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#2871 根室の中学生の学力の現状(3):学級崩壊  Nov. 16, 2014  [63. チャレンジ(教育)]

 C中学校の1年生に大きな問題があると前回書いた。この12年間でこんなに平均点が低いデータを見たことがない。このままではこの学年が3年生になったときに学力テストABCの五科目平均点が107点(300点満点)前後になる。現在の3年生よりも約30点下がるだろう。

 2年生と1年生の階層別対比データを見てもらいたい。

 C中学校8月27日学力テストデータ
 2年生小計1年生小計
481-5000  0  
461-4800  0  
441-4601  0  
421-4402  2  
401-4202511.9135.7
381-4003  3  
361-3801  3  
341-3603  1  
321-3403  2  
301-32041126.221120.8
281-3001  2  
261-2803  1  
241-2605  2  
221-2404  4  
201-22031638.151426.4
181-2001  2  
161-1801  7  
141-1603  1  
121-1400  6  
101-1201921.411732.1
0-100112.48815.1
合計4242100.05353100.0



 見やすいように階層に百点刻みで小計をいれ、その人数と割合を表示してある。
 2年生対比で1年生をみると、400点以上の成績上位層は半分の5.7%、500点満点で200点以下の成績下位層は47.2%で2年生23.8%の2倍である。成績上位層の割合が半減し、成績下位層の割合が2倍になっているから、著しい学力低下が起きているとデータが語っている
 100点以下の生徒は授業を聴いても基礎学力が小学校3年以下だから中1の授業はほとんど理解不能だ。160点以下の生徒が16人いるが、この階層の大半はふだんの授業理解に支障をきたしている。2クラスでこれだけの人数の生徒が授業理解不能なら、授業中がどのような状態なのか想像がつく。先生の制止を聞かずに授業中にお喋りをする生徒、立ち歩く生徒がいる。フリー参観の時には猫をかぶっているだろう。PTAは先生たちと「1年生問題」を何度も話し合って具体的対策を決めて実行した。この1年生の低学力問題は親達も協力しないと解決できない。

 中学生になってから急に学力が低下したのではないだろう。疑われるのは小学校で学級崩壊が起きたのではないかということだ、まあ假定の話だと思って聞いてもらいたい。
 前回の弊ブログで取り上げたが、B中学校では2010年度の中3の学年が中1のときに学級崩壊現象が起きて学力テストの平均点が3年間で40点も下がったことがあるが、C中学校で起きている学力低下は中1だから、小学校での学校崩壊現象があったと見るのが妥当だろう。この小学校はebisuの母校であり、北海道でも3番目くらいに古い歴史のある小学校である。

<先生の技倆×親の躾⇒数値が低ければ学級崩壊リスク大>
 先生の授業技能にいくらか問題があり、数人の生徒の躾が著しく悪いということが重なると学級崩壊を起こしやすい。親の言うこともきかず先生の言うこともきかない生徒が三人いたら管理職がフォローに入っても一度崩壊したクラスはなかなか立て直すことができない。昔の先生ならすぐにひっぱたいたものだが、そんなことをすると処分されるから、危険を冒して生徒を叩きなおしてくれる「立派な」先生は居なくなった。その結果、中学生になった彼ら・彼女達の学力が著しく低いことが文協学力テストの結果で判明する。小学校で数年間育てた習慣はその生徒の性格にまでなっていて、中学校でも習慣になっている行動パターンが出てしまう。授業中に私語をする、歩き回る、姿勢が崩れて落ち着かない、こうしたことが「生活習慣」病になっているからなかなか治らない。もろもろの事情が学年平均点の低下となって現れているとみて間違いはないだろう。

 学力テストの平均点は、
  2年生 283点
  1年生 222点

 五科目300点満点で2年生と1年生の合計点の差が61点もある、これはもう有為な差があると判断すべきだ
 1年生で平均点の222点の生徒は学年順位が47人中23番付近だが、2年生の222点は42人中32番で、後ろから10番目付近だ。1年生で平均点近くの生徒は学年順位が真ん中だからまあまあの成績だと勘違いしてしまう。後ろに24人いるのだが、2年生を基準にすると後ろに10人しかいない。あせらないといけない成績なのである。

<数値重視に切り換えよう:先生たちはみんなお世話になった偏差値>
 根室で暮らしていると全国レベルがどれほどの高さかわからない。文協学力テストは全道の公立中学校で実施しているにも関わらず、全道平均点すら出ていない時代遅れで役立たずの代物。いまどき業者テストで参加した生徒の平均点や偏差値の出ていないものなどありはしない。現に根室高校普通科は全国模試を実施しており、毎回偏差値と順位が表示された結果表が通知されている。先生たちは全国偏差値を参考資料として進路指導をしている。
 このように道内の道立高校普通科の担任や進路指導部の先生たちはみなさん進路指導に偏差値を使っている、それなのに中学校の先生たちだけが、「過度な競争を煽る」と言って偏差値導入に反対する、おかしな話だ。教えてほしい、どこに過度な競争があるのだろう?根室市内は道立高校に全員入学できるどころか、毎年数十人定員割れしている。別海町だって中標津町だって標津町だって羅臼町だって道立高校は各地域で定員割れの状態だ。学力の低い支庁管内の現実をみたらよい、「過度な競争」などどこにもない。
 中学校の先生たちで大学進路指導に偏差値のお世話にならなかった人はいないだろう。それなのに、自分の生徒には使わせない、偏差値導入に反対するのである。おかしな話ではないか。自分だけよければいい、便利なツールを生徒には使わせない。
 全国レベルや全道平均点やそこからの偏差を秘密にしたままで生徒はどうやって自分のレベルを客観的に知ることができる?できるはずがないから、学年3番以内に入ると勉強ができると勘違いしてしまう。全国模試だと公立高校普通科対象の全国模試では平均点にも届いていないのである高校へ入学してから中学校で学年3番だった自分の偏差値が45~48だと知って驚いて茫然自失、またたくまに1年間が過ぎて大学受験へ向けた大事な期間をロスしてしまう
 中学校の先生たち、声を上げよう。「学力テストは偏差値表示のあるものに変えるべきだ」、そういう声を現場から上げてもらいたい。自分のためではないよ、能力のある生徒の学力を全国レベルを知らしめて自己を客観的に評価させ奮起をうながすためだ。中学校1年生で全国レベルでの己の実力の低さを知れば、3年早く真剣な戦いを始められる。そういう環境をつくってやれるのは私たち大人だ。私たちがそれぞれの立場でやれる範囲のことをしっかりやり遂げよう。わたしがブログで声を上げ続けているのはそういうことだ。

<C中の1年生が3年生になったときの学力テスト成績の予測>
 話しをデータに戻すと、現在の3年生の平均点に2年を基準として1年の平均点の割合を乗ずると、
  137.1*222/283=107.5
 
  これもたんなる目安に過ぎない。先ほど述べたように、現在の1年生がこのまま3年生になれば、学年平均点が107点に退化しそうだから、表の数字と見比べてもらうとわかるが、いまの1年生は過去12年間で一番学力が低いということになる。さて、C中学校はどのような取組をするのだろう、ちょっと手ごわいよ。生徒たちには五科目合計点で200点(500点満点)付近でも普通の成績かあるいはいい方だという勘違いが起きている。自分達の学年が他の学年に比べてガクンと学力が低いことに気がついていない。

<「読み・書き・そろばん(計算)」速度アップトレーニングの重要性>
 実際の基礎学力はどうなっているだろう?「読み・書き・そろばん」の読みと書きの能力は成績下位50%のうちの2/3(約17人)は小学4年生程度かそれ以下の読み書き能力と推測している。
 小学3年生~6年生の範囲の語彙の読み書き問題集に『言葉力ドリル』というのがあるが、このテストを実施したら得点が40点以下であろうというのがebisuの予測値だ。小学校4年生程度の読み書き能力があやしい。
(ebisuが「予測値」という言葉を使うときはある程度のデータの裏付けがあるときに限定している。確たるデータの裏付けのないときは「予想値」を使う。)

 もちろん、授業で先生が説明に使う漢字熟語でも適正な漢字に頭の中で置き換えられないものが頻繁に出てくるから、意味のつかみようがなくなる。違う漢字に置き換えてとんでもない理解もでてくる。自分の知っている言葉に勝手に変換しちゃって、本人はわかったつもりでいることがよくある。授業内容が知らない漢字が出てくるところで意味が切れてしまう。授業を聴いていても楽しいはずがないから、おちゃらけて騒ぐか眠たくなって集中力がなくなる。先生が話している意味のわからない授業に集中力をもてという方がムリ。

<「読み・書き・計算速度」が勉強量を左右している:基本語彙力増強の手段として漢検の推奨>
 だから、この学年には毎日漢字の書き取りをやらせて、漢字検定を受検させ、語彙力アップを長期的に図るべきだ。そうしないと読めない漢字だらけで本も読むことができないから、読む速度が普通の学力の生徒に比べて著しく劣ることになる。「読み・書き・そろばん(計算)」トレーニングを毎日課すべきだ。スピードが何より大事。勉強量は読み書きの速度と時間の積で決まる。速度が3分の一のものは人の3倍の時間勉強しないと追いつかないのが現実。速い生徒と遅い生徒では数倍(2倍~5倍)の差があるのは珍しいことではない。
 ニムオロ塾では英語授業のときに10分早く当塾させて、日本語テクストの音読トレーニングをしているが、読解力の弱い生徒は標準速度の生徒の2倍も3倍も時間がかかり、「てにをは」を頻繁に読み違えてしまう。これでは意味がわかるはずがない。いくら簡単な文協学力テストでもこういうレベルの生徒たちは国語の点数が70点を超えることがない。
 計算速度はクラスの中でトップクラスの生徒と一番遅いグループ5人の平均値は10対1くらいの差がある。計算の遅い生徒は速い生徒の10倍の時間を費やさないと同じ勉強量にならない。具体例を弊ブログで過去にとりあげたことがある。今年の4月か5月だった。あのときの計算実測値で30対1の差があった。計算の速い生徒の30分間の勉強量は計算の遅い生徒の900分(15時間)に相当する。これでは差が開く一方となることは火を見るよりも明らか。「読み・書き・計算」の基本技能の差は学習量に決定的な差を生んでいる。

<学力テスト国語の得点分布の分析>
 8月学力テスト国語の点数分布 

 8月学テ国語
 2年生小計1年生小計
91-1000  1  
81-903  5  
71-804716.771324.5
61-703  4  
51-60141740.5111528.3
41-508  10  
31-404  8  
21-303  4  
11-202  3  
0-1011842.902547.2
合計4242100.05353100.0


 
<音読トレーニングと漢字書き取りの強制>
 わたしは読書量が少なくても、漢字のトレーニングを半年やればほとんどの生徒が「71-80」点とれると考えている。過去に国語の点数が30-40の生徒を選び、『読書力』(斉藤孝・岩波新書)の音読トレーニングと出てくる漢字の書き取りをやらせたら4ヶ月ほどで学力テスト国語の点数が70点台に載るようになったからだ。この表を見て思ったのは、週に2回教師がついて音読トレーニングをさせ、その都度ノート1ページに小さな字で丁寧に漢字の書き取りの宿題を課したら、三人に二人が71点以上の階層に繰り上がるだろうということ。2年生なら、42人中30人が、1年生なら53人中40人が71点以上の階層になるだろう。教師がついて良質のテクストを使って25分間の音読トレーニングを週2回、併行して漢字の書き取りを毎回ノート1ページにびっしりやらせるだけである。嫌がっても無理矢理ひっぱたいてもやらせる。真剣にやらないものはブカツへの参加を許可しない。ブカツよりも勉学が大事ということはそういうことだ。基礎学力の身についていない生徒には自由はない。

<国語の階層別データから見えたこと:問題点と対策>
 平均点は2年生が51.9、1年生が53.0点である。問題が違うので、差が1.1ではどちらが高いとも言えない。
 下位層分布を三つに区切ると特徴が見えてくる。2年生は「51-70」の下位層が40.5%厚いのに対して、1年生は同じ層が28.3%しかない。2年生は成績中位層になんらかのインセンティブが加われば成績上位層が一気に3倍4倍となりそうだ。なにかいい方法はないだろうか。
 1年生の国語の点数は二極分解していると言えそうだ。濫読期を経過した生徒は点数が80点以上とるだろうが、2年生は3人、1年生は6人しかいない。児童書を抜けでた領域の読書に親しむ生徒は10%もいないようだ。
 1年生を見ると60点以下が75.5%もいる。四人に三人は読書不足と断言してよい。半数が著しく読書不足だ。大人が読むようなレベルの本を家で音読させてみたらすぐにわかる。文庫本や新書版の本を2冊買ってきて試しに音読させてみたらいい。1ページに10個前後も読めない漢字が出てくるようなら、小学校4年以下の語彙力でおはなしにならない。流れるように読めなければ意味はつかめぬ。本を読んで語彙を増やすのが一番だが、ルビを振った本が少ないからルビ付きの本を探して読むことと、漢検問題集を使ったトレーニングを推奨したい。高2の生徒が先週見せてくれたが、漢字検定だけでなく語彙力検定というのもあるようだ。なんでもトライして語彙力をアップすれば読める本の範囲が広がる。

<まず大人が本を読む⇒家に本棚を一つ作ろう>
 生徒たちの回りに本を読む習慣のある大人が少ないのかもしれない。家に書棚があり、いろんなジャンルの本が並んでいたら、半分くらいの子どもは手にとって読むようになる。わたしの子どもは私の書棚の本は専門書が多かったのでほとんど読まなかったが、自分の身の丈に合う本を買ってきて読んでいた。数十冊貯まると、ブックオフかどこかへもっていって売り払っていた。千円~千五百円前後の本をよく読んでいた。仕事帰りに本屋へ寄って立ち読みして気に入った一冊を買い、スターバックスでコーヒを飲みながら30分ほどのんびりするのが好きだといっていた。知らない間に本好きになっていた。

<基本読書力の定義と文科省によるレベル別ルビ適合マーク>
 下位得点層の生徒たちには漢検4級の問題集を毎日15分、放課後ブカツの前にやらせたらどうだろう。読めない漢字が多いから読みたい本があっても読めない、そうした語彙力障害を取り除いてやる仕掛けを用意すべきだ。大人になって仕事で必要な専門書が読めないようではお話にならぬ。文庫本や新書版の本を読みこなせるような程度の読書力を「基礎的読書力」と定義したい

 基本読書力を育てるために、文科省は小4以上の漢字にルビを振ることを奨励したらいい。小4、小6、中3くらいの三段階に区分して、補助金付きのレベル別推奨マークをだしたらいい

 読書力は最重要な学力の土台であり、効率的に他教科を征服するツールである。読書力の大きい生徒、日本語語彙力の大きい生徒は高校生になってからも成績が飛躍的に伸びる。読解力のない生徒は勉強量が少なくなる。読む速度は読書力の半分をなしている


*#1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校 Dec.19, 2010 
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 #2672 急激な学力低下はなぜ起きているのか?:假説 May 10, 2014
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 #2865 マルクスの労働観と日本人の仕事観:学校の先生必読 Nov. 13, 2014 
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 #2869 根室の中学生の学力の現況(1):B中学校の例 Nov. 16. 2014 
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 #2870 根室の中学生の学力の現状(2):C中学校  Nov. 16, 2014 
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 #2871 根室の中学生の学力の現状(3):学級崩壊  Nov. 16, 2014
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 #2872 根室の中学生の学力の現状(4):B中学校2年生も問題あり Nov. 18, 2014 
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