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#2635 蟹江敬三さん胃癌で死去:ステージ3、病診連携が奇跡を起こすこともある  Apr. 7, 2014 [38. cancer]

 昨夜、お世話になっている理髪店のお父さんのお通夜にお参りしてきたことは前回ブログの「余談」に書いた。2年ほど前に癌の手術を受けたことは知っていたが、その後肝臓への転移があったことは知らなかった、元気そうに見えた。

 個性派の名優、蟹江敬三さんが3月30日に亡くなった。一人また一人と個性的な俳優も消えていく。都立新宿高校(現在は偏差値69の都内屈指の進学校)を卒業して俳優になったと記事にある。
*http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20140405/enn1404051458004-n1.htm

 極悪役から名刑事役、悪いおじさんからNHK連続ドラマ「あまちゃん」のお爺さん役と幅の広い人だった。
 胃癌で亡くなったとある。昨年胃癌とわかったときにはステージ3。リンパ節への転移が確認されていた。ベテランの外科医だと手術してもすでにリンパ節へ転移しているのだから、他の臓器へも転移していると考えて当たり前、開いて転移を確認したら手術はムダと判断して手術を中止し閉じてしまう場合もある。大腸癌だったオヤジの2度目の手術がそうだった。
 蟹江さんは抗癌剤の治療になったようだが、なぜ手術をしてから抗癌剤治療をしなかったのだろう?五月に手術をすると決めていたとあった。抗癌剤治療を先にして、手術を後にしたことがまずかったのではないか?仕事のスケージュールでそうせざるをえなかったのだろうか。
 手術をしなければものは食べられなくなり、身体は衰弱していくが、絶食による餓死のようなものだから死はすこしも怖くない。
 絶食による死がなんにも苦しくないし怖くもないことを書いておく。わたしは数年に一度ひどい下痢を起こすことがあり、そういうときには体重が一気に3~5kg減少する。食べると吐くか下痢がひどくなるだけなので、ほうじ茶を飲みながら梅干を少しかじり、数日間下痢が収まるのを待つ。長くても5日だから、たいしたことはないが、食事だけではなく毎日飲んでいた牛乳2リットルも飲まないから体重は減る。
 体重が減るとどういうことがおきるか?精神が透明になり食べたくなくなるのである。精神が透明になることがとっても心地がいい。そのまま食べなければ透明な光の中で死ねそうで、とってもいい気分なのだが、5日もすればおかゆが食べられるようになり、干天に慈雨のごとく食べたおかゆが吸収され体力は急激に回復しだす。そういうことを繰り返して今日まで生き延びてきた。

 2006年に胃癌を手術した。蟹江さんと同じステージ3であった。巨大胃癌が胃の出口の手前にできて管をふさいでいた。胃の裏側に進行性の悪性新生物が広がる自覚症状があったので、スキルスだと確信していた。釧路医師会病院へ入院して検査に3週間かけ、巨大胃癌のほかにスキルスのあることが内科的な診断と病理標本検査で判明した。こんな症例で助かるはずがない。オヤジが平成3年に大腸癌の手術をして平成5年に肝臓へ転移、2度目の手術はどうしようもなく「アケトジ」だった。そういう可能性が強いが、この先生はやってくれるかもしれないと感じた。理屈では無理なことは承知していたが、なんとなく救ってくれそうな感じがしたのである。
 手術を担当した若き外科医の後藤先生も開腹して診た結果手遅れと思ったようだ、癌は進行を速めていた。無理だと判断、手術を中断して閉じようかなと間があったときに、横で手術を見ていたベテラン外科医の院長から「ざっくりとったら」と指示がでた。若い外科医がベテランになるためには手術の件数をこなすことが大切だという「親心」だっただろう。わたしも後藤先生なら手遅れだから命がなくなっても構わない、練習台にわたしの身体を使ってほしいと思っていた。技術を上げて次の患者を救ってくれたらいい、そう思えたのである。若くてなかなかしっかりした、将来が楽しみな外科医にみえた。手術してもらえることがうれしくて、移動ベッドで手術室に運ばれたときに術場の看護師さん3名と担当外科医への感謝でいっぱいだった。術場の看護師さん三人と外科医と麻酔科医、このチームがベストを尽くしてくれる、ありがたくて、うれしくて涙が出た。麻酔がはじまりまぶたが重くなったときに「もう(まぶたが)重くてもちあがりません、よろしくお願いします」そう言った後数十秒で意識がなくなった。
 術後に16年間仕事をしていたSRLの八王子ラボへ病理標本が送られた。病理検査報告書には「巨大胃癌とスキルス胃癌の併発」とあった。病理標本を検査した結果、リンパ節への転移と大腸への浸潤が認められたから、実際にはステージ4、手術をした場合の胃癌の5年生存率は14.3%である。わたしのケースは巨大胃癌とスキルス胃癌の併発だったから、5年生存率は限りなくゼロに近い。わたしの名前を見て眼鏡をかけたSRL八王子ラボ病理課長N取さんは気がついたかな?気がついていたら、わたしが今も生きているとは思わないだろう。八王子で仕事をしていたときに用事があって病理検査室へ行くと、いろんなサンプルを見せてブロック切り出しやミクロトームでの薄切の仕方などを実際に目の前でやって説明してくれた。後で東北の臨床検査会社へ出向して仙台の病理医T橋先生の病理診断手順の説明を聞き一緒に事業採算改善と診断精度改善を検討するときに役に立った。学べるチャンスがあったらなんでも学ばせてもらうものだ。
 外科医の後藤先生は肝臓への転移を疑っていたし、MRIでもそれらしい影も写っていた。手術時に肝臓を触って確認もしてくれていた。「(手術のときに)肝臓を触って確認したが転移が疑われるので一ヵ月後に肝臓切除をすることになる」と術後数日目に言われた。1年半抗癌剤治療をした。もうじき8年になるが幸い転移はない。今日もふるさとの子どもたちに勉強を教えることができる。心の底から感謝している。

 蟹江さん、手術をすれば助かったかも知れぬ。ステージ3なら10人手術して4人程度の生存率。

 人間いつかは病を得て死ぬ、それは自然なことだ。そのときが来たらジタバタせずに受け入れようと思う。願わくば、絶食によって透明な頭脳のまま光に包まれた死を賜らんことを願う。痛くなく、苦しくなく、家族に看取られて静かに逝くのが良い。

 仕事の鬼だった名優に合掌。

*#3269 江戸屋猫八さん進行胃癌で死去 Apr. 13, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-04-12

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 同じ道東の音更町にも昨年12月に木野東クリニックが開院した。院長のドクター後藤は元々は消化器外科の名医であるが、首都圏の病院で数年間消化器内科のトレーニングをしてふるさとに戻って開業した。肛門科や外科やEDも扱ってくれる。良い掛かりつけ医を選ぼう。

木野東クリニック
http://www.kinohigashi-clinic.com/

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*#2619 祝&感謝:音更町「木野東クリニック」開院 ドクターG   Mar. 17, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-16-1


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 根室には消化器内科の岡田医院があり専門医の岡田優二先生がいる。親子2代でわたしたち地元の患者を診てくれている。お父さん先生にはオヤジが大腸癌でお世話になった。息子先生がわたしの命を救ってくれた。旭川医大系列の「病診連係プレイ」だった。入院施設のない診療所と地域中核病院の連携がしっかりしていることが患者にとってどれほど大切か、わたしの例でもよくわかる。
(あの時釧路市立病院を選択していたらわたしは命がなかっただろう。オヤジは大腸癌で釧路市立病院で2度目の手術のときに原発性大腸癌が肝臓に転移してすでに手遅れだった。全身の臓器へ転移して手術はアケトジだった。ベテラン外科医のM先生は72歳のオヤジの年齢を考えてアケトジが正解と判断したのだろう。半年自宅でのんびり過ごして、最後は市立根室病院に一月ほどターミナルケアでお世話になった。)
 副院長が先輩なのですぐに入院手続きをとってくれた、6月初旬のことで、期末テストが始まるまで入院できないと18日間延ばしたのはわたしのワガママだ。手遅れだろうから、試験前の授業をきちんとやり終えたかった。生徒には「お腹に大きなオデキができたのでとってもらいに入院するので一月お休みします、勉強しとけよ、試験の結果はメールで報告しろ」と告げたら、「先生、オデキできたの?」と数人げらげら笑ってくれた。「そうだ、オデキだ、かっこ悪いだろう?」、最後かもしれなかったがジョークにみんなで笑えた。あのときは本当にオデキだと思って心配してくれた生徒もいたから、生徒たちがますますメンコくなった。また授業をしたいな、そう思った。
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*#3143 突然の訃報:川島なおみさん(54歳)が肝内胆管癌で逝く Sep. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25
 


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