間医局の場合は病院側はあまり動かなくて済みますが、話の成立と同時にまとまった額が出て行きます。
3)の場合は個人相手ですので結構手間暇が掛かりますが、それ以上の問題は「その医師個人」です。これはどういうことかと言いますと、病院側が把握出来るのは精々履歴に書かれたその医師の出身大学と専門科位のもので、どんな性格か,患者からの評判はどうなのか、また医師としての力量や責任感など第三者からの評価が分かりません。ただ履歴書を見てこれまでの勤務歴から「何となく”危ない”人間だな」と直感で分かることも有ります。名前は挙げませんが、かって根室にも居ました。その医師は北海道では働けなくなり東北にまで流れて行き、またどこかに行ったようです。何故こんな事が起きるのか。勿論どの世界にもBlack Listは有りますが、買い手市場の医療の世界では「どうしても来て欲しいから、背に腹は代えられぬ!」と言う焦りが目を曇らせます。中には医師免許証の確認すらしない病院も在ったりします。一般的に医師はプライドの高い人種ですので、どこでもあまり疑うような調べはしないのが普通です。では以前の職場へ問い合わせは? それも当人にばれると前の職場が拙い立場に陥ります。またそのような医師は法律に多少知識があることも多く(少なくとも病院側よりは)、「無断で個人情報を漏えいするとただでは済まないぞ!」と病院側に釘を刺します。従ってどこの病院でも問い合わせに対しては”可もなく不可もなく”答えるのが普通のようです。と言うか、本音は「あんな医者,厄介払いで来て良かった!」でしょうか。

あっ、医師探しには経費が掛かる話でしたね。
ちょっと脱線しましたが、ご参考に成れば幸いです。


by 市民K (2015-01-10 09:45) 

ebisu

市民Kさん

三つのルートでの医師確保に対する具体的な解説、ありがとうございます。

私大医学部の医局から医師を派遣してもらっていると、その医局のボス教授へ何らかの形で、受け取るほうへ税金のかからないお金がわたります。もちつもたれつで、慣習になっていました。支払う方は所得税を支払った後の税引き後所得から支払います。国から見ると所得税は納められているので、国税庁は問題にしないのかもしれませんね。私立大学医学部の医局から派遣を受けている民間医療法人は皆さん似たような実務をしているはずです。
ありていに言うと、医療法人の理事長が自分の報酬の中から支払っていました。支払うに十分なだけ儲けていなければそんなことは継続できません。

そちら方面への接待にはいくらでもお金をかけます。使う鮨屋、料亭、レストランは一流店の名前が並びます。
ebisuは医者ではありませんが、縁あって臨床検査会社から常務理事として病院経営に転職する際に医療法人の理事長から何度かそういうお店で接待を受けました。間に両方をよく知る紹介者がいました。もちろんその人も同席しています。どのような人物なのか、お互いに酒を飲み歓談しながら確認します。料亭一軒ですむわけもなく、2次会3次会とべろんべろんになって「正体」やら「本音」やらがでるまで付き合うことになります。それで双方が大丈夫だと判断して、ようやく交渉が成立です。

リクルート機関を通すと年収の半分くらいが、成功報酬として雇用する会社から人材斡旋会社へ支払われます。医者ではなく特別なスキルをもったサラリーマンの場合です。2度利用しました。

基礎学力が人より多少高い、そしてしっかりした複数の専門知識と実務を経験していることが条件でしょうね。どんなに不況になっても、不況になればなるほど、基礎学力がしっかりしていて、厳しい状況下で困難な実務経験をした者にはそこそこ転職のチャンスがあるということかもしれません。

中高生の皆さん、しっかり勉強して基礎学力のレベルを上げておきましょう。
by ebisu (2015-01-10 11:40) 

もやしさんま

やっぱりこうなるとつまびらかに情報開示は色々と支障があってできそうにないですね。市職員の誠意を信じることにして目をつぶるしかないのでしょうか。
こうなると医療分野だけでも社会主義国家なみに医学生の授業料はただだけど勤務先は国が決めるシステムの方がいいですね。
by もやしさんま (2015-01-11 21:22) 

ebisu

医師のリクルート情報なんて関心のある市民はいないでしょう。

決算情報はきちんとわかる形で公表すべきです。決算情報開示は公立病院では当たり前の話です。

根室市は市の広報を読んでも、新聞を読んでも、病院経営で出ている年間の赤字の金額すらわからない。2年前は新聞はしっかり取材報道していました。
病院経営の透明度はどんどん悪化しています。
by ebisu (2015-01-12 00:39) 

市民K

やっぱりこうなるとつまびらかに情報開示は色々と支障があってできそうにないですね。市職員の誠意を信じることにして目をつぶるしかないのでしょうか。
こうなると医療分野だけでも社会主義国家なみに医学生の授業料はただだけど勤務先は国が決めるシステムの方がいいですね。

「つまびらかに情報開示は色々と支障があって」
接触する医師のレベル、出身校、給料体系etcなどがそれぞれ違う(結局は個別交渉)のは或る意味で止むを得ない面がある事は確かです。しかし市民に開示できないグレイな交渉は厳に慎むべきです。例えば交渉相手が出して来る条件の中に、「俺は〇〇手術の時には××器具を使うから買って欲しい」「俺はエコーは東〇でないと使わない」「毎週末公費で〇〇に帰省したい」etc。もし相手の希望を全て受け入れては組織は財政的にも人間的にもズタズタになります。しかしそこはやはり力関係なので、医師を増やしたい病院側はどうしても採用の判断が甘くなります。と言うか殆ど相手の言いなりが実態でしょう。先程書いた「僻地を流れ歩く某医師」などは地雷を踏んでしまった典型です。このようなことは現在のネット社会では瞬く間に関係者間で広まります。そして「あそこの病院はあんな医者でも雇うのだから、今度こんな条件を突き付けてやるか」「そろそろカニが美味しい時期だから北海道旅行に出掛けるか。途中で就職を餌に根室に顔を出せば全部タダになる!」

日本は自由主義国家です。従って医師を国家公務員にでもしない限り、勤務先を国が決めるシステムは無理でしょう。現在そのモデルケースとして私立の自治医大が有ります。各都道府県から若干名ずつ選ばれた秀才がただで6年間学んだ後、出身地方での9年間のお礼奉公が義務付けられています。(もし自由を得たければ3000万程返還する必要があるとか)。北海道の場合、戻って来て受け皿の札医大や旭川医大に籍を置き、僻地医療に従事します。根室にもかって外科の女医が居ましたし、現在でも内科の医師(出戻り)が居ます。「この方式を国が採用すれば良いではないか」とのお考えかも知れませんが、その条件は大学での授業料を全て国費で賄う事=すなわち国立以外は医科大学は存在し得ない(範囲を国公立まで広げたとしても)ことに成ります。それとも私立の医科大学の授業料も公費で賄うのでしょうか。またスタートラインで選ぶ専門科や就職先などの進路の自由が制限される事に成ります。もし仰るシステムが国の隅々にまで医師を供給するためのものであるなら、当然末端のへき地医療を考えての事でしょう。その際現地で必要なのはどのような医師でしょうか。少人数で何でも熟せる「浅く広い」医師、つまり最近見掛ける「総合内科医」「家庭医」的な医師でしょう。もし卒業生が「俺は脳外科医になる」「私は心臓外科医」と思っても、自分の就職先ではそんな特殊な専門医は要らない(勿体ない。適当に何でも診てくれる普通の医師の方が好ましい)から残念ながら断念せざるを得ない事に成ります。
卒業生から様々な進路を奪うことは、勿論日本の医学を全体にレベルダウンさせることに直結します。
これはあまり皆さんお気付きになっていないようですが、日本の医療レベルは欧米の先進国と比べても決して遜色在りません。と言うか、国民皆保険でこんな医療の恵まれた国は在りません。それがマスコミなどは医療関係に悪意を持つかのようにネガティブな報道ばかりで、良い点を敢えてひた隠しにしています。欧米の医療システムの良い点だけを強調してその弊害には目を瞑ります。そして「日本も真似すべきだ」と。確かにへき地医療などを考えればそんな地域にも万遍無く医師が居るシステムが欲しいと言うお気持ちは分かります。しかしそのために個人の進路の自由を奪い日本全体の医療を低下させるのであれば、それは「軒先を貸して母屋を取られる」ことに繋がります。
by 市民K (2015-01-12 09:44) 

ebisu

具体例での説明は説得力がありますね、わたしも勉強になります。ありがとうございます。

交渉ごとは、原理原則を明確にしておかないと、相手のわがままにずるずる譲歩してしまうことになります。
なにしろ、
なにしろ年間16~20億円もの経常赤字を出し続けているのですから、一人でも多く常勤医のドクターを増やしたい。
それでも、無原則な譲歩は現在いるドクターたちの処遇とのバランスもあるので疑心暗鬼や軋轢を生じます。
「交渉の原則」を5か条くらい書き出してみんなの見えるところへ張り出すくらいのことをしたほうがいいですね。イレギュラーな交渉が多いと医局内部の疑心暗鬼が緩和できます。

僻地にはドクターが来たがらないのは事実ですし、国が何とかしてほしいというのも本音ですが、赴任値の強制はおっしゃるとおりですね。ここでも原理原則が大切です。
by ebisu (2015-01-13 08:08) 

市民K

昨日書き込んだ内容で少し分かりにくいと思われる所があるので補足します。

現状では医師の数は限られています。問題はその医師の職場をどのように割り当てるかと言う事でしょう。勿論「とにかく医師」を求める地域の切望は分かります。しかし日本の医学の進歩のためには大学病院やその他の研究機関で先進医療などに従事する医師も必要です。
今までは医師の世界は、それらの高度な医療を模索する大学を頂点としたピラミッド構造でした。裾野は勿論駆け出しの若手で、彼らは医局の人事(命令)で最初の頃は大学や市中の病院でとにかく医療を体験します。その後多少の経験を積んだ後に都会の周辺地域の病院で中間的な立場で更に経験を積み、多くの場合は一度大学に戻り一旦現場医師よりは研究者寄りの生活に戻ります。その時期は患者を持たない外来係(主に再来)として多少時間に余裕が出来ますので、日常の診療業務の合間に研究室に顔を出し実験したり論文を書いたりの毎日です。中には海外(主にアメリカ)の大学に2~3年留学する医師も居ます。そして学位論文を仕上げ医学博士となります。その後はそのまま大学に残るか地域の病院に医長などの責任者で赴任するかの分かれ道が待っています。

最近はこれまでのこのシステムに卒業後の研修プログラムが割り込んで来てピラミッドの底辺に地震が起きてピラミッド全体が揺れて崩れ始めています。それは全てが進化して行くべき時代の流れの中では必然なのかも知れませんが、構造的な進歩の遅い傾向が強い医学の世界ではまだ皆が戸惑っていることは確かです。しかしこれまではこの医学界と言う巨大なピラミッドは、どこの階層に定住しようか上に登ろうか下に降りようか、また時にピラミッドそのものから抜け出そうか・・・取り敢えず本人の自由でした。
(確かに医局人事は存在しましたが、それが不服なら医局を離れれば良かった。言ってみれば、893の組員が〇〇組と言う組織を離れ一匹狼になるのに似ています。組織社会の日本ではフリーは大変ですが、それでも実力と運が良ければ何とか生きて行けます)。

このように考えると、今まで地域にやって来る医師はこのピラミッドの中から医局命令で振り分けられる場合とピラミッドの外から現れる一匹狼のどちらかでした。問題は、そのどちらにしても地域に行く意志があるか命令を受け入れる選択の余地が在った訳です。しかし国が一元的に医師の勤務先をコントロールすると言う考えは、当然このピラミッドを崩し更地にすることを意味します。これまではピラミッドの上層部が医学の発展に多大に寄与して来ましたが、国が達磨落としのように各階層を崩せば、一体誰が医学そのものを進歩させるのでしょうか。勿論理論的には卒後研修が終わった医師を或る一定期間地域医療に派遣することは可能です。あくまでも理論的には・・・です。それを条件に医師免許を与えれば良い訳ですから。しかしもしそのような義務を強要したら、自由な職業として医師を目指していた人間は果たしてこれまでと変わりなく医学の世界に飛び込むでしょうか。下手をすると希望者が減り、再び医師不足が加速することも考えられます。

「絵に描いた餅」よりも「目の前の米粒」と言うお気持ちは分かります。米を餅にしてから食べるかそのままご飯として食べるか・・・どちらにしても良い米でないと美味しくありません。米作農家がどんな品種の米を育てるか、そしてそれをどの畑に播くか・・・難しい問題ですね。



by 市民K (2015-01-13 09:06) 

ebisu

市民Kさん

地域医療での医師不足を解消するために、法律を作り強制的に僻地医療を経験させるというようなことをやると、今度はピラミッドの頂点の先端医療部分が崩れかねない懸念があるのですか。
そういうところにまで、わたしたち市民は考えが及びません。「医療業界」の内部構造を知らないからでしょう。
先端医療で思い出しましたが、ips細胞の山中先生は外科医だったのですね。こういう方を臨床医として強制的に僻地医療に数年間追いやったら世界の損失となります。

もやしさんまさんの疑問と提案は「医療業界」の内部構造を理解に役に立ったということでしょう。国が何とかしてもらいたいとは誰もがもつ願いです。
自分たちの町の医療は自分たちが守るくらいの気概もあってもらいたいとわたしは願っています。体制がぐちゃぐちゃだから、いたずらに医師不足を招いている面もあるのですから、そこをきちんとするくらいのキモチを市民はもつべきです。

地域医療が医師不足で困っているのは事実で、これを解消するには医師を増やすこと、すなわち医学部定員を1.3倍くらいにすること。十年、二十年かけるしかなさそうです。

全国規模で見ても歯科医がずいぶん増えたように感じます。根室も歯科医には不足を感じていないようです。地域医療の医師不足を解決するには、医師の数を増やすということが問題を解決する必要条件の一つであるようです。

全体の構図が見えてきました、貴重な解説ありがとうございます。
by ebisu (2015-01-14 09:28) 

市民K

山中教授は元々整形外科医です。外科医としてのセンスが無かったのか手術が下手で「ジャマナカ」のあだ名で呼ばれていたとか。その方がIPS細胞と言う世界でも比類なき業績を上げた訳ですから、人間の能力の無限さをつくずく感じさせます。

医師不足の話、どうのこうの言ってもやはり地域住民にとっては深刻(時には生命を脅かす)な問題です。出来ればどこの地域にも基本的な対処が出来る医師が居るに越した事はない。それは国民を守る(安倍さんが声高に叫んでいる!」のは国家の責任だからです。しかし現実には「無い袖は振れない」と医師の偏在(都会への集中)を解決出来ないまま「集約化」と言う新しい概念を導入して、医師を都会の大病院に集め「高度な医療を受けたければ大都会に行け」。これは言い換えれば、「田舎に住むなら文句を言うな。それなりの不便さは覚悟し
ろ!」でしょう。この「集約化」と言う考え方は、或る意味合理的な発想です。特に少ない人間でも一か所に集めれば結構有機的に活動が出来る・・・と言う事でしょう。かってアメリカの新聞に日本を揶揄する記事が載りました。日本の地方の話です。或る離島が有り登記上は数人が住んでいる事に成ってはいるが実際には1~2人だけが住んでいる。その方は現職を離れてその島に移り住んでいる。島のライフラインは海底ケーブルで本土と繋がっている。しかし食料品などの生活物資は定期的にフェリーが運んでいる。勿論1~2人用の生活物資なのでフェリー会社は儲かる筈もない。自治体からの援助で何とか苦しい経営を続けている。最近そのフェリーが着く島の港が老朽化し修理の必要が出て来た。勿論そのためにはかなりの予算が必要だ。そこで担当する役所に問い合わせたところ、「一人でも住民は住民なので大切に守らねばならない」。この話、ニセコの郵便局が山奥の一軒家に1枚の葉書を届けるためにスノーモービルやかんじきで雪中を上って行くのに似ています。それが日本の良さなのか、はたまた愚かさなのか。因みに個の話を紹介したアメリカの新聞の意見です。「こんなことをやっている日本で”構造改革”なんて出来っこない。アメリカならば、その僅かな島の住民を説得して本土に住まわせる」

そうそう最近増えた歯科医の話ですが、同業者の乱立で仕事にあぶれるように成って来ているようです。その結果都会の歯科クリニックなどでアルバイトで何とか食い繋いでいる歯科医が増えたとか。
by 市民K (2015-01-14 16:22) 

市民K

上の話、確か大分前の「TIME誌」だったと思います。丁度その頃日本では小泉首相の「郵政改革」が炎上して居ました。

ヨーロッパ流の合理性が無い所が、逆に日本流の美徳だったのかも・・・。
by 市民K (2015-01-14 16:36) 

もやしさんま

話を広げることとなり、ため息から面白い話になり良かったです。ところでこの「一人でも住民がいれば」の話の真髄は、土建屋のための政治か住民のための政治か、だと思います。一人(少数)の住民のために港を作っていたら住民が引越しして誰もいなくなったらどうしますか。融通を利かせて費用をかけないようにすることはきちんと話し合えば難しいことではないと思いますね。山奥の一軒の郵便だって山から下りた時に取りに来てもらうとかあるはずです。
個人的に気になるのがあの大阪都構想、今は知事と市長がコンビですから融通しあって行政の無駄省けるハズのように思えるけれども実際にはどうなっているのでしょうか。土建政治にとっては二重行政解消も市立府立に変わる都立建設のチャンスになるかもしれないし。

by もやしさんま (2015-01-14 22:25) 

ebisu

もやしさんまさん

はらはらしたのではないかと思いますが、読んでいるほう(ebisuを含めて)は楽しいのです。

新聞記事の感想、問題の投げかけ、提言、いろいろありましたね。
そのお陰で、市民Kさんが問題を拾い上げて具体的に解説してくれました。
わたしは生徒になって聴いている気分でした。(笑)

ありがたいですね。

もったいないから、数日中に本欄へアップします。
お二人ともご了解ください。
by ebisu (2015-01-15 00:50) 

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