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#2548 『風とともに去りぬ ニ』  Dec. 30, 2013 [81.Gone with the Wind]

 『風とともに去りぬ-二』新潮文庫を読み終わった。
 1864年9月南北戦争のさなかアトランタを抜け出してスカーレットはぼろぼろの馬車に息子とメラニーとその赤ん坊、そして黒人奴隷のプリシーを乗せてタラの家に向かう。九月の南部は暑い。
 母が腸チフスでなくなり、北軍が通り過ぎたあとの我が家にようやくの思い出たどり着くと、妹二人も腸チフスからようやく快復しつつあった。百人いた奴隷は三人に減り、父は妻の死に急に老け込み腑抜けのようになっていた。
 自分がこのタラの農園を妹達を父を、そしてアシュレーから頼まれたメラニーとその赤ん坊を守らなければならない、スカーレットは自分の少女時代が終わったことを悟る。このときスカーレットは19歳の寡婦。

 レット・バトラーは生還するのか?北軍の捕虜となったアシュレー・ウィルクスは生死がわからない、捕虜収容所では次々に病に倒れて捕虜が死んでいっているという噂が伝わってくる。

 激情的で気の強いスカーレットは当時の南部の常識にはとらわれない女だ。頼る者がいなくなったいま、自立する女へとスカーレットがどういう変貌を遂げ、どのような恋をするのか、三冊目が楽しみだ。

 1864年というと明治元年が1868年10月23日だから、幕末のことで、日本では「四国艦隊下関砲撃事件」が起きて、物情騒然としていた。米国もまた南北戦争で大揺れに揺れていたのである。

 北部は工業地帯を擁し、銃も大砲も潤沢に生産できる。南部は綿花栽培が主力産業だから、武器の製造工場が小規模で数も少ない。港湾を封鎖されて物資が入らなくなると、南部は激しいインフレを起こす。英国へ綿花を販売できないので、次第に経済的に追い詰められていく。英国でも原料が入ってこないので綿織物産業は大打撃を受ける。綿花の相場が高騰するのである。高騰するだけならいいが、数が入ってこないから、工場労働者は失業する。そうした経済的背景も細かく書き込まれている。

 1冊目はところどころ原文を読みながらだったが、2冊目は翻訳のみで通した。
 翻訳は簡潔でなかなかよい。わたしがやると1.5~2倍くらいの分量になってしまう。原文の味わいはまた別だ。景色の描写や心理描写でよさそうなあたりは原文で読んだらいい。翻訳とは違うイメージがわくかもしれない。


風と共に去りぬ (2) (新潮文庫)

風と共に去りぬ (2) (新潮文庫)

  • 作者: マーガレット・ミッチェル
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1977/07/04
  • メディア: 文庫




    風と共に去りぬ (1) (新潮文庫)

    風と共に去りぬ (1) (新潮文庫)

    • 作者: マーガレット・ミッチェル
    • 出版社/メーカー: 新潮社
    • 発売日: 1977/06/03
    • メディア: 文庫

    Gone with the Wind

    Gone with the Wind

    • 作者: Margaret Mitchell
    • 出版社/メーカー: Pocket Books
    • 発売日: 2008/05/20
    • メディア: マスマーケット

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コメント 3

後志のおじさん

翻訳は、手軽に読めるけれどちょっと原文とずれがある。そこが面白くない。とは言え、自分がそのレベルの翻訳ができるか?となると、日本語力に関わる問題ですね。私もまだまだですから修行を始めました。――――また、Gone With The Windを、楽しく読めるには、米国の歴史のかなり詳しい知識が必要ではないかと思っています。奴隷とはどのような存在であり、どのような扱いを受けていたのか?南北戦争はなぜおこりどのような戦争だったのか?―――どんなに英語のSSが高かろうと、知らない内容は理解できない。外国語の能力の前に、基礎的教養が必要であることがわかる一例だと思います。
by 後志のおじさん (2013-12-30 23:56) 

ebisu

後志のおじさんへ

お久しぶりです。そのご腰のほうのお加減はいかがですか?

>翻訳は、手軽に読めるけれどちょっと原文とずれがある。そこが面白くない

あっさり片付けていたり、おやこんな日本語語彙は私の袋の中にはないぞと驚いたり、ところどころ原文と対照しながら読むのは楽しいものです。
わたしは同じ原文を読んでも日本語が大きく違ってしまうことに面白みを感じてしまいます。出版社側から字数制限されているのかなと最初の内は思いましたが、そういうことでもなさそうです。日本語のセンスの違いでしょう。

奴隷の英語の翻訳はどういう日本語を選択するか苦労したところではないかと想像します。
「~ましねえです」
面白い日本語をつくっています。
このあたりは、ラフカディオハーンの翻訳を手掛けている平井の方言使いのほうが数段すぐれているように思えますが、比較するのは気の毒かもしれません。南部方言の日本語訳なんて、百パーセント創造ですから。

歴史や文化や制度についての周辺知識がないと、充分読み込めないことは当然ですが、私のように貧弱な周辺知識でも、風景描写の巧みさや、心理描写の表現のうまさは充分に楽しめます。
南北戦争の前にメキシコと領土紛争がありますが、これが序章になっているのでしょう。工業地帯の北部が南部やメキシコを侵略・略奪して領土を広げていく。
ネットで調べながら読んでいます。
ウィキペディアは便利でありがたいですね。でも好い加減な情報もあるようですから、重要と思われることはニ方向から確認すると、たのしさも倍化します。
米国史だけでなくアフリカ史も必要ですね。

最近、アメージンググレイスという映画をBSで見ました。登場する黒人の出身地が気になりました。それぞれ異なっていますから、それぞれのアフリカ史が知りたくなりました。
南西アフリカの地理の授業で大きな地図を広げながら、それぞれの国の歴史や産物のおおまかなことがらを拾い上げていったのはとてもたのしかった。

南部の綿花農場と英国の綿織物工場そしてそこで働く労働者の失業問題など当時の国際的な経済の連環も興味の対象です。
こういう本を読むと、世界中の歴史や地理、政治、経済に関心が広がります。

楽しいぞ、高校生や大学生諸君に読んでもらいたい。
by ebisu (2013-12-31 09:43) 

ebisu

後志のおじさんへ(2)

仮定法、英語の基本構造、'Gone with the Wind'の南部訛の英語や黒人奴隷の英語の並立と、あなたの問題提起の投稿に続くHirosukeさんと合格先生の独自のご意見、どれもebisuにはたいへん刺激になりました。
あらためて御礼申し上げます。

興味のある読者はカテゴリー「英語談義(投稿欄から)」にまとめたありますから、お読みいただけたら幸せです。
by ebisu (2013-12-31 11:38) 

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