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#2578 英語嫌いな高校1年生: 'Gone with the Wind'読んでみる? Jan. 31, 2014 [62. 授業風景]

  4時頃に学校帰りに塾へまっすぐ来た生徒が二人いた。ひとりが文具を買いに行ってくると出て行った。もどってきたら文具の他に文庫版の小説を3冊買ってきた。著者は三つとも山田悠介だから、小説と漫画の両方のジャンルで若い人たちに読者が多い作家だ。この生徒はジャンルについては許容範囲が広い。たしか中学生のときに哲学入門書である『ソフィーの世界』を読んでいたことがある。本が好きな、そして高速で読書できるユニークな生徒である。

 じつはこの生徒は英語がきらいで、さっぱり勉強しない。どういうわけかきらいな科目の勉強を我慢してやれない生徒がこの数年間増えているようだ。学力テストの平均点を見ても学力上位層が激減しているから、辛抱力のない生徒層の増加と学力低下は関連があるに違いない。
 我慢は一種のトレーニングでできるようになるものだ。ほしがるものを三つに二つしか買ってやらなければいい。三つとも買ってやったら辛抱できない子供が育つ。

 中高生になると、それはもう性格にまでなっている、どんな性格かというと「ワガママな」性格である。これはなかなか治らない。十数年かけて育ててしまったことはただの習慣にとどまらなくなり、嫌いなことを我慢してやれないという性格にまでなり固まってしまう。

 それでも何とかなるはずで、いろいろ手を考えてみる。今日は小説を3冊も買ってきたので、『風とともに去りぬ』を英語版で読んでみないかと水を向けた。ジョージアの風景描写が美しいし、スカーレットの性格描写や心理描写、恋愛模様、南北戦争などナカミはとっても楽しく面白いと説明した。
(翻訳書のほうは日本語訳が簡潔すぎて、ここまで切り詰めなくてもと思う箇所が少なくない。訳者は出版社のほうから字数制限されていたのかもしれない。)

「先生、あたし読めるわけないよ」
「そうだよな、だけどいっしょに読んで解説してあげるよ、100ページも辞書を引きながら精読したら自力で読めるようになる」
「ほんとう?だったら、やってみたい」
「ここにシドニーシェルダンの'If tomorrow comes'があるから、1ページノートに写して、段落ごとに和訳してご覧、手伝ってあげるから」

 なんとすぐに写して電子辞書を引き始めた。夢中でやっている。辞書を引き終わったところで、一文ずつ和訳の仕方を手ほどきしてやる。
「あ、これわかる、weather manって気象予報士のことだ」
「そうだよ、辞書引かなくてもわかる単語があるだろう、慣れてきたら前後関係からも単語の意味が推測できるようになるよ。気に入った表現があったらマーカーで色をつけておきな、そして何度も口ずさんでみたらいい。本を読むと知っている単語が増えるし、用例とともに覚えてしまうと使い方もわかる、つまり作文にも役に立つ」
「ちょうーたのしい、やってみる」
・・・
「え、先生もう9時なの?はやい!この本もって帰っていい?」
「いいよ、だけどあと3週間で学年末テストだからほどほどにしとけよ、テストが終わったらシドニーシェルダンの本とマーガレット・ミッチェルの本を読もう。amazonで取り寄せておきな。シドニーシェルダンのほうは大衆小説だから文体が読みやすいと思うよ。
 だけど仮定法とかwillとかbe going toの使い分けとか、学ぶべき文法事項がたくさん出てくるから、学校で使っている文法参考書の『アトラス』ももっておいで。余白に小さい字で小説からピックアップした用例をそのページ数とともに片っ端から書き込んでいけばいい。

 どうやらスイッチを入れることができたようだ。個別指導塾だからこんな贅沢な授業ができる。高校1年生、英語ぎらいだが小説大好きな生徒に大学3年次レベルの授業をして上げられる。ebisuが高校生なら是非受けたい授業だ。
 1年後に英語の成績がどういうことになるかみものだな。全国模試で英語の偏差値が70を軽く超えるかもしれない、ドキドキワクワク、本人の努力次第としておこう。
  いっしょに読んでみたい高校生がいたらいまがチャンスだ。英語が苦手な生徒でも丁寧に解説してあげるから大丈夫。英語の本を一冊読んでみたいというチャレンジ精神のある人と本が好きな人だけのために開く特別講座である。

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*#2580 英字新聞記事QRコードとスマホを利用する音読&リスニング・トレーニング
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-31-1

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*#2471 Gone With the Wind (風とともに去りぬ)をテクストに知的遊びのはじまり Oct. 31, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-31

 #2487 一服の清涼剤 Nov. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-10

 #2495 (1) 'Gone with the Wind' : アマゾンから取り寄せ Nov. 15, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-15

 #2517 月間アクセス数が初めて10万を超えました Dec. 2, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-01-1

 #2548 『風とともに去りぬ ニ』  Dec. 30, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-30-2

 #2550 文脈把握問題(1):『風とともに去りぬ 三』から Jan. 1, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-01

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後志のおじさん

自分では気づかなかったけれども外国語にふれる素地のあった生徒と「風と共にさりぬ」ブリと大根、鮭と男爵いものような「出会いもの」です。見事な料理人のebisuさんに拍手。
by 後志のおじさん (2014-01-31 00:24) 

ebisu

後志のおじさん、こんばんわ

>ブリと大根、鮭と男爵いものような「出会いもの」です

ブリに大根は同じお鍋の中で煮物になってとっても美味しいですね、でも北海道ではあまりやりませんね、ブリが地物で獲れませんから。北海道は「鮭と男爵いも」がぴったりです。

まるで「猫に鰹節」状態でした。すっごくうれしそうにびっくりするような集中力で勉強していました。きらいな英語でもこんなに全力で面白がってやるんだと驚きました。
こどもってほんとうにメンコイですね。

これも後志のおじさんのお陰です。投稿欄でまな板に『風とともに去りぬ』を上げてくれなかったら、なかったでしょう。
だからこれは後志のおじさんとebisuの共作です。
感謝 ......m(_ _)m
by ebisu (2014-01-31 00:35) 

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