SSブログ

#2910 自民圧勝の後に来る経済・財政の重大な危機 : 日本文明の再生 Dec. 15, 2014 [A4. 経済学ノート]

 安倍総理の選挙戦略はなかなかすばらしいものだった。経済悪化が誰の目にもハッキリする前に勝負に出た。この勝負は安倍総理の勝ちだ。ずるく立ち動いたって勝てばいい、そういう意味では党利党略を最優先した実に見事なタイミングの解散総選挙だった。

 しかし、そのずるさがあたりすぎて投票率は最低の52.66%、戦後最低だった前回よりも6.66ポイントのマイナスとなった。たまたま6が3つ並んでいるが昔のホラー映画(オーメン)でそういうのがあった。
 ニュースでは自民党の得票率がまだ出ていないが、前回の24%からさらに下がって22%台が予想される。国民の4人に1人以下の支持しかないのに小選挙区と比例区合わせて61.3%、291議席を獲得した。こうして現行の選挙制度が民意を反映しないものであることが二回の衆院総選挙ではっきりした。
(小選挙区の自民党の絶対得票率は24.5%、議席数は75%だった―16日追記)
 日本列島に私たちの祖先が住みついてから営々と文化を受け継いで、縄文時代以来1.2万年の歴史があるが、はじめて人口減少時代を迎えている。だからかつてのような経済成長はありえないのである。日本列島の文明が初めて経験する人口減少時代という大転換に突入しているという大きな歴史認識が必要なのだろう。
 生産年齢人口もすでにピークを超えて200万人以上減少しているし、高齢化と少子化が同時進行中である。そして非正規雇用割合が40%を超えて、若年労働者の貧困化が進んでいる。財政は赤字の度合いをますます大きくし、国債残高はついに1000兆円を超えた。
 日銀が本日公表した大企業の景況感は悪化に転じた。

 自民圧勝だが、問題はこの後だ。これからアベノミクスの瓦解がはっきりし、安倍総理の苦悩が始まる。体調を崩して以前のような突然の辞任というような事態が起きないだろうか?

 四月の統一地方選挙までに、さまざまな経済統計指標の悪化がアナウンスされるだろう。「道半ばだからアベノミクスの成果はこれから」という言い訳がもうじきできなくなる。
 わずか22%の得票率しかないのに60%を超える議席を獲得した政権が民意の支持のないのは明らかで、それを無視して独走すれば、経済指標の悪化の度合いに応じて内閣支持率が急激に下がっていく。

 TPPは最悪の選択だ。歴史の大転換期にふさわしい処方箋ははっきりしている。国内に生産拠点を取り戻し、若い人たちに正規雇用を確保するために強い管理貿易(鎖国)政策の導入に踏み切ればいい。粛々と経済縮小を受け入れ、国内生産・国内消費の自給自足型経済システムを創りあげることができるのは世界中で日本だけだろう。日本には世界の先端を行くほとんどの産業技術が揃っているからだ。
 伊勢神宮では式年遷宮(20年ごと)で内宮と外宮の正殿を建て替える。正殿と14の別宮社殿を立て替えることで1300年間建築技術を伝承しているのである。建て替えという仕事をつくることで技術の伝承を確実なものにする、その結果1300年間神社建物をつくる技術が連綿と受け継がれてきた。
 いまなら団塊世代が継承し貯えてきた技術を若い人たちに伝承できる、そのためには国内に生産拠点がどうしても必要だ。

 安倍内閣は支持率が下がり、総理は立ち往生することになるが、それでいい。そのあとに経済社会の大転換を図れば、ぎりぎりで間に合うことになる。

 圧勝の後にピンチあり、そしてピンチの後にほんとうのチャンスが訪れる。


-----------------------------------------------
<弊ブログ#2669「成長戦略:規制緩和を考える」>抜粋引用
 わたしは縄文時代からカウントして1.2万年の日本列島の歴史で、はじめて迎える人口減少時代に、成長戦略なんてナンセンスだと考えている。思いっきり単純化してみたら誰にでもわかる。

     一人当たり国民所得×生産年齢人口=国民所得

 老人の年金収入もあるじゃないかなんてことは無視、大雑把な話の方がよくわかるから細かいことは言いっこなし。稼ぎ手が減れば基本的に国民所得は減ると考えよう。
 非正規雇用が増えれば一人当たり国民所得は減少するし、生産年齢人口(15~64歳)は激減し始めているピークには8700万人いたが2040年には6000万人を割るのである。一人当たり国民所得が横ばいでも国民所得の合計は3割も減少する。消費が26年間で3割以上減少するということだ。所得だけではない、電気もガスもガソリンも燃料用灯油も食料品も消費量が3割減る。人口縮小時代には原子力発電なんて無用の長物と化す。原発維持がしたくて成長路線を声高に言っているのではないのか。
 そういう人口減少時代にGDPをいまの規模で維持できるわけがない。だから成長戦略は幻である。成長ではなく減速戦略あるいは縮小戦略に切り換えるべきだ。そういう観点から日本経済を見直してみた方がいい。
・・・・・
-----------------------------------------------


*#2906 民主主義の危機:衆院選投票率は最低を記録か? Dec. 13, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-13-1

 #2909 衆議院議員選挙投票所の様子  Dec.14, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-14-1

にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 根室情報へ
にほんブログ村



nice!(0)  コメント(8)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 8

もやしさんま

絶対得票率が22%でも、最多得票政党だから仕方がないのでしょう。絶対得票数が過半数なんて独裁国家でもない限り普通はないのではないでしょうか。無政府状態よりましなのか、無政府(無中央政府)の地域協業社会の方がましなのかはわかりません。
日本は極端に悪くなることはないと勝手に思っています。


by もやしさんま (2014-12-15 16:46) 

ebisu

もやしさんまさん

>絶対得票率が22%でも、最多得票政党だから仕方がないのでしょう。

そのとおりですが、2回前のときよりも200万票も少ないのに、議席は61%というところに現行選挙制度の欠陥が現れてはいませんか?

「民主主義」なんですから。国民の意思ががもっと適切に反映できる選挙制度が必要だとわたしは考えています。

>日本は極端に悪くなることはないと勝手に思っています。

1000兆円もの借金、そして来年度も借金を50兆円も増やすような予算を組む。ツケは必ず国民に回ってきます。
年金の減額、財政破綻、縁への不信任に起因する円安加速、物価高騰による預貯金の目減り等々。

「しかたがない」ではすまないぐらい充分「極端に悪くなる」ような気がしますが・・・

そなえあればうれいなし。地方自治体も個人も、政府財政破綻に備えて、念のために準備はしておくべきなのではないでしょうか?
by ebisu (2014-12-15 22:47) 

後志のおじさん

TTP の会議には参加すべきだと思っています。

参加して、日本に有利なルールを作るべく、会議を紛糾させたらいい。

今のところ、参加諸国の思惑は、当然のことながら一致せず、多分米国の顔(オバマの顔?)をたてる政治的決着で終わるでしょう。

とりあえず会議には参加しておいてよかった。私は、民主党は決して支持しませんが当事の野田首相の決断は、支持しています。

外交なんざぁ、とにかく交渉を長引かせれば勝ち、みたいなところもありますからね。

ハルノートだって、練達の外交官が、裁量権を得ていたなら、外交では受諾し、批准が得られないとダラダラ引き延ばすことで、戦争をいくらでも後送りできたのですから。

今日の外交は、多少毛色が変わっているでしょうけど、まずテーブルについて、テーブルの上ではにこやかに、下では蹴りあいをしている、

今のTTP、日本外交としては、上出来だと思います。

by 後志のおじさん (2014-12-16 00:31) 

ebisu

後志のおじさん

なるほど面白い。

>参加して、日本に有利なルールを作るべく、会議を紛糾させたらいい。

でもグローバリズムの行き着く先には、国民の幸せってあるのでしょうか?
自国内で生産できるものを生産費が半分だからといって、国内生産をやめて他国から輸入していいものでしょうか?

国際的な自由貿易の果てには諸国民の幸せは存在しないのではないでしょうか。
働くことは喜びです。そういう場が、生産費の高低比較で失われてしまう。
働かないことが幸せというのがギリシャ人の考え方、日本人は働くこと自体が歓びです。生産拠点を国内にしっかり確保したいと思います。

人口減少時代という大きな時代の転換点にわたしたちは立っています。米国流のグローバリズムを拒否してパラダイムシフトをすべきときがきているのではありませんか?
by ebisu (2014-12-16 01:54) 

ebisu

ハルノートですが、あれを受け取る数ヶ月前に御前会議で戦争を決めてしまったのですから、受け取った後の外交ではどうにもならなかったのではないでしょうか。

軍隊があれば、使いたくなる、というより軍隊は自分の存在意義を誇示するために戦争をしたがる。
国土と国民を守るために軍隊が必要だが、それができると軍隊は戦争目指してさまざまなシミュレーションを繰り返し、戦争への道をひた走るもののようです。
組織というのは一度生まれると暴走しだすもの、それをどうやってとめるのか、難しい問題ですね。

グローバリズムも同じ問題を抱えています。暴走して行き着くところまで行ってしまう。最後はアフリカに生産拠点が移るのでしょう。その果てに各国の国民が幸せに暮らしているでしょうか?

いま人類は大きな経済のパラダイムシフトの時代に移りつつある、そんな気がしませんか?
by ebisu (2014-12-16 09:15) 

後志のおじさん

そうですね。ハルノートが突き付けられた時点では、すでに出師準備も完了し、外交官には何の具体的交渉事項もありませんでしたからね。

まあ、全権を持っていたならば、の話です。

経済的鎖国も、理念としては納得できます。ある意味、ブターンの国民総幸福度にも通じるものがありそうです。

ただ、必要な資源や食糧の輸入をしつつ、外国に窓を閉ざすのも、統制経済は基本的に上手くいったためしがないことも、そして何より国民の生活のありかたそのものに大きな変革を要求するものであることも、実施に当たっては大きな課題となるでしょう。
(私の生活は影響はほとんど受けませんけど。)

決して否定しているわけではありません。江戸時代には3000万人が安定して生活していたのですから、日本の国土はそれを可能とする地理的な条件を備えています。

外国や国民が、受け入れるかどうかが課題でしょう。(私は、かってに実行していますけど。

)
by 後志のおじさん (2014-12-16 09:55) 

ebisu

後志のおじさん

>ただ、必要な資源や食糧の輸入をしつつ、外国に窓を閉ざすのも、・・・

これもその通りです、自分の都合だけを主張するのではただの鼻つまみ者に成り下がることになります。
日本製品は値段は高いが安心安全そして堅牢なものが多い。他国で作るよりも品質の高いものだけを輸出する、そして日本国内では生産できないものを選んで輸入すればいいのではないでしょうか。貿易量は数十分の一に縮小する。経済学的な視点から見るとリカード『経済学および課税の原理』への反旗です。そういう経済学はいままでありませんでした。グローバリズムに対置する経済学があっていい。工場労働者の経済ではなく職人たちが腕によりをかけて製品をつくる職人主義経済学で行き詰まりを打破すればいい。
日本には他にも輸出できるものがあります。国内の生産システムとそれを維持する技術を丸ごと輸出すれば、輸入した国は自国内に生産拠点を作り、いままで国内生産不可能だった製品を作ることができます。ギブ&テイク。輸出した後はメンテナンスの仕事があります。世界中に日本人が移り住み技術移転をすればいい。
「鎖国」といっても強固な関税障壁で貿易量を制限するだけですからね。

>統制経済は基本的に上手くいったためしがないことも・・・

これもその通りですが、統制経済とは違います。国内での競争条件はそのまま確保します。国ごとの比較生産費による生産拠点の移動を伴う競争(グローバリズム)はやめるということです。欲望を抑えてジャングルのごとき弱肉競争をやめ、人間の理性が経済社会を支配する小欲知足の経済世界をみてみたい。

>そして何より国民の生活のありかたそのものに大きな変革を要求するものであることも、実施に当たっては大きな課題となるでしょう。

まことに当を得た指摘です。ebisuは日本人に生活様式の大きな変更と価値観の転換を成し遂げてもらいたい。理念を掲げて、人類の幸福な存続に寄与しうるような経済システムを世界に先駆けて創りあげてもらいたい。このようなことが可能なのはいまのところ日本人しかなさそうです。
さなざまな産業分野の生産技術、産業のあらゆる分野にわたって存在している職人、資本、自然と調和してきた生活様式、こういうものが揃っているのはいま日本しかなさそうです。

日本人は自分達に課せられた人類史的使命を自覚すればいい、そうしたら自ずと向かうべき道が見えてきます。

>外国や国民が、受け入れるかどうかが課題でしょう。(私は、かってに実行していますけど)。

楽しい議論、ありがとうございます、ひとり強い味方ができたようです。価値観を転換しそういう生活様式をあなたがすでに実行しているのですからね。(笑)


by ebisu (2014-12-16 10:50) 

ebisu

2040年の人口推計値は1億727万人、2010年よりも2100万人も減少します。
もう一世代たった2070年度の人口推計値は7590万人です。

たった2世代の間に人口が40%減少してしまいます。東京山の手線やラッシュ時の地下鉄に乗客が半分しかいない世界を創造してみませんか?
水源確保のためのダムは半分くらい不要になります。発電所も小型のものが普及するから半分以上いらなくなる。もちろん原発なんてまったく不要です。道路や橋も減らしていい。どうやら私たちはわずか数十年の間に、インフラの縮小をじょうずにやらなければならないようです。

コンピュータの性能アップとネットの拡充で東京には働く場所をおく必要性が薄くなります。

田舎で、週に3日ぐらい畑仕事や釣りをしながら食べ物の3割ぐらいを自給して、日本で先端の仕事をしているということも可能になります。
ライフスタイルは大きく変わりますが、わたしたちがどういうビジョンをもつかで、未来の生活形態が変わるのではないでしょうか?
高齢化はあと30年で終わります。そこを超えたところを考えると、少子化は日本列島に住む者の未来にとって大きなプラスになりえます。
by ebisu (2014-12-16 11:50) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0