#2498 中学校 英語授業進捗管理の実態 Nov. 16, 2013 [69.H25全国学力テスト・データ分析]
前半、ゆっくりしすぎて、後半をうんと飛ばしてやる、後半部の内容が薄いわけではないから、当然スピードアップし過ぎた後半部の理解がうんと落ちてしまう。翌年の学力テストに影響が出ないわけがない。
数学は1学年も2学年も3学年も後半部のほうが格段に難しいことは先生たちはご存知だ。何が起きるかというと、全部をやらないと手をつけられない複合問題演習を授業でやれないということになる。一年間の復習ができない、その上むずかしい複合問題を解かないで終わる。これでは健全な脳の発達が阻害されてしまう。基本問題のみでは脳に負荷がかからない、適度な負荷をかけてやることで、脳が刺激を受けて発達する。脳は筋肉に似たところがあるから、適度に負荷を加えて鍛えてやることで発達を促すことができる。
数学の授業進捗度の問題については、9月学力テスト総合Aをやったところでその遅れを指摘しているので、今回は英語の授業進捗管理がどういうことになっているのか、具体例で説明しようと思う。
それゆえ、どの中学校なのかは言及しない。ある中学校とだけ申し上げておく。文教学力テストのスケジュールにあわせていれば、どの学校も似たようなことになる。
本来、教科書会社が設定している標準スケジュール表にしたがえば、こんな遅れは生じない。
学校管理者が授業の進捗管理をやらないことがどうかしている、これは管理職の本来業務に含まれている、それがかれらの仕事だ。民間企業の管理職が部下の仕事の進捗管理をしないなどということはおよそ考えられないことである。それは業務放棄に等しいから、ラインの管理職として不適格の烙印を押され、すぐに外されるが、教育行政ではそうではないらしい。一般社会と「常識」がひどくずれている。
学校管理職は学校行事の管理者となっているのでは?授業の進捗管理は本来業務である、プロなら職務に忠実に仕事をしてあたりまえ。
< 1年生英語授業の具体例 >
ある中学校の1年生は今週プログラム7-2(72頁)をやっていた。
月ごとの、授業週数を
< 1年生 > | ||||
月 | 週数 | 累計 | ||
4 | 3 | 3 | ||
5 | 3 | 6 | ||
6 | 4 | 10 | ||
7 | 3 | 13 | ||
8 | 1 | 14 | ||
9 | 4 | 18 | ||
10 | 4 | 22 | ||
11 | 4 | 26 | 74.3 | |
12 | 3 | 29 | ||
1 | 2 | 31 | ||
2 | 4 | 35 | ||
35 | ||||
① | 24/35= | 68.57 | % | |
② | 71/137= | 51.82 | % | |
③ | 137*0.6857= | 94 | ||
④ | 71/24*35= | 104 | 頁 |
①は11月半ばまでの累計授業週数を、2月末までの年間授業週数で割った値である。言い換えると、すでに年間授業週数の68.6%を消化してしまっているということ。
②は11月半ばの時点で実際の授業で消化した71頁(Program 7-2)までがやるべき教科書全体の51.8%にしかならないことを示している。
③は11月半ばの時点で実際に到達していなければならない頁数が94であることを示している。
単純比例の値と比べると、授業はすでに、
94-71=23頁
これだけ遅れているということだ。
では、現在の速度で授業をし続けたらどうなるかというのが、④の数字だ。2月末の時点で104頁である。教科書の総ページ数は、付録のストーリを含めると137ページあるから、
137-104=33頁
これだけやれないことになる。学力テストに授業の進捗をあわせるとこんなとんでもないことになっている。
< 2年生英語授業の具体例 >
2年生の英語は次のようになっている。
< 2年生 > | ||||
月 | 週数 | 累計 | ||
4 | 3 | 3 | ||
5 | 3 | 6 | ||
6 | 4 | 10 | ||
7 | 3 | 13 | ||
8 | 1 | 14 | ||
9 | 4 | 18 | ||
10 | 4 | 22 | ||
11 | 4 | 26 | 74.3 | |
12 | 3 | 29 | ||
1 | 2 | 31 | ||
2 | 4 | 35 | ||
35 | ||||
① | 24/35= | 68.6 | % | |
② | 67/129= | 51.9 | % | |
③ | 129*0.6857= | 88 | ||
④ | 67/24*35= | 98 | 頁 |
こちらもようやくプログラム7-2(67頁)をやっている。
表の見方は1年生と同じだ。総ページ数は129頁ある。このままの「巡航速度」ではやり残しが計算上「129-98=31頁」となる。
一年間分を終わって、復習するつもりなどなさそうである。低学力層が30~40%もいるのに、総復習もしない授業、低学力に対する問題意識がほとんどないのではないか?
学力テストの結果に明らかだ。11月7日に行われた学力テストでは、1年生で400点を超えた生徒はたった三人、2年生でも一人のみである。英語で91点以上の生徒は1年生が7人、2年生はゼロである。1年生は問題が簡単だったといっていた(平均点67.3)、その通りだろう。2年生の平均点は56.7点、今年の道立高校入試の英語問題は例年になくひどく簡単だったから、文協学力テストは難易度を下げているのではないか?こんなレベルの低い問題にならされたら、道内全域でさらに一段と学力低下が起きることが懸念される。
この中学校で10年前には400点を超える生徒は20人(20%弱)に近い数字ではなかっただろうか?
多い学校でも400点(5科目500点満点)を越えた生徒は数人だろう。学年でゼロのこともある。
低学力層が膨らんで、高学力層が激減しているというのが、根室市内の中学校のこの10年間の変化である。
B中学校3年生の6年前の8月に実施した学力テストの写しが出てきたが、平均点が165点(3年生は5科目300点満点)だった。今年の学力総合AとBのこの学校の平均点は110点前後である。もう1校は105点前後。どちらも釧路市の最底辺の中学校と同レベルの平均点である。市街化地域の3校の学力格差はほとんどなくなってきている。3校仲良くレベルダウンして、学力格差が消失してしまった。
根室の中学校ではこの10年間にすさまじい学力低下が進行中といえるのではないだろうか?
低学力問題は地域経済の未来にも大きな暗雲を投げかけている。根室市議会文教厚生常任委員会は学力問題をどのようにとりあげるのだろう?
*#2529 根室市教委の仕事振り(3):「確かな学力向上に関する取組方針」 Dec. 15, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-15
#2528 根室市教委の仕事ぶり(2):「全国学力・学習状況調査の結果報告」 Dec. 15, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14-1
#2527 根室市教委の仕事ぶり(1):教育に関する評価報告書 Dec. 14, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14
#2526 根室は学力テスト結果非公表 :学力向上の抵抗勢力は誰だ Dec. 13, 20
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#2500 11月7日 中学1・2年生 学力テストの結果 Nov. 17, 2013
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#2499 個別指導と戦略思考 Nov. 17, 2013
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#2498 中学校 英語授業進捗管理の実態 Nov. 16, 2013
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