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#2660 庶民の物価感覚 : 消費は落ち込む Apr. 27, 2014 [A3. 職人仕事観に基く経済学の展望]

 二つに分割されたゴールデンウィーク前半四連休の二日目である、季節はずれに暑い。クリスマスのころつくった80kgほどの氷のオブジェがこの数日の高温で完全に消えた。一昨日は最高気温が23度だった、今日は21度の予報。夜には一桁に下がる。昨日は半袖の生徒が二人いた、なにやら真夏の装いの根室だ。

<批判精神を育み鍛えよう>
 未来を担う中高生や大学生に、物価をきっかけに国の財政や貿易赤字や消費税について、自分の頭で考え、批判的思考を育んでもらいたい。日本は批判的思考と批判的発言が弱くなると国としての危機が訪れるようにみえる。危機感をもって批判精神を鍛えよう。
 中高生諸君、若いうちにたくさん本を読んでいろいろな考え方のあることを学べ。そしてふるさとを愛すパトリオット*となれ。
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*パトリオットとパトリオティズムについて
 #1030 nationalism とpatriotism :遠藤利國訳・幸徳秋水『帝国主義』May 17, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-17

 #1029 『現代語訳 帝国主義』幸徳秋水著・遠藤利國訳 May 16, 2010
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-16
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<消費税引き上げのさまざまな理由>
 5%だった消費税が4月から8%に引き上げられた。民主党が決め自公が実施という珍しく意見が一致した財政政策だった。
 TTPで輸入関税が引き下げられ減収になるので、それを補うという意味もあったのだろうが、マスコミはとりあげない。体制批判の論調が少なくなり、異論を唱えるものがいなくなればそれは「戦前」である。特定秘密保護法案は治安維持法が姿を変えて現れたようなものだ。マスコミがだんだんと体制翼賛的に変わりつつあると感じている。これも君たちの時代に大きな問題(=足枷)となるから、申し訳なく思う。
 消費税は増大する医療や福祉関連に限定して使われるはずだった。そうなれば新規国債発行も減らせるのだが、新規国債発行額はなぜか増える一方である。40~50兆円前後の新規国債発行が続き、日銀がすでに250兆円(GDP比50%)ほども国債の買いだめをしており、4月には市場で10年物国債の買い手がつかないという「異常事態」まで起きている。貿易収支は13兆円に赤字が拡大した。日本は構造的に双子の赤字(=貿易赤字と財政赤字)の国に変わってしまった。これからは蓄積した資金が流出する一方である。人口減少時代にはいって聖戦年齢人口が急激に縮小しているのに政府は在りもしない経済成長路線を声高に叫び、お金をジャブジャブばら撒いている。まるでキチガイ沙汰。年収400万円しかないのに毎年1000万円も使う家計にたとえてみたら誰にもわかる理屈だ。日銀が国債を買い続けてお金を融通しているだけで、早晩財政破綻するに決まっている。中学生にだったわかる理屈だろう。

*#2657 十年物国債買い手つかず(2):幸田真音さんの論  Apr. 24, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-24

 さて、物価は消費税値上げ分の3%だけ上がったのか?
 女房が一月ほど東京へ行っている間に何度か食料品を買いに行ってみて驚いた。値段が高くなっている。
 以前は内税だったのでお店の値段を簡単に比べることができたのだが、現在は内税・外税のどちらでもいいから、比較がしづらくなった。店によって表示方式が異なる。

<物価上昇:値上げの具体例>
 国産小麦粉を使っていた地元のパン屋さんは小麦粉が値上がりしたので、輸入小麦を使い始めた。3月にパンを買ったついでに話しをしてみた。
「消費税が3%値上げだと計算が面倒ですね」
「原材料が上がっているので、3%ではなく切りのよい値上げを予定しています」
 干しぶどうとクルミ入りのパンは300円から330円に値上げされた。

 昨年4月26日の為替相場は81.63/$に対して今年4月25日は102.19/$で25.2%も円安になっている。小麦粉のドル相場が同じだとすると輸入小麦粉は25%も値上がりしていることになる。とうぜん国産小麦粉も釣られて値上がりすることになる。だからパン屋さんが原材料のコスト・アップに悲鳴を上げて4月から実施した値上げは正当な理由があるので「便乗値上げ」とは言い難い。

 女房殿に訊いて見たら、味噌とヨーグルトを具体例挙げて説明してくれた。味噌の原材料は大豆である。ほとんどが輸入だから円安により原材料のコストアップが25%くらいあることになるのだろう。
  420円⇒以前の内税の値段
  462円⇒現在の内税の値段
  462/420=1.156 ⇒10%の値上げ
 表示価格は428円(外税)になっているので、8円の値上げかとカン違いしそうだ。同じ内税で比べると42円値上がりしている。

 ビヒダスヨーグルトは、
  168円⇒以前の内税の値段
  170円⇒現在の外税の値段(内税で計算すると183円)
  183/168=1.089 ⇒8.9%の値上げ
 これも飼料原料の値上がりを反映しているのだろう。

 円安はガソリン(レギュラーガソリン167円/㍑)にも、食料品にも広く影響してコストアップ要因になっている。申告書を作成するために集計した昨年のデータをみたら、5月4日に入れたハイオク・ガソリンは159円/㍑だったからレギュラー・ガソリンは149円ぐらいだったろう。昨年4月と6月のハイオク・ガソリンは169円/㍑になっているから、それをベースにすると10円(5%)上がったのだろう。

<インフレになれば景気はよくなるという嘘>
 前にも書いたように円安は庶民にとってはちっともいいことではないのである。円が高くて輸入物資が安く入ってきた方が庶民の生活にはいいのだが、政府の宣伝文句「インフレになれば景気がよくなる」なんて嘘に簡単にだまされる。ほとんどの人の所得が上がらぬままインフレとなり、消費が減退してこれから景気が悪くなる。
 景気がいいのは一部の輸出産業の親会社のみ、業界全体の傾向でもなければ日本経済全体の話でもない。製造業に比率はとっくに第三次産業よりも低くなってしまっている。海外へ生産拠点を移したからだ。
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<参考値>
 2009年産業分野別GDP内訳
  第一次産業   6.7兆円(1.6%)   315万人(  5.4%)
  第二次産業 114.3兆円(27.0%)  1547万人(26.3%)
  第三次産業 302.2兆円(71.4%)  4015万人(68.3%)
   *内閣府の「国民経済計算」ファイルが開けないので2012年度のデータを引用できない。内閣府はホームページの管理ぐらいしっかりやってもらいたい。仕方がないので別のサイトから古いデータを引っ張った。第二次産業は20年間で47.6兆円減少し、第三次産業は48.7兆円増えた。生産拠点の海外移転は日本の産業構造に大きな変化を起こしたことがわかる。
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shinsangyou/001_04_00.pdf

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<中小企業は「コストアップ+売上減少」のダブルパンチ>
 4月から消費税が3%値上げされたが、それを契機に円安によるコストアップ分を上乗せしていろんな物が10%以上値上げされていく。
 高齢者が増えているが、今年は年金が減額だから、高齢者の消費は物価値上がり分だけ減るのだろう。給料がアップしているのは一部の輸出産業の正社員だが、下請けからの仕入価格を上げてくれるわけではないから、下請け企業の利益は増えず給料を上げるどころではない。下請けも原材料価格がアップして利益が減少している。中小企業はどこも原材料のコストアップにあえいでいる。働く者の40%を占めている非正規雇用の給与の改善の兆しはまったく見えない。
 これらのことから、物価が上がった分だけ消費が落ち込むことは当たり前だ。消費が落ち込めば景気は悪くなる。企業収益の悪化が9月を過ぎたころから誰の目にも明らかになるだろう。企業経営者は売上が落ち込むから、気を引き締めて経営に当たり、会社を潰さないように努力してもらいたい。

<国内に雇用を確保することはできる>
 国内に雇用を確保するためには製造業を重視すべきだ。国内で生産可能なものは国内で生産して、値段が高くても国産品を優先して消費する。たとえば、ユニクロのような海外生産⇒輸入で低価格を実現している製品には輸入価格の2倍の関税をかけたらいい。そうすれば内需対象に衣料関連産業を育成し雇用を確保できる。いい品物を大事に長く使う習慣を培えばいい。
 製造業が国の礎だ。製造業があればさまざまな職種の職人が育ち、いい品物を大事に使う文化を取り戻すことができる。仕事の腕を磨き、ひたすらいい物をつくりそれを消費する品のよい文化を育てよう。物の良し悪しを見分ける消費者の目も大事だ。
 こうしてみるとTPPによる関税撤廃なんて亡国の所業である。日本の物づくり文化を壊すだけでなく、輸出によって他国の製造業の芽も摘んでしまう。

<強い管理貿易こそがいま採るべき新しい道>
 世界中の国々は、自国でつくりうるものはコストが多少高くても自国でつくり、自国でつくりえないものや法外に高コストとなる物だけを輸入する。そうすれば世界中の国々が国内に安定した雇用を創出可能になり、したがって経済が安定する。
 職人文化を大切にした安定した小欲知足の経済を世界中の国々が営める。

*#2631 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(1) Mar. 31, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-30-1

 #2634 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(2) Apr.7, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-06

 #2643 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(3) Apr. 13, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13

 #2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-10

 #2245  円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-17



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