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#2551 文脈把握問題(2):『風とともに去りぬ 三』 Jan. 1, 2014 [81.Gone with the Wind]

 原文は#2550に載せたので、今度は翻訳書のほうから同じ箇所を引用する。

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  この郡から出た兵隊たちのなかで、まっさきに復員したのは、フォンティン家のむすこたちであり、降伏の知らせを伝えたのも彼らだった。まだ、靴のあるアレックスは歩いてきたし、靴のないトニーは裸の騾馬に乗ってきた。トニーは例によって家じゅうでいちばん甘い汁を吸っていたようだ。四年間、太陽と風雨にさらされたので、ふたりとも、すっかり色が黒くなり、以前にくらべると、やせて針金のようになり、前線みやげの黒いひげを、もじゃもじゃはやしているので、まるで別人のように見えた。

『風とともに去りぬ 三』新潮文庫(大久保保康 竹内道之助訳 144㌻)

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 誤訳ではないだろうが、鈍いわたしは翻訳文を読んで「なにがいいたのだろう?」と思って、原文を確かめてしまった。文脈からいうと、日本語の選び方が適切とはいいがたい、もっと適切な日本語語彙がある。
 意味がピンとこないところを原文とくらべてほしい。ああ、そういうことがいいたかったのかと、合点がいくはずだ。

 "the County men home from the war"、訳者はこの句に「復員した」という訳語を選んだが、高校生は復員という日本語を見たり聞いたりしたことがないかもしれない。戦争からもどってくる兵隊のことを復員兵というから適切な訳だ。自力で訳した人は動詞のhomeに「復員する」という訳語を考えついただろうか?
 平凡な単語ほど、前後関係から適切な日本語語彙を選ばなければ文章が情緒のないものになってしまう。「ユメタン」で暗記した訳語はたんなる目安だ。その都度「自家薬籠中」の語彙から適切なものを引っ張り出すトレーニングをしておこう。そして、語彙をを増やすトレーニングもしておこう。
 たとえば、一日に一つは大判の国語辞書あるいは漢和辞典を引いて意味を確かめよう。
(釧路の教育を考える会には昨年1年間に百冊も本を読んだ先生がいる。筆ペンで毎日漢字の書き取り練習をして、1年間で10冊もノートを使ったそうだ。これくらいやれば、辞書を引く機会が増えるし、使える日本語語彙も増えていく)

 
 二日後くらいに、「投稿欄」へ解説を書き込みますが、どうぞお先に書き込んでいただいたけっこうです。いろんな日本語が考えられます。よかったらいっしょに遊んでください。

 便利のために原文を再掲します。
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 It was the Fontaine boys, the first of the County men home from the war, who brought the news of the surrender. Alex, who still had boots, was walking and Tony, barefooted, was riding on the bareback of a mule. Tony always managed to get the best of things in that family. They were swarthier than ever from four years' exposure to sun and storm, thinner, more wiry, and the wild black beards they brought back fromthe war made them seem like strangers.

 'Gone with the Wind' p.677
 『風とともに去りぬ 三』p.144
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surrender /s ə rˈen.də r / /səˈren.dɚ/ verb ACCEPT DEFEAT
1. [ I ] to stop fighting and admit defeat
They would rather die than surrender ( to the invaders).

mule
/mjuːl/ noun [ C ] ANIMAL
1. an animal whose mother is a horse and whose father is a donkey , which is used especially for transporting goods 

swarthy /ˈswɔː.ði/ /ˈswɔːr-/ adjective
(of a person or their skin) dark
 a swarthy face/complexion
 
a swarthy fisherman

wiry /ˈwaɪə.ri/ /ˈwaɪr.i/ adjective
1. (of people and animals) thin but strong, and often able to bend easily
  
He has a runner's wiry frame. (長距離走者のような細くてしなやかな体格をしている)


 CALDより引用
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*#2550 文脈把握問題(1):『風とともに去りぬ 三』から Jan. 1, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-01

*#2548 『風とともに去りぬ ニ』  Dec. 30, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-30-2

 #2471 Gone With the Wind (風とともに去りぬ)をテクストに知的遊びのはじまり Oct. 31, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-31



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コメント 3

後志のおじさん

barefootという語は、下着だけあるいは丸裸まで思わせる表現です。日本語の「裸足」とbarefootは違うのです。――――そんな状態のTony、末っ子のTonyが、the bareback(theに注意。あなたもわかるでしょ!のtheです。本来鞍とか、せめて荷物を留める帯革くらいあるだろうにっていう感じがします。)of the mule(本当は荷物を運ぶ動物なんだよ)に載っている。ridingとありますが、背中に載せられているだけでしょう。自分で手綱を握っている状態ではなさそうです。――――Alexも、his bootsではなく the bootsですから靴としてのbootsという意味だけでなく、騎兵(あるいは騎乗戦士)としての誇り、とも読めます。――――Shoesやbootsにはいろいろな意味合いが日英語ともありますから。
―――――戦士の誇りを、たとえいくさに敗れても失わなかった兄ちゃんが、世話のやける末っ子の弟をなんとか救いだして故郷のまちにたどり着いた場面ですね。

by 後志のおじさん (2014-01-01 23:17) 

後志のおじさん

さらっとよんで思い込みで書いてしまいました。すみません。――――Alexのbootsは、原文では冠詞なしですから、「自分のものではなさそう」な感じがします。自分のbootsは戦いの中でなくしてしまい、なんとか生き延びるために手に入れた。敗残の感じがでます。――――Tonyが載せられていたのも a muleです(theではない。)から「荷物運び用の」くらいですか?それほど酷さを言っているわけではなさそうですね。(些細な違いでしょうけれど。)

by 後志のおじさん (2014-01-01 23:33) 

ebisu

工業地帯のない南部は物資が不足していて、靴もなかなか手に入らなかったようです。おんぼろ靴をはいて戦争に駆り立てられ、すぐにダメになる。そうすると裸足で歩かざるを得ないことがなんども書かれています。服もそうです。北軍の青の制服にたいして、南軍の服装は私兵のようなありさま。主要港湾も封鎖されて、物資がはいってこない状況下にありました。

兄のアレックスは死んでいた北軍の兵士の靴でも盗んだのでしょうかね、多少サイズがちがってもガマンできるものだったのかもしれません。ぴったりのものなどあるはずがない。大きな足だと、同じサイズを探せないというシーンも書かれています。

とにかく、兄のアレックスは、サイズがあっているかどうかは別として、靴をはいており、弟のトニーは当初はいていた靴をだめにして裸足で騾馬に乗って帰ってきました。
物資の不足していた南部では革靴なんてほとんどなかったようです。後のほうで出てきますが、レット・バトラーは軍隊に入ったときには立派な長靴を履いていましたが、ダメになり雪の中裸足で走って戦ったと北軍の刑務所でスカーレットに述懐しています。

騾馬ですが、通常は人間は乗りません、荷物運び専用です、敗残兵に乗る馬はありません。トニーは騾馬に乗って帰ってきました。楽をしているような書き方をしていますが、鞍などないのですから尿管が圧迫されて一日乗っただけでも、痛くて歩いたほうが楽なのではないでしょうか。(笑)

ところでわたしが違和感をもったのはこの文の訳です。

Tony always managed to get the best of things in that family.
「トニーは例によって家じゅうでいちばん甘い汁を吸っていたようだ」

前後関係から、翻訳文の意味がさっぱりわかりませんでした。原文を見たら、な~んだ、そういうことか、よくある話です。長男は鷹揚でのんびりしているが、弟や末っ子のほうは、要領がよくちゃっかりしているということ。著者は復員するときもそうだったと念押ししています。

いくつか選べるとしたら、トニーはいつも一番いいものをちゃっかりいただいてしまう、要領のよいこだったのでしょう。
兄のアレックスはたぶんサイズの合わないボロ靴をはいて足にマメを拵えて痛みをこらえて何週間も歩きとおしてきたのに、弟のトニーはちゃっかりと騾馬に乗って楽して復員してきた。

ただし、どちらもしたたかに日焼けし、針金のようにやせこけていた。しかし、きつい行軍を繰り返したのでやせこけてはいても、筋肉は薄い鋼のようにしっかりしていたのでしょう。
腐った肉やら虫の湧いた小麦など軍に物資を納める業者達が私利私欲にかられて劣悪な食糧運んだので食糧事情が悪く兵士も将校も例外なく全員が自持続的に赤痢を起こしています。

あ、アレックスの所で、bootsのsが抜けていました。原文を確認してくれたのですね。ありがとうございます。訂正しておきました。
by ebisu (2014-01-02 01:24) 

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