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#2857 政治資金収支報告書スキャンダル Nov. 4, 2014 [75.時事英語公開講座]

 #2856で政治資金収支報告書に公認会計士による外部監査を法律で義務付けるべきだと書いたが、おもしろい表現に出くわしたので、とりあげてみようと思う。

 前回ブログの末尾でとりあげた、神戸学院大学上脇教授に取材した記者がこう書いていた。

 One problem is that journalists have "just checked funds desclosed in Tokyo" without seeing the big picture, Kamiwaki said.

  (一つの問題はthat節以下にある/ジャーナリストが大きな構図に配慮することなく東京で公開されている資金収支をチェックするだけ/と上脇教授が述べた。)

 さて、この'the big picture'とは何かと考えた。
 「アンダーラインを引いた名詞句が何を指しているのか日本語で具体的に説明せよ」という出題がなされたと仮定しよう。後の段落に具体的に書かれているからこの問題を念頭に置きながら読んでもらいたい。

  theがついているから、読み手のわたしたちにが知っていることだ。一つ一つの数字の食い違いを指摘するだけに終わっている報道の仕方に問題があると指摘している。そうではなくて「大きな構図」を読めというのは政治資金収支報告書の杜撰な管理体制や政治家個人が領収書の一つ一つを見て、その妥当性を判断し、使途に責任をもつべきで、秘書任せにしてはいけないということか。わたしには、政党支部を経由した企業献金の流れや使途の方がもっと大きな問題に見えるが、ジャーナリストはその辺りには触れない。取材がたいへんだからだろう、ジャーナリズムの仕事の仕方が薄っぺらになりつつあるのは、危険なことだ。さあ、ここまで考えておいて、段落ごとに読み進みたい。

 次の段落の文をみよう。

  A politician is obliged to operate a single body to manage his or her political funds, which theoretically handles all receips and expenses.
(政治家は政治資金を管理するために一つだけ政治資金管理団体を運営する義務がある。政治資金管理団体はすべての領収書と費用を整然と建前上取り扱うことになっている。)

  能動文にすると文意がよくわかる、主語は政治資金規正法である。義務付けているのは政治資金規正法であることは常識で、そこに書き手の関心はないので受動態にして、誰が義務付けられているのかという点が関心事だと示唆しているように読める。カタチが違えば、イミとキモチも違うというのはHirosuke流英語術の根っこの一つ、こうして具体例で考えるとよくわかる。
The Political Funds Control Law obliges a politician to operate a single body to manage his or her political funds.

 theoretically handlesは「建前上とりあつかうことになっている」と訳した方が文脈にあっている。handlesという動詞にtheoreticallyという副詞をつけたことには意味がある。建前上は当の政治家が自分で資金管理団体を運営・管理しなくてはならない筈なのに、実際には秘書任せでやっていないという含意が込められていると読めるのである。
 ついでだから、theoreticallyという語が出てきたときに、practicallyが頭に浮かんだ人はセンスがよい。反対語と対で考えるとわかりやすいケースが多い。「理屈で言うとそうなのだけど、実際は違うんだよ」というニュアンスがこの二つの語にはある。こういう二つのものを対概念という。
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対概念⇒読み方:ついがいねん

互いに対照的要素持ち一方言及される場合には自ずと他方存在前提されている、といった関係の概念。対をなす二つ一組概念

weblioより引用
http://www.weblio.jp/content/%E5%AF%BE%E6%A6%82%E5%BF%B5

 意外なことに、『大辞林第三版』には収載されていなかった。
 対概念とは神と悪魔、善と悪、白と黒、等々。
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 政治家は資金管理団体をつくって、そこが政治資金の収支を整然と管理するのが当たり前で、そうした「大きな構図」からみると、領収書や費用の使途が整然と管理されていないことが政党を問わず、はたまた大臣であるかただの国会議員であるか地方議会議員であるかを問わず、次々と明るみに出ているのだから、法的な規制を強化すべきだというのが上脇教授の主張の流れだ。

 But anyone can set up support groups that will benefit a particular politician, and the politician can also serve as the head of a local chapter of his or her political party. They often do.

(しかし、後援会組織はだれでも立ち上げることができる/後援会は特定の政治家に便宜を供与し政治家はその所属する政党の支部長として(後援会の)役に立つことができる。政治家も政治家の後援会もしばしばそういうことをしている。)

 chapterが「章」ではなくて、「支部」を指すことは辞書を引かずとも文脈から容易に見当がつくだろう。政党の地方支部長'the head of a localchapterof his or her political party'をすることで脱法行為である政党への企業献金がそのまま政党支部へ流れ、そこから後援会組織へ枝分かれをしていく。企業献金を廃止する替わりに政党助成金の支出を決めたはずが、こんなことを許すなら、政党助成金は即刻廃止すべきだろう。

 The Political Funds Control Law does not prevent cash transfers between a politician's fund management body, affiliated support groups, and the party's local chapeter.

  (政治資金規正法は政治家の資金管理団体、附属後援会、政党支部との間で資金の移動を妨げていない。)

 これら政治家や団体の間での資金移動があることで、第三者機関がその流れを追うことが著しく困難になっている。こういう仕組み全体の問題をジャーナリストが看過していると上脇教授が述べているのである。

 結論部分を前回ブログから再掲しておく。
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"If a party receives a political fund subsidy, which is taxpayers' money, there should be (stronger) reguration of the use of political funds by pokiticians," Kamiwaki said.
"If they don't want regulations, political fund subsidies shold be abolished instead."

「政党助成金を受け取るなら、それは税金であり、政治家によるその使途については規制はより強くあるべき。規制が嫌なら、政党助成金は廃止されるべきだ」

 規制強化は政治資金規正法の抜け道をつぶすことと、公認会計士監査を法律で義務付けることだ。

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  さて、最初の疑問'the big picture'に戻りたい。次の二つのことに集約できるだろう。
①政治資金収支報告書作成の杜撰さとそれを管理できない政治家自身の問題
②地域ごとの政党支部を経由して行われている企業献金は脱法行為であり、そこから後援会組織にお金が流れて、持ちつ持たれつの関係が企業と政治家と後援会組織の間にあること

 これら二つのことがジャーナリストが見逃している「大きな構図」ということになるのだろう。
 小渕優子元経済産業大臣の例でいうと、それを管理できない小渕議員自身の管理能力の問題とどのような企業からいくらの献金が小渕氏が支部長となっている政党支部へなされ、どの後援会へいくら流れてそれがどのように使われたのかをマスコミはしっかり追跡取材して、全体の絵柄を浮き彫りにして見せろということだ。

<余談:読書量が決め手>
 読むことは考えることなのだ。ここでとりあげたように、特定の表現(例えば、受動態)を選んだことによる書き手の意図、ある副詞を選んだことで書き手がイメージしていることなどは考えなければつかめない。英文を読むことはじつは日本語の文章を読むのとなんら変らない作業であることがわかる。
 だから、高校生までに日本語で書かれたたくさんの本を読んでおいて、文章読解の下地をつくっておくべきなのである。それがない者は高校生になって英検準2級どまりになってしまう。英語をいくら勉強しても日本語の言語能力の壁に突き当たって、英語の読解力が伸びなくなるのだ。小学校高学年から大人の読み物を大量に読みこなす濫読期を通過することがその後の学力のノビシロを大きくする。
 中学校を卒業するまでに濫読期を経験した者たちは、高校生になってからさらに大きく学力が伸びだすのだが、それは日本語の言語運用能力という「下地」がしっかりできていてノビシロが大きいからだ。もちろん、大学生や大人になってからも同じことが言える。あらゆる専門書は日本語で書かれており、時代の先端で仕事をする人たちはまだ翻訳されていない、あるいは翻訳される機会の稀な英語で書かれた複合分野の専門書を仕事で読まざるをえなくなる。ネイティブの小中学生がしている日常会話程度の英語力ではお話しにならない。高校の英語の授業がそんな程度の英語運用能力を目標にしているのだから、日本の高校生の学力が低下するのは当然だ。脳を鍛える機会を減らしているようなもの、愚かな文教政策だ。

 英語の読解能力をアップさせておくことは、社会人となってからこそ大きな威力を発揮するのである。
 数学の基礎計算能力にも同じことが言えるのだが別の機会に譲ろう。読解能力と基礎計算能力に秀でたものは、社会人となってから複合分野で他の97%の人たちには不可能な領域の仕事にチャレンジできる。そういう人材は民間会社にも非常に少ないから、ニーズが高い。
 高校生の人は回りを見渡したらいい。数学ができて国語も英語もできる生徒が百人の中に数人いるに違いない。そういう人たちは社会人になってから担う仕事が違ってくる。30年観察を続けたらコレラ三つの分野の科目に秀でることの重要性が理解できるだろうが、それから考えを改めても手遅れだ。高校生は30年後には40代後半になっている。いま、質の高い本を日本語で書かれた本を濫読し、英辞新聞を読み、数学の勉強を一生懸命にやることだ。
 強いアイテムは自分の努力で手に入れられる。チャンスは平等にあるのだから、それを逃がすな。

 日本人が国際的な経済競争力を維持あるいは高めるためには、諸外国に比べて圧倒的に学力が高くなければならない。少子高齢化が同時に進む人口減少社会に突入しているからこそ、教育になおいっそう力を注がなければならない。一国の経済成長を支えるものはその国民の学力の高さなのだ

 
■ 元のJT紙記事
DPJ's Edano admits financial misreporting, promises correction ... 


*#2856 国会議員の収支報告書に公認会計士による外部監査を義務付けよ Nov. 2, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-02

 
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後志のおじさん

細かいことですが、chapter は、いろいろな団体の、地方支部、分会で、a head of が「長」になります。

chapter; 全体を構成する、対等な立場の部品のイメージでしょうか。

今年は、畑が、早くに終わり、のんびり過ごせています。冬の生徒も先週からポツポツと来はじめました。
by 後志のおじさん (2014-11-04 12:53) 

ebisu

後志のおじさん

その通りですね。訂正しておきます。
「③地方支部、分会」とG-4に載っています。

ありがとうございます。

「冬の生徒」ですか、季節ごとにそれぞれ来るのですか?
自分のうちの畑仕事が終わると、来る、季節感があって面白いですね。
昨日に続いて今日も強風が吹き荒れています。

by ebisu (2014-11-04 13:08) 

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