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#2816 余談『続漫言翁』と無策 根室市の人口減対策 Sep. 24, 2014 [44. 本を読む]

 「オール根室」と騒いで、ほとんどの政治団体と経済団体から推薦を受け、3期目に初めての市長選挙だったが、市民の評価は辛かった。現職の得票数は8456票で有権者の36.3%にすぎぬ。
 元東京目黒区議、根室に縁もゆかりもなく、政策面で大して違いのない対立候補の鴨志田リエ氏が4646票も獲得した。これは2期8年間続いた恣意的市政への批判票である。

 2期8年間人口減について毎年のように対策を繰り返してきたはずだが、なにをやったのかよくわからぬが、効果がまったくなかったことは事実が示している。人口減対策に限っても2期8年間の長谷川市政は無能の一語に尽きる。

 前任者(藤原市長)の時代には年400人弱の減少幅だったが、長谷川市政の8年間は毎年400~500人に加速しており、有効な対策がなかったことがデータでわかる。
 それもそのはず、人口減少の構造的原因は若い人たちが希望をもって働ける職場が少ないからで、高校を卒業して都会へ進学しても就職で戻ってくるものは地元企業の2代目・3代目のみ、専門学校・大学進学者はほとんど戻って来ない。根室の町をよく知っているからだろう。ビザなし交流で根室を通過するロシア人たちですら、根室が発展の止まった町だと感じている。

 根室市がやるべき対策は、地元企業への啓蒙活動である。同族企業が多いことは致し方ないとしても、会社をオープン経営に切り替えることはできるだろう
(市役所がやるべき面白い役回りはあるよ。たとえば、オープン経営の基準を作り、基準と基準適合企業名を市役所のホームページに載せたらいい。)
 決算情報を従業員に公開し、予算を作成して達成したときのボーナス配分の金額を約束して、その通りに実行する。退職金規程や経理規程などを整備して、厳格に運用する。個人と会社の財布を別にすることは当たり前。経営者は社員に夢を語り、夢の実現のために戦略目標を設定し、必要な戦略を語り、夢の実現のために率先して働く。自己改革ができなければ26年後の2040年には地元企業の半数が存在しないだろう。そしてそれは人口減少をさらに加速することになりかねない。

 魅力的な企業が根室に増えれば、優秀な人材がもどってくる。それには市長は地元企業にオープン経営への切り替えという辛口の要求をしなければならない。8年間人口減とは真逆の予算膨張で公共事業と市立根室病院事業赤字を増やし、地元経営者になすべきことを要求しなかったから、根室に魅力的な企業が増えず、根室の高校を卒業して専門学校や大学へ進学してもほとんどの者が根室へ戻って来られない。毎年250名前後が地元の高校を卒業している。
  市役所自身が縁故採用をやめるべきだ。こんな閉鎖的なことを改めないから、「根室の閉鎖性は変りっこない」と向上心の旺盛な若い者たちがあきれてふるさとの町に戻ってこない。数十年して定年退職した親たちの中には子どもの住む都会へ脱出する者たちが増える。一人になったときに子どもが近くにいるのは心強いからだろう。元気なうちに子どものそばに行きたいという気持ちはわかる。子どもが仕事をやめて介護のために根室へ戻ってくることはほとんどない。そんなことをしたら共倒れになる。

 しっかりした経営の会社もあるが、大半は古い体質の閉鎖的な経営である。地元企業の経営姿勢を何とかしないと人口減少はとまらないだろう。人口減少対策に移住者を増やすのは愚かなことで、数人増えたって焼け石に水、来たい人がくればいいくらいで充分だ。しかし、そんなことが人口減少対策にならぬことは中学生でもわかる理屈。

 中小企業家同友会は全国協議会で社員とその家族を大切にする経営に切り換えないと中小企業は人材難で生き残れないと、経営の方針を変えるように会員企業へ呼びかけている。根室の中小企業家同友会は何をしているのか?

 23日の北海道新聞に屁たれな根室市の人口減対策が載っている。
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市、人口減対策に一丸
  
推進本部初会合
    15年度に専門部局

【根室】根室市が庁内に設置した市人口問題・少子化対策推進本部の初会合が22日、市役所内で開かれ、2015年度に人事異動や組織機構の見直しを行い、専門部局を立ち上げる方針を明らかにした。人口減少、少子化対策について、庁内一丸となって取り組んでいく方針だ。

 初会合には、長谷川俊輔市長をはじめ、特別職、部長級以上の職員ら13人が出席。長谷川市長は、2015年度から10年間のまちづくり指針となる第9期根室市総合計画で人口問題、少子化対策が重点課題になると強調し「新たな視点や発想、想起の実施が何よりも必要。国、道と連携し取り組んでほしい」と述べた。
 市の13年12月末人口は2万8289人。1966年に4万9896人をピークに一貫して減少を続け、国立社会保障・人口問題研究所の推計では何も対策を講じなかった場合、市の人口は2040年に1万7892人にまで減るという。・・・
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 根室市はいままでも何度も何度も総合計画を策定し、人口減対策を重点課題としてきたのではないか。今回は9回目、効果のある対策を考え出したことが一度でもあるのか?
 根室市役所が縁故採用が多い言う噂があり、根室高校の進路データをつき合わせると、一般事務職と消防職は根室高校の独占状態に見える。コネ採用無しにはこのようなことは考えられない。それに関わっているのは市の幹部職員、はっきり言うと部長職だろう。数人そういうことに関与したことのある人がいるのではないのか?権限の大きな者でないとそんなことはできない。そういう人たち含む13人が集まっていったいどんな仕事ができるのか?例年の総合計画の改訂どおりに無為無策となるのではないか?

 問題点は議論の余地がないほどにはっきりしている。若い優秀な大卒の地元出身者達が戻ってきて働きたくなるような企業をつくればいい。そうしたら人口減少は止まる
 そのためには地元企業経営者たちの意識改革、経営改革が必須だ。そこに手をつけずに毎年まちづくり総合計画を改訂しても一つも効果がない。
 好い加減に目覚めよ。自分の損得は脇において、住んでいる町のことを最優先に考え行動するのが当たり前ではないのか?

 「~市民委員会」と称して市の利害関係人が委員長となって異例の早さで審議を終えて結論を出してしまった明治公園の再開発はただちに計画をとりやめたらいい。
 どうしてもやりたいなら、住民投票にかけて見たらいかが?市長の支持率は有権者の36%にすぎぬ。明治公園再開発にはおそらく住民の過半数が反対だ。

 市総合文化会館を使って月に2度、自由参加で市政の重点課題の討議をすべきだ。市長は市長を支持しなかった63.7%の市民の意見を聞け

 変らないだろうな、そんなものかもしれない。わずか1割の利権集団である「オール根室」が好き勝手をして根室を破綻に導くのだろう。

 あきれてしまった市民は今回の市長選挙で投票所に行かなかった人が多い(217あった白票も異例の多さだった。選択肢がないという意思表明だろう)。根室の町の未来に希望をもっていないのだ。こどもが進学して戻ってこないのも当たり前のことだと思っている市民が多い。

 自分達が働いている会社は社員とその家族を大切にする会社だから、子どもたちも同じ会社で働いてくれたらうれしいと心の底から思える人が増えれば人口減少は止まる。何も難しい理屈ではなく、至極当然のことだろう。しかし、過去8回のまちづくり総合計画はその至極当然のことがすっぽりと抜け落ちている

<余談:『続 漫言翁 福澤諭吉』>
 Eさんから新著が届いた、前作の続編である。この数年、堰を切ったかのように明治時代の人物に関する著書を出している。平成のいまと明治を行ったり来たりしているEさんの著作を読んでいると、こういうタイムトラベルがあるのだなとふと思う。執筆中のあいつはタイムマシンから下りて明治の空気を吸っている。
 本の副題は「時事新報コラムに見る明治 政治外交編」となっている。新聞紙上での毒舌、福沢だから可能だったのだろう。120年が過ぎ毒のない大新聞ばかりが並ぶ、明治は遠くなりにけり。

 前著に続いて日本帝国憲法の発布された明治22年の翌年(1890年)正月の「漫言213」から書き始めている。庶民の正月の挨拶回りの様子を茶化しながら、米国の自販機へと話しが及ぶ、自販機は名刺をだしてお金を払えば小窓からお酒が出てくるという仕掛けである。

「この法にしたがへば、客が名刺を投ずると同時に攻揚げ(せりあげ)の趣向にて、内より自然に酒肴の発言するあり、立ちながら飲食終わりて、あるいはお替りと思へば、今一枚名刺を投ずべきのみ。無言の際にタラフクやらかして、ひとり満足すれば、主人もまた酔客のたわ言を聴聞するの苦痛なし。主客双方の便利、この上もあるべからず。我が日本国も追々人事繁多の文明世界に改進したる今日、かかる妙器の要用あるべしと思ひ、いささか読者の参考に供するのみ。」

 ちょっとした町の名士になると正月の挨拶回りの人々を多数もてなさねばならぬ。千客万来、てんてこ舞いの正月三が日に嫌気が差して温泉に逗留という人もいるやに聞く。江戸時代から続く正月の挨拶回りの習慣に閉口している人々の気持ちに沿って書きながら、話は米国の自販機に飛ぶ、ときに明治22年。型破りの福沢の真骨頂が正月のコラムにもしっかり顔を出しているところが面白い。当たり前の正月風景の一端を開いて見せながら、ついでに何か言わずにはいられぬ福沢の心のありようが楽しい。
 ことのついでに書いておくと、「名刺」とは「食券」のことだろう。形状が名刺の形をしているのでそのように訳したのか。明治22年の正月に自販機の話題とは福沢らしいジャンプだ。この時代の情報から考えると、正月のコラムに自販機の話題はジャンプというよりこれはもうクォンタムリープだろう。何の話だと当時の読者が面食った顔が見えるようだ。福沢は変った切り口で人を喜ばすのが好きだ。
 Eさんは団塊世代が少年だった1960年頃の六本木・三田界隈で初めて見た自販機を思い出して書いている。それがコカコーラの自販機だったのかタバコの自販機だったのか記憶にないという。根室では1961年にコカコーラが初お目見えした、なんと薬臭い味だと感じたが、それが癖になった。明治となつかしい1960年代が一瞬きらめいてつながった。
 ついで漫言218では政務調査費をとりあげて茶化している。マスコミを賑わせた兵庫県議会の政務調査費の詐欺事件がある、明治もいまも日本人は変らない、福沢が明治23年に何を書いたのか想像してもらいたい。もったいないから別途紹介するので福沢がどのような毒舌を吐いたのかしばらく想像して楽しんでもらいたい。我慢のできぬ人は本屋で注文されよ。まあ、少しまってくれたら転載します。

 Eさんは昨年、前著『漫言翁福澤諭吉』が縁で福澤諭吉協会に招かれて講演をしている。歴史のあるそうそうたるメンバーの協会のようだ。「漫言翁」というタイトルで福澤諭吉を語るのは、「慶応義塾村」の住民には恐れ多くてやりにくいこと、部外者のEさんだからこその切り口、おまけに若い頃は哲学を専攻していた。物事を見る視点、切り口が彼独特のもの。話(文章)のリズムもいい、喋っている姿が目に見えるようだ。
 市長選に立候補してくれた元目黒区議の鴨志田リエさんは慶応大学文学部仏文科卒、意外に気さくで浜のおっかさんたちに人気があったようだ。経歴だけではわからないものだ。T市議の誘いがあったとはいえ、縁もゆかりもない根室に来て1週間の選挙戦を果敢に戦い抜いた。彼女もまた福沢の型破りな精神をどこかで受け継いでいるのかも知れぬ。

*#2809 市長選挙が終わり弔鐘が鳴る Sep. 15, 201
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-09-15




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コメント 5

もやしさんま

愚策というよりは無策ですね。「一丸となって取り組んでくれ」では指示される方も困りますよ。

by もやしさんま (2014-09-25 23:43) 

ebisu

もやしさんまさん、おはようございます。

>愚策というよりは無策ですね

ははは、その通りですね、愚策よりは無策の方がより適確に状況を表しています。

無能な経営者の指示に共通するものは、具体的でないことです。赤字(人口減)が続いている会社の社長が、部長職を集めて、「利益を上げろ」と指示したようなもの。戦略目標(たとえば、3年間で人口減を年350人に落とせ)すら指示していません。
これでは裸の王様の極東版。
臣下(参事職と部長職)たちの誰一人として、「王様は裸だ!(無策だ!)」と言う者がいません。

こういう指示を出して疑問に思わぬ王様(市長ご本人)と、指示を受ける側の部長職や参事職(臣下)の面々、これでは救いようがありません。
安っぽい劇を見せられている気分になります。

このようなテイタラクでは幹部職の面々は王様同様、部下に具体的な業務指示が出せないでしょう。したがって、山積みになっている仕事は、有効な策を考え出せず、問題の先延ばしばかりということになります。同じ課題を毎年掲げ、一向に解決できない。人口問題は過去8回の総合計画でも掲げられていたのでしょう。それが9回になろうと100回になろうと、課題が達成される現実的可能性はゼロ。いっそのこと、幹部職を外して課長5人と平職員10名でプロジェクト方式でおやりになったらいかが?

病院建設の業者を決めるときに落としたい業者が2番札だったために、「幹部会」を開き、2番札の業者が市へ除雪で協力しているという屁理屈を持ち出し、一番札を入れた業者を外しました。全国の市でこのような暴挙をしたところを知りません。その後、市は建設予算の追加数億円をしました。仕事の詰めが甘かったからでしょう、やりたい放題です。

「幹部職」もまた根室市の諸悪の根源の片棒を担いでいるのでしょう。自分の子ども達に恥ずかしくないのでしょうかね。

悔い改めて、仕事は正直に誠実に渾身の力でやるべし。
古里の町の未来だけをを考えて仕事をしてもらいたい、部長職の方々、無理ですか?
13人の内、3人ぐらいは気骨のある方がいてもらいたい。

いないなら、さっさと若い人たちを選んで、プロジェクト立ち上げたらいい。

by ebisu (2014-09-26 08:39) 

ebisu

もやしさんまさんへ

>愚策というよりは無策ですね

愚策よりも無策の方が実態を表していますね、タイトルを「無策:根室市の人口減対策」に変更しました。
ありがとう。
by ebisu (2014-09-26 12:37) 

もやしさんま

事前にコソコソ結果を調整すれば「談合」と言って犯罪になるのに、事後に堂々と結果をひっくり返すのは「総合評価」といってまかり通る。入札の意味ないですね。
1番札が訴えなかったことからしてある意味儀式の途中で起こったハプニングだったのかもしれませんね。本当のことは当事者にしかわからないですけれど。




by もやしさんま (2014-09-26 20:26) 

ebisu

もやしさんまさん

>1番札が訴えなかったことからしてある意味儀式の途中で起こったハプニングだったのかもしれませんね。

なるほどそういう可能性がありますか。
談合の不手際に慌てて、事後に幹部会でひっくり返した。
それでは幹部会(部長職)のメンバーは皆さん事情を承知してやっていたということになりますね。
これが真実なら根室市役所の幹部職は腐っているということ。
そうでないことを祈りたい。

仕事は正直に誠実にやるべし。
公僕という言葉の意味をいま一度考えてもらいたい。
by ebisu (2014-09-26 22:34) 

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