#2889 遊びながら書くトレーニング:小説仕立て Nov. 29,2014 [62. 授業風景]
根室の子どもたちの基礎学力がこの8年間ほど低下し続けていることを実際の学力テストデータの平均点と得点分布を例に挙げながら何度も何度も弊ブログでとりあげた。学力上位層が1/3以下になり低学力層が膨張している。
機会をとらえて「読み書きそろばん(計算)」の読みと書きのスキルを上げるいろいろな試みをすべきだろう。
根室市内の中学生は昨日2学期の期末テストが終わった。休み時間になって生徒がホワイトボードに絵を描いてもいいかと聞くので許可したら、真っ赤な林檎をかじる直前の若い女性の姿を描きあげた。柔らかい線のなかなかいい表情の絵である。
消すのがもったいないくらいの絵のできばえに見とれているうちに中3の生徒が来たので、200字詰め原稿用紙を渡して、次のように伝えた。
「この絵を見て浮かんだイメージでストーリを200字にまとめよ」
漫画の本をよく読む生徒が喜んで書き始めた。『テラフォーマーズ』や『東京グール』が好きな生徒で、小説はほとんど読まない。奇想天外なストーリを書き始めてとまらない。4枚書いた。漫画の本も奇想天外なドラマを書くのに肥やしになっていたらしい。
もう一人はミステリー仕立てだった。恋人を自殺に追い込んだ男に復讐するストーリだった。復讐を果たした後でどんでん返しが書かれる。そんなことを恋人が望んだはずはないと気がつき、無益なことをしたと後悔しながら大好きな林檎を食べ終わって自殺してしまう。
絵を描いた本人は、時空が変異して異世界へ若い女性が運ばれる、天地創造の話しをそれが始まる前から400字で描いた発想がいい。ストーリの最後のところでイブがいま真っ赤な林檎を食べようとしているシーンだと気づかされる・・・、なかなかやるなと感じた。この生徒がもの書きになったらどのような小説を書くのだろう。
それぞれがなかなか秀逸なストーリを書いた。この粗筋を肉付けをするために細かい部分を書き足せば400字詰め原稿用紙50枚くらいは書けそうだ。ミステリ仕立ての生徒は恋人を自殺に追い込んだ男の勤務する会社へ入社して意地悪をするのだが、そのシーンをいくつか書き込むだけですぐに50枚くらいになりそうだ。
読み書きの書くスキルを上げるにはとにかくたくさん書くことだ。400字詰め原稿用紙で50枚くらいを何度か書けば、誰がやっても文章はしっかりしたストーリをもった説得力のあるものになる。それには何かきっかけをみつけたらいい。
塾ができるのはきっかけをつくってやることだろう。なにか書いてきたら読んであげようと思っている。
最近、推薦入試を受けた生徒が、小論で過去問とは傾向の違う題が出されたので慌てたと言っていたが、こういう遊びを何度か経験し、400字詰め原稿用紙で50枚くらいのものを数点書いていたら予想が外れても慌てることなく、しっかりした小論が書けるだろう。
遊びは遊び心でやるから「動力」が大きい。その大きな動力を利用して、作文能力を高めたらいいのである。
売れる売れないは別にして、誰でも小説を数本は書けるものだ、そして創作は楽しいのである。原稿用紙に字を埋めてそれぞれの文を読みあっているときのどの顔もふだん見せないようないい顔していた。書くことは楽しい、だれでも小説は書ける、そういうことに気がついてもらいたかった。
夏に小樽商科大へ在学している生徒からメールをもらって驚いた。メールの文章が立派なビジネス文書の趣を備えていたからである。メール本文は大企業の標準的な管理職並みのスキルの書き手という印象があった。この生徒は4年生になったばかりの4月に就職が決まった、精神的にもずいぶん大人になった。幼馴染の評によると、小さいときから「本の虫」で、とにかく暇があれば本を読んでいたそうだ。幼馴染の方は就職が決まったのかな。
(幼馴染だった彼女の希望する業種の道内企業はリサーチの結果、給料が13万程度でとても生活ができない、道外も含めて百社以上応募してみると8月に言っていたが、まだ就活戦線で戦っているのだろう。
偏差値55以上(上位1/3)の大学の学生は別にして、それ以下の大学の学生は正規雇用で独立で生活できる職に就くのはなかなかたいへんだ。
アベノミクスで失業率が下がったと当のご本人(安倍総理)は解散総選挙公表後にテレビ出演して自画自賛していたが、実態は建設業や介護業界で人手不足で、ミスマッチ。正規雇用の職は20万人分減り、非正規雇用の不安定な職が百万人分増えただけのこと。
大学生でも条件のよい安定した企業に正規雇用で就職できるのは上位1/3の大学生で、それ以下の大部分は正規雇用の職に就きたくて百社以上も繰り返し応募して戦い続けている。少なくとも1/3は非正規雇用が現実である。彼ら彼女達は一時的に非正規雇用の職に就くことを余儀なくされており、正規雇用の職を求めているが、失業者数には含まれない。就職をあきらめてバイトで食いつないでいる者たちも、引きこもりでゲーム中毒になっている者たちも失業者には含まれていない。いまや失業率は実態を表していないのである。40%にも達する非正規雇用の増大こそが問題で、日本は鎖国(強い管理貿易)に舵を切り、国内に生産拠点を再構築して、若者の正規雇用を増やすべきだ。)
根室高校普通科では教育大札幌校へ進学したN君と、模試の国語の一番を何度か争っていたが、彼女の方が歩がよかった。やはり、本を濫読してたくさん入力している生徒は大人になればしっかりしたビジネス文書が書ける。あまり読まない生徒でも書くトレーニングをすればそれなりの文書を書くことができるようになる。
企業で働くときに文書能力は案外大きな武器になる。大きな会社ほど文書での仕事が増える。業務報告書はもちろんのこと企画書、各種協議書、稟議書など重要なことは文書に残して行われるからだ。意味不明な業務報告書や企画書を提出していたら、無能力を証明するようなものだ。
読み書きの能力が高い生徒は学力全般が高くなる傾向があることはこの二人の例から明らかだ。
本はたくさん読め、そして書け、書き続けろ、そうすればスキルは格段に上がっていく。
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*#2606 根室の中学校の過去6年間の学力低下を検証する Feb. 28, 2014
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#2672 急激な学力低下はなぜ起きているのか?:假説 May 10, 2014
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#2806 高校数学面白い問題 :小中学校の先生たちへ Sep. 14, 2014
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#2869 根室の中学生の学力の現況(1):B中学校の例 Nov. 16. 2014
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#2870 根室の中学生の学力の現状(2):C中学校 Nov. 16, 2014
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#2871 根室の中学生の学力の現状(3):学級崩壊 Nov. 16, 2014
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#2872 根室の中学生の学力の現状(4):B中学校2年生も問題あり Nov. 18, 2014
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#2873 根室の中学生の学力の現状(5):C中学校1年 Nov. 19, 2014
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#2875 根室の中学生の学力の現状(6):B中対C中学校1年 Nov. 20, 2014
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*#2865 マルクスの労働観と日本人の仕事観:学校の先生必読 Nov. 13, 2014
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