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#2847 エボラ出血熱2-3 :'Spain case shows holes in plans to treat Ebola' Oct.21, 2014 [75.時事英語公開講座]

'Spain case shows holes in plans to treat Ebola'

 < 解説編-2 >

  感染力強度に関する国際標準スケールがないので困る。どの程度の感染力があるのか専門家が集まり、国際標準スケールを作ってほしい。

 エボラ患者が日本で出たらどうなるのだろう?わかっていることは致死率70%、感染力がエイズよりもかなり強いということだけ。感染力の強度を仮にO-157レベルとする。
■患者が10人出たらどうなる?
■患者が100人出たらどうなる?
■患者が1000人出たらどうなる?

 こういうシミュレーションをあらかじめしておかなくてはならない。それぞれに応じて人の手配、資材の手配、隔離病棟の確保などをどのようにやるのかあらかじめ手順を確認しておくべきだ。医師、看護師、看護助手などに防護服を着たり脱いだりするトレーニングも必要になる。防護服の生産体制のチェックもやらなければならないだろう。
 一番の問題は国内に隔離施設がいくつあるのかという問題だ。エボラ患者の隔離にはバイオ・セーフティ・レベル4の施設が要件になっている。道東には1ベッドもないだろう。道内にはたぶん一つもない、そういうレベルの感染症を扱ったことがないからだ。
 私は国内最大手の臨床検査センターで16年間仕事していたことがあるが、1980年代後半にエイズ検査導入にあたって、ウィルス検査部はエイズ専用検査室を要求されるレベル2ではなく、一つ上げてレベル3仕様にした。この会社は要求される基準よりもつねにより厳しい基準をクリアするというのが暗黙の了解だった。バイオ・セーフティ・レベル3は遺伝子操作ができるレベル。 1990年ころのことだったと記憶するが、この会社のラボは世界一厳しい精度管理基準であった米国臨床病理学界のCAPライセンスを取得した。そのために3000項目を超える臨床検査作業手順書を揃え、英文に書き換えた。2年後には電子ファイルに改めている。こういうことにはいくらでもお金を使う面白い会社だった。
 レベル4の隔離施設をもっている病院が国内にいくつあり、ベッド数がいくつなのか、まず現状を知るべきだ。おそらくひとつもないだろう。
 シミュレーションはもとより、それぞれの想定に応じた作業手順を確認し、準備はしておくべきだ。準備が無駄になっても構わない。

 末尾に < 怖い余談 > が載せてある、怖い話で眠れなくなくなる人は読まない方がいい。

*http://www.nytimes.com/2014/10/15/world/europe/spanish-nurse-ebola-health-budget-cuts.html?_r=0#

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(10)  Protesters stood outside the Health Ministry on Monday chanting for the resignation of Ana Mato, the national health minister. Facing complaints that the national government had acted too slowly, Prime Minister Mariano Rajoy created a special commission on Friday to oversee readiness and investigate how Ms. Romero became infected.

「月曜日(13日)に抗議する者たちが保健省の回りに集まり、保健大臣のアナ・マト辞職要求が繰り返し声高に叫ばれた。政府の対応が後手に回っているという国民の苛立ちに直面して、マリアノ・ラジョイ首相は金曜日に特別委員会を設置し、看護師ロマノがどのような経緯で感染したのか調査を命じている。」

(11)  “This is an incredibly important moment, not just for Spain but for Europe and the United States,” said Dr. Julián Ezquerra, general secretary of Amyts, a large union of physicians in Madrid. “This is the first case of Ebola that has been generated outside Africa. We need to know what went wrong.”

「"スペインだけでなくヨーロッパや米国にとって、これが途方もなく決定的な時間です"とマドリッド医師会の会長Amptsが述べている。"これ(マドリッドで起きた二次感染)がアフリカの外で発生した最初の症例です。私たちは何が間違っていたのか知る必要があります。"」

 "an incredibly important moment"はまるで神がお与えになった貴重な時間とでも言いたいような表現だ。
「スペインだけでなくヨーロッパや米国にとっても神が与えたもうた貴重な時間です、無駄にしてはいけません、わたしたちはこの時間を使って如何にしてスペインで二次感染が起きたのか詳細に調べ、世界に向かって必要な情報を伝える義務があります。」
 マドリッドの医師会長はそう言いたいのだろう。

(12)  For now, Ms. Romero, 44, remains in critical condition, if showing tentative signs of improvement, housed on the sixth floor of the same hospital, Carlos III, where the two priests were cared for.

tentative:一時的な、仮の
「いままでのところ、ロマノ看護師は重篤な症状を脱していないが、一時的に改善の兆しが見えたら、同じカルロスⅢ世病院の6階に収容する。」

 もう解説の必要がないだろうが、覚えの悪い生徒もいるから念押ししておこう。
if showing tentative signs of improvement
⇒if she shows tentative signs of improvement

housed on the sixth floor of the same hospital
⇒she will be housed on the sixth floor of the same hospital

(13)  Her husband and 14 others are quarantined on a floor below, with none yet showing any symptoms of Ebola. In all, 83 people who came into contact with Ms. Romero are being monitored.

「ロマノの夫とそのほか14人がしたの階に隔離されているが、まだ一人もエボラの症状を呈していない。ロマノに接触した総勢83人が監視下に置かれ、経過観察中である。」

(14)  Beyond the uncertainty over how the infection occurred, much of the public confusion, and anger, is focused on the seemingly loose monitoring of Ms. Romero for more than a week after the death of the second priest. Even as she called in complaining of a low-grade fever and of feeling queasy, she was never told to return to Carlos III.

queasy:吐き気がする

「どうやって感染が生じたのかという不確実な問題を超えて、たくさんの人々の混乱と怒りが二番目に感染した聖職者が亡くなった後の一週間以上に渡って、ロマノの経過観察がルーズであったことに、国民の困惑が集中している。そして怒りも。ロマノ看護師が微熱と吐き気を訴えたにも関わらず、カルロスⅢ世病院へ戻るように話されることはなかった。」

 この文面から、ロマノ看護師は一般病院で診察を受けたことがわかる。外来待合室で他の患者と共に診察待ちをしていたようだが、本来あってはならない事態に批判が集中しても当然だろう。
 看護に当たる看護師や看護助手は今後は一定期間(潜伏期間が3週間あることを考慮すると4週間)厳重な監視下におくべきなのだろう。
 もう一つ読み取れることがある。一般内科医にはエボラは初期症状があっても風や食中毒などと区別がつかないということ。一般外来にエボラの疑いのある患者が並ぶことも問題だが、一般内科医に初期の診断がつけられないというのは問題が深刻である。そういうことを考慮したら、少なくとも直接に治療や看護に当たっているスタッフは全員監視下におくべきだということ。一般病院への通院も熱や吐き気を伴う場合は、エボラの治療センターに来るようにシステムをつくらなければならない。

(15)  “She was considered a low-risk contact,” Dr. Fernando Simón, the Health Ministry official now leading the government investigation, said in an interview.

「"ロマノ看護師はローリスク・コンタクトであるとみなされてしまった"」とドクター・フェルナンド・シモン(保健省の医療技官で現在政府調査を指揮している)が記者会見で述べている。」

(16)  Ms. Romero’s own actions are being closely examined, too, to determine whether she put people at risk as her symptoms began to emerge.

「症状が顕在化し始めたときに彼女が(周りにいた)人々をリスクにさらしたかどうか決定するために、ロマノ自身の行動も詳細に検討が進んでいる。」

 to不定詞のto determineはその前におかれている動詞examinedを修飾するから、例の福祉的用法である。

(17)  Javier Rodríguez, Madrid’s regional health minister, initially blamed Ms. Romero for her infection, saying she also may have lied to doctors, remarks that drew angry criticism. He also later seemed to mock the importance of training workers to remove their protective suits.

mock:あざ笑う、ばかにする、阻止する

「ジャビエール・ロドリゲス氏(マドリッド市の保健責任者)はロマノさんの感染について最初の内はロマノさんを非難していただけでなく、ロマノさんが医師に嘘を言ったかもしれないとも述べていた。そういう発言が怒りの批判を招いた。医療従事者が防護服を取り外す訓練をするほどのことはないとその重要性を彼は後であざ笑ったようだ。」

 致死率70%、エボラ患者を看護するのはきちんとやっていても身の危険がある。とくに汚染された防護服を脱ぐときが一番危ない。だから、防護服を脱ぐ訓練を十分にしなければならないのに、市当局の保健責任者がそういう大事な訓練をばかにしている。地位が上でも、自分が作業するわけではないから好い加減で無責任なことをいう者がいるということだ。これはエボラ患者が発生したら日本でも気をつけなければならない。

(18)  “You don’t need a master’s degree to explain to someone how you should put on or take off” a protective suit, he said on a Madrid television program.

「"防護服をどのように着たり脱いだりする説明に修士号は必要ない"とマドリッドのテレビ番組で語った。」

(19)  On Monday, Ms. Romero’s husband, Javier Limón, had a friend read a statement outside Carlos III in which he demanded Mr. Rodríguez’s resignation and defended his wife, saying she had acted precisely as she had been told to. On Tuesday, Mr. Rodríguez apologized.

「月曜日、ロメロの夫であるジャビール・リモン氏がカルロスⅢ世病院の外で友人に声明文を読み上げさせた。その中で彼はロドリゲスの辞任要求をしている。そして妻を擁護した。彼女は言われたようにきちんと行動していた。火曜日になってロドリゲス氏は謝罪した。」

もう省略された主語は補って読めるだろう。該当箇所の動詞を青に変えておくので、試みたらいい。
高校英文法「had+O+過去分詞原型不定詞」型の文がある、学校文法も役に立つものがある。
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コメント欄に次の指摘がありましたので訂正しました。
(スマホからの投稿で、なんどか試みてくれたようです)

ダメかもしれないけれど?

(19)have a friend readは、
have  目的語  原形不定詞です。

持つ、友人を (そいつは)読む……


by 後志のおじさん (2014-10-23 22:09)
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後志のおじさん

ありがとうございます。
「have+O+原型不定詞」
「have+O+PP」」

前者はOがsomeone、後者はOがsomethingでしたね。
訂正しておきます。

どちらも意味は「使役」ですから訳文には影響しません。

Ms. Romero’s husband had a friend 
He(the friend) read a statement.

「ロメロの夫は友を持った」そして「彼(友)が声明を読み上げた」
by ebisu (2014-10-23 23:55) 
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  ついでだから、江川泰一郎『英文法解説』(1978年改訂新版第47版)から用例を引用し、少し遊んでみたい。
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 #209-D. 使役動詞としてのhave 形容詞・副詞を伴う例を中心にあげる。
 We cannot have these machines idle for so long.(遊ばせておけない)
 I cannot have you in just now.(いまははいってもらうわけにはいかない)
  

 Let's have the manager here and talk the matter over.(マネジャーをここへ呼んで、よく話し合おうではないか)
  She had her ears pierced in order to be able to wear ear-rings.(耳輪をつけられるように、耳に穴をあけてもらった) (⇒#180A)
  I wouldn't have you do that.(君にそんなことはさせたくない)
  I won't have you talking indecently before the children.(子どもたちの前で変なことをおっしゃると承知しませんよ)
     ・・・同書P.327

---------------------------
 #180に「have+物+P.P.」、#187-Aに「have+人+原型不定詞」の説明があるので、そちらも参考にされよ。こうして調べてみると江川泰一郎の本のすごさがわかる。こんなに版を重ねた高校英文法参考書はないだろう。この本はその昔東京渋谷のある進学教室で教えていたときに、早稲田大学院英文学研究科のK田さんに「ご推奨の英文法解説書は?」と訊いたら即座に「わたしはこれ一本でやっています」と断言、びっくりして購入したものだ。豪傑だなあと思った、もっと学術的に先端の英文法書を期待していたからだ。「なーんだ高校英文法参考書か・・・」(笑) もちろん、先端の英文法書に眼を通した結果の結論だったのだろう。
 新版が出ているから、そちらを買ったらよい、でも、手持ちの厚い参考書で十分です。

 さて、次のように不定冠詞を付け加えたらどういうことになるでしょう?
  Ms. Romero’s husband⇒a Ms. Romero’s husband
  ロメロには夫が何人かいて、その中の一人が・・・ということになります。不定冠詞があるかないかで意味がまったく違ってしまいます。

 え、なんですか?
  ⇒the Ms. Romero’s husband だったらどうなるかって?
 ロメロの例のあの酒癖の悪い夫とか、腕のよい外科医の夫とか話し手と聞き手の間での了解事項が考えられます。

(20)  In Madrid, unions representing health workers have complained that too little training was provided on how to properly remove the suits, with some people being shown a 20-minute video and others saying they got no instruction.

「防護服の脱ぎ方のトレーニングがほとんどなされていないとマドリッドの医療従事者を代表する組合が不満を述べている。ある者は20分間ビデオを見せられただけであり、他の者たちには説明すらなかった。」


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< 怖い余談 >
 あれれ、とんでもないことに気がついてしまった。国内最大手の臨床検査センターSRLですら、バイオ・セーフティ・レベル3(遺伝子操作が可能)の検査室しかもっていないから、エボラ・ウィルスの臨床検査受託ができない。国立研究機関でもレベル4の検査施設をもっているところがあるのだろうか?自衛隊が細菌兵器の研究あるいは細菌兵器攻撃に対する防御研究でも秘密裡にしていない限り、国内にレベル4の施設はないだろう。国内にエボラウィルスに感染した患者が出ても検査すらできないのが日本の現況のようだ
 バイオセーフティ・レベルは1~4までだから、4が最高水準。


*#2842 エボラ出血熱1-1: 'The worsening ebola crisis' Oct. 18, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-17-1

 #2843 エボラ出血熱1-2 :'The worsening ebola crisis' Oct.19, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-18

 #2844 エボラ出血熱2-1 :'Spain case shows holes in plans to treat Ebola' Oct.19, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-19

 #2846 エボラ出血熱2-2 :'Spain case shows holes in plans to treat Ebola' Oct.19, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-19-2


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コメント 4

Hirosuke

◆日本のBSL-4施設◆
武蔵村山市に存在します。
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20140827/412970/index4.shtml

ただし、稼動しておらず、誰も利用できません。
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20140827/412970/index3.shtml
(理由は不明。)

長崎大学 熱帯医学研究所がBSL-4施設を作ろうとして、住民説明会など動いているそうです。
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20140827/412970/index4.shtml
by Hirosuke (2014-10-23 00:12) 

ebisu

Hirosukeさん

調べてくれたのですね、ありがとうございます。
お示しの記事を読んだら、G-8でBSL-4施設をもっていない国は日本だけ、この分野ではとても先進国とは呼べないようです。

武蔵村山は国立感染症研究所ですね。もう設備が古くて、現在のBSL-4基準には不適合です。その辺りの事情を解説したJT紙の17日付の記事を#2848に貼り付けました。

理研の筑波研究所がBSL-4仕様の実験室を持っていますが、ここも現在の基準では不適合、つまり国内にBSL-4適合施設は現在のところ一つもありません。

ところで、富士写真フィルムの子会社がエビガンという抗ウィルス剤を開発していますが、臨床試験段階にあるようです。
by ebisu (2014-10-23 01:15) 

後志のおじさん

ダメかもしれないけれど?

(19)have a friend readは、
have  目的語  原形不定詞です。

持つ、友人を (そいつは)読む……


by 後志のおじさん (2014-10-23 22:09) 

ebisu

後志のおじさん

ありがとうございます。
「have+O+原型不定詞」
「have+O+PP」」

前者はOがsomeone、後者はOがsomethingでしたね。
訂正しておきます。

どちらも意味は「使役」ですから訳文には影響しません。

Ms. Romero’s husband had a friend
He read a statement.

「ロメロの夫は友を持った」そして「彼が声明を読み上げた」
by ebisu (2014-10-23 23:55) 

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