SSブログ

#2776 経済記事の解説:#2774 (6)の文への質問アリ Aug. 15, 2014 [75.時事英語公開講座]


  「#2774 'Bad inflation' shadows Japan (悪性インフレの陰りあり)」の6段落目の文で生徒から質問があったので経済用語の解説をしておく。 

(6) In the meantime, the diffusion index of coincident economic indicators — a key gauge of current economic activity — said the economy is sliding at its quickest pace since March 2011, when the natural and nuclear disasters ravaged Tohoku, the Cabinet Office said Friday.

diffusion index: 景気動向指数

 'diffusion index'は『ジーニアス』には載っていたが、『E-Gate』)には載っていなかった。専門用語で持っている辞書に出ていなければネットで金融辞典やビジネス辞典を引けばいい。語彙数の多いネット辞書『英字郎』にはたいがい載っている。
 'diffusion'は物理学の専門用語で、'放射'や'拡散'と訳されている。原材料&設備⇒生産⇒在庫⇒流通⇒在庫⇒消費と物が生産されると一連の拡散の流れが生ずる。これらの一連の流れを代表するインデックスが'diffusion index'なのだろう。GDP、や在庫、有効求人倍率、失業率、サラリーマンの所得、消費、物価等々。
-----------------------------------------------
 diffuse:1. to spread in many directions
    Television is a powerful means of diffusing knowledge.
-----------------------------------------------

 'conincident economic indicator'は「一致経済指標」と訳してみてもなんのことかさっぱりイメージがわかないのではないだろうか。そう考えたからこそこの記事の筆者は-xxx-をつけて「経済活動の現況をあらわす主要指標」と補足説明をしている。
----------------------------------------------
coincident indicator: business dictionaryより引用
http://www.businessdictionary.com/definition/coincident-indicators.html

Economic and financial market indicators which tend to move in step with
(1) general economic trends such as gross domestic product (GDP), employment levels, retail sales, and/or
(2) financial market trends such as interest rates and stockmarket prices.
Also called concurrent indicators. See also lagging indicators and leading indicators.

----------------------------------------------

 'coincident economic indicator'とはGDPや有効求人倍率、小売など連動して動く一群の経済指標のことである。それらをまとめて「景気動向指数」という。
 金融市場動向を現す連動指標として利率や株価が挙げられている。

「内閣府は金曜日に次のようにコメントしている。この数ヶ月間に、景気動向指数-現在の経済活動を測る主要尺度(指標)-によれば、2011年に東北大震災と原発事故災害が起きてから経済は最速のペースで下落しつつある。」


<余談>
 ebisuの研究テーマは、学としての経済学体系がいかなるものであるかを明らかにすることだった。もうすこし敷衍すると、経済学の諸概念の相互の関係と体系構成に関する研究で、古典派経済学(スミスとリカード)とマルクス経済学が対象だった。
 そういうバックグラウンドだから近代経済学の用語には不案内なところがあり、前後を読んでも具体的なイメージがわかない場合には、その都度経済学辞典やビジネス辞典を引いて確認する。
 近代経済学の専門書をはじめて読んだのは高校2年生の夏頃のことで、中央経済社から出た『公認会計士二次試験講座』の『経済学』の巻だった。読んだのも家業のビリヤード店を毎日手伝っていたからお小遣いに不自由がなく好きな本を買えた、ありがたいことだった。根室高校の図書室にあった『資本論』も読んでみた。森に迷い込んだみたいな感覚があり、何がどうなっているのかさっぱりわからなかった。100ページほど読んでやめてしまった。近代経済学の方がよほどわかりやすかったのである。ひまつぶしに岩波新書で『ケインズ』も読んだような気がするが予備校時代だろう。岩波書店の『哲学講座』もその当時購入した。ケインズの『雇用・利子および・・・』は大学1年次だった。サムエルソンの『経済学』上下巻はぱらぱらとめくっただけ、そのころ(大学2年次)は会計学科にいながらマルクス『資本論』に2度目のトライをしていた。あとは哲学者の市倉宏祐先生の「一般教養ゼミ」で『資本論』と出版されたばかりの『経済学批判要綱』を体系構成の方法に焦点をあてながら読んだ。
 大学院時代に『資本論』とユークリッド『原論』に同型性を見出して、同じ方法で体系構成(演繹的体系)がなされていることを知ってからは、マルクス『資本論』を超えることに興味が移ってしまった。院政時代はマルクスを超える端緒すら見えなかった。だから、業種を変えて転職して日本的な労働とはなんなのか、違和感の正体がなんなのかを考え続けた。
 ようやく「職人仕事」をキー概念に職人主義経済学にようやくたどり着き、古典派経済学の根本概念である労働価値説の否定に至り、新しい経済学が見えてきた。職人仕事経済学は21世紀の世界を救う経済学である。カテゴリー『経済学ノート』に書き溜めている。
 マルクス『資本論』とユークリッド『原論』の体系的同型性に言及したマルクス経済学者はいまだ一人もいない。なぜこんな簡単なことにいまだに誰も気がつかないのか不思議である。マルクス経済学の端緒であり根本概念である抽象的人間労働が崩れたら、マルクス経済学は根っこから倒れてしまう。現実の労働では労働の質が同じなんてことは絶対にありえない。半人前の職人の仕事と名人の仕事は同じ一時間なら等価だなんてバカげた話しを根幹に置いてしまったのがマルクスの『資本論』である。

 経済学といってもそのテリトリーは広い。あやふやな用語、わからない語彙が出てきたら、素直に金融辞典や経済学辞典を引くべきだ。丁寧に語彙の意味を検討するのは学問の第一歩である。


-----------------------------------------
 ロシア語同時通訳者の米原万里が痛快な読書論と通訳論を披露してくれている。英語が好きな高校生や大学生が読む価値はある。
*#2067 同時通訳 『米原万里の愛の法則』を読む Aug. 26, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-27


*#2774 'Bad inflation' shadows Japan (悪性インフレの陰りあり) Aug. 13, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-12

*#2770 「経済成長の天井」:日本総研山田久調査部長の論  Aug. 11, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-11

 #2766 疑問符がついた景気回復の先行き Aug. 9, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-09

 #2759 有効求人倍率1.1倍、19ヶ月連続上昇 Aug. 5, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-05

 #2753 上海福喜食品対米国産牛肉:どっちもどっち? july 30, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-30

 #2742 藤原直哉(前編):物価と景気動向⇒二番底が来る July 21, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-20-1

 #2731 10年間で33%農業人口が減少している日本の農業 July 11, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-11

 #2729 年金基金の運用資産が130兆円から210兆円に増える:危うい株式投資 July 9, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08

 #2715 GPIFの株購入と銀行保有リスク資産に関わるBIS規制変更 June 25, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25

 #2702 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"③:公務員は別扱い June 10, 2014   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-10

 #2701 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"② June 9, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-08

 #2699 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"① June 6, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06

*#2693 鎖国をして国内雇用を確保しよう May 31, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-31

 #2669  成長戦略:規制緩和を考える May 7, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05

 #2660 庶民の物価感覚 : 消費は落ち込む Apr. 27, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27

  #2643 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(3) Apr. 13, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

 
#2634 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(2) Apr.7, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-06

 #2631 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(1) Mar. 31, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-30-1

 #2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-10

 #2245  円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-17

 #2627 消費税引き上げ+物価上昇>所得増加:三番目の矢はない  Mar. 22, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-21-2



にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 根室情報へ
にほんブログ村 



ケインズ―“新しい経済学”の誕生 (岩波新書)

ケインズ―“新しい経済学”の誕生 (岩波新書)

  • 作者: 伊東 光晴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1962/04/20
  • メディア: 新書


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0