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#2683 南極大陸周辺の謎(2):海面上昇値を計算してみる May 23, 2014 [75.時事英語公開講座]

  今夜の気温は2度、五月も下旬だというのにとっても寒い。

  今回のテーマは海面が3~4m上昇するという、その計算をやってみることだ。「#2681 南極大陸周辺の謎(1)問題提起:思考トレーニング 」では次のような条件を提示しておいた。
*http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-21

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 #2675から必要な情報を取り出して並べてみよう。
①ウィルクス海盆は南極大陸から1000km広がっている。
②南極の氷の厚さの平均値は2450m、最も厚い部分は4776m。
③氷の面積は1204万km^2、体積は陸上部分で2938万km^3.
④地球の半径 6371km
⑤地球の表面積=4πr≒5億1006万km^2
⑥海洋面積:3億6106万km^2(70.8%)
⑦海水総量:13億4993万km^3

 以上のデータから、ウィルクス海盆の氷が融けると、海水面が3~4m上昇するという結論を導き出してもらいたい。

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 全体の構造的な特性を傾斜という点から説明しておく。
 内陸は傾斜が急で大陸棚(水深700m~900m)でほぼ平行になっており、ウィルクス海盆で急激に3000~4000mの海底へ落ち込んでいる。
 そうした傾斜面を高さ2400mの氷河が流れている。

 最初は大雑把な計算をしてみる。
 (1) 辺縁部を北緯60度と假定すると、北緯60度が描く円周の半径は地球の半径の半分であることは60度の直角三角形の斜辺と底辺の関係から明らか。東側は1/4だから、その半分が海側へずり落ちる辺縁部とする。数字は丸めて計算する。
  6400km/2*2*π/4/2≒2500・・・① 
     
 (2) 東・南極辺縁部の海へ張り出した氷河の長さを300kmとする

 (3) 落ち込む氷の厚さの平均値を1500mとする

 これらの前提で海水面の上昇を次の式で計算する。

 2500km*300km*1.5km/360,000,000km*1000=3.1m

 増える海水の体積を海洋面積で割って、kmをmに換算した式である。これくらいの計算は平均的な数学能力の中学生なら簡単にできる。


<精度をもっと上げることはできる?>
 ははは、大雑把過ぎたかな?でも、こんなもので十分なのだ。
 納得できないだろうから、もう少し精密にやってみよう・・・ここからはebisuはHP35s Scientific Calculatorを使って計算しているが、普通の関数電卓で充分だ。でも、1万円程度でネットで買える、一つぐらいもっていた方がいい。プログラム機能が便利だ。米国ではこの手のキャリュキュレータは大学入試試験に持ち込みOKだ、使いこなせないともちろん合格できない。
 書くのが面倒なところは細かい計算式は省略するつもりだが、三角比を終わっている高校2年生なら平均的な学力で充分計算できる。

 (4) 大陸棚の長さを25kmとして200m下がるという前提で計算すると、傾斜角は0.458度
 (5) 海盆の縁の部分が100kmで3100m下がっていると假定すると、傾斜角は1.776度で、大陸棚の約4倍の傾斜面となる。
 (6) 海盆が1300m下がる地点で氷河の頂上部200mが海面上に出ている地点(p)で、そこから先が海面上に浮いている計算となる。
 p=41.9km・・・②

 大陸棚の始点をa終点をbとするとp-aは
  p-a=25+42=67km・・・③
 浮氷となっている部分は
 300km-67km=233km・・・④ 氷の厚さのおおよそ百倍

 (7) 南極圏は66°30’だから辺縁部の1/8は
  cos66.5*6371km*2*pi/8=1995.2km・・・⑤

 これらの数値を使って計算しなおすと、
 
  1995km*300km*1.5km/361,060,000*1000=2.49m

  細かく計算するとこれくらいぶれるということだろうが、氷の厚さや海面上に持ち上がっている部分を233kmと仮定しているところなど、いい加減と言えば好い加減だから、精密に計算しているようでも、基の計算値の方が真実に近いということはありうる。これ以上、氷河学の専門家ではないebisuは精度の高めようがないということ。
 氷河学の専門家は張り出している氷の面積をもう少し多めに見積もり、海水面上の出ている氷河の厚みも1500mよりももっと大きく1800mくらいに見積もっているのではないだろうか?

 まとめを書いておきたい。陸地部分は傾斜が急だから氷河の流れは速い、それがほとんどフラットな面である大陸棚で25kmほど氷床が岩盤に強固に接着している。ウィルクス海盆の急坂を下る氷河はフラットな大陸棚の接着部分につなぎとめられている。ここが氷河の流れのブレーキになっている。そこから厚さの100倍の233kmほど海面上に1000~1500m出て海へ広がっているのだが、これも質量が大きいので氷河の流れ全体に対してはブレーキの役割をいまは果たしている。300kmから先は水面に浮いており、200mくらい頭を出して浮いているのだろうと想像した。
 フラットな大陸棚の接着面に海水が入ると、67km先のp点までの氷河はブレーキを失い重力でずり落ちるから、氷河の流速が10倍から100倍にもなる懸念ありということ。大陸棚は氷河の流れを遅くする「栓」のような役割を果たしており、その下に海水が入り込むと栓が抜けたボトルの水のように、氷河が急速に南極海へと流れ出してしまう。その間の事情をジャパンタイムズは次のように解説していた。

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 「#2675 East Antarctica at risk of thaw : 東・南極辺縁部の巨大氷河が南極海へ落ちる? May 13, 2014 」に次の文が載っている。
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-11-1

(2)  The Wilkes Basin in East Antarctica, stretching more than 1,000 km (600 miles) inland, has enough ice to raise sea levels by 3 to 4 meters (10-13 feet) if it were to melt as an effect of global warming, the report said.

 (東・南極にあるウィルクス海盆は内陸から1000km沖合いまで広がっており、そこには地球温暖化の影響で融けると海水面が3~4m上昇するだけの量の氷がある。)

(4)  “East Antarctica’s Wilkes Basin is like a bottle on a slant. Once uncorked, it empties out,” Matthias Mengel of the Potsdam Institute for Climate Impact Research, lead author of the study in the journal Nature Climate Change, said in a statement.

 「東・南極にあるウィルクス海盆は斜面に置かれた瓶のようなものだ。一度でも栓が抜けたらナカミが流出して空っぽになる。この研究の筆頭著者である気候変動に関するポツダム研究所のマシアス・メンゲルがステートメントの中でそのように言明している。」
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 北極圏のグリーンランドも似たような状況にある。ここにある氷が全部融けると海水面は8m上昇するという。そして南極大陸の西岸は氷床の下側が海水で融け始めており、氷河が侵食されている。
 山の上にある氷河はどうか?世界の屋根といわれるヒマラヤでも、アルプスでもアンデスでも氷河は急速にその数を減らし消滅しつつある。これらは全部足し算しなければならないから、100年後に海面上昇が10mということもありえない話ではない。北方領土は国後島と択捉島だけが海の上に顔を出している。歯舞諸島は水没、色丹島が三つほどにわかれて海の上に顔をちょこんと出している百年後を想像してみよう。北方領土問題も考え直さなくてはならない。四島返還というまっとうな主張を崩すとどういうことになるのか今一度考え直すべきだ。北方領土返還運動諸団体が考えもしない百年後が待ち受けている。

 百年後に日本は3000万人程度の人口になっていたら、食糧は充分すぎるほど自給自足可能だ。エネルギーもその頃にはクリーン・エネルギーの日本近海に眠るメタンハイドレートが利用可能になっているだろう。エネルギーも自給可能となる。
 国土面積が縮小するからそれを予感してか、日本列島では百年前から人口減、低成長時代を迎えていると考えたら、万々歳なのである。なにか大きな叡智を感じる、神の国日本。
 アベノミクスはそういう時代の転換点を理解できないアホノミクス、視点を変えると世の中の景色はまったく違って見える。

 英文を読むときに数字が出てきたら、大雑把でいいから、自分で計算して確かめる習慣をつけてもらいたいというのが言いたいことだった、そうすれば理解は確実に深まるだろう(センター試験でも数値やグラフを読む問題が出題されている)。楽しんでもらえただろうか?

 もとの英文記事のURLを記しておく。
*#2675 East Antarctica at risk of thaw : 東・南極辺縁部の巨大氷河が南極海へ落ちる? May 13, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-11-1

 #2681 南極大陸周辺の謎(1)問題提起:思考トレーニング May 21, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-21

*#2683 南極大陸周辺の謎(2):海面上昇値を計算してみる May 23, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23-1

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http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-17-1

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http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-18




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